この街にはお勧めの喫茶店があるの。
場所は大通りから少し横道にそれた所。人通りが少し減ったところにひっそりと建っているわ。
あまり大きな店じゃないけど、店の雰囲気は静かで落ち着いてて、憩いの場所としては最適。場所が場所だけに知ってる人は少ないけれど、知ってる人は誰もが一息つく為の場所にここを選ぶの。
静かだって言っても、別に無音って訳じゃないわ。店内には古いレコードプレーヤーでジャズが流れてるんだけど、これがまた店の雰囲気に合ってるのよ。何て言うか、無音よりも静かな音楽って言うのかしら? とにかく街の喧騒を打ち消してくれて、それでいて喧しくないって感じなのよね。
だから日常のグシャグシャから離れたくなったら、ここに来るのが一番なの。
隠れ家的な落ち着きって言うのかな?
何より店主が良いのよ。ここは店主が1人で切り盛りしてるんだけど、その店主ってのが若い女でね。結構スタイル良くて、それでいて落ち着いてて不思議な人なの。しかも飲み物も料理も美味しいんだから。
ね? いい所でしょ?
え? 名前? おっと、そうだったわ。言い忘れてた、ゴメンなさいね。
店の名前は『カフェ・キャスター』。看板に魔法使いのとんがり帽子が描かれてる、小さな喫茶店よ。
***
その日、神多品市の天田高校に通う少女の
「何、ここ? 喫茶店? 聞いた事ない名前だけど……」
胡乱な目で棗は店を睨む。正直、こんな事をしている場合ではないのだ。
彼女は高校3年生、大学受験を控えた身だ。喫茶店で優雅にティータイム、何て事をしている暇があるなら一分一秒を勉強につぎ込まなければならない。結構良い大学を第1志望に狙っているのだから、普通の学生以上に気合を入れなければならなかった。
そんな彼女の根を詰め過ぎた様子を黙って見ている事が出来なくなった聡美は、余計なお世話と分かっていても彼女をここに連れてきていた。ここ最近の彼女は傍から見ても無理をし過ぎている。ここらで一度リフレッシュさせてやらないと。
「ナハハ、まぁ大通りから外れてるから知ってる人じゃないとなかなか見つけられないしねぇ。でも店自体は悪くないよ、私が保証する!」
「…………アンタは良いわよねぇ。実家の店で働くから大学受験とは無縁で」
棗にジロリと睨まれ、聡美は思わずたじろぐ。
「うぐ……ま、まぁいいじゃん! ほらほら、何時までも店の前で突っ立ってると迷惑だから早く入ろう。ね?」
「……はぁ」
聡美に背中を押され、棗は溜め息を吐きながら店へと入って行く。こんな所で時間を潰している暇はないのだが、ここで揉めて時間を浪費するのも嫌だったのでここは大人しく彼女に促され店へと入る事を選択した。それに、参考書は常に持っているのでその気になれば店でも勉強は出来る。何処まで身が入るかは分からないが…………。
棗は押し込められるように店に入る前に、店の外観を見上げて看板に書かれた店の名前をもう一度見た。看板には流れるような文字で店の名前が書かれ、その名前が被っているように魔法使いのトンガリ帽子が描かれている。
「カフェ・キャスター…………ねぇ?」
ぼんやりと呟きながら、棗は促されるままに店へと入って行った。
ドアを押し開けると、ドアに取り付けられたベルがチリンチリンと音を立てる。その音に反応して、店内のカウンターの向こうに居る女性が2人の事を見た。
「あら、いらっしゃい!
カウンターに立つ女性、目に映る限り唯一の店員の美幸に促されて店内を見渡し席を探す。
店内はどちらかと言うとがら空きで、とても繁盛しているようには見えない。店自体が大きくないと言うのもあるが、客は片手で数える程度しか居ない。
とてもではないが、人気のある店には見えなかった。
「悪くない店なんじゃなかったの?」
「言ったでしょ? 知ってる人じゃないと見つけられないって。ここはね、所謂隠れた名店ってやつなの」
聡美の言葉に、棗は疑惑の目を向ける。隠れた名店と言う言葉自体は知っているが、それが現実に存在するかとなると別問題だ。
「……揶揄ってる?」
「揶揄ってない揶揄ってない。取り合えず座ろう、ね? 今なら好きな席に座り放題なんだし」
半ば強引に棗を引っ張り、一番近くのカウンター席に座らせる聡美。棗は大きく溜め息を吐きながらカウンター席に座ると、メニューには目もくれずカバンから参考書を取り出してページを開いた。
無理矢理とは言え飲食店に入ったのに、何かを頼む気配どころかメニューを見る事すらしない友人に聡美は流石に呆れた目を向ける。
「アンタ……確かに連れてきたのは私だけど、店入って何も頼まないなんて真似よく出来るわね?」
「別にどうしようが私の自由でしょ。こっちは忙しいの」
大学進学への思いは人それぞれであろうが、棗は少なくとも自身への妥協を許さないタイプだった。やるからにはとことん上を目指すのが彼女のやり方だ。楽に入れるからと、中途半端な大学へ進学する事は棗自身のプライドが許さない。
故に彼女は、聡美どころか両親に心配されながらも粉骨砕身の気持ちで今日まで勉強してきたのだ。こんな所で気を抜いてはいられない。
「はぁ~……アンタって子は。少しは肩の力抜いても罰は当たらないでしょうに。美幸さ~ん、コーヒーセット一つ!」
「は~い!」
頑固と言うか意固地な友人に、聡美は溜め息を吐きながらコーヒーセットを注文した。
聡美が隣で注文するのを無視して、棗は参考書のページを捲っていく。
暫くして、聡美が注文したコーヒーセットが来た。コーヒーとチーズケーキがセットになっている。漂うコーヒーの香りに、思わず棗の意識がそちらに向く。
集中が途切れかけた事に、棗は内心で舌打ちをした。案の定勉強に集中しきれない。
店に入った事を棗が後悔していると、彼女の目の前にハーブティーの入ったカップが置かれた。思わず視線を参考書から外し、続いてカウンターの向こうに立つ美幸に目を向ける。
カウンターに頬杖をついてニコニコしている美幸を見て、棗は忌々し気に睨み付けた。
「ちょっと、何よこれ? 私こんなの注文した覚えないんだけど?」
剣呑な雰囲気を漂わせる棗に、しかし美幸は全く動じる事無く余裕を感じさせる態度で返した。
「サービスよ、サービス。頑張ってる受験生に私からの細やかなエールをね」
「…………フン」
余裕を感じさせる美幸の態度が気に入らないのか、棗が鼻を鳴らしながら視線を参考書に戻した。
が、体の方は正直なのか喉が渇きを訴える。すぐ近くに自分が飲んでもいい飲み物があると分かったからか、先程まで感じる事が無かった喉の渇きが急に気になってきた。
何だか美幸の掌の上で踊らされているような気分になったが、さりとて喉の渇きを放置する事も出来ず棗はハーブティーに手を伸ばした。カップを持ち上げ口元に近付けると、ハーブの香りが鼻を抜け気持ちを落ち着かせる。
「ぁ――――」
直前まであったささくれ立った気持ちが薄れたのを感じ、棗は引き寄せられるようにハーブティーを口にした。
温かなハーブティーが、舌の上を滑り喉の奥へと流れ落ちる。
その瞬間、体の内から湧き出る温かさに棗の表情が緩んだ。先程までの苛立ちを感じさせる顔が嘘の様な穏やかな笑みに、隣に座る聡美は自分が頼んだコーヒーとチーズケーキに手をつけるのも忘れて友人の変化に見入っていた。
「おぉ、流石美幸さん! 棗の気持ちを一発で解しちゃった!」
「え!? あ、いや……んん!」
聡美の言葉に、自分の頬が緩んでいた事に気付いた棗は慌てて表情を引き締めるがもう遅い。
「気に入ってくれた様ね」
「う!? まぁ……はい」
「うふふ! お代りとかが欲しくなったら何時でも言って頂戴。今回は初来店って事で、代金はサービスしてあげるから」
そう言って美幸は2人から離れて行く。彼女の後姿を見送りながら、棗は再びハーブティーに口を付けた。ハーブの香りと爽やかな味に、思わず吐息が漏れる。
リラックスした様子の友人の姿に、聡美は笑みを浮かべながらコーヒーを口にした。
「いや~、良かった良かった。連れてきた甲斐があったわ」
「む……まぁ、来て良かったとは思うわ。その……ゴメン」
気持ちが落ち着いたからか、棗は自分が友人に対してぞんざいな態度を取っていた事に気付き頭を下げた。今更ながら、自分の為を思ってここに連れてきてくれた聡美に申し訳なく思ったのだ。
棗が自分に対して雑に接していたのが、受験勉強で精神的に疲れていたからだと分かっている聡美はそれを笑って受け入れた。
「気にしない気にしない。棗の言う通り私は卒業したら実家の店の手伝いだからね。気に食わないのも仕方ないって」
聡美の言葉に改めて彼女に申し訳なく思い、そしてあんな対応をしたにもかかわらず友達でいてくれる彼女をありがたく思った。
そして、それに気付かせてくれた切っ掛けが美幸のハーブティーである事を理解した棗は、同様に棘のある態度で接した美幸に対しても頭を下げた。
「あの……桐生、さん? も、ごめんなさい」
「いいのいいの。人間偶にはピリピリしちゃうこともあるでしょ。貴女達は特に若くて悩みも多いんだから、そう言う事もあるって」
美幸はそう言って笑みを浮かべ、続いて「ハーブティーのお代りは如何?」と訊ねてきた。常に余裕を持った彼女の包容力に、棗は肩から力を抜き空になったカップを差し出した。
すっかり空になったカップを美幸は笑顔で受け取り、お代わりのハーブティーを注ぐ。
「それにしても流石だわ、美幸さん。こんなにあっさり棗をリラックスさせちゃうだなんて」
「まぁ、ここが良い店ってのは確かみたいね。雰囲気も静かで落ち着くし」
入った時は気にもしていなかったが、店内には古いレコードプレイヤーによるジャズが流れている。何時の時代、どんなアーティストが演奏した物かは分からないが、この店の雰囲気に合ってる上に外の街の喧騒をかき消してくれていた。
それがまた店の落ち着いた雰囲気を演出するのに役立っており、荒んだ心が癒された。
「それに何より、ハーブティーも美味しかったし」
「うんうん。あれ飲んだ瞬間、棗の顔変わったものね」
「何か淹れ方にコツとかあるんですか?」
問い掛けられた美幸は、新しく注いだハーブティーを棗に渡しながら答えた。
「うふふ、そんな大した事じゃないけどね。ただちょ~っと魔法を掛けただけよ」
「魔法、ですか?」
「そ、魔法。頑張って勉強してる女の子が、少しでもリラックスしてくれるようになる魔法よ。どう? 少しは気が楽になった?」
小首を傾げながら訊ねてくる美幸に、2人は揃って笑みを浮かべた。特に棗は、何だかよく分からないが不思議と心を開ける美幸に、何だか救われた気分になった。
棗は受け取ったハーブティーを口にする。先程と同じ、だが心が軽くなったからか先程よりも深く心に染み込むハーブティーの美味しさに温かな吐息を吐いた。
「……美味しい」
「勉強とかに疲れたら、何時でもいらっしゃい。私は何時でも大歓迎よ」
「はい――!」
久しぶりに心からリラックスした笑みを浮かべる棗に、美幸は微笑みを返し聡美は安心してコーヒーとチーズケーキを堪能するのだった。
***
「ごちそうさまでした!」
「また来ま~す!」
「ありがとうございました~!」
それから暫くして、棗と聡美は店を後にした。棗はあの後ハーブティーに続き茶請けにケーキを注文し、聡美はコーヒーをお代りしていた。
2人が午後のティータイムを楽しんでいる間に、僅かだった店内の客は居なくなっていた。
学生2人が店を出ると、店内に居るのは美幸ただ1人。落ち着いたジャズが流れる店内で、客の居なくなった店内を見渡し美幸は大きく伸びをして体を解した。
「ん~! はぁ、これで一段落かな? さて、ちょっと休んだら夜のお客さんに向けて――――」
美幸は自分へのご褒美にと、コーヒーを淹れながらこの後の予定を立てていく。喫茶店ではあるが、夜もある程度は営業しておりその時間に来店する客に向けたメニューも用意しているのだ。
鼻歌を歌いながらコーヒーを一口飲み、一息つく美幸。
その時、彼女の目に異変が映った。客からは見えない、カウンター裏に置かれた水晶玉が何かの映像を映し出したのだ。
それを見た瞬間彼女の顔が険しくなる。マグカップから口を離し、水晶玉を持ち上げその中に映る景色を凝視した。
水晶玉の中に映るのは、先程店を出たばかりの棗と聡美の2人。その2人の後を、明らかに人間ではない異形が追跡していた。2人は背後から迫る存在に気付いていない。
水晶玉に映った光景に、美幸は溜め息を吐きマグカップをカウンターの上に置いた。
「う~ん、今日は臨時閉店にしなきゃダメかしら? あ~ぁ」
溜め息を吐く美幸だったが、両頬を手で叩き気合を入れるとエプロンを外した。すると今までエプロンに隠れて見えなかったが、腰に変わったベルトを着けているのが分かった。まるで人の掌のような形をしたバックルのベルトだ。
美幸は一度店の外に出てドアに掛けられた札をひっくり返し『CLOSE』にすると、店の中に引っ込み中から鍵を掛けた。
そして、右手の中指に変に装飾の大きな指輪を嵌めるとそれを腰のバックルに翳した。
〈テレポート、ナーウ〉
ベルトからその音声が響くと同時に、美幸の体は光に包まれその場から一瞬で消えた。
***
その頃、空が茜色に染まった街中を棗と聡美がゆっくり歩いていた。
棗は、美幸の店で肩から力が抜けたからか、空が綺麗な茜色に染まったのを楽しむ余裕すらあった。
「……こんな風にゆっくり歩いたのは久しぶりかも」
「そうかもね~。棗ったら最近は殊更に勉強勉強だったし」
「本当、ゴメンね。心配掛けちゃって」
「ナハハハ! もう~、棗ったら相変わらず固いな~。もっと肩の力抜いた方が良いよ~?」
棗が受験勉強に没頭してから、久しぶりの友とのふざけたやり取りを2人は楽しんでいた。これも美幸の喫茶店で棗がリラックスできたおかげだ。2人は示し合わせた訳ではないが、心の中で同時に美幸に感謝していた。
その2人の様子を後方の暗がりから伺っている異形が居た。コブラがそのまま人間の姿になったような見た目の怪人、スネークロードと言うアンノウンだ。
「シャァァァァ……」
スネークロードは右手の指を全て伸ばした状態で左胸の前に持っていき、右手の甲を左手の人差し指と中指でZ字を描く様になぞった。
そしてスネークロードは背後から2人に襲い掛かろうと一歩足を前に踏み出した。
その時――――――
「いらっしゃい。お相手は私よ」
「ッ!?」
出し抜けにスネークロードの前に美幸が姿を現した。何処から出てきたのか、目の前に現れた美幸にスネークロードが驚き動きを止める。
その間にも棗と聡美は背後の異変に気付かずそのまま歩いていき、スネークロードの視界から消えてしまった。
2人を見失ってしまった事にスネークロードは苛立たし気に唸り声を上げるが、今はそれどころではない。
目の前に居る美幸は明らかに敵だ。自分達の使命を邪魔する存在だ。
ならば、排除する!
「シャァッ!!」
スネークロードは頭上に発生させた光の円盤から杖を取り出すとそれで美幸に攻撃を仕掛けた。美幸はそれを軽やかなステップで躱し、お返しに蹴りを叩き込んだ。
「フッ!」
蹴り飛ばされたスネークロードは、すぐさま体勢を立て直し杖を構えた。今の一瞬の攻防で理解した。美幸は決して油断していい相手ではない。
スネークロードが自身への警戒心を強めたのを見て、美幸は右手の中指の指輪を付け替えバックルに翳した。
〈ドライバーオン、ナーウ〉
美幸が右手を翳すと、腰にバックルを中心として大きなベルトが形成される。彼女はそのベルトの左右のレバーを動かし、バックルの掌の向きを変えた。
〈シャバドゥビタッチ、ヘンシーン シャバドゥビタッチ、ヘンシーン〉
「私の魔法は、高くつくわよ? 変身!」
〈チェンジ、ナーウ〉
美幸は音声が響く中、左手の中指に仮面のような形の装飾が紫の宝石で出来た指輪を付け、腰のバックルに翳した。
その左手を今度は前方に翳すと、指輪を中心に紫色の魔法陣の様なものが空中に描かれ彼女に向かって移動する。
彼女が魔法陣を通過すると、その姿はまるで茶色いローブを被った魔法使いのような姿に様変わりしていた。
これこそが彼女のもう一つの顔。その名も仮面ライダーメイガス……人知れず人々を飲み込まんとする闇を照らす魔女である。
美幸の変身したメイガスは、右手の指輪をまたしても付け替えると腰のバックル『ハンドオーサー』に翳した。
〈コネクト、ナーウ〉
音声が響き、彼女が右手を翳すとそこに魔法陣が形成される。彼女はその中に手を突っ込み、魔法陣の中から一本の剣のような武器『ハーメルケイン』を取り出した。
「シャァァァァッ!」
彼女が武器を手に取ったのとほぼ同時に、スネークロードが彼女に攻撃を仕掛けた。杖による一撃が彼女を襲う。
「おっと!」
振り下ろされた杖の一撃を、メイガスはハーメルケインで防ぐ。それだけでなく、彼女は体をズラして相手の攻撃を受け流すと、流れるような動きで何度もスネークロードに斬り付けた。
手首の動きだけでハーメルケインをクルクルと回し、スネークロードに攻撃の軌道を読ませない。手先の動き1つでスネークロードは翻弄される。
スネークロードも必死に杖で対抗するが、メイガスはアクロバティックな動きでスネークロードの攻撃を受け流し逆に更に激しい反撃を喰らわせた。
忽ちボロボロになっていくスネークロード。堪らずこの場は逃げようと彼女に背を向けその場から跳んで退避しようとするスネークロードだったが、ここでこいつを逃がすと再び棗たちの身に危険が迫るとメイガスはスネークロードの逃走を妨害した。
〈チェイン、ナーウ〉
虚空に出現した魔法陣から紫色の鎖が伸び、跳んで逃げようとするスネークロードを無理矢理メイガスの方へと引き寄せた。
自身の目前へと引き戻されたスネークロードの姿に、メイガスは右手の指輪を交換した。
「これで、終わりよ」
〈イエス! キックストライク! アンダスタンドゥ?〉
メイガスがハンドオーサーに右手を翳すと、彼女の足元に魔法陣が形成され彼女の体を浮かび上がらせる。その状態で彼女が飛び蹴りのポーズをとると、彼女の背後にもう一つ魔法陣が形成され彼女の体をスネークロードに向け射出した。
まるで砲撃の様に打ち出された彼女の右足には魔力が集束しており、その右足がスネークロードの胸板を穿つように蹴り飛ばした。
「シャァァァァァッ!?」
苦痛の悲鳴を上げながら蹴り飛ばされるスネークロード。そのまま電柱にぶつかり地面に落下したスネークロードが何とか立ち上がると、そいつは体を痙攣させ同時に頭上に武器を取り出した時と同じ光の円盤が出現した。
「シャァァァァァァァァァァァッ?!」
スネークロードはそのまま断末魔の悲鳴を上げ、爆散した。
メイガスは爆散したスネークロードを一瞥し、燃え盛る道路には目もくれず右手の指輪を再び交換してバックルに翳した。
〈テレポート、ナーウ〉
ここに現れた時と同じく、メイガスはその場から忽然と姿を消した。後には燃え盛るアンノウンの残骸だけが残され、そのアンノウンに狙われていた2人は自分達の背後で戦い後凝っていたとも知らず、自宅へと帰っていくのだった。
この街にはお勧めの喫茶店があるの。
場所は大通りから少し横道にそれた所。人通りが少し減ったところにひっそりと建っているわ。
あまり大きな店じゃないけど、店の雰囲気は静かで落ち着いてて、憩いの場所としては最適。場所が場所だけに知ってる人は少ないけれど、知ってる人は誰もが一息つく為の場所にここを選ぶの。
静かだって言っても、別に無音って訳じゃないわ。店内には古いレコードプレーヤーでジャズが流れてるんだけど、これがまた店の雰囲気に合ってるのよ。何て言うか、無音よりも静かな音楽って言うのかしら? とにかく街の喧騒を打ち消してくれて、それでいて喧しくないって感じなのよね。
だから日常のグシャグシャから離れたくなったら、ここに来るのが一番なの。
隠れ家的な落ち着きって言うのかな?
何より店主が良いのよ。ここは店主が1人で切り盛りしてるんだけど、その店主ってのが若い女でね。結構スタイル良くて、それでいて落ち着いてて不思議な人なの。しかも飲み物も料理も美味しいんだから。
ね? いい所でしょ?
ただねぇ、最近色々あって臨沂休業しなくちゃいけないのが悩みなのよ。まぁ仕方ないと言えば仕方ないんだけど、ねぇ。
あ、うぅん。気にしないで。
さ、着いたわ。ここがその喫茶店、カフェ・キャスター……私の店よ。
美味しい食べ物や飲み物は勿論、悩み相談でも何でも受け付けてるわ!