外殻投影が本来の投影魔術なんですかね?
「居合…確かにやっているが、坊やは一体?」
整えられた口髭を蓄えた、鋭い目つきとしなやかに鍛えられた体つきの男性は訝しんだ。
「江戸川コナン──た」
「入って来るなって言ったろ!」
毛利探偵がコナンの頭にゲンコツを落とす。
「すみませんね、ウチの居候が…探偵の毛利小五郎と申します。それで、あなたは小角氏とどんな関係で?」
頭を押さえてうずくまるコナンを尻目に毛利探偵が尋ねる。
「あれ、探偵の毛利小五郎さんですか? 私は
「なるほど借金ですか…警部殿!」
毛利探偵は吉田氏から離れ目暮警部の下に向かった。
「さっき離れに興奮して突っ込んできた男からも話が聞けた。彫刻家の
「
「毛利探偵! 言われていた写真をお持ちしました」
警察官の一人が亡くなった小角氏の写真を持ってきた。写真の中でも刀を握り、鋭い眼光を向けている。
「え? そんな事言ってないが…」
「毛利君…
「何ですって? それじゃあ…」
「(これでおっちゃん達も気付くはず…後はこの箪笥だ。なんで刀傷が繋がってないんだ?)」
コナンが注目したのは、正方形の引き出しが二五個ある和箪笥だった。部屋の刀傷と比べて箪笥は執拗に傷つけられていた。その傷がいくつか繋がっていない箇所があるのだ。
「(傷がつけられた後で引き出しを入れ替えて、更に傷を付けたのか…一体何のために?)」
「ちょっとごめんよ、ボウヤ。あれ? 奥さん、鍵入ってないですよ!」
警察官が箪笥の中身を調べに来た。
「そんな筈ありません、主人はいつもその場所に…」
警察官の返事に神経質そうな声が答えた。おそらく殺害された小角氏の妻だろう。またおっちゃんに目を付けられても困るので離れから出ようとして、ふと気付く。
「(箪笥の上に置いてある木彫りの彫刻、どれも傷一つ付いてない…)」
「警部! この部屋に備え付けの電話に留守録が入っていました」
「そうか…内容は?」
「殺害が起きたと思われる時間の前後のものです…まず津久井氏から『利子を返しに行くから彫刻は売らないでくれ、もし勝手に売ったらぶっ殺す』という内容です。この彫刻と言うのは、箪笥の上に置いてあったもののようです。次に吉田氏から『六時に道場の資金を全額返済する約束だが、急用が入ったため少し遅れる』という内容でした」
「なるほど…分かりましたよ警部殿! 関係者を全員呼んで下さい…犯人は彼らの中にいます」
毛利探偵は笑みを浮かべながら事件の全貌を掴んだと確信していた。
「(とりあえず箪笥の引き出しを全部トリミングして…繋がっていない刀傷を繋げてみるか)」
一方コナンは、箪笥に抱いた違和感を解消するため、スマートフォンで撮影した写真を加工していた。
「(…これは! でも一体誰にこんな事が出来たんだ?)」
「殺害されたのは
「そうです。ええと、毛利探偵の付き添いなんですよね? 外国の方のようですけど…」
ウェイバーは使用人に対して極めて平静を装って頷いた。
「(魔術師が、殺された? しかも魔術使いによる暗殺ではなく殺人事件として?)」
魔術師は死ににくい。魔術を扱うための魔術回路や先祖から受け継がれる魔術刻印、それらが無意識下でも作用して、蘇生や回復のための術式を作動させるからだ。それでも死ぬ時は、どうしようもなく魔術刻印が破壊された時だ。
偶然にしては出来過ぎている。唯一思い当たる相手に電話して確認を取ってみる。
「メルヴィン、お前が話聞きに行って断られた魔術師が殺されたぞ。何か知ってる事はあるか?」
「無いね。それとは別に彼の家系を調べていた所だったけど、そこでも特に目ぼしい発見は無かったよ。明治時代くらいに日本に流れ着いた分家の魔術師で、家系としては六代目。初代はそこそこ名のある魔術師だったようだけど、それ以降は記録が殆ど無い。六代目──その殺害された本人──は表社会で名を上げたくらいで、魔術師としてはやはり活躍してないね」
ケホケホと軽い吐血をしながらメルヴィンは答えた。
「じゃあ、魔術師とか関係なく殺されたって事なのか?」
「良く分からないなぁ。ほら、なんだっけ
ウェイバーは顔をしかめる。
「あれは、魔術師が動機をごまかせない存在だから通用するだけだ。それに、この場で僕が探偵役を買って出ても説得力がないだろ、名探偵はもういるんだから」
「あ、奥様が! すみません、失礼します」
通話に夢中になっている内に使用人が立ち去ってしまった。
「どうしたのウェイバー? 何かあった?」
「犯人が分かったらしい、また連絡する」
離れに向かうと、遺体の傍に三人の男、それに先ほど使用人から奥様と呼ばれた女性がいた。
「ウェイバーさん…どこに行ってたんですか? コナン君も急にいなくなるし…」
「すみません、友人から電話がかかってきたもので。コナン君なら離れに向かうのを見ましたよ」
蘭は律儀にもずっと自分達二人を待っていたようだ。離れを覗くと、毛利探偵が事件のあらましを説明していた。
「──それで、使用人に小角氏を探してもらったところ、この離れが荒らされ、その中で息絶えているのが発見されたと言う訳です。そして…ここに呼びんだ四人にはそれぞれ、怪しい点があります。まず医師の久波氏と、小角氏の妻の沙織さん…あなた方は不倫関係にあった、そうですね? ここで白を切っても構いませんが…警察が調べればすぐに分かる事です」
「……確かにその通りです。奥様はその…旦那様から愛情を向けられていないようで余りに不憫で…」
「ええ、不倫していたわ。でも、今までの生活を壊してまで添い遂げるような関係じゃ無いわ! それに今日、診察で家に来る予定の時間まで、先生と私はホテルにいたんだもの…私達にあの人を殺せるはずが無いわ」
毛利探偵は慌てて言い訳を並べる二人から目を逸らした。
「二人が口裏を合わせている可能性もありますが…まぁホテルの入退室記録が分かれば容疑も晴れるでしょう。次に道場の運営資金を借金していた吉田氏ですが…あなたの居合道場に小角氏も通っていたとか」
「はい…急にお金が入り用になった事を打ち明けると、家宝である刀を担保に貸してくれました。返済計画が整っていたので、担保と言っても形だけのものでしたが」
「居合と言う事は真剣を扱う機会もありますね? この離れにも数振りありましたし…刀を扱うと言う点では一番怪しい!」
反論しようとした吉田氏を手で封じて、毛利探偵が言葉を続ける。
「しかしながら…門下生である小角氏の刀の握り方を間違えたり、ここまで部屋中に刀傷を付けたりするのは、本当に刀を扱う人間ならやらないミスだ」
「と言う事は毛利君…」
「そうです警部殿…津久井実! あなたが犯人だ!」
指摘された津久井氏はかぶりを振った。
「お、俺はやっちゃいない!」
「あなたは小角氏に留守番電話を残した…その中で『彫刻を売ったら殺す』とメッセージを残してますね?」
「そ、それは…あの彫刻は俺の師匠の遺作だったから、勢いで言っただけで…」
「犯行の流れはこうだ──あなたは小角氏に電話をかけた。暴言ともとれる留守電を残した後に小角氏と会い、案の定彫刻の件で揉めた。ものの弾みで刺殺してしまったものの、その時に吉田氏から電話がかかってきた。それは留守番電話になり、そのメッセージで道場という言葉を聞き、吉田氏と斬り合いの末に死んだように見せかけようと、部屋や遺体に無数の刀傷を付け、刀を握らせた──その証拠に、あなたにとって大事な彫刻には傷一つもついていない!」
自信満々に述べられる推理は、しかし津久井氏の反応を変えるものでは無かった。
「ち、違う! 俺は本当に何もやってないんだ!」
「詳しい話は署の方で聞かせてもらいましょうか…」
連行される津久井氏を、コナンはただ見ているだけだった。
「(
ヘファイスティオン爆死しました。
余談なんですが、某サイトの「ぐだ子にゼノビアとか夢幻召喚させたい」
のコメント欄の聖杯戦争ネタが面白すぎて、ぜひ誰かに書いて欲しいと思う今日この頃