迷宮無しの魔術の破壊者   作:C₆H₁₂O₆

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FGO2部6.5章楽しみですね!
流石に月1投稿の帳尻は合わせないと…


廃墟屋敷殺人事件 その2

「じゃあ私と江戸川(えどがわ)君は先に帰るわね、準備もしなくちゃいけないし」

「親にはちゃんと言っておけよな」

 そう言って灰原哀(はいばら あい)と江戸川コナンは帰宅したが、放課後清掃の割り当てで教室に残る事となった少年探偵団員───小嶋元太(こじま げんた)円谷光彦(つぶらや みつひこ)吉田歩美(よしだ あゆみ)───は、これさえ終われば阿笠博士の家でまたゲームが遊べるとの思いから、すっかり右から左へ聞き流してしまった。

「よっしゃ終わった! 早く帰ろうぜ光彦、歩美」

 少年探偵団の自称リーダーである元太は急いで下駄箱に向かった。扉を開けるとその中に、丁寧に折り畳まれた紙が入っていた。

「元太君、何か入ってますよ…探偵団へって書いてあるし、依頼じゃないですか?」

「えー…せっかく博士ん家でゲームできるってのによー。探偵団は休みにしようぜ」

 元太が下駄箱の中にあった依頼書を、そのままランドセルに収めて下校しようとしたその瞬間、物陰から誰かが出てきた。

 ポニーテールで活発そうな格好をした、少年探偵団の面々と比べて歳上の女子生徒だった。明るそうな顔立ちは、焦燥と悲しみからか疲れが見えた。

「あ、あの…少年探偵団の人たちですか? 飼い犬がいなくなっちゃったんです!」

 元太は丸刈り頭を掻きながら、面倒そうに言った。

「今日はちょっと用事があるからなぁ…明日また聞かせてくれるか?」

「話くらい聞いても良いじゃん! 用事って言っても、ゲームしに行くくらいでしょ!元太君」

 同性という事もあったのか強い口調で意見した歩美に、元太はたじろいでしまった。すかさず光彦が他の三人を諫めた。

「ま、まぁここで騒いでも迷惑ですし…とりあえず教室に行きましょうか。ね! 元太君、歩美ちゃん。そして、ええと…あなたの名前を教えてもらっても?」

「四年C組の沢井千夏(さわい ちか)です…」

 

「という訳でウェイバーさん…ちょっと学校の同級生が来る事になったから……」

「分かった。調べる事もこともあるし、この部屋からは出ないよ。でも……なんだか、君も薬を飲まされて若返った───幼児化したと言う方が正しいか───と言うのに随分とその生活に慣れてるみたいだね」

 ゲストルームでパソコンと向かい合ってるウェイバーに話しかけると、素朴な疑問を投げかけてきた。

「まぁ、薬を飲まされてから数ヶ月は経ってるしね。ウェイバーさんみたいに大人から学生になるよりは、慣れるのが早いと思うよ……特に灰原にとっては人生やり直しているようなもので、最近になって人付き合いし始めたしね」

 コナンは被験者の先達としての答えを言うと、そう言えば黒ずくめの組織の事だけど、と声色を変えた。

「ああ……メルヴィンの手を借りて、魔術師との繋がりが無いか調査を始めたよ。それに、ボイスレコチェンジャーだっけ? これを使えば電話でイギリスに連絡も取れる」

「分かった、ありがとうウェイバーさん」

「どういたしまして」

 部屋からコナンが出て行くと同時、ウェイバーはパソコンの画面をスリープ状態から解除する。そこには米花町の現代の地図と古地図が表示されていた。

 ウェイバーは自分を襲った魔術師の素性を、米花町の魔術的な地形から調べようとしていた。この土地に住む魔術師や魔術使いへの実際の調査はメルヴィンに一任した方が安全だろうし、時計塔との連絡も時差の関係から夕方から夜に行った方が都合がつくだろう。その中で今自分に出来ることを探した結果であった。

 

「それで…沢井さんの飼い犬がいなくなった経緯を教えてもらっても良いですか?」

 空き教室で車座になってから光彦が尋ねると、沢井は言葉少なげに語り始めた。

「一昨日、学校から帰って来た時にはハク───犬の名前なんだけど───は家の外の犬小屋にいて特に変わった様子はなかったわ…夕方にはペットフードをあげて散歩に行ったの。でも、次の日の朝…学校に行こうと外に出たらいなくなってたのよ!」

「外で飼っていたって事は、大きなワンちゃんなんですか?」

「ええ…名前の通り、白い毛並みの秋田犬だったわ…」

 ふむふむと頷きながら光彦がメモを取って状況を整理している中、元太も質問した。

「その秋田イヌってのは、良く盗まれる犬なのか?」

「元太君‼︎ すみません沢井さん…でも、確かに聞いておきたい事です。そのハクと言う犬は外で飼われた…と言う事はそれなりに成長していたはず…何か不審者とか、物音を見聞きしませんでしたか?」

「自分はすぐに寝たのでわかりませんが…物音は聞こえなかったと、両親は言ってました」

 だったら、と光彦は推理を述べた。

「飼い犬が見知らぬ人に対して鳴き声一つ上げないとは考え辛いですね…もし盗まれたのだとすると、顔見知りの犯行かも知れませんね」

「そ、そんな! ペットを盗んだ人が身近にいるって言うんですか? 信じられない…」

 憔悴しきった沢井を見て、元太がまた不躾な質問をした。

「なー、アンタは別に犯人じゃなくて犬を見つけたいんだろ? 探してない場所とか無いのか?」

「そ、そうだよ沢井さん! まだ盗まれたと決まった訳じゃ無いし、どこかで迷子になってるのかも…」

 言外に励ます意図を感じた沢井は、手助けになればと自宅の住所を述べた。

「博士ん家へ向かう道沿いじゃんか…ちょっとその辺りを見てみようぜ」

「現場百遍とも言いますしね…沢井さんが気付かなかった事もあるかもしれません」

 外に出ての調査を始めることで探偵団の意見が固まりつつあった。

「私も手伝うよ、探偵団に依頼した訳だし…あんまり遅くなると怒られない?」

 沢井の助力志願は、しかし、依頼を受けて動くのが探偵ですから、と言う光彦の言葉に封殺された。

 

 灰原と学校を出てからもう既に一時間半経った。掃除が長引き、親への説得が失敗したとしても、流石に元太達から断りの連絡くらいは入れてくるだろう。

「宿題が終わらないとか、家の手伝いを命じられたとか、そう言うのが重なっただけじゃないの? 彼らにドタキャン連絡なんて求めるのは酷よ」

「普通に考えを読むなよな、灰原」

「あらごめんなさい…あんまり良い顔をしてないものだから、てっきりそんな事でも考えているのかと」

 まぁそんなものか、と思うコナンの携帯に着信が入った。

「言ったそばから、だな。光彦から電話だ…もしもし?」

 電話をかけてきた光彦の声は、尋常では無い緊張を含んでいた。

「コナン君ですか? 今、博士の家と学校の間くらいの所にある古びた洋館にいるんですけど…歩美ちゃんと元太君の姿が見えなくなってしまったんです。それも…それも、ほんの少し目を離しただけなのに!」

「姿が消えた? 落ち着け光彦…その建物からは出れないのか? 灰原、探偵バッジで位置情報を───」

「もうやってるわ…確かに円谷君のいる位置に、本物の廃墟って感じの建物があるわね」

「何やってんだおめーら! すぐ行くから動かないで待ってろよ」

「な、なるべく早くお願いしますね」

 電話を切ったコナンは阿笠邸を駆け巡り、高輝度ライトやケミカルライト、腕時計型麻酔銃の予備針などをリュックに詰め込んだ。

「警察には連絡する?」

「20分経ってオレから連絡が無かったら頼む」

 そんな時に、ウェイバーが魔法瓶を抱えてコソコソと上階から降りてきた。

「あれ、友達が来てるはずじゃ無かったっけ?」

「彼らだったら、目下廃墟で失踪中よ。今から江戸川君が探しに行くところ」

「……そのパソコン上の地図で光が点滅している所がいなくなった場所なのかい?」

「どうしたのウェイバーさん?」

 コナンからの問いかけに、ウェイバーは何と答えるか葛藤した。

「(あの場所は霊地だった……友人達の失踪に魔術師が関係している可能性も否定出来ない。しかし、自分とは何の関係も無い事でメルヴィンからの護衛は動かせないし、自分が行くのは更に悪手だ。ただ、このまま黙って見ていると、コナン君も巻き込まれるかもしれない)」

 急いで阿笠邸から出ようとするコナンの腕を掴んで言う。

「その場所は魔術的には良い場所だ……もしかしたら魔術師が失踪に関わってるかも知れない、僕も行く」




ウェイバーにとってリスクしか無い行為だろ、と思ったかも知れませんが
若い頃の自分みたいな無鉄砲さを、若い頃の姿になってしまった自分が見た事で感化されたとかまぁそんな感じで……

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