ハロウィンイベントの周回が未だに終わりません。
その2
どうやってボクが阿笠博士の家に向かったのか、よく覚えていない。
よく覚えていないが、阿笠博士の家に博士と灰原さんと、誰かもう一人いたような────。
「────ッ! 元太君! 歩美ちゃん! 」
起き上がって周りを見ると、自分が寝かされていたソファの向かいにコナン君と阿笠博士がいた。
「起きたか光彦…大丈夫だよ、元太も歩美ちゃんも無事だ。
「ガス…?」
思わず聞き返してしまう。確か失踪した飼い犬を探していて、廃墟に入って────。
「お前らが入った廃墟だけど、俺が向かってすぐに爆発して倒壊したんだよ…窓の少ない洋館だったからドアを開けたら鼻につく匂いがしたし、持ち主がガスを止めていなかったんだろうな」
「ば…爆発!? 元太くんや歩美ちゃんは怪我したんですか?」
「いや、元太も歩美も入口近くで昏倒してたから、すぐに引っ張り出したよ…幽霊が襲ってくるよりも怖かったけどな」
コナンの軽口に愛想笑いを返す。確かに、二人が一瞬で姿を消すなんて事がある訳が無い。元太くんが幽霊を見たと言ったのも、ガスによる幻覚だったのだろうか。だが、違和感は残る。都市ガス特有の腐った卵のような臭いはしなかったし、建物が倒壊するような爆発だったら周囲の民家にも被害が出ているのではないだろうか?
「光彦君は軽い酸欠で済んだようで良かったわい…これに懲りたら廃墟には勝手に入らない事じゃぞ。三人とも一歩間違えば命の危険があったんじゃからな」
阿笠博士が珍しく真面目な顔をして注意をしてきた。勝手に廃墟に入った事、そのまま廃墟を探索しようとした事、全て自分の判断によるものだ。
「はい…すみませんでした。歩美ちゃんと元太くんにも、後で謝りたいと思います」
頭の中にあった違和感は消えた。ガス漏れと言う想定外の事態があったとは言え、二人を危険な目に合わせたのは事実だ。その事から目を逸らす気にはなれない。
それから一時間くらい休み立って動けるようになったタイミングで、母親が博士の家に迎えに来た。博士は事前に連絡を取って説明をしていたようで、多少憔悴しているように見えたが平静を保っていた。
「では帰ります。博士、コナン君…ありがとうございました」
「ではのー」
「おう、また来週な」
帰路の道すがら、黙って並んで歩いていると、母が切り出した。
「…ここに来る前にね、吉田さんと小嶋さんのご両親と会っていたの」
「そう、ですか…あの、お母さん。実は────」
事の顛末を途切れ途切れ話している間、母は黙って頷いていた。
「正直に話してくれてありがとう。明日には退院できるみたいだし、朝になったら病院に行って二人に謝りましょう。それと…心配したのよ、とっても」
二人に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、自分を心配している人も確かにいる。その事を失念していたボクの口からは、自然と謝罪の言葉が出ていた。
「ご、ごめんなさい」
「良いのよ、無事に帰って来たんだから。そうだった、今日はまだ買い物していないの。ちょっとスーパーに寄るわね」
スーパーに向かう途中、街頭ビジョンでは今日のニュースを放送していた。
『次のニュースです。今日の午後五時頃、長らく廃墟状態であった建物が突如爆発しました。周囲に被害は無く、原因はガス漏れとみられ────』
今日の夕方に起きたことがもうニュースになっている。
「あら、ニュースになってるじゃない。でもおかしいわね、全然取材とか来なかったのに」
『また建物内には所有者の妻を名乗る女性が住んでおり、十年前に所有者が殺害された際に妻と息子が失踪していた事から、警察は過去の事件も含めて慎重に捜査を進めるとの情報が入っています』
元太くんが見たと言っていた女性はもしかして幽霊では無く───。
そう言えばコナン君は一度も廃墟に誰もいないとは言っていなかった。
「(───
ガスが幽霊より怖かったのだろうか。いや、彼はおそらくその母子と相対していたのだ。
「全く敵いませんね…コナン君には」
「これで良かったの? ウェイバーさん」
「ああ……君が口裏を合わせてくれて助かった。それにメルヴィン、お前がここにいてくれて良かったよ」
「全く、たまたま僕がいたからすぐに暗示をかけられたものの……一体どうするつもりだったんだい?」
「ミス灰原に腕時計型麻酔銃で彼を眠らせるように頼んでおいたんだ。それから暗示の準備をするつもりだったさ。いくら
光彦が帰るまで二階の部屋で待機していたメルヴィンが、ウェイバーに巻き込まれた事件の詳細を聞いている一方で、グレイは灰原と話をしていた。
「
「そうなんですか……拙には、難しくてよく分からないですけど」
「まぁ貴女の専門は魔術なんでしょ? 私には魔術の事なんてさっぱり分からないし、専門外の事なんてそんなものよ」
はいこれ、と灰原はグレイに錠剤の入ったケースと処方箋を手渡した。
「これは……?」
「ウェイバー・ベルベットの身長、体重に合わせて調剤した解毒剤よ…事前に一万キロカロリー相当の栄養摂取も忘れないように。じゃないと戻った瞬間栄養失調で倒れる可能性があるわ」
グレイが処方箋を読むと、持続予想時間まで書いてあった。師匠がここに転がり込んでまだ二日程度しか経っていないのに、ここまで完成度の高い解毒剤を作れるものなのだろうか?
「前からずっと、研究をしてらしたんですか? その、随分早く解毒剤が出来たので……」
「ええ。江戸川君が風邪気味の時に
「事件を解決、ですか?」
「彼は探偵だから、そういう生き方みたいなのは変えようが無いのよ。勿論私もだけど」
グレイは灰原の言葉の中に、師匠が魔術師を評した言葉を思い出した。
「話は変わるけど、グレイさん。ウェイバー氏への投薬した後に経過観察したいの。明日から三日間くらい、予定は空いてる?」
「え?」
すると話を聞いていたのか、コナンが声を上げた。
「おい灰原…本当にやるのか?」
「良いでしょ…少年探偵団名義で誘われてるけど目当ては江戸川君だろうし、そうでなくても円谷君達は事件に巻き込まれたばかりよ。博士は健康診断の再検査と被ってしまったし。余ったチケットで大人二人分にはなるわ」
「……ええと、コナン君。全く話が見えないんだが、何のチケットなんだい?」
ウェイバーの質問に対してコナンは満面の笑顔を浮かべて答えた。
「二泊三日の鉄道旅行のチケットだよ。灰原がAPTXの効き目を見るのに丁度いいんじゃないかって」
作為を疑ってメルヴィンの方に顔を向けたウェイバーだったが、メルヴィンは首を横に勢いよく振っていた。
「あ、先輩先輩! 聞いてくれますか聞いてください聞かなくても言っちゃいますね。今日の午後急に魔術師の工房跡地とされていた場所が爆発して大変なんですよ。その敷地内で一般人の子供が二人倒れていて暗示かけないといけなかったし、爆発の規模から高位の魔術師や魔術使いの集団か、さもなければ
元気な印象の強い彼女だったが、今は疲労で妙なテンションになっているようだ。いつもは流している髪も一つ結びにしていて、デスクワークに奔走していた事が伺える。
「ええと…どんな爆発だったんですか?」
「
「(光の柱……これはもしかすると……)」
化野が一瞬考えを巡らしたその時、後輩の部下が資料を持って駆け寄ってきた。
「直近で入国した魔術師・魔術使いのリストが上がりました! 一番怪しいのはコイツですよ、なんたってロンドン本部の
前回は書きたい展開書いて終わってしまったので、またしてもインターミッション追加です。
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