良いお年をお迎えください
「もしもし
コナンから明日同行する予定だった阿笠博士の欠席という連絡を受けた蘭は、旅行に招待してくれた親友の
「博士が再検査で来れなくなった? それで…居候している灰原さんは行く予定、ガキんちょ達は事件に首突っ込んで叱られて辞退。ついでに博士の家にステイしているイギリス人観光客二人も行きたいって言ってるのね」
「うん。
「伯父さまに聞いてみたけど問題無いって。旅行って言ってもお披露目会みたいなもので身内と報道関係者しかいないみたいだし、席に余裕があったみたい」
「ありがとう…じゃあまた明日ね」
通話を終えると、丁度帰って来たコナンが近寄ってきた。
「蘭姉ちゃん…灰原から聞いてたの?」
「そうよ…一昨日電話があって、博士が行けないかも、博士の知人が滞在してるけど家を空けるのが不安だ、って。博士にはいつもコナン君達をキャンプとか旅行に連れて行ってくれて、お世話になってるし。急用が入ったなら仕方が無いわよ」
「(灰原のやつ…オレにだけ黙ってたな)」
思わず毒付くが、ここまで周囲を埋められてしまってはどうしようもない。
「そう言えばウェイバーさんって博士の知り合いだったのね。哀ちゃんから聞いてびっくりしちゃった」
「確かに…言ってなかったね。そう言えばもう一人いる観光客の事なんだけど───」
コナンは今日出会ったばかりのグレイの事を蘭に紹介し始めた。
「メルヴィン、今すぐホテルに戻ってくれ。法政科の日本支部に怪しまれている」
明日から旅行に行くと唐突に言われ、グレイと共に買い物に出かけたウェイバーが帰って来るなり私に言い放った。
「……グレイちゃんの
「確かにそうだけど、自分の指示でやった事だ。それに、その時にはあれしか方法が無かった」
「すみません……
俯いて落ち込んでいるグレイを励まそうとしたが、それきり黙りこくってしまった彼女にかける言葉が見つからず、私は話す先をウェイバーに変えた。
「それで、怪しまれてる根拠はあるのかい? 尾行されたとか?」
「
それは狙って会いに来ているだろ、と思ったがウェイバーにもその自覚はあるようだった。
「そこで
「今の君は結構思ってる事が顔に出るタイプだからねえ。反応見たさで好き勝手したくなる気持ちも分かるさ」
いきり立つウェイバーにそれだよ、と言うとハッと気付くと悔しそうな顔をした。やはり若い頃のウェイバーは顔に出やすいな。
「……こんな事態になった訳だから、旅行の誘いは一石二鳥だ。数日間雲隠れして追っ手をかわししつつ解毒剤の効果を確認、元の姿に戻って日本支部に出向いて謝罪、そして速やかにイギリスに帰る」
「なるほどね。それで私も怪しまれるといけないから、ホテルに戻れって訳か」
「そういう事だ。護衛も外してくれ、お前も法政科に絡まれたくは無いだろ」
「……分かったよ、うまくいくことを祈ってる」
メルヴィンがホテルに戻った後、阿笠邸の二階の客間ではグレイが久しぶりにウェイバーの靴の手入れをしていた。
「師匠、服とか靴はメルヴィンさんから貰ったんですか?」
「ああ。元の服はメルヴィンの荷物として持って行ってくれるみたいだ」
ジャケットをクローゼットに収めたウェイバーが答えると、グレイが泣き笑いのような顔をして言葉を発した。
「髪、短くなりましたね。梳かせないのは少し残念ですけど、本当に……無事で良かったです」
グレイの震える声に、ウェイバーは何をすればいいか逡巡して、いつものように頭を撫でようとした。
「ありがとう。君がいてくれるから、まだ生きていられる……あれ?」
撫でようとして、少し腕を上げないと撫でられない事に気付いて思わず笑ってしまった。それにつられて、グレイもかすかに笑い声を上げた。
翌朝、待ち合わせ場所である毛利探偵事務所の前に行くと、リムジンが停まっていた。
「哀ちゃん、ウェイバーさん! それと…ええと?」
すでに事務所の外にコナンと共に出ていた蘭はグレイに視線を向けた。グレイはフードを被ったまま、自己紹介をした。
「内……ええと、ウェイバーさんの
「おはよう。ウェイバーさん、グレイさん」
コナンは阿笠邸で話すときとは違い、年相応の元気さで挨拶をしてきた。
「あぁ、おはよう」
「ねぇ蘭、この人達が阿笠博士の知り合い? 私達と同年代くらいじゃん」
コナンと挨拶をしている間に車の中から声が聞こえた。車内には茶髪のボブカットヘアにカチューシャをかけている、蘭と同年代くらいの女性がいた。
「ちょっと園子! すみませんウェイバーさん。私の友人の鈴木園子って言います」
「構いません、急にお願いしたのは僕たちですから。招待してくれてありがとうございます」
「いいや、お主らを招待したのは儂じゃよ。詳しい話は車の中でしよう」
車内の死角にもう一人いたようだ。
静かに発進する車の中で、次郎吉氏が話を始めた。
「お主らを呼んだのは、鈴木財閥の鉄道旅行企画の一つでな…いわゆる観光列車なんじゃ。しかも各鉄道会社との協議の結果、列島縦断をする計画での。今日はその列車の完成と試運転の式典なんじゃ」
「ず、随分壮大な計画なんですね…」
「伯父さまはロマンを追い求める人なのよ。私も聞いた時には驚いたわ」
何ともロマンに溢れた話だが、次郎吉氏には財力を誇示するような嫌味な雰囲気は無い。純粋に夢を追い求める楽しさと情熱がそう感じさせるのだろうか。
「その列車にはある宝石が飾られる予定になっているんじゃが…あの怪盗キッドの奴から予告状が届いた! そのためにキッドキラーたる小童を呼び寄せたと言う訳よ」
怪盗キッドという言葉が出た瞬間、蘭も園子もコナンも、灰原すらも身構えた。
「あの……怪盗キッドと言うのはその……どなたですか?」
グレイの質問にはコナンが答えた。
「ビッグジュエルと呼ばれる宝石を狙うキザな怪盗だよ……変装が得意で、何回か遭遇しているけどまだ捕まえられていないんだ」
捕まえられていないと言う割には嬉々として語るコナンに、灰原が指摘した。
「簡単に言ってしまえば江戸川君の好敵手、そんな所かしらね」
「な、なるほど……」
「さてそこでウェイバー君とやら、少し失礼するがいいかね?」
話が終わるやいなや、次郎吉氏がウェイバーの下にそろりと近づいてきて、頬を引っ張った。
「いひゃいんえすけど……」
「し、ウェイバーさん!?」
次郎吉&園子も参戦して結構コナンとのクロスオーバーらしくなってきた、でしょうか。
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