と言うより執筆ページに向かう余裕が無かったです……年度末恐るべし。
「───ッ……」
「解毒薬を飲んでそろそろ二十分…体が灼けるようでしょう? 無理して喋らなくても良いわ。これからもっと酷くなるし」
師匠は客室のベッドに寝かされて、汗をかいて苦しそうに呼吸をしている。一見すると熱にうなされているようだった。
だがこの症状は意図して引き起こされたもの。師匠を元の姿に戻すため、今もベッドの傍で様子を見ている灰原さんが計画し、師匠も了承して行っている事だ。
「解毒薬の効果が出るの、ちょっと遅くないか?」
黒縁メガネをかけた少年、江戸川コナンが呟いた。
「私たちと違って彼は20代後半…代謝も落ちているし、時間がかかるのも当然よ」
「そうか…グレイさん、防音の結界って長時間使えるんだよね?」
コナン君がただ見守っているだけの拙に尋ねてきた。
「は、はい。以前師匠がメルヴィンさんと阿笠さんの家でやった『神殿』と似た仕組みで……私の魔力を使いますけど、激しい消費では無いので……半日程度は維持できます」
「───グ、ァ……」
呻いていた師匠が、突然起き上がって心臓を押さえ始めた。
「師匠!?」
「グレイさん落ち着いて!」
師匠の周囲には湯気が立っていた。
「客車の空調は効いている、のに……なんで」
「体が通常では考えられないくらい高温になるのよ。APTXの解毒効果は出ているわ」
直後、師匠の咆哮が客室に響き渡った。
「法政科のミス
ウェイバーの予想通り、法政科から接触があった。思っていたよりも強引だったが。
「ロード・エルメロイを知っていますか? 亡くなった先代についてではなく」
化野の後輩を名乗る女性の視線を受けて、
「もちろんだとも。現代魔術科の若き
「通り一遍の評価ですね。彼とは第四次聖杯戦争の前から関係があったそうですが」
なるほど。私と彼の交友関係から攻めるようだ。
「確かに。彼に資金援助をして聖杯戦争への参加を手助けしたし、帰還後に彼が教室を買い取る手助けもした。彼には多額の金を貸している身だったけど、彼がロード───正確にはライネスちゃんの名代───になるタイミングで彼女から貸し手を纏める目的で返済された。ここら辺の金の動きは、法政科なら探れるだろうね」
「ええ。また貴方は、
これは驚いた。時計塔の秋葉原支部はおそらく彼の足取りを掴めていない。彼を直接捕えて聞けば済む事を私に聞いていて、しかも推測を重ねた回りくどい尋ね方をしている。事実関係を突き合わせて確認しているという訳でも無さそうだ。
「関係しているとも。
「は?」
「私もそこまで機械に明るくない。街中の防犯カメラや、電子的な記録を改竄するのには手間がかかる。確認してみると良い。私の言葉には嘘偽り無いと分かるはずだ」
「そ、そこまで言い切りますか」
「言い切るとも。
狼狽えつつ視線を外した女性は、ちらと壁を見やる。壁の向こうにいる同僚と情報交換をしたのだろうか。
「帰国の便には間に合いそうです。朝から空港にいたのは、こうなる事を予見していたんですか? それとも……」
空港まで向かう車内で珍しい事があった。大抵の事を黙って見ている従者が尋ねてきたのだ。
「私はね、
「はぁ……そう仰られるのなら」
従者の呆れるような返答も、今は心地良い。ウェイバーはまた私の前に渋い顔をして戻ってくるという、そんな確信がある。
「(また私が最後まで当事者でいられなかった、というのは残念だが)」
「師匠! 大丈夫ですか、師匠!」
耳元で悲痛な叫びが聞こえる。グレイの声だ。
「レディ、そんなに悲しまないでくれ……なんとか生きている」
安心させようと出した声は、驚くほど掠れていた。
「師匠……灰原さんの解毒薬、効いて良かったです」
「効いた……のか?」
上体を起こしてみると、格段に視点が高くなっていた。
「これは……」
解毒薬を飲む前はブカブカだったパンツやシャツが、今では手足にフィットしている。
「効いて安心したわ…効果の持続時間を計るから、後はお願いねグレイさん」
「は、はい。一時間間隔で体調に変化が無いか聞いて、メールを送ればいいんですね」
視線を動かすと、コナンと灰原は客室を出ようとしていた。
「もう行くのか?」
引き留めるつもりは無かったが、素っ気なさを感じた二人に声をかけた。
「ちょっと前に蘭姉ちゃんと園子が尋ねてきたんだ。体調が悪そうだから灰原と一緒に看病してたって言ったけど、ずっといたらウェイバーさんが重症だと勘違いして下車させられそうだし」
「そうね。江戸川君は蘭さんと一緒の客室だから、早く戻って一緒に寝たいだろうし?」
からかう灰原に、コナンは言葉少なに
「バーロ、そんなんじゃ無ぇよ」
と答えるだけだった。
蘭の部屋に戻ると、園子がベッドに座っていた。パジャマ姿で話し込んでいた園子が、悪びれもせずに、
「蘭と恋バナ続けたいから私の部屋で寝てくれない?」
と言った。
「ま、まぁ良いけど…」
ウェイバーさんに何か異変が起きたら、灰原が部屋を抜け出して対応する算段になっていた。それならいっそ、自分と同部屋の方が融通が利くだろう。
「話が分かるじゃんガキんちょ。灰原さんにもよろしく」
渋々灰原のいる客室に向かう。一応ノックしてから入ると、灰原はソファに座っていた。
「あら、こんな時間に何の用?」
「うっせ」
メルヴィン退場、ウェイバー(エルメロイⅡ世)復活と、打ち切り間近みたいな展開になってますが
終わるに足る理由をまだ見つけてないので、多分続きます。
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