デジモンバトルユニバース -バディリンカーズ-   作:地水

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月と太陽の旅行記 ~宇宙を冠する新世界にて~:後編

 

 デジタルワールド:コスモス、拠点都市ハップル。

ヨウト、エリヤの二人はコスモス大使館の建物から出てきた後、ヒロ達に連れられて街中を案内されていた。

 

デジタルワールド:コスモスで採れた作物を売っている食品店、人間だけではなくデジモンの衣装もあるファッションショップ、さらにはデジモンを鍛える場所として設けられた特訓場など……。

 

様々な場所を相棒であるバディデジモン達と共にハップルでの巡っているチームロムルスの二人に、ヒロは話しかける。

 

「どうかな? 視察、楽しめているかい」

 

「ええ、とっても楽しめていますよ。思ったよりハップルの施設も充実しているし、ここの人達も利用しているんですね」

 

ハップル都内に設けられた広場にて辿り着くと、エリヤは目の前に広がる光景を目の当たりにする。

そこでは多くの人間とデジモンが集まっており、中央では透明な防壁(バリア)の中で二体の二体のデジモンが激しい戦いを繰り広げていた。

 

「いくっすよ、パルスモン!」

 

『おうともリュウリ! 電光石火でパパっ片づけてやるぜ!』

 

片方はイエローカラーを基調とした稲妻の意匠が入った小さなデジモン・パルスモン。

彼はリュウリ――銀髪に金色の瞳を持った元気はつらつとした表情と雰囲気が特徴的な少年の名を呼ぶと、目の前にいる相手へと飛び掛かる。

 

「頑張って、コテモン!」

 

『アリ、シア……ッ!』

 

相手は剣道の防具を身に着けた爬虫類型のデジモン・コテモン。

金髪の女性――アリシアの激励を背に受けたコテモンはその手に持った竹刀で飛び掛かってくるパルスモンへと振り上げる。

 

『シャッ!』

 

『あらよっと!』

 

『ッッ!!』

 

振り上げられた竹刀をパルスモンは何らく躱すと、電撃を纏わせた腕で殴りかかる。

電光石火の如く繰り出されるパルスモンのジャブがコテモンへと迫る。だが……。

 

『……ッ!』

 

『なっ、オレのパンチを……』

 

『ていッ!』

 

コテモンは目に見えないほどの剣捌きでパルスモンのジャブを捌き切ると、お返しと言わんばかりに反撃にでる。

上段から振り下ろした一撃が迫り、度肝を抜かれたパルスモンは冷やりと汗を流す。

そこへ背中から自分のリンカーであるリュウリの言葉が飛んできた。

 

 

「両手を上だ!」

 

 

『おうッ!、――真剣白刃取りっ!』

 

 

パァン、といい音が響き渡り、熱狂していた観客はその光景に注目する。

そこにはコテモンの竹刀をパルスモンが両平手で掴んでいたのだ。

リンカーの指示の通りパルスモンは少しの間拮抗すると、竹刀を掴みなおしてそのまま投げ飛ばした。

 

『おっりゃあ!』

 

『ッッ!?』

 

パルスモンによって力いっぱい投げ飛ばされ、コテモンは空中へと投げ出された。

だが展開された防壁を足場にして蹴り上げ、上手く地面へと着地すると、コテモンは再び竹刀を構えた。

パルスモンも体中から迸る電気を出しながらニヤリと不敵に笑い、再び接敵した。

 

デジモン同士で彼らの戦う様子を見ていたヨウトは気になっていた。

 

「面白そうだなぁ。デジタルウォーズ、こっちでもやっているんだ」

 

激しくぶつかり合うパルスモンとコテモンの姿を見て、ヨウトとある用語を呟いた。

 

――デジタルウォーズ、それはデジモン同士を戦わせる格闘競技の一種。

成長期のデジモンなら成長期同士、成熟期デジモンなら成熟期同士と同じレベルのデジモンが戦うといった厳密なルールを定め、競技化している。

デジモンと人間がパートナー関係となった今では独自のスポーツ文化として根付いていた。

 

そして彼らの戦いがデジタルウォーズとして証明するかの如く見守っているのは、一体のデジモン。

王様のような恰好でチェスの意匠が入った白いデジモン・キングチェスモンが審判役として、その眼光を光らせていた。

ヨウトには見覚えがあった。彼らはディーハンター直属のデジモンの一体であり、各地で起きたデジタルウォーズを穏便かつ公平に判断するためにどんな場所すぐさまやってくるという謎のデジモン。

チームロムルスも人間の世界にてデジタルウォーズを申し込まれた際にもいつの間にか現れたキングチェスモンが審判役を引き受けた事がある。

 

「あのデジモンがいるってことは、このコスモスでもデジタルウォーズが流行ってるんだな」

 

「まあね、少なからず人間とデジモンも娯楽に飢えているのはこちらでも変わらないから」

 

ヨウトの言葉に反応してヒロは自嘲気味に苦笑する。

そんな彼らの会話を繰り広げている横では、パルスモンとコテモンが最後の一撃を叩き込もうとしていた。

 

 

「決めちゃってパルスモン!」

 

『エレキラッシュ!』

 

 

「コテモン!」

 

『――サンダー……コテ!』

 

 

リュウリとアリシアが同時に叫んだ瞬間、バトルフィールドに稲妻が走る。

パルスモンが繰り出した電撃を纏った突撃"エレキラッシュ"と、コテモンの繰り出した電撃を纏った竹刀で手を打つ攻撃『サンダーコテ』がぶつかり合う。

辺り一帯に眩い閃光が包み込み、轟音が轟く。

やがて二つの電撃が拮抗した後、打ち勝ったのは――パルスモンであった。

 

『チェストォォォォ!!』

 

『ぐぁっ!?』

 

突撃してきたパルスモンの一撃を受けて、コテモンは軽く飛んで地面へと叩きつけられた。

その瞬間二人の周囲に覆われていた防壁が消え、そこへアリシアが駆け寄る。

 

「コテモン! 大丈夫!?」

 

『……アリシア、負けた』

 

アリシアに抱き起されたコテモンはハスキーボイスで自身の敗北を口にした。

特に目立ったダメージを負ってない様子だが、それでも戦闘続行は無理だと判断したキングチェスモンは自身の杖を掲げてジャッジを下した。

 

『勝負あり! 勝者、パルスモンである!』

 

『やったぜリュウリ!』

 

「ああ、ウイニングロードはオレ達が通った!」

 

勝利した事を歓喜したパルスモンとリュウリはお互いの握り拳を向けあって、軽く小突きあった。

勝った者、負けた者が存在するデジタルウォーズの光景を見て、ヨウトは……無邪気な笑顔で笑っていた。

 

「よぉし、オレもやるか!」

 

既に自身のデジヴァイスを握り、一歩足を踏み出すヨウト。

まるで自分も戦いたいと言わんばかりにデジタルウォーズへ参戦しようとするヨウトの様子を見て、ガンマモンがヒロに向かって叫ぶ。

 

『ヒーロー! オレも、戦いたい!』

 

「えっ、ガンマモン?」

 

『ヨウの、コロナモン、戦いたい!たたかいたーい!』

 

ヨウトの連れているコロナモンと戦いたいと駄々をこね始めるガンマモン。

そんなガンマモンを看かねて、ヒロは渋々ヨウトと共に中央へと向かう。

やがて多くの観衆が見守る中、コロナモンとガンマモンは向かい合った。

 

『来やがれってんだガンマモン! オレとヨウトは強いぜ!』

 

『おー! オレ、テラテラのコロナモンに、勝つ!』

 

コロナモンとガンマモン、両者ともにやる気満々で身構える。

エリヤや先程戦っていたリュウリとアリシアといった観客達が見守る中、開始の合図代わりにキングチェスモンが槍を掲げた。

 

『はじめっ!』

 

『いっくぜぇぇぇぇ!!』

 

『がつーんっていくぞぉ!』

 

開口一番、地面を蹴り上げてぶつかりあう両者。

コロナモンの拳とガンマモンの爪が互いにぶつかり合い、その小さな体を吹き飛ばした。

二体はそれぞれ上手く着地すると回り込む形でフィールド内を走り回る。

 

『とりゃあ!』

 

『てりゃ!』

 

コロナモンは手から生み出した炎を拳に纏わせ、そのまま殴り掛かる。

熱を帯びた攻撃をガンマモンは慣れた動きで避けると、お見舞いと言わんばかりに頭突きをかましてきた。

不味い、と思ったコロナモンは咄嗟に防御姿勢を取って激突されるが、あまりの威力に防壁ギリギリまで突き飛ばされた。

ガンマモンの戦う姿を見てヨウトは感心をした。

 

「ガンマモンのヤツ、結構強いんだな。それも場数を熟して戦い慣れている感じだ」

 

「まあね、オレもガンマモンも色んなデジモンに会って来たからね。時には問題を起こしているデジモンもいて、一緒に戦ったさ」

 

ヨウトの言葉に反応して、ヒロは懐かしむように答えた。

横目でその表情を伺うと、まるでその時の事がもう遠い過去の出来事のように語っているような感じだった。

ヒロとガンマモン……いや、彼らだけではない。大使館であったルリとアンゴラモンやキヨシロウとジェリーモンも同じように色んな出来事を経験して、共に乗り越えてきたんだ。

その事を実感するようにヨウトはヒロという『デジモンと絆を結んだ先輩』の事を一端ながら読み取った。

 

「……なんだろな、オレも一応色んな戦いを潜り抜けてきたけどまだまだなんだな」

 

「大丈夫だよ、ヨウト。これから追いついて、追い越せばいいんだから」

 

「簡単に言ってくれるなエリヤ。ま、そっちの方が燃え上がるってもんだけどな」

 

いつの間にか傍らに立つエリヤに言われ、やれやれといった表情を浮かべるヨウト。

その間にもコロナモンVSガンマモンのデジタルウォーズも白熱していた。

 

『てーいっ!』

 

『なんのっ!』

 

頭からダッシュしてきたガンマモンをコロナモンは角を掴んで受け止める。

暫しの間拮抗状態が続くが、ニヤリと笑ったコロナモンがガンマモンを持ち上げた。

 

『ふんぬっ!』

 

『おぉ!?』

 

『ぶっ飛べ!どーん!』

 

ガンマモンを持ち上げたままコロナモンは勢い良く投げ飛ばした。

先程のパルスモンとコテモンとの試合の時に似ているが、こちらはバックドロップの要領で後方へと投げている。

中へと投げ飛ばされたガンマモンを、コロナモンは勢いよくジャンプする。

 

 

「コロナモン、繰り出せ!」

 

『コロナックル!』

 

 

「ブレイクロー!」

 

『おりゃあああああ!』

 

 

コロナモンが繰り出した"コロナックル"と、ガンマモンの振りぬいた爪による攻撃"ブレイクロー"。

二体の繰り出した技がお互いにぶつかり合った。

暫しの拮抗しながらも、コロナモンとガンマモンは口元を笑みで浮かべていた。

 

そして再び両者はその拳を合間見えた。

 

 

~~~~

 

 

――――数日後、人間の世界(リアルワールド)の喫茶店・一番星。

デジタルワールド:コスモスから帰ってきたチームロムルスからの報告書を前日に提出されて、ジェイはそれを一言一句目を通している。

アルバイト店員であるミユキがテーブルに置かれたコーヒーに手をかけて啜ると、彼は一息ついた。

 

「コスモス大使館での地元のパンの試食会や、突発的な親善試合ねぇ。流石やることが違う」

 

「二人の旅模様どうだったんですか?」

 

「んー、詳しい事は機密保持のためにまだ言えないけど……相当楽しんだ事は確かかな」

 

ヨウトとエリヤの友達である彼女にそう言いながら、ジェイは備え付けられた写真に目を向けた。

そこには楽しそうに映るコロナモンとルナモンに加えてガンマモン・アンゴラモン・ジェリーモンをはじめとしたデジタルワールド:コスモスに住むデジモン達が集まった写真、突如現れたデジモン集団にビビるキヨシロウに笑うヒロとルリという滑稽な姿。

 

――――そして綺麗な花畑を背に花冠を被ったヨウトとエリヤの写真があった。

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