デジモンバトルユニバース -バディリンカーズ-   作:地水

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 なんかデジモン作品を書きたくなったので、ひさしぶりに投稿。

三部構成でもなく、本当に短編のちょっとした日常回をお送りします。


短編:何気もないとある日のデート

 人間たちが住む現実世界とデータ生命体"デジモン"が住む異世界『デジタルワールド』を繋ぐ(ゲート)が出来て早20年。

当世の子供たちをはじめとした人々がデジモンとパートナーとなり、共生関係となった新世代。

今では人間とデジモンが共に暮らすことが当たり前になった。

 

だがしかし、いつの時代も事件と災いは起きるもの。

 

人が、デジモンが、誰しもが心がある限り、争いは起きる。

だが悲しむことはない、争いによる不幸をよく思ってない者は必ずいる。

そしてその中には戦いを以て戦いを終わらせようと立ち上がる者がいた。

 

 

その名は、『バディリンカー』。

デジモンを相棒として絆を結び、戦いに赴く者たちをそう呼ぶ。

 

 

 

――だが。

そんなバディリンカー達もいつも無敵ではなく、普段は人の子だ。

これはそんなバディリンカー達の何気ない一幕である。

 

 

 

~~~~~

 

 

 都内にあるとある神社。

規模は決して大きくはないものの、日本古来より信仰されている神様・稲荷大明神を祀っている名を知れた神社があった。

名は『神薙神社(かんなぎじんじゃ)』、神が薙ぐという物騒な名前にも聞こえるその神社は、ご利益があるデジモンがいる理由で有名となっていた。

 

 

「いってきまーす!」

 

 

 

朝早くから出かけたのは和服をベースとした私服を身に纏った黒髪の少女・ミコト。

紺色の袴に淡く彩られた桜色に染まった着物を身に纏った矢絣袴姿の彼女は、陣羽織代わりにジャンパーを羽織り、黒の革ブーツで足取りを軽くしながら出かけて行った。

傍から見てお嬉しそうな様子の彼女の姿を、敷地内にて掃除をしていた同居人でもある紫色の妖狐型デジモン・ヨウコモンが静かに見送る。

 

 

パタパタと後ろに縛って纏めたポニーテールが揺れる中、彼女は待ち合わせの場所へと向かっていく。

道すがら運動中のランナーと共に走る毛皮と角の生やした成長期デジモン・サイケモンや、人間の消防士と共に準備を行うセーバードラモンとダークリザモンという消防隊の訓練風景、広場で遊ぶ幼年期デジモンを横目で見ながら、走る速度を速めていく。

一秒でも早く彼に会いたい……そう思いながら、ミコトは駆け出していく。

 

やがて駅を乗り継いで都内の渋谷・渋谷駅へと辿り着いたミコトは忠犬ハチ公像へと近寄っていく。

待ち合わせにしやすい目立つ場所であるそこには、一体のデジモンと一人の少年がいた。

 

「いいか、この忠犬ハチ公は銅像だ。本物の忠犬ハチ公は遠い所でご主人様と再会したんだよ」

 

『そうなの? ハチ、一人で寂しくしてないの?』

 

白い毛皮と桃色の垂れた耳の持つ犬型デジモン・ラブラモンを言い聞かせているように注意をしているのはミコトの会いたがっていた少年・クロトその人。

黒を基調とした現代の若者といういつもの私服である彼はラブラモンの目線を合わせてしゃがみながら、諭しているようだ。

 

「ハチ公はもう一人じゃない。だから一緒に居なくていいんだよお前は」

 

『そっか! ハチ公一人じゃないなら安心だ!』

 

クロトの言葉を聞いたラブラモンは納得した表情を浮かべてその場から離れていく。

何とか説得に成功したクロトは一息つくと、額に浮かべた汗を腕で拭うような仕草をした。

 

「やれやれ、ハチ公に憧れるデジモンっているもんだなぁ」

 

「クロト君!」

 

「ふぇ? ぐぉ!?」

 

後ろから声をかけられ、ふと振り向くと次の瞬間、少しの衝撃と柔らかい感触がクロトの体を襲った。

それがミコトに抱き着かれた事だと気づいたのはすぐだった。

胸元にのしかかっている豊かなお胸様の感触に少し困った表情を浮かべ、気を紛らわすために挨拶を行う。

 

「よ、よぉミコト。こんにちわ」

 

「ええ、こんにちわクロト君。ふふふっ」

 

「な、何か嬉しそうだな……何かいいことあったのか?」

 

「クロト君のいい所をまた見つけたんです。それが嬉しくて嬉しくて」

 

まるで大切な宝物を見つけたように嬉しそうに笑うミコト。

魅力的な弾力と漂ってくる女性特有の匂いにたじたじになりながらクロトは耳元で囁く。

 

「えっと、あの、その、まずは離れてくれませんか?」

 

「もうちょっとこうしていてください。ぎゅーっ」

 

「せめて人前ではやめてください。ミコトさん」

 

和服の美少女に抱きつかれ、どうすることもできないと困り果てるクロト。

こうなったら彼女の気が済むまでされるがままにさせるしかない。

どこからどうみても仲睦まじい男女の様子に通行人やデジモンたちは生暖かい目で見守っていた。

 

 

~~~~~

 

 

ミコトの熱い抱擁から解放された後、クロトは彼女と共に街中を歩いていた。

本当はクロトの片腕に抱きつかれようとしたのだか、先程の行いもあって流石に控えさせてもらった。

若干不満そうにしている彼女を横目に、クロトは溜息をついた。

 

「はぁ、そこまで不満そうにする必要はないだろう」

 

「むむっ……なんんですか、私が我儘な女性って思ってるんですか」

 

「そういうわけじゃない。むしろオレにはもったいないくらいとてもいい人だって思ってるよ」

 

「うぐぐっ、本心なのはわかってるつもりなんですが」

 

普段から思っている事を告げたクロトへ、ミコトは不服そうにこちらを睨みつける。

若干顏を赤くしているところを見ると決して心の底までは不満ではないと察することはできるが……どちらにしろ機嫌を直さなければ。

そう思ったクロトが何かないか周囲を見渡すと、そこにあったのはとあるデジモン達が開いていた出店。

相棒と思われる妙齢の女性の隣には二体のデジモン……炎の人型のデジモン・メラモンと雪だるまのような見た目のデジモン・ユキダルモンがいた。

メラモンは身体から噴き出る自らの炎を用いて鉄板で調理しており、それとは対照的にユキダルモンは自身の冷凍能力でアイスクリームを作っている。

それぞれの能力を活かして店を切り盛りしている光景を見て、何か惹かれるものがあったクロトはミコトの方へと向くと、通り過ぎようとする彼女の手を掴んだ。

急に掴まれた事によりミコトは顏を赤くしながら驚きの声を上げる。

 

「ひゅわっ!? く、クロト君!?」

 

「ミコト、あの店に食べに行こう」

 

意中の相手からの急な攻め(もっとも無意識なんだろう)に戸惑うミコトの手を引いてクロトはその出店へと向かっていく。

どうやらメラモンとユキダルモンのいるその出店はどうやらクレープ屋のようで、人の生み出した機械とは一味違った工夫で生み出されたクレープがちょっとした評判を呼んでいるらしい。

受付をやっている妙齢の女性の前までやってきた二人は注文の品を告げた。

 

「オレ、バニラ黒蜜クレープを一つ。ミコトは?」

 

「えっと、えっと、あっ、この抹茶アイスのものをお願いします」

 

2人が注文の品を告げた後、間もなくして二つのクレープが差し出された。

クロトの方には琥珀色に鈍く輝く黒砂糖の甘いソースがかけられた真っ白いバニラアイスが入ったクレープ。

ミコトの方には抹茶アイスをベースに生クリームと餡子を包んだ餡蜜を彷彿とさせるクレープ。

どちらも美味しそうな見た目と匂いが二人の食欲を刺激され、ゴクリと唸らせる。

 

「美味しそうだな」

 

「はい、とっても」

 

代金を払い終えたクロトとミコトは側に置かれたテーブル席へ向かいあうように座ると、早速口の運んで一口食べた。

黒蜜とバニラアイスの異なる甘い味、抹茶のほろ苦く甘い味、そしてふんわりやわらかいクレープ生地が口内に広がっていく。

嬉しそうに食べ勧める二人……特にミコトに関しては好みの味だったのか嬉しそうにパクついていた。

どうやら上機嫌になったようだ。そう思ったクロトは心の中で胸をなでおろした。

 

(どうやらいつものミコトに戻ったようだな。よかった)

 

「美味しい~……あっ、クロト君。この抹茶アイス入り美味しいですよ。食べませんか?」

 

「えっ、いいのか? 悪い気がするんだが」

 

「そうですか? 私は気にしてませんよ? あ、じゃあそれならその黒蜜のものを一口頂けませんか?」

 

ニコリと笑いかけてくるミコトを見て、クロトはやれやれといった表情で苦笑した。

二人は互いのクレープを食べさせあって、それぞれ味わったものを舌鼓する。

やがて、二人の持っていたクレープは綺麗に食べ終わった。

 

「ふぅ、美味しかった」

 

「美味しかったですね。皆にも教えたいくらいに美味しかったです」

 

「そうだな、また食べたいな」

 

「ああ、でもできるなら、またクロト君と二人で食べに行きたいですね」

 

「ん? ああ……」

 

クロトは眉を顰め、ミコトの方へと顔を向けた。

その瞬間、クロトの視界に映ったのは……間近に迫ったミコトの顔だった。

一瞬ギョッとするが、ミコトは自身の顔を寄せてクロトの口元……厳密にはクロトの口元に残っていたソースを舌で舐めとった。

 

「ッ!?」

 

「ふふっ、餡子の甘さもいいですが、黒蜜の甘さも乙なものですね」

 

「……ミコト、今のは誰かに勘違いされても文句は言えないぞ?」

 

「私は貴方へ一途だからいいんです」

 

顔を片手で覆いながら困惑するクロトの様子に対し、ミコトは花が咲いたような笑顔で答えた。

まるで動じないような彼女の態度に、クロトは何も言い返せずたじたじになるしかなかった。

 

 

『おいおい、一刀両断されちまったな。クロトのヤツ』

 

『言葉の刃はミコトの方が上だったというわけか』

 

 

微笑ましい二人の様子を相棒(バディ)であるデジモン達はデジバイスの中から愉快そうに覗いているのであった。

 

 

これは、彼らバディリンカー達の何気ない日常の一幕である。




 今回ちりばめたデジモンネタ、いくつ分かったかな?
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