チームイズモの忍者担当にスポットを当てました。
それと同時バディーリンカーズ世界にて渦巻く社会問題もここで描かせていただきます。
現代に生きる忍者、ここに開幕。
デジモン、通称『デジタルモンスター』。
それは異世界からやって来た未知の電脳生命体であり、生きたAIとも呼ばれている。
彼らは様々な姿形をしており、哺乳類から鳥類、果てには植物や無機物といったデジモンが存在する。
さらには成長することによって進化し、まったく別の姿へと変わっていく特殊な生態を持っている。
多岐にわたる種類は人間達、否、デジモン達自身ですら把握しきれているか怪しい。
そんなデジモン達は今、人間世界にて多大な影響を与えていた。
不思議な生態を持った奇妙な隣人として、共に生きるかけがえのない相棒として。
だが、忘れてはいけない。
彼らが強大な力を有している事を。それが社会すら揺るがす存在だという事を。
これは、その一面を見せた事件の一幕。
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神奈川県・横浜市の某港。漣の音だけが響く深夜の場所に蠢く影があった。
それは黒服姿の男達で、目元はサングラスが掛けられて表情が伺えない。
黒服の男達の前に立つのは、派手な柄を来たシャツを黒いジャケットに隠したボサボサの緑髪の男。
ニヤリと不気味な笑みを絶やさないその男は黒服の男達の前に大型のジェラルミンケースを差し出す。
「ほらよ、これが報酬だ。確認してくれ」
差し出されたジェラルミンケースを黒服の一人が受け取り、その中身を確認する。
そこには大量の札束が敷き詰められており、黒服の男がその札束の一つを取り出し、鼻で嗅ぐ仕草を行う。
「すぅぅぅ……、オーケー。本物だな」
「へっ、金の匂いを嗅いだだけで分かるたぁすげぇもんだ」
「お世辞はいい。こちらがお前の求めていたものだ」
男が口にしたお世辞を黒服の一人が冷たく吐き捨てると、控えていた別の男が小型のジェラルミンケースを取り出し、その中身を見せた。
――――ジェラルミンケースが開かれると、その中にあったのは三つのカード型アイテム。
アンドロモン、メガドラモン、メタルティラノモンがそれぞれ描かれたそのカード。
男はそれを見て口角をさらに三日月上に歪ませた。
「おーおー、注文通りのデジメモリア三種、確かに揃えたようだな」
「これを揃えるのにどれだけかかったか」
「じゃ、これで取引成立だな」
黒服の愚痴を軽く流し、男は自身の報酬の入ったジェラルミンケースを受け渡し、自身はカードの入ったそれを受け取ろうとする。
こうしてこの場にいる誰もが自分達の悪事が何事もなく終わる事を確信していた。
――だが、それを待ったをかけるように、ジェラルミンケースへ光る何かが飛来した。
「「「ッ!?」」」
「ああん、手裏剣だと?」
男が口に告げた通り、ジュラルミンケースに刺さったのは鈍色に光る十字の手裏剣。
それも先の形状が若干扇状に広がっているその手裏剣が飛んできて、ジュラルミンケースに突き刺さったのだ。
何故時代遅れのこんなものが? と男が思っているそばで黒服達は冷や汗をかきながら慌てていた。
黒服の異様な焦り様を見て男はただ事じゃないと悟り、そっと懐を忍ばせる。
その瞬間、バッと強烈な光が取引をしていた男達を照らし、叫ぶ声が聞こえた。
「
強烈な光を発する場所から現れたのは赤いジャケットを纏った若い青年――ジェイ。
ディーハンターの一任であるである彼は白を基調とした狙撃銃型の武器を構え、黒服達改め犯罪者集団に対して礼状を突き出した。
「極道組織の武威蛇組、デジメモリア違法取引の現行犯で検挙する!」
黒服達は目を見開いて驚き、歯を食いしばる勢いで苦い顔を浮かべた。
取引の応じていた男は特に慌てる様子もなく冷静に周囲を一瞥すると、黒服へ話した。
「おいおい、どういうこった? なんで気付かれてやがるんだ? ああ?」
「馬鹿な、偽装工作は
自分達が仕掛けた偽装工作……それもデジモンを用いたハッキングによるものだ。普通の警察ですら気づけないはずの誤差を誰が気づけるものか。
そう高を括っていたはずなのに、実際は最悪の形で文字通り明るみに出てしまった。
一体誰が、誰が、自分達の悪事を白日の下に曝け出したのか。
動揺している黒服達は再びジェラルミンケースに刺さった手裏剣が視界に入り、見開いて驚きの声を上げた。
「ま、まさかぁぁぁ……!?」
「そう、忍者だよ」
不意に黒服達の耳に聞こえてきたのは、年若い少年の声。
よく見れば、自分達の前へ音もなく落ちてきたのはジャケットを身に纏った1人の人物。
背格好からして高校生くらいの身丈だが、その素顔はその目元以外はジャケットのフードとマスクによる被りものによって隠れていた。
だが、その目に宿した刃のような光が黒服達を射抜き、背筋を凍らせた。
現代に生きる影に潜む者達、その名は『忍者』。
古来より人に隠れて忍び、暗躍してきた彼らは未来にて生き続けていた。
裏社会に生きる者達にとって恐れるべき存在である忍者の登場に黒服達は悲鳴すら出せずにいた。
「「「……!!」」」
蛇に睨まれたカエルの如く、身動きができなくなる黒服達。
そんな彼らを見かねて、取引に応じていた男は舌打ちをしながら、懐から拳銃を取り出して引き金を引いた。
ドォン、と銃声が鳴り響き、我に返った黒服達は男の方を見る。
「テメェら何怯えてんだ! 忍者だろうがハンターだろうが応戦しなけりゃ全員しょっ引かれんぞ!」
「く、くそぉ! してやっぞゴラァァァ!!」
「「「スッゾゴラァァァ!!」」」
勢いを取り戻した黒服達はそれぞれ拳銃や携帯しているデジモンを呼び出して襲い掛かってくる。
ゴリモン、ミノタルモン、バブンガモンといった成熟期相当のデジモン達が攻撃をディーハンターへと迫ってくる。
ジェイはすかさず横腰部に備え付けたカードホルダーを開き、そこから取り出したデジメモリアを銃型武器に備え付けられた装填口へと挿入した。
「シャウトモン!」
【BULLET THE DEGIMON】
ジェイは狙撃銃型武器"ディーライフル"を構え、迫るゴリモン達へと狙いを定めて引き金を引いた。
放たれる直前、マイクスタンドを持った赤い竜の小型デジモン・シャウトモンの
シャウトモンの必殺技・ソウルクラッシャーを内包した弾丸は黒服達のデジモンへと直撃し、多大なダメージを与えた。
『『『グワーーーッ!?』』』
「今だ、ミネルヴァモン」
『りょーかいっ! てりゃああ!』
既に呼び出されていたミネルヴァモンが走り出し、手に持っている大剣・オリンピアによる一閃を動きを止めたゴリモン達へと叩き込む。
食らった斬撃に耐えかねて黒服達のデジモン達は倒れ伏す。
自慢のデジモン達が倒され、黒服達は拳銃を引き抜いて応戦を図ろうとする……だがそこへ、何処からか飛んできた羽根のような手裏剣が拳銃を黒服達の手から撃ち落とした。
「「「なっ!?」」」
『そうはさせん!』
上空を見上げれば、そこに飛んでいたのは梟にも似た黒と紫のデジモン。
手裏剣を放った本人であるファルコモンはさらなる羽根手裏剣・手裏裏剣(しゅりりんけん)を黒服達に向かっていくつもの放った。
黒服達は成すすべなく手裏剣によって地面に縫い合わされ、磔に遭ってしまう。
「「「アバーーーーーッ!?」」」
『極道モノは捕縛した……だが、取引していたあの男は一体どこ行った?』
疾風迅雷の如く黒服の男達を捕縛したファルコモンだったが、奴らと取引していた男は周囲を見回した。
だが磔にした武威蛇組の構成員以外他に姿はなかった。よく見れば取引に出していた二つのジェラルミンケースが現場の何処にもなかった。
もしや持ち去られたのか? そう思ったファルコモンは現場をディーハンター達に任せて後にした。
一方その頃、港のはずれにある貨物コンテナ群。
そこへ身を潜めている男……あの時、武威蛇組の黒服達と取引をしていた相手がいた。
男は先程逃げ走って息切れした体を整えるように胸を上下に動かしていた。黒服達が暴れているどさくさに紛れて自分は目当てのものを掻っ攫って逃げてきたのだ。
「まったく、どういうこった? 忍者? はっ、忍者ねえ……なんで古臭い存在が今もいるんだよ。漫画かアニメの見過ぎなんじゃねえのか?」
「それがいるんだよなぁ。もっとも御伽噺の存在でいた方が何かと都合がいいってことで俺達はそうしているんだがな」
「あっ!?」
男が声のした方向へ見上げると、向かい側の貨物コンテナにいたのは先程の少年忍者。
どうやらどさくさに紛れて逃げてきた自分を追いかけてきたようで、刃のように鋭い視線がこちらを射抜いていた。
あの極道モノもビビるような形なき刃の冷ややかな感触に実感しながら、男は小さなジェラルミンケースを持ってる腕を上げた。
「おいおい、俺は買い手であっちは
「あのデジメモリアは強奪や恐喝で奪われた代物だ。ディーハンターに渡して然るべき処遇で元の場所へ返してもらう」
「チッ、頭がお固いこって……お前らのような奴らがいるからこっちはじり貧なんだよ!」
そう言いながら、男は手に持った拳銃を構えて銃弾を撃った。
放たれた銃弾はまっすぐ忍者へと向かうが、……隠し持っていたクナイで受け止め、そのまま一回転。
受け流して返した銃弾が男へと真っ直ぐ向かい、持っていた拳銃とジェラルミンケースを続けざまにはじき落とした。
「んなあっ!?」
「フンッ」
「おいおい、そりゃなんでもチートだろ……そりゃ極道モンもビビるわけだわ」
目の前で見せられた忍の絶技に驚き、へらへらと笑った顔を浮かべる。
拳銃も失った今、追い詰められている状態でこのままでは捕まる寸前だ。それにも関わらず男は口元を歪ませてニヤリと不敵に笑った。
「だが、お前忘れちゃねえよな? ……何もデジモンを持ってるのは、ディーハンター共だけじゃないってことだよ!」
男が叫んだ瞬間、どこからか放たれた巨大な鉤爪が忍者のいたコンテナに突き刺さる。
幸いにも直撃は避けられたが突き刺さった衝撃による余波で空中へと投げ出されてしまう。
「ぐぅ!?」
『主!!』
「ッ! ファルコモン!」
自分を叫ぶ声が聞こえた瞬間、片腕を上へ突き出す。
すると誰かの鋭い爪がついた足……もとい、ファルコモンの脚をつかんだ。
相棒であるファルコモンによって助け出された忍者は、自分を襲い掛かった鉤爪の正体を見た。
――そこにいたのは、半身機械化した恐竜のようなデジモンであった。
青い恐竜のような体に機械化した部分が目立ち、左腕には先程貨物コンテナを貫いたであろう鋼鉄の鉤爪・トライデントアーム。
背中から羽に青い翼が三本の銀色の頭部というその姿のデジモンを見て、忍者は驚きの声を上げた。
「メタルグレイモン、だと!?」
『グルルルルル……!』
男が呼び出したであろう完全体デジモン・『メタルグレイモン(ウィルス)』は咆哮を上げながら警戒していた。
青いメタルグレイモンと形容すべきそのデジモンの肩に男が乗ると、忍者に向かってニヤリと笑う。
「ここまで俺を苔にしてくれた事に褒めてやる……俺の名前は射場。覚えておけよ、忍者」
その目に野望のような燃える瞳を向けながら、取引相手の男――『射場』は不敵な笑みを浮かべた。
忍者の向ける敵対心の籠った目を受けながら、射場はメタルグレイモンに指示して、この場から去った。
メタルグレイモンの巨体が闇夜の中に消えた後、ディーハンター所属のデジモン達……ピピスモンやフライビーモンといった飛行デジモンが追跡者として追いかけいく。
射場と名乗った男の行方は彼らに任せる事にすると、忍者の少年はファルコモンに頼んで地面へと着地した。
「ふぅ、どうやら逃がしてしまったようだな」
『どうする主、我々も追いかけるか?』
「いや……ココはディーハンターの彼らに任せよう。アイツは何かを起こしてくるつもりだ。そのために俺達なりの別の手段で追おう」
ファルコモンの提案を聞いて首を振った忍者は顏を覆っていたものを外し、その素顔を晒す。
幼げが残った顔に焦げた茶髪に濃い青い瞳を持った少年……加藤ダンは、遠くに消えた謎の犯罪者の姿の方へ見ている。
本来の目的である犯罪者集団の検挙はできた。あとは事後処理の打ち合わせとしてジェイと合流するだけだ。
そう思いながら、ダンはデジヴァイスリンクスを見る。そこには既に深夜1時の時間を終わりを越えようとしていた。
「あっ……もうこんな時間か」
『これは朝帰りかもな』
「うへぇ……慣れてはいるけど、睡眠不足は簡便だなぁ」
時刻は既に午前2時を回ろうとしている頃、普通の同い年の少年少女は今頃眠っている頃だと思ったダン
彼は肩を落としながらファルコモンと共にコンテナ置き場を後にした。
彼の名前は加藤ダン。
相棒のファルコモンと共に、チームイズモに所属するバディーリンカー。
しかしてその正体は、現代に生きる忍……その末裔である。