建物内に響き渡る轟音。
突如ディーキョウヒルズに襲い掛かる異変に社長宅にいたダンとジェイの二人はもちろん、ミオリは驚きを隠せない様子だった。
「なにこの振動!? まさか、これが襲撃!?」
まさか自分の住むこの場所が襲撃されるとは思ってもみなかった驚愕するミオリ。
だがその異変が自分たちへ危害が及ぶものだと悟ったのは彼女の相棒であるヴァンデモンが庇う仕草をする。
『ミオリ、今すぐ仕度をして逃げるぞ。この気配、尋常ではない』
ヴァンデモンは自ら繰り出した分身である使い魔を駆使して、貴重品を手持ちバックへ集めて準備をする。
意外な一面を横目にしながらダンとジェイはすぐさま部屋の窓際まで近づくと、外部の様子を見る。
するとそこに広がっていた光景は一体の巨大なデジモンたちだった。
銀色の機械の鉤爪と半身サイボーグ化された青い体を有する特徴を目にして、ダンはすぐさまそのデジモンの名前を叫んだ。
「メタルグレイモン!?」
窓越しの上空を飛びながら襲撃しているのはサイボーグのデジモン……ウィルス種のメタルグレイモン。
自身の体に内蔵された重火器を駆使して、ディーキョウヒルズを攻撃をしていた。
今はなんとかディーキョウヒルズの建物は最新鋭の防壁技術によって、被害は最小限に済んでいるがそれでもいつ破られてもおかしくない。
最悪の被害が考えをよぎったジェイはダンへ向かって叫ぶ。
「ダン、準備しろ!」
「了解!」
ダンとジェイはそれぞれのデジヴァイスリンクスを構えると、窓越しにデジタルゲートが出現。
そこからバディデジモンであるファルコモンとミネルヴァモンが出てきて、映画の戦闘機さながらの出撃をしながら大空へ舞い上がる。
ともに出てきたミネルヴァモンを掴み上げる形で空中を移動しながら、メタルグレイモンの上空へと辿り着くと先に仕掛けたのはミネルヴァモンだった。
『ありがとうファルコモン、じゃあ早速行ってくるわ!』
『わかった、ハッ!』
彼女の合図と共にファルコモンがミネルヴァモンの掴んでいた足を手放す。
ミネルヴァモンは大剣オリンピアを構え、メタルグレイモン目掛けてその刃をもって叩き切ろうとした。
『とりゃあああ!』
『グッ…!?』
ミネルヴァモンの繰り出した斬撃を受けて一瞬怯んだメタルグレイモン。
だがすぐに態勢を立て直すと、振り払わんと機械化した右腕・トライデントアームを振り回して追い払おうとする。
メタルグレイモンの装甲にへばりついて何とか落ちないように踏ん張るミネルヴァモンを見て、ファルコモンはダンに視線を向けて叫ぶ。
『ダン!』
「ああ、進化だ!」
ファルコモンの呼びかけに答えるように、ダンは自身のデジヴァイスリンクスを再び構えて意識を集中させる。
やがてデジヴァイスリンクスから光が放たれ、同時に電子音声が鳴り響く。
【HYPER EVOLUTION UP】
『ファルコモン、ワープ進化!』
ファルコモンの姿は進化の光に包まれて、その姿を別の巨大な鳥へと変化していく。
漆黒の体、一対の金剛杵に似た武器がついた両翼、鋭いかぎ爪をもつ三本の足、金色の武具を宿した頭部。
かの日本神話に伝わる"八咫烏"を彷彿とさせる姿に変わり、巨大な鳥のデジモンへと進化を終えたそれは自身の名前を高らかに名乗り上げる。
『エボルアップ、ヤタガラモン!』
成長期であるファルコモンが成熟期を超えて進化した完全体デジモン・ヤタガラモン。
彼はその大きな翼を羽ばたかせると、メタルグレイモンへ狙いを定めて襲い掛かった。
一方でメタルグレイモンはしがみついて妨害するミネルヴァモンを振り払わんと、自分自身のの体を振り回す。巨体から放たれるすさまじい遠心力がかかり、小柄なミネルヴァモンは振り払われようとしていた。
『ぐぬぬぬぬ~……やばっ、手放しそう……きゃあ!?』
メタルグレイモンから引きはがされてしまったミネルヴァモンは、そのまま空中へと投げ出される。
このままでは高所からの地面へ叩きつけられて負傷するか、空中に投げ出されている所を追撃されるか……。その考えがよぎった瞬間、メタルグレイモンの右腕・トライデントアームがジェット噴射しながら発射。
鋭い鉤爪の先端が逃げ場のないミネルヴァモンへ狙いを定めて飛んでいき、そして貫こうと……。
『ミネルヴァモン、乗れ!』
トライデントアームが直撃する直前、ヤタガラモンが飛来してミネルヴァモンを回収。
ミネルヴァモンを背に乗せながらヤタガラモンはメタルグレイモンとの空中決戦に挑み始める。
高い飛行能力を駆使したスピードを駆使して迫るヤタガラモンと、背後に回り込まれないように内蔵の重火器を駆使して牽制するメタルグレイモン。互いに距離を取って高速飛行を繰り広げている様子をリンカーであるダンとジェイ達は注意深く観察していた。
そして【あること】に気づいたダンはジェイに向かって口にした。
「ジェイさん、気づきましたか」
「ああ、そうだな……」
ダンの言葉を短く返答すると、ジェイは手元のデジヴァイスリンクスを軽く操作。
その瞬間、目の前にディーライフルが出現し、当たり前の様子も見せず掴む。
ディーハンター本部から転送されたディーライフルを構えると、その銃口を部屋の出入り口がある扉へ向けた。
唐突の出来事にミオリは眼を見開いて驚いた。
「ちょっ、いったい何を……」
ミオリが一言文句を口にしようとした瞬間、ジェイはデジヴァイスリンクスをディーライフルにセットして、すかさずデジメモリアを装填。その効果を発動するべく引き金を引いた
「ティアルドモン!」
【BULLET THE DEGIMON】
ディーライフルの銃口から光の弾丸が飛び出て、分厚い装甲に覆われた青いデジモン・ティアルドモンの幻影が出現。高い防御能力を誇るそのデジモンは氷のバリアを展開していく。
ひやりと冷たい空気がダン達やミオリに襲い掛かった後、次に目にしたのは……部屋の外から響き渡る爆発音と閃光。
予め貼られたバリアによって何とか防がれ、爆発の熱気が冷気とぶつかり合って中和される。
まるで蒸気のように水蒸気が視界を覆う中、そこへ駆け抜ける誰かがいた。
ダンは咄嗟に床を蹴って、何者かの進路上へ立ちふさがろうとするが……接敵する直前、電子音声が聞こえてきた。
【SUMMON THE DEGIMON】
「なっ!?」
ダンは突如出現したものに驚き、咄嗟に回避行動をとった。
なぜならそこに姿を現したのは、……片腕のビームソードを展開したデジモンの幻影だったからだ。
デジメモリアによる召喚体デジモンである暗黒竜型デジモン・メガドラモンはダンが先ほどまでいた場所ごと本棚を一閃。
部屋全体にばらまかれた本の残骸の中から一枚のデジメモリアが羽毛のごとく舞い落ちる。
ダンを始末しようとした何者かがそのデジメモリアを掴むと、不気味な笑みを向けて口を開く。
「メタルマメモンのデジメモリア、確かに手に入れたぜ」
視界を覆っていた水蒸気が晴れると、そこにいたのはメタルマメモンのデジメモリアを手にした射場だった。
彼はしたり顔で目的の物であるメタルマメモンのデジメモリアを入手し、その光景を見たジェイはディーライフルの銃口を向けて険しい言動で訊ねる。
「射場、お前一体何を企んでいる!?」
ジェイはいつでも銃撃ができるように引き金に指をかけ、射場の動向を伺う。
それに対して射場は余裕綽々な様子を絶やさずに説明を語っていく。
「次世代の火付け役、とでも言っておこう。何せぶっつけ本番だかなぁ」
「火付け役だと?」
「デジメモリア。この世に多くいるデジタルモンスター達の戦闘データといった記録や思い出といった記憶が結晶化した文字通りのレアカード。ある特定のバディリンカー達にしか手に入れてないモンだが……今からコイツは
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる射場を見て、その場にいたダン達一同は眉を潜ませる。
窓越しの大空ではヤタガラモンとミネルヴァモンによってメタルグレイモンは追い詰められている光景が広がっているというのにも関わらず、だ。
ミネルヴァモンはヤタガラモンの背に乗って卓越した剣術でメタルグレイモンの攻撃を叩き落していく。
そして同じ完全体という事も加えて高い機動力を有した空中戦を披露するヤタガラモンはメタルグレイモンの重火器による一斉掃射を躱し、必殺の一手を繰り出す。
『甕布都神!』
両翼の独鈷杵から発生させたエネルギーを前足から放つヤタガラモンの必殺の一撃・甕布都神《ミカフツノカミ》。
メタルグレイモンのトライデントアームに直撃し、クロンデジゾイド製の機械腕を0と1のへと化して破壊していく。
自慢の片腕を無くし、肘から先から無くした所から火花と電撃が走る。勢いを落としていくメタルグレイモン……だが、絶望的な状況にも関わらず、射場は笑う。
「よくやったぜ、もう用はねえ!」
目を見開きながら射場はメタルマメモンを加えた四枚のデジメモリアを構える。
メタルマメモン、アンドロモン、メガドラモン、メタルティラノモンの四枚のデジメモリアはまるで呼応するかのように輝き始める。
一体何をする気なんだと思ったダンは射場が動く前に身柄を拘束しようと、床を蹴って跳躍して飛び掛かった。
ダンが射場の身体へと触れようとした瞬間、……何かに気づいたヴァンデモンが叫んだ。
『離れろ!』
ヴァンデモンの制止の声を聞いて、ダンは身体を回転させて咄嗟に翻す。
次の瞬間、――分厚い窓ガラスをぶち破って、メタルグレイモンの頭部が出現。
間一髪、直撃を免れたダンはミオリとヴァンデモンの隣に降り立ち、周囲の状況を見て再確認する。
どうやら、ヤタガラモン達と戦っていたメタルグレイモンが標的を変えて自分達のいるディーキョウヒルズの社長宅へと突っ込んできたようだ。
主である射場を回収したメタルグレイモンは再び大空へ飛び立つと、再びヤタガラモンへと向き直る。
相手は二体、こちらは一体に加え自慢の武器の一つを失っている……だが、男は目を見開き、そしてデジヴァイスリンクスを構えながら叫んだ。
「気合入れろ、A-4……仕上げだ、見せてやれ」
『グォォォォォォォッ!!』
射場が"A-4"という謎の単語を口にした途端、メタルグレイモンは大きな咆哮を上げる。
胸部のハッチが開かれ、そこから燃え盛る業火が覗き、間髪入れず火炎放射として発射される。
メタルグレイモンが繰り出した超高熱の一撃・リベンジフレイム……その狙いはディーキョウヒルズ。社内宅ごと自分達を燃やし尽くすする気なのか、とダンは度肝を抜かした。
文字通りの絶体絶命の大ピンチ。
「――ふざけんじゃないわよ!!」
――だがその状況を打破せんと、一つの人影が駆け抜ける。
咄嗟に飛び出したミオリは先程の破壊された本棚の残骸の中からマメモン系のデジメモリアを掴むと、咄嗟にその効果を発動した。
「アタシの居場所は、アタシが守るっての!!」
【SUMMON THE DEGIMON】
電信音声と共に出現したのは1体のマメモンの近縁種と呼ばれる幻影。
呼び出された『トノサママメモン』は幻影は手に持った扇子でメタルグレイモンのリベンジフレイムを受け止める。
トノサママメモンの持つ扇子・返し扇子は相手の攻撃を跳ね返す事ができを持っており、それによって何とか一同を焼き尽くさんとする炎から紙一重で守られていた。
「す、凄い……」
逃げ場のない絶望的な状況へ打ち出した一手がまさかミオリが集めていたデジメモリアとは……心底驚いているダンは、自分も何とかこの状況を打開せねばと懐からあるデジメモリアを取り出し、すぐさま効果を発揮させる。
【SUMMON THE DEGIMON】
デジヴァイスリンクスの電子音声と共に出現するのは、恐竜のような見た目を有するデジモン。
恐竜型の成熟期デジモン『ジオグレイモン』の幻影はヤタガラモンの身体に炎として纏まっていく。日輪のように輝く炎を纏った姿になると、ヤタガラモンはそのまま突撃を仕掛けていく。
『――
瞬間、ヤタガラモンは黄金の炎が照らす刃となって、メタルグレイモンの身体を貫通。
デジメモリアによる強化された一撃はメタルグレイモンへと容赦なく炸裂した。
身体強化されたサイボーグの身体ですら耐え切れなかったようで、その巨体をぐらりと傾かせて落ちてゆく。バディデジモンに乗っていた射場も空中へと投げ出され、引力に引かれて落ちようとしていた。
だが、射場の投げ出されたその手を誰かが掴む。
射場が上を見上げると、そこには空中に浮かぶヴァンデモンに抱えられたジェイの姿があった。
「射場クランディウス、デジモン犯罪現行犯で捕縛する」
「ハッ、天才少年のジェイ・コードウェル……お前、気付いてるだろう?」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる射場に対し、ジェイは眉を顰める。
実際の所、ジェイは薄々気付いていた。
射場の狙った4枚のデジメモリアの共通点……それは、彼のバディデジモンであるメタルグレイモンをその中に加えると、答えは自ずと見えてきた。
その証拠に、本部から出動前にてエヴァにデジモンのデータベースで調べてもらい、調査結果を見て確信したのだ。
――ジェイ、アナタの言う通りだった。射場が狙ったデジメモリアには一つの共通点がある
――メタルマメモン、メタルティラノモン、アンドロモン、メガドラモン、そしてメタルグレイモン
――過去のデータの中に見つけた。この5体は【とあるデジモン】の素材データとして活用された事があるの
エヴァの調査報告を聞いて、嫌な予感はしていた。
何故ならその【とあるデジモン】は、過去に人間世界に出現したヴァンデモンと同等、もしくはそれ以上に俺達の世界にとって危険な存在だからだ。
自分の考えている事を見透かしているように、射場は話を続ける。
「ままならないもんだなぁ……効率的な究極体到達のアプローチとしてはよぉ」
「貴様、あのデジモンを……!?」
「おうとも、この世界にとっては最高の兵器さ。理想的って言うのはこういうことを言うんだな」
「そうか……だがもう終わりだ。お前の野望は既に阻止した」
依然余裕な射場に対し冷静な口調で諭すジェイ。
だがそこでジェイは気付いた……射場の手に持っていたデジメモリアの姿がない。
そこに差し込まれるのは射場の笑い声だった。
「気付いたか?もう組み込んであるよ、A-4になぁ」
その直後であった、墜落しようとしていたメタルグレイモンが銀色の光に包まれていたのは。
まさか既に何らかの小細工を、そう思ったジェイが驚いていると、射場は大声で叫ぶ。
「じゃあな、ディーハンター共にシノビボーイ……縁があったら、また会おうぜ!」
その言葉と共に、射場は掴まれた腕を無理やり振りほどくと、そのまま銀色の光へ向かっていく。
銀色の光は一瞬、巨大な砲台を有した怪獣のような影をさらし出した後、何処かへと去っていく。
残されたのは破壊の跡が残るディーキョウヒルズの姿だった。
~~~~
数時間後、時刻は夕闇が支配する逢魔が時。
ディーキョウヒルズによる襲撃事件はニュースの的になり、当然ディーハンターをはじめとした公的機関が出張る事となった。
事情徴収を軽く終えて一息つくミオリの元へ、ダンが声をかけた。
「お疲れ様です。赤峰さん」
「ふん、まったくよ。せっかくの社宅がなくなっちゃったし、もう散々よ」
「でも、凄かったです。まさか助けられるとは」
えへへと笑いかける弾を見て、ミオリの方も笑みを向けて言葉を紡ぐ。
それは出会ったときの険しい表情とは違う、若い彼女の年相応の笑顔だった。
「ははっ、感謝しなさいよ。これでもやるときはやるんだから。私」
「肝に銘じておきます」
「そうだ。もしあの犯罪者とまた巡り合ったときは一発ガツンっとかましておいてね、頼んだわよ」
「ええ、そうさせてもらいます。じゃあこれで」
握り拳をつくって腕を振るうミオリの姿に苦笑いしながらダンは一瞥すると、背を向けて彼女の元から去っていく。
彼女はこれからもデジモンと人間の共存の架け橋として頑張っていくだろう。
そんな彼女達を含めた何気ない日常の世界を守り抜くため、ダンは
男の名前は加藤ダン。
現代に生きる忍者の一人であり、チームイズモに所属するバディリンカーである。