何気に新キャラ登場します。
人間たちが住む現実世界とデータ生命体"デジモン"が住む異世界『デジタルワールド』を繋ぐ
当世の子供たちをはじめとした人々がデジモンとパートナーとなり、共生関係となった新世代。
今では人間とデジモンが共に暮らすことが当たり前になった。
だがしかし、いつの時代も事件と災いは起きるもの。
人が、デジモンが、誰しもが心がある限り、争いは起きる。
だが悲しむことはない、争いによる不幸をよく思ってない者は必ずいる。
そしてその中には戦いを以て戦いを終わらせようと立ち上がる者がいた。
その名は、『バディリンカー』。
デジモンを相棒として絆を結び、戦いに赴く者たちをそう呼ぶ。
――だが。
そんなバディリンカー達もいつも無敵ではなく、普段は人の子だ。
これはそんなバディリンカー達の何気ない一幕である。
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東京・とあるひと際高いビルの屋上。
Dハンターからの依頼を終えた現代の忍者少年・加藤ダンは一息ついていた。
片手には何処かで買ったのであろう熱い緑茶の飲料缶を口にしつつ、ポツリと呟いた。
「はぁ……染みるなぁ」
本来なら一般人ですら入れなさそうな一番の高所にて足を踏み入れてお茶を一服するダン。
自身が忍者という特殊な出生と生業を得ているからこそ見られる景色の一つだと思いながら、眼下に広がる人々が行きかう光景を見ていた。
ダンのその傍らでは相棒であるファルコモンも同じお茶の飲料缶を口にしながら、まったりと過ごしていた。
『主、これからどうする? 手暇になった上に、そろそろ飯時ですぞ』
「そうだなぁ、一番星にて飯でもいくか?」
『いいですぞそれは。自分は久方ぶりに一番星のナポリタンやオムそばが食べたい』
飲料缶の緑茶を飲み干しつつ、次なる目的地は何処へ向かおうか決めようとしているダンとファルコモン。
吹き荒ぶ冷たい風がダンの頬に触れてその素肌を冷やしていると……。
不意に、自分にとって見知った声が聞こえてきた。
「そりゃ、冷たい風が吹きすさぶビルの屋上で飲むお茶って美味しいよねぇ。私もよくやるからわかるよ」
ハツラツとしたその元気そうな若い女性の声を耳にしたその時だった。ダンが何者かによって不意に抱き着かれたのは。
忍者であるはずの自分がいともたやすく誰かに捕まえるなんてダンは驚くが、そんな自分を優しく声をかける。
「えへへー、捕まえたー」
ダンを捕まえたのは、活発そうな見た目の一人の女性だった。
焦げ茶の長髪をポニーテールに纏め上げ、元気いっぱいな愛らしい笑顔を向ける。
スカジャンを羽織り、ジーンズのズボンを履いている。
自分より少し年上の大人びた女性の顔を見て、思わずその名前を叫ぶ。
「あ、アズサさん!?」
ダンに名前を呼ばれ、その女性……『海天アズサ』はニコリと笑った。
彼女は嬉しそうな表情を浮かべて、身を寄せながらダンを抱きしめる、
「ふふーん、ダン君。もしかしてお仕事帰りだった?」
「あ、あのアズサさん! 近いです近いです! でかい、でかい雪見大福が!」
「んんー、聞こえないなぁ。ぎゅーっ!」
女性特有の柔らかさをその身をもって味わいながら抱きつかれているダンは焦って声を荒げていく。
だが相手が親密な関係……なのかはダン自身には自信がないが、それでも親しい相手であるアズサを無理矢理振り払うことはできなかった。
そんな人懐っこいアズサにたじたじになるダン……そんな光景を繰り広げている横では、ファルコモンは"もう一人の同行者"に挨拶の言葉を投げかけていた。
『また出会ったようだな。ダメモン』
『こちらこそまた出会えて嬉しいでござるヨ、ファルコモン』
ファルコモンの前に立つのは、金色を基調とした蜷局の機械に手足がついたような姿をした一匹のデジモン。
そのデジモン……『ダメモン』は妙な語尾を口にしながら、ファルコモンと握手を交わす。
まるで戦友のように言葉を交わすとファルコモンは世間話に話を移した。
『最近はどうだ? 知っている通りだとアズサ殿も忍者なのだろう』
『その通り、腕も立つ忍者として忙しい限りでござるよ! はっはっはっは!』
ダメモンは軽快そうに笑いながら、ファルコモンに向けて大げさなジェスチャーをした。
まるで人々を笑かす道化師のようにケラケラと笑ってはいるが、ファルコモンは達観した目で見てみる。
こう見えて侮れない相手だと、共に行動していた身として知っているのだ。
尊敬と畏怖の抱いた相手でもあるダメモンはとある話題を出す。
『ところで、ファルコモン達は今暇なのでござるカ?』
『一仕事終えて昼食を食べに行くところだが……』
『Oh、だったらダンとアズサの二人と一緒にどうでござるヨ!』
ダメモンが提案してきたのは、食事の誘い。
ファルコモンが感心し、その提案に頷いて答えた。
……その隣で繰り広げられる、アズサのダンが弄ばれる様子をスルーしつつ。
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東京・浅草
少なくとも江戸時代からあった古き良き町並みが広がっている
この場所には人間だけではなく、デジモンの観光客の姿もあった。
……そんな多くの観光客らが集まる雷門前にはダンとアズサの姿があった。
「やってまいりました! 浅草!」
元気はつらつとした声を上げながら、雷門前で目を輝かせているアズサ。
はしゃぐ様子の彼女の両腕の中にはダンが収められており、気恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
「アズサさん、オレ子供じゃないですよ」
「ふふーん、よーく知ってるよー」
「うぐぐ……」
ダンの抗議の言葉もアズサの人懐っこい笑顔に絆されて何も言えなくなる。
……自分で言うのもなんだが、この人の笑顔はどうしても敵わないと思ってしまう。
後頭部にふにふにと柔らかい感触を感じながら、ダンはされるがままにアズサと共に浅草内部へ向かっていく。
「せめて、隣で立たせてください」
「えへへー、しょうがないなぁダン君はぁ」
にんまり顔になりながら、アズサは一旦ダンを解放すると、するりとした動きでダンの片手の指を自身の指で絡めとる。
積極的な様子の彼女に抵抗するのはあきらめたダンはそのまま握り返す。
俗に言う恋人繋ぎをしながら、ダンとアズサの二人は雷門を通っていった。
雷門をくぐると、そこに広がるのは仲見世商店街の街並み
そこでは様々な料理の店や土産物屋といったお店が商売繫盛しながら商いをしている様子が伺えた。
ソースがかかったタコ焼きを薄い煎餅を挟んだ物・たこせんべい、新鮮な鶏肉を用いて火を通した定番の串焼き・やきとり、生クリームの上に抹茶粉末のかかった和クレープ。
他にも様々な料理やスイーツが人間とデジモン相手に作られて、売られていた。
美味しそうに食べる観光客らを見て、ダンはアズサに対してポツリと呟く。
「なんかめぼしいものでもありますか?」
「うーん、そうだねダン君……あ、あれなんかいいじゃないかな?」
アズサの指差す方向には、とある団子屋が立っていた。
よく見ればイチゴと団子を組み合わせた串が売られている様子が見受けられていた。
因みに団子屋の店員は巨大な刀剣を有した竜人型のデジモン・ディノヒューモンであり、イチゴを乗せた串団子を売るその光景を見て、アズサは何かがひらめいたかのような笑みを浮かべる。
「ダン君ダン君、アレ食べましょうよ!」
「団子か……うん、オレも好きですよ。食べましょう」
好みの店を見つけられて嬉しそうにはしゃぐアズサと、意外と件の串団子の出来を見ているダン。
二人は早速列に並び、数分の時を得て、ディノヒューモン自身から受け渡してきたイチゴの串団子をうけとるのであった。
『はい、おまちどう』
ディノヒューモンから差し出された串団子には餡子の上に赤いイチゴが乗せられており、まるで宝石のように輝いている。
美味しそうな見た目でこの時点で視覚を楽しませるそのイチゴの串団子を早速ダンとアズサの二人はあり付いた。
味は言わずもがな美味い。
こしあん気味の餡子がついた団子とイチゴの二つの甘酸っぱさが口内に広がる。
一緒に嚙み締めればイチゴの果汁が溢れ出し、その果汁が団子の肉厚さと合わさってさらなる触感を生み出す。
……と、このイチゴの団子を食していたダンとアズサは笑顔を浮かべていた。
「美味しいですね、この団子」
「うーん! 団子とイチゴのマリアージュ、舌の中で嬉しさ満開だよー! もうこれ、浅草さまさまー!!」
静かに感想を述べて舌鼓するダンと、はしゃぐ様子を見せるアズサ。
二人のイチゴの団子の食べた感想をそれぞれ述べているその横で、同行していたファルコモンとダメモンは彼らとは別に買ったであろう、串刺しにされたイチゴを飴でコーティングされたイチゴ飴を食べていた。
『うーむ、流石は浅草。古いものから新しいものまで古今揃っているとは』
『そーでござるネ。ここ浅草はデジモンも赴くほどの人気観光名所だからネ』
ファルコモンとダメモンの二体はイチゴ飴を食しつつ、浅草の町並を一瞥する。
仲見世商店街の店には人間だけではなくデジモン達の姿があり、先程のディノヒューモンのように店員として働いていた。
古き良き町・この浅草でもデジモンという変化を受け入れ、変わらない事は変わらないまま共に今もあり続く……ファルコモンらはそう感じていた。
――無論、それは傍らにいる相棒であるダンとアズサにも言える事であった。
「ねぇねぇ、ダン君! あーん!」
「あ、あーんって……オレはもう子供じゃあないですよ?」
「違う違う、子供じゃなくて、こ・い・び・と・として! いいから口空けてね! あーん!」
「恋人って、オレはまだそんなんじゃ……もごっ」
満面の笑みでイチゴの団子をダンへ食べさせるアズサと、そのアズサから差し出されたイチゴの団子をもぐもぐと口にしてしまうダン。
二人の仲睦まじい様子を生暖かい目で見ながら、忍者としての重みを忘れて、束の間の日常を味わってほしいと願う二体のバディデジモン達であった。
これは、彼らバディリンカー達の何気ない日常の一幕である。