正史では0だったが夜神が票を入れたらしい。
ちなみに原作通り避難誘導の時にとった行動によって、緑谷から推されて委員長となったようだ。
雄英高校は日本最高峰のヒーロー養成学校だ。故に、設備なども含めて幅広く充実している。今日の授業は救助訓練。そのため、生徒たちが乗るバスは巨大演習場へと向かっていた。
「いやーギリギリだね刹那」
「ウム。うちのクラスは何故か21人いるから席が後ろの方まで埋まっているな」
彼らが乗っているバスは後部の椅子は普通だが、前部の席が向き合うように設置されているタイプだった。そして、夜神と耳郎は後ろから三番目の席で隣り合っている。
「いや、そういう事じゃなくて」
「ん?」
「邪魔じゃないの?その刀」
この世界は彼女のせいで正史より少々ズレている。
都市の1つは今でも封鎖されたままだし、クラスメイトの一人は両親を失っている。生徒の数も何故かA組だけ一人多い。
「それほどでもないぞ。軽いし」
「でも前見えてないよね」
「ウム。近いからと言って上に置くのを面倒くさがった事を若干後悔している」
なので、21人乗りのこのバスは装飾過多な彼女にとって少し狭かった。体躯が一般人より大きい障子目蔵よりはマシだが、彼女が腰に携えていた六本の刀は膝の上に抱えられている。
「(こういう時は浮遊などの個性を羨ましく思うな)」
私の個性は物理的な破壊をもたらす事しかできず、今の出力では他者を改造して治癒なども難しい。あの顔面金玉野郎がもう少し便利な個性を埋め込んでくれたら良かったというのに。
「あなたの“個性”オールマイトに似てるわ」
「「!?」」
そんな事を夜神が考えていると、緑谷が核心的な事実を突かれていた。ゲンサクとは違い、彼の事情を知っている爆豪もビクッとしている。
「そそそそそうかな!?いや、でも、僕はそのえー」
「(すごい動揺してるな…)」
心構えが出来ていれば“オールマイトに憧れてるから嬉しいな”ぐらいは言えたかもしれないが、急だったのでめちゃめちゃ怪しい挙動をしている。
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねえぞ。似て非なるアレだ」
だがしかし、全く事情を知らない切島の言葉がナイスフォローとなった。
「しかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来る事が多い!俺の『硬化』は対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなー」
「僕はすごくかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する個性だよ」
それに便乗するように、然り気無く緑谷は話題を自身からズラした。
また、蛙吹梅雨も本当に気になっただけのようで深くは追及してはこなかった。
「プロなー!しかしやっぱヒーローも人気商売みてえなとこあるぜ!?」
「僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み」
「でもお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」
そのまま話題は個性について移り、青山が自身の個性について真っ当なツッコミを受けて落ち込んでいる。まぁ、貰い物の個性だからしょうがないね。
「けど派手で強えって言ったら…やっぱ轟と夜神だな」
切島の言葉にクラスメイトの視線が2人に集まる。一人は満足そうにな顔をしているが、もう一人は無表情で窓の外を見ている。
「ククク…慧眼だな。何せ私は…」
「夜神ちゃん物騒すぎるから人気出なさそ」
彼の言葉で嬉しそうに口を開いた夜神だったが、蛙吹に正論を言われてしまった。とはいっても、彼女は入試で自分以外の人間を戦闘不能にしてるので真っ当な指摘である。
「貴殿らには手加減してるぞ?まぁ、
「ホラ」
本人は不本意そうな顔をしながら言っているが、喋っている事がヒーローから遠すぎる。発言が過激なヒーローもいるにはいると思うが、夜神の場合は行動もほぼ
九割
「この付き合いの浅さで既に人を人とも思わねぇ半サイコみたいな性格と認識されるってすげぇよ」
「悲しきかな。クラスメイトから人の心がないように思われるとは…私とて恐らく人間だぞ」
「そこは断定しろよ」
いや、本当に不明だからな。
親という存在がいたかすら分からず、保護者的な者もいるにはいるが書類上だけだ。最悪AFOが作ったクローンという可能性もある。
「まぁ、刹那に人の心があるかないかって言ったらちょっとはあると思うよ?」
「流石は響香だ。私の事はよくわかってるな」
「ちょっとだけなのは認めるんですね…」
ワイワイガヤガヤと賑やかになってくる車内。
話している事は将来についてだったのだが、段々と関係ない話になってしまった。雄英生徒は優秀な者たちが揃っているが、夜神も含めてまだ子供なのである。
「もう着くぞ。いい加減にしとけよ」
ただ、修学旅行のバスくらい騒いでいたので相澤先生に注意を受けてしまった。
「「「ハイ!!」」」
生徒たちが反省の意を示す返事をしてから1分後、先生の言う通りバスは目的地に到着した。
◆◇◆◇◆◇◆
「すっげー!!」
「USJかよ!!?」
演習場に入った生徒たちの目に飛び込んで来たのは、多種多様な訓練施設だった。まるでアミューズメントパークのように作られた様々な災害現場。それが目に見える範囲で何個もあるのだ。
情報で知ってはいても、実際に見た施設の広大さに生徒たちは驚くしかなかった。
「水難事故、土砂災害、火事…etc。あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も…」
そして、そんな生徒たちの前に今回の先生が登場した。
「
「(USJだった!!)」
宇宙服のようなヘルメットを被り、モコモコとしたファーを全身に纏ったヒーロー。
「スペースヒーロー『13号』だ!災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わー!私好きなの13号!」
彼女は出てきて早々コソコソと何かを相澤先生と話している。夜神以外は授業についての相談だと思っているが、内容はオールマイトが力の使いすぎで遅れるという事だ。
「仕方ない始めるか」
少し呆れたような顔になりながらも、相澤は慣れたように授業の準備に入った。
「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…」
「(増えてる…)」
「四つ…」
「(まだ増える…)」
多いな。だが、個性という名の重火器を救助という人の命を扱うために使う。そう考えると彼女の小言が増えるのも仕方のないことか。
「皆さんご存知だとは思いますが僕の個性は“ブラックホール”。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その“個性”でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」
「ええ…しかし簡単に人を殺せる力です皆の中にもそういう“個性”がいるでしょう」
爆破、氷炎、兵器、OFA、他にも使い方次第で殺せる個性はいる。ただ、簡単という条件だけであれば彼らに勝る個性はこの場にはいない。もっとも、この中には実際に大勢の人間を殺戮した者が一名。事故のような形で殺した者が一人いる。
2人からすればわかりきった事だが、それでも真剣に聞いている。親を殺した者は二度と同じ過ちを犯さぬために、破綻した願いで虐殺した者はヒーローらしく振る舞うために。片方は贖罪の思いからだが、もう片方の思考は単に友人に迷惑をかけるのは良くないという思いからだ。
元
「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立ってるようには見えます」
彼女の言う通り、この世界は本当にギリギリ成り立ってる。オールマイトという超人的な存在のおかげで束の間の平和を保っている。
「しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい」
だが、平和の象徴は彼一人なのだ。
「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」
「(ん?何だか視線を感じるな)」
相澤先生からはさっきから睨まれているが、13号先生からも何かを感じる。ヘルメット越しだというのに心配そうな瞳が見えるな。
「この授業では心機一転!人命の為に“個性”をどう活用するかを学んでいきましょう」
なるほど。どうやら私は何かやらかすのではないかと疑われているらしいな。
「君たちの力は人を傷つける為にあるものではない。助ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
だが、今の私の立場は一応ヒーロー候補生である。
流石に人の命を救う訓練で怪我人を雑に扱う事はしない。彼女の私への心配は杞憂に終わることになるだろう。
まぁ、もっと面倒な奴らが来るがね。
「以上!ご静聴ありがとうございました」
「ステキー!」
「ブラボー!ブラボー!!」
そうこうしている内に13号のためになる話が終わり、生徒たちは拍手とちょっとの賛辞を送った。
「そんじゃまずは…」
彼女の一礼が終わり、授業が本格的に始まろうとした時。相澤は何かの気配を感じた。
「…?」
振り替えると、そこには黒く小さな渦があった。
彼は一瞬だけ自らの見間違いかと思ったが、直ぐにそれは大きな穴となった。
「一かたまりになって動くな!!」
「え?」
その瞬間、相澤はそれの正体に気づいた。
黒い穴はモヤのようでもあり、そこから何者かが現れたのだ。
「13号!生徒を守れ!」
的確な指示を指示を出す相澤。
だが、その僅かな間に広がり切った黒いモヤからは次々と異形の存在が現れた。
そして、特に目を引くのが
「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
何人かの生徒は事の重大さに気づき、既に臨戦態勢をとっている。ただ、まだ事態を飲み込めない者たちもいた。
だが、それを責めることはできない。
「動くな!あれは
なぜなら、この襲撃は彼らにとって完全な
彼女は驚愕の表情を浮かべながらも刀を構えた。
「(二体の脳無…)」
記録が正しければゲンサクでは一体だったはずだ。
覚えている内に書き込んだノートには、オールマイトに匹敵するパワーを持った脳無という怪物が現れると記されている。いくら私でも数は間違えないし、あんな細い奴の情報はなかった。
「(…ということは)」
ふむ…どういう意図かは知らんが面倒な事になったな。やはり嫌がらせが趣味の
「(ま、元
そう自嘲しながら、夜神は個性がいつでも全力で発動できるように彼らの動向に目をやった。
「13号に…イレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」
黒い霧が紳士のように丁寧な口調で語りかける。おおよそ襲撃犯とは思えない言葉遣いだが、それが彼の存在を恐ろしくしていた。
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」
相澤は夜神から侵入した
だが、その実行犯がこんなにも堂々と襲撃するとは流石に予想できなかった。つまり、情報のアドバンテージはほぼ無いと言っていいだろう。
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴がいないなんて…」
そして、黒霧の側にいる細身の男。
手を顔や首、腕につけている不気味な人間。リーダーのような存在に見えるが、まるで子供ような喋り方をしている。
故にこそ、ヒーロー達は彼を殊更に警戒していた。例え多く
「子供を殺せば来るのかな?」
それは、この場においても正解だった。
彼の言動から漂うのは途方もない悪意。
生徒たちの前に初めて現れた
【もう一体の脳無】
死柄木弔よりも細く全長は4メートル近い。原作にいる方の脳無と格好は同じだが、少し薄汚れている。現時点での情報は少ない。