ヒロアカ転生人格変貌   作:七瀬一五

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 冥想塵制さん誤字報告ありがとうございます。

 あと、今のオールマイトのコスチュームはシルバーエイジのものなので赤多めです。

 ※後半部分が納得いかなかったので一回消してから書き直しました。


一人なら殺人、百人なら殺人鬼、十万なら英雄

 アインザッツは、オールマイトの攻撃が見えていなかったわけではない。むしろハッキリと認識していた。だが、()()()()()()()()

 なぜか?彼女の肉体が認識に反応できなかったからだ。彼女の精神と肉体は、度を超えた改造により少しズレがあるのだ。本来はないはずのズレ、それのせいで彼女は酷いダメージを受けたのだ。

 

 (たった一発でこれほどとは……)

 

 オールマイトの一発。弾丸どころの話しではない。微塵も本気を出していないはずのその攻撃は、アインザッツの細胞深くにまでダメージを与えていた。

 

 (身体の修復が遅い……)

 

 胴体に空いた風穴。通常であれば10秒ほどで元の肉体に再生するはずが、遅々として進まない。もちろん彼女の個性ならば胴体に穴が空いていようが、頭部が吹っ飛ばされようが、問題なく動ける。しかし、普段の運動能力よりも数段劣ってしまう。

 故に、彼女がするべき行動は決まっている。

 

「…やぁ、初めましてオールマイト。(わたし)の名前は移動虐殺部隊(アインザッツグルッペン)。ある実験の成功作にして唯一の失敗作だ」

 

 時間稼ぎだ。

 今の(わたし)の状態では、逃走を開始してもすぐに捕まる。死体を偽装して逃げようともしたが、場所と状況が悪すぎる。それに、(わたし)の考えが正しければ、彼はこの時間稼ぎに引っ掛かるはずだ。

 

 目の前にいるオールマイトはその言葉を聞き、何かを思い出したかのように問いかける。

 

「…失敗作とはどういう意味だ?」

 

 やはり食らいついたか。

 彼は『ワン・フォー・オール』を継承しているが故に、オール・フォー・ワンが行っている人体実験や犯罪行為についてもよく知っているはずだ。加えて、(わたし)という存在だ。

 街中に突然現れ、強力な個性を使っての目的のない大規模なテロ行為。倫理観の欠如したイカれた思考。おまけに、どう考えても自然に生まれることのない異質な個性持ち。

 彼が継承者であるならば、すぐに(わたし)という存在が誰によって作られたのか気づくだろう。

 

「…文字通りの意味だ。貴様も()()()ならば知っているだろう?他人の個性と人生を弄ぶ悪辣なる指導者のことを…」

「!?なぜ君が継承者について知っている!それに、悪辣なる指導者とは…まさか!」

 

 奴を利用するのは癪に触るが、背に腹は変えられない。心底嫌だが、この状況を生き残るためには仕方ない。というか今更ながら腹が立ってきたな。

 ……あいつについて考えるのはやめた方がいいな。

 

「──オール・フォー・ワン。奴の実験によって、(わたし)という存在が生み出されたのだよ」

「っ…なぜ奴は、君にそんなことをした?」

 

 修復率50%。

 

「さあな。奴のことだ…半分くらい好奇心でやったに決まっている。というか、奴の思考などわかりたくもない」

「確かに…奴が実験を行うには十分過ぎる動機だ。…君は、自分についてどこまで知っている?」

 

 修復率60%。

 

「奴からは『105』と呼ばれていた。知っていることは、度重なる実験によって(わたし)の記憶はほとんどが消えていること。痛覚を感じることができなくなり、髪からも色が消えた。そして、最も酷いのは(わたし)の人格だ」

「君の…人格?」

 

 修復率70%。

 

「そうだ。昔の(わたし)は今のような人格ではなかった。この人格は、実験によってついさっき生まれたばかりでな、前の(わたし)はいわゆる善人と呼ばれていた人間らしい」

 

 修復率80%。

 

「…君のことはよくわかった。君の境遇が悲惨であったことも理解した。では、君はなぜこんなことをした!」

 

 修復率90%。

 

 (わたし)を問い詰める彼の顔は、酷く悲しく、怒りに満ちていた。正義の象徴であるが故に、オールマイトは判断しかねているのだろう。被害者でもあり加害者でもある(わたし)という存在を。

 

 修復率95%。

 

 だからこそ、この問いで見極めるのだ。アインザッツという存在が、悪であるか、そうでないかを、ヒーローだからこそ彼は判断を下さなければならない。

 

「決まっている」

 

 修復率96%。

 

「私が、『(わたし)』である故に」

 

 修復率97%

 

(わたし)が、この世界で生きるために」

 

 修復率98%。

 

(わたし)という存在を、この世界に示すために」

 

 修復率99%。

 

「故に、あの行為は全て(わたし)の意思によるものだ」

 

 修復率100%。

 

「なぜだ!アインザッツ!」

 

 拳を構え、慟哭するオールマイト。彼にとって、彼女は護るべき側の人間であり、決して悪を成していい人間ではなかった。しかも、仇敵であるオール・フォー・ワンの被害者である。

 

 彼女は、嘘をつくことができた。全ての責任をオール・フォー・ワンに押し付けて、ただの哀れな被害者として振る舞うこともできた。

 しかし、彼女はその選択をしなかった。

 彼女は倫理観というものを知っている。知っていながら、自分の中にある欲望に従った。

 故に、彼女は自らを悪だと考える。例え被害者であったとしても罪のない一般人を虐殺したのは、紛れもない自分の意思だからだ。

 

「さよならだ、オールマイト」

「っ!」

 

 悲しげな表情をした彼女の、本心からの言葉。それにより彼の動きが少し遅れ、彼女に個性使用の隙を与えてしまう。

 赤黒い色の、悪魔とも天使とも取れる異質な形をした翼が背中から生える。両足の筋肉の密度を瞬間的に高め、勢いよく彼女は飛び上がった。

 

「そうか。君はその道を選んだのだな……ならば、私はヒーローとして君と戦おう!」

 

 空中にいるアインザッツ。それに拳を定め、足を踏み込み、構える。通常では絶対に届かない遥か上空。けれど、それは普通のヒーローの話だ。

 

「TEXAS SMASH!!」

 

 轟音とともに拳が振り抜かれた。周囲にある瓦礫はその余波だけで吹き飛び、空中にいた彼女は、翼が風圧によって削り取られる。それにより落ちていく彼女は思考を加速させる。

 

「(今の攻撃で逃走は不可能だと理解した。残る選択肢はあと1つ、(わたし)の死体の偽装だ。先程の時間稼ぎで算段は整った。個性によるアインザッツの()()()()を開始する)」

 

 彼女のもうひとつの個性の名は、不変的変貌改造(シュテルクスト)。     

 『再生』『耐久』『改造』『変貌』『不変』『生存』『感化』の7つの能力が合わさって生まれた『超瞬間的な改造と変貌による超速再生と他者への肉体干渉』という強力な個性だ。

 

 その能力によって死体を作成していると、兵士からの情報が脳に届く。どうやらゲンサクの主要キャラを一人見つけたらしい。しかし、自分の知っているキャラの性別とは違っていた。

 

「(ふむ、爆豪は男だった気がするが……駄目だな。ほとんどの前世の記憶が消えているせいで、元の性別がわからなくなってきた。まぁ、この世界は、彼が女になっている世界、いわゆる並行世界というヤツだろう。というか、ゲンサクにはアインザッツというキャラはいないしな)」

 

 そんなことを考えながら、彼女は廃墟に落ちてゆく。

  

◇◆◇◆◇◆◇

 

 アインザッツが落下したことを確認したオールマイトは、その場所に一回の跳躍のみで到着した。

 そして、そこにいた彼女の姿に言葉を失った。

 

「……あぁ、オールマイトか……どうした……そんな顔をして……」

 

 顔を上げた彼女には、右眼がなかった。眼が完全に潰れてるらしく、血の涙を流しているようにも見える。また、片腕も失われていた。もたれ掛かっている瓦礫にはベッタリと血がついており、軍服は赤黒く染まっていた。恐らく服の下はもっと酷いことなっているだろう。

 満身創痍どころの話ではない。彼の目には、アインザッツの姿は死体が喋っているようにしか見えなかった。

 

「いや…何でもない。ただ、捕まえる前に1つ聞きたいことがある」

「……なんだ?」

 

 オールマイトは、動揺を隠すように、できる限り冷静に努めながら話し掛ける。

 

「先程、私はキミの身体を貫いたが、すぐに再生されてしまった。だが、今のキミの肉体は再生の兆しすら見えない。それはなぜだ?」

 

 そう。今のアインザッツは、至るところに傷があり、その中にはかすり傷などの軽いものもある。再生能力のある彼女にとっては、一秒も経たずに消える傷のはずなのだが、その傷が消えていないのだ。

 オールマイトはそのことに、ある予感があった。

 

「あぁ……簡単なことだ……(わたし)の身体は、もう限界なのだよ……」

「やはり…複数の個性使用による肉体の限界か」

 

 失敗作と聞いた時点で、彼はある程度の予想を立てていた。その1つが、彼女が複数の個性を使える理由だ。オールマイトは、オール・フォー・ワンによる多くの被害者を見てきた。だからこそ、アインザッツに対してある疑問があった。

 

「よく……知っているじゃないか……そうだ……どんなに個性によって肉体を強化したとしても……元の(わたし)の身体は、度重なる実験によって寿命が尽きる寸前であった……」

 

 元々、人間の体は1つの個性にしか対応していない。似たような個性や単純な個性であれば適応することは可能だが、『超速再生』や『死体の傀儡化』という複雑で強力な個性などは不可能に近い。

 

「そんな時……奴は『私』に対して最後の実験をした……そして『(わたし)』が生まれた……その時に奴の助手を殺そうとしてな……気づいたらこの街にいた……」

「そして、自分の存在をこの世に残すために虐殺を実行したというわけか」

「!……驚いたな、そこまでバレていたのか……」

 

 例えそれらの個性が、奇跡的に適合したとして使えるかどうかは別だ。また、使えたとしても肉体にはかなりの負荷がかかり、ただでさえ少ない寿命は、個性という炎を燃やすための燃料として消費される。

 

「そうだ……個性が適合した時点で、運命は既に決まっていた。げほっ……けど、何かを残したかった……せめて、(わたし)が生きていた痕跡を……」

 

 オールマイトは理解した。彼女は忘れて欲しくなかったのだ。名前もなく、記憶もなく、自分の生きる意味すらない。だからこそ、自分の名前を作り、生きる意味を、『アインザッツグルッペン』という存在になり、人々に覚えてもらいたかったのだ。

 

「すまない…キミを、助けることができなくて」

 

 本当なら彼女は、普通に生きていくことができたはずだった。私が、助けることさえてできれば!何が最高のヒーローだ!たった一人の人間すら救えずに何が平和の象徴だ!

 

「…よせ…謝ってくれるな…オールマイト…あなたは最善を尽くした……けれど、ありがとう」

 

 彼女は酷く優しい笑みを浮かべた。

 そして、ゆっくりと目を閉じながら、あることを彼にお願いした。

 

「…死は…隠せ…殺人……英雄…」

「…それなら心配ない。我々は最初からそうするつもりだったからね」

 

 それを聞いた彼女は安心したような顔をし、やがて静かに息を引き取った。

 

 オールマイトが彼女の遺体を持ち上げると、異様なほど軽かった。腕は細く、身長に対してほとんど中身がないようにも感じられた。

 

「人間にする仕打ちではないな…」

 

 実験体である彼女に、まともな食事を与えられていたとは考えにくい。恐らく、彼女は食事というものをしたことがなく、その楽しみも知らないはずだ。

 

「願わくば、君の来世に幸多からんことを……」

 

 そして、彼は廃墟の街から去っていった。残されたのは大量の血痕。だが、その血はいつの間にかなくなっていた。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 その後、世間には彼女はその不死性故に死刑にすることができず、タルタロスに収容されたと報道された。

 

 この事件によって1つの都市が滅び、また残った兵による暴走によって多くの命が失われた。

 

 たった一人の人間によって、約8万人が死亡。二次被害も含めれば10万人以上の人間が亡くなったこの事件は、後に『都市喰らいの夜』と名付けられた。

 

 

 それから10年後。

 

「さて…そろそろ試験に向かうとするか」

 

 物語は、再び動き始める。

 

(わたし)が、ヒーローになるためにな…」

 

 




【オール・フォー・ワンによって入れられた個性一覧】
『再生』
 実験によって死ににくするため。
『耐久』
 過酷な実験に耐えるため。
『改造』
 自身の生命の危機など全く考慮せずに、肉体を異常改造し、とんでもない負荷を与える。
『変貌』
 使用者の肉体をあらゆる物質に変化可能だが、1秒ごとに1週間の寿命が消え、激痛が全身に広がってゆく。
『不変』
 老いることはなくなるが、肉体の成長が止まる。そのため、オール・フォー・ワンが保持していた時は、個性を奪うことが阻害された。
『生存』
 死ねなくなる。しかし、老化は別に止まらないし、普通に病にかかるし、肉体の欠損は治らない。
『感化』
 他者を自分の肉体と認識し、その人間の身体をその人以上に理解できる。が、自分を自分だと認識できなくなる。
 
 
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