錆兎の元に手紙が届く。真菰からだ。有一郎が「凄い女がいたから誘った」と言ってたら本当に凄かったと。筆跡も心なしか活き活きしている。ちなみに最近の有一郎は人材不足の解消だったり鬼殺隊の仕組みに対する提案をあれこれ考えているらしい。
(そういう奴だから米寿……瀬尾さんと組んでた鴉と相性が良いのかもしれないな)
そしてこの件は『有一郎は優秀な人材を見つけてくる』という評判を決定づけることとなる。
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有一郎は冷酷だと言われがちだ。確かにそうだと彼自身も思っていた。鬼を狩ることを最優先にするあまり少数の一般人に犠牲が出る事を仕方ないとしているからだ。「鬼を一体放っておいたら何人死ぬ?」
「……そこだ」
最速で刎ねる。鬼を完全に消滅させてから有一郎は町を見る。派手に暴れられたせいで壊れた建物も多い。
有一郎は冷酷と言われがちだが助ける余裕があるならそうする程度の良心はある。
「軽傷の奴には普通の病院に行ってもらうとして。これかなりヤバい奴だよな。何人埋まってんだよクソが」
米寿に連絡を任せ救助活動に参加する。
そこで有一郎は見た。生き埋めになった子供を助けるために黒髪の女性がえいっと瓦礫を持ち上げたのを。
「どう控えめに見ても普通の女が一人で上げられる重量じゃない。後で声掛けとこ」
最終的には想像したよりも死者は少なかった。例の怪力娘のおかげと確信する。
「あんたの怪力を貸してほしい」
純粋に役立つからだけじゃなかった。何かを諦めたような瞳が昔の弟に似ている気がしたから。
(そうしたのは紛れもなく俺なのに)
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話に聞いていた女、甘露寺蜜璃と錆兎が交わした会話がこれであった。
「錆兎ちゃんみたいになりたいの。素敵な伴侶と巡り合えて幸せになってる錆兎ちゃんみたいに!」
なんか憧れの方向性おかしくないか? また夫婦扱いされているようだが。解せない。
「俺は未婚だが」
「あんなに仲良しなのに!?」
「少なくとも向こうは俺を女としては見てないぞ。懸想などしていない迷惑だと言われた」
「そんな酷いわ!」
積極的に聞かずとも蜜璃は色々話してくれた。「前世で結婚の約束をした相手を探してるの」それで危険地帯にわざわざ?「ここにいる気がするから」
錆兎は考える。結婚目的でよりによって鬼殺隊を選ぶとは。いやまあ安全に出世とか狂った事言うもいたか。しかしぼんやりした勘が無視できない結果を生み出す事例をいくつも知っている。……もし約束をした相手だったら義勇は出会った時に気づくだろうか。未知数だ。気まぐれな天啓はこちらから呼び出そうとしても答えてくれない。声が聞こえたらとんでもない奇行をやらかしそうな予感だけはある。ただまあ、少なくとも義勇の勘なら悪い結果にはならないだろう。そのはずなのだ。何故かは全く分からないが嫌な予感がする。
危惧していた天啓は結局起こらなかったが。
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期待の新人甘露寺蜜璃と伝説を作り上げた一端の伊黒小芭内が食事を楽しんでいる。山盛りのご飯を幸せいっぱいの顔で頬張る蜜璃を小芭内が見守るという構図。
「冨岡さん素敵だわ」
「駄目だ冨岡はやめておけ冨岡だけは駄目だ」
焦った。
「奴には既に相手がいる」
咄嗟に思いついた理由を付け足す。
「待って伊黒さん違うの、私が冨岡さんとお付き合いしたいってわけじゃないのよ」
あわあわ。訂正。
「そうか」
冨岡さん
「だけどね、もっと知りたいとは思ってるの」
「分かった」
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紫色の布を包むように這う蔦の葉。形見の償いに贈られたそれを纏う静なる水の剣士。
死を覚悟した瞬間に冨岡義勇は救世主のごとく舞い降りる。
冨岡義勇は限定的な予知能力者である。最終選別では窃盗を働き(救命のためと判明したためのちに不問となった)、胡蝶カナエに危機が訪れると柱級の人材を一か所に集め上弦の鬼を討伐した。
伊黒小芭内曰く、『冨岡がいなかったら俺は上弦に殺されていた』
不死川実弥曰く、『明るい未来を見ている』
胡蝶カナエ曰く、『とても優しい人』
そして義勇の事をよく知る錆兎と真菰は『努力家な所は好ましいが見えない何かに追われているような部分は心配だな』『真面目だからね』と。
他にも『桶屋に儲ける方法聞かれて風を吹かせろとだけ言う人。俺は大繫盛中の桶屋』
『助けに来るタイミングが完璧すぎるせいで本当は鬼側の偵察なんじゃないかって説も出たけど、それなら上弦の弐を倒せたのはおかしいだろ。信頼させる為の罠だとしても割に合わないっつーか』
常人には理解できない手続きで奇跡を起こす予言者。
その上で冨岡義勇という男はそもそも普通に強いので単純に戦力としても得難い存在だ。生半可な攻撃は通らない。
強いて言えば言葉選びが下手すぎるのが欠点だが解説役がいるので問題ない。
間違いなく鬼殺隊の鍵だ。
***
「伊黒さん、今日はお話いっぱいありがとう」
なんだかとってもドキドキする。
「君さえ良ければまた」
「約束ね!」
蜜璃はるんるん気分で帰路につくのであった。