柱とは文字通り鬼殺隊を支える実力者である。強力な鬼と戦える貴重な戦力であり、基本的にはそれぞれの担当地区というものが決まっている。
しかし一対の水柱、錆兎と義勇はそれに当てはまらない。彼らの役割は遊撃だった。
これは義勇の持つ特殊能力が理由である。予知だ。鬼が現れる場所を先読みして叩きに行けるため特定の場所に縛られない。そして彼の能力は時に強大な敵を呼ぶ。
前例として真っ先に思い浮かぶのは上弦の弐、童磨だろう。あの時は奇跡的に柱とそれに匹敵する者が6人集まって討伐を成し遂げた。義勇の予知能力が広く知られるようになったのはこの時だ。
この能力によって上弦とも遭遇する可能性が高い事を考えると柱とはいえ一人で動かすのは不安が残る。一説には上弦は柱三人分の強さがあるという。遊撃の二人と担当地区の一人を合わせれば丁度三人になるという計算だ。
そして錆兎であれば義勇との連携も得意であるしお互いがそれを望んでいる。「目を離したらどこかに行ってしまう気がする」と不思議なことに二人とも同じことを言っていた。それは果たして予言なのか別の感情も入っているのか。
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紫の布地にあしらわれた蔦の葉模様に触れる。それが
絡みついて離れないことから永遠の愛を象徴する、なんて話もあると知ったら蜜璃辺りはきゃーきゃー言うのだろう。
しかし義勇は気づいていた。順風満帆と持て囃されるこの恋にあと一手が足りないこと。隠すつもりもない想いの存在さえ気づいてくれないこと。そこ以外でならいくらでも義勇の考えを皆に伝えてくれるのに。
応えられないとさえ答えてくれない。
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任務の時は一緒にいる理由付けとして手っ取り早いからと夫婦役を演じている。そこに錆兎としては若干罪悪感があった。周りがいくら囃し立てても本人が嫌かもしれない。
「俺なんかが女房で悪いな」
「構わない。任務だ」
割り切ってるなら良いんだが。
―いつか義勇には本物の嫁が来るはずだ。
義勇が幸せ一杯の笑顔で誰かと見つめ合う姿を想像する。違和感に胸が痛む。お前は本当に幸せか? ならいい。
本当にそれでいいのか? 誰も不幸になっていないのに俺は何を心配しているんだ。相手の女か。だって義勇だぞ? 『冨岡くん結構モテるわよ。優しくて強くて顔が良いんだもの』言葉選びが致命的に下手な奴で本当に大丈夫か? 遠くから眺めるには悪くないんだろうが。その優しさはちゃんと相手に伝わるんだろうか。義勇なら黙って行動で示すか。伝わるか……?
考えない方がいい気がしてきた。
***
錆兎は変わらないなと義勇は思う。
「寝るか」
この年になってあっさり男の横に寝るのはどうかと思う。本当の夫婦というわけでもあるまいに。耐えるのが辛い。惚れた女であるならなおさらだ。だが同時に信頼を裏切りたくないとも思う。
程なくして寝息が聞こえてくる。こんなに無防備で錆兎が襲われやしないか義勇は気が気でなかった。そこらの暴漢に負けるはずないと知っているにもかかわらず。
強力な鬼だったらどうする。鬼は基本的に主人の意向なしでの自己増殖は行わないはずだから生殖行為を強要される可能性は低いが、生前が好色なものであれば趣味として残る可能性が零とはいえない。そういえば求婚してきた鬼もいたな。許しがたい。しかし単純な暴力による殺害の危険が遥かに高いのは事実でありそうした脅威を共に乗り越えていくことが俺の使命だ。
「錆兎」
「ん……?」
夢の中からの返事。初めて会った瞬間に目を奪われた輝きが手を伸ばせば届く位置にある。
頬の傷跡に触れてみる。
「これが錆兎が生きてきた証なんだな」
錆兎は『傷物を貰う男もいないだろう。……興味もないしな』などと言っていたが義勇の視点からすればそうは到底思えない。欲してやまない男がここに一人いる。
義勇としては『顔の傷程度で興味をなくすならさっさと身を引け』と思っているし恋敵は少ないに越したことはないので進展しないならせめて現状維持を望んでいた。
現状といっても外堀はかなり埋めているが。嫌ならはっきり言ってくるはずなので可能性がないわけではないと思いたい。
「可愛い」
心を焼き尽くしてやまない光で、共に育った女の子で、同じ信念に生きる仲間で。世界に攫われてしまいそうな儚さもなぜかあって。
鮮やかな髪もその傷跡も全てをまるごと残していたい。
勝手に今作のイメージソング集プレイリストを作って脳内MVを再生してるんですがこのたび
ファタール / GEMN
が追加されました。
【おまけ】
瀬尾さんと愉快な幽霊仲間たち
「皆、本当にすまない。私が気づけなかったせいだ」
「葉子が謝る必要ないって。あの時の葉子で勝てたか微妙だし」
「一言多いよ」