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「あん?なんだお前」
昨日の一件の後、今日はある店に集合との事で一人そこへとたどり着いた。そこは錆びれたように見えるが、中に入れば清掃の行き届いた、趣のある喫茶店。
中指を待つついでにと、注文した珈琲に舌鼓を打っていると、褐色の肌の、勝ち気な顔をしたバニーガールのような女が声をかけてくる。
そもそも店の客は私しかいないため、この女も待ち合わせで呼び出された口だろう。
「こっちのセリフだ。中指令親はどこにいる?」
「あたしもエルネストに言われてきたんだよ。てのに、んだよこのちんちくりんは」
「五月蝿い。貴様こそ、バニーコスプレをするには多少歳をとり過ぎているのではないか?」
ビキビキと、王華の腕に力が込められる。
ピキピキと、ミルコの額に青筋が浮かぶ。
この女、見覚えがある。
ラビットヒーロー ミルコ。
兎の個性でそのスピードとパワーによる肉弾戦が武器、か。
お望みとあれば、今ここで眠らせてやろう。
──ピリリリリリ
甲高い電子音が、お互いの闘気を霧散させた。
こちらのやる気が削がれたことがわかったようで、ミルコは携帯端末を取り出して画面を操作していた。
「あん、エルネストから……オイ、お前がアーリィか?」
「だったらどうした?」
ズイッと目の前に突き出された携帯の画面に映し出されているのは、連絡ツールの画面。
差出人の欄は、中指令親。
そのメッセージ内容は……
【俺忙しーから、そこにいる職場体験中のぴちぴち女子高生アーリィを宜しくっ!!ちなみにソイツは、お前と一緒で凶暴だから気をつけた方がいいぞっ!ちなみのちなみに、お前に拒否権ないので。
↓こっから下はアーリィ用だょ!
逃げたら、全校生徒の前であん時の刑】
私が馬鹿だった。
あの教師の言うことを真面目に聞くなど……
ただ、初めて会った時にアイツにやられた屈辱を繰り返すのだけは、絶対にごめんだ。
──
初めて令親が教室に入ってきた時、何も知らぬまま、額に左手の小指を押し付けられたかと思えば、
「恥じらいながら俺に告白しろ」
「わ…わた……私は、貴様のことが……す…好き…なわけがあるカァァァァァア!!!!」
済んでのところで呪縛から逃れたが、アレだけは二度とごめんだ。
この私を……
当など、未だにイジってくるのだから屈辱の極みである。
あの日、担任と名乗るこの男を絶対に殺すと誓った。
──
「チッ。仕方ねェな」
そう言ってついて来いとでも言うのか背を向けて歩き出す兎女。
ふと気になったのだが、なぜこの兎は中指令親に従っているのだ?コイツは事務所を構える事はせず、ソロでの活動を行なっているはずだ。それがなぜ、一民間企業の職員程度である男に従うのか。
「おい、貴様はなぜあんな男に従う?何か理由でもあるのか?」
立ち止まると、ゆっくりと振り返り王華の目を見つめる。
身体は小刻みに震えているようだ。
「………たぶんだが…お前と一緒だよ。色んなヒーローの前で………クッソあんのヤロォォオ!!!」
その怒りと怨みの籠った表情を見て、初めて会ったこの女に、心から同情した。
────
「………」
「どこに向かってるかとか、聞かねェのか?」
「方向からして見当は付く。保須市だ」
ミルコと二人、王華は空を駆けていた。
ビルからビルへと跳躍し、跳び越えて一直線にどこかへと向かう。
そのスピードが故に、身体中に吹き付ける風は尋常では無いのだが、それを感じさせないくらい、自然に二人は会話を繰り広げていた。
「へーお前やるじゃねェか!!」
「ヒーロー殺しが狙いだろう?まだ一人だ。少なくともあと三人殺るまではあの街に現れる」
ヒーロー殺し、敵名ステイン。
これまでに17人を殺害・23人を再起不能に追い込んでいる。
一つの街で必ず四人以上のヒーローを襲っており、保須市での被害者は、今はまだ一人だけ。
そう言う思想や思い込みの強い奴ほどジンクスを持っているが故に必ず現れるだろうと言うのが、驚異的な記憶力でヒーロー殺しの記事を鮮明に思い出した王華が導き出した答え。
だが、ミルコの答えはそんなものではなかった。
「狙いなんかねェよ!匂いがするから、向かってんだ!!」
野生の嗅覚とでも言うのか、ミルコの言う事もわからないわけでは無いが、王華の直感には何も引っかかっていない。
そのまま保須市に到着した時には既に日が傾きかけており、郊外にあるホテルを取り、ちゃんと二部屋手配していたミルコと別れ部屋に入る。
ようやく一人になれた。
燈以外の人間と、二人きりで行動を共にするのは随分と久しぶりな気がする。
どうしてか、ミルコといると自らの脳裏には燈の姿がずっと、鮮明に思い出されていた。
似ても似つかない、兎女なのになぜだろうと思うも、ただ二人でいたからかと思う事にした。
ひとまずシャワーを浴びるかと、ウザったいコスチュームを脱ぎ捨てるために手をかけたところで、ミルコが部屋に入ってきた。
鍵はオートロックではあるが、なぜかミルコは王華の部屋の鍵も手配していたのだ。
「お前強いだろ?揉んでやるから、そのまま出ろ」
「……無駄な事はしない。私がお前とやり合う必要がどこにあるというのだ」
どんな脳筋だコイツは。
こんな奴になんの恨みもなければ興味もない。
ただ、さっきまで一緒におり、会話をしていただけだ。
「理由なんかいらねェ。あぁ、そういえば、お前を試せとも言われてんだ……よ!!」
まさに跳んで肉薄したミルコから伸びる拳に合わせて剣指を放つ。
狙いはその、小指。
内側から外側へと、少しだけ開くような軌道で放たれた王華の指先がキツク握られた拳の小指のみを破壊した。
「みみっちぃ事、してんじゃねェよ!!」
だがミルコは止まらない。
壊れた小指をそのままに、腕を振り抜き、王華は高く上げた膝で拳を受ける。
「ほう。流石プロヒーローと言っておこうか」
「テメェも、クソガキな割にやっぱりやるなぁ!!!」
壊された小指を無理矢理に握り込んだミルコは好戦的な笑みを浮かべて拳を繰り出す。
それに呼応するように、王華も拳を撃つ。
お互いに殴る蹴るの応酬が高速で繰り広げられる中、お互いに一発も決まってはいなかった。
恐ろくべきは王華であろう。
先を取ったミルコに対して、完璧に合わせていたのだから。
「ここでは狭い。場を変えるぞ!!!」
そして拳と拳がぶつかりあった瞬間叫ぶと、その握られた五本の指を一斉に解き放ち、衝撃でミルコを窓から吹き飛ばした。
「ハッハハハハハハ!!!ホントにやるじゃねぇか!!強いヤツは好きだぞ!!!」
「戦闘狂め。兎なら兎らしく、発情だけしていればいいものを!!」
ミルコの強靭な脚から放たれる右の蹴りを右腕で回し受け、流す。
その間にも王華の左手はミルコの脛の点穴を狙い突き立てようとするが、流したはずの脚の膝を曲げ、カカトが王華の後頭部を打つ。
好機と見たのか、ミルコは巧みに脚を動かし、左脚の跳躍で王華の顔へと飛び膝蹴りを放つ。
躱すは不可能。
受けは、間に合わない。
軌道は顔か、ならば。
一瞬で気を集中させ、もはや鋼鉄と化した王華の頭突きがミルコの膝へと激突する。
「痛ってえぇぇぇぇえなぁ!!!」
鉄製の額当ては粉々に砕け散るも、そこには傷ひとつない王華の額。
剥き出しになった紅い瞳は獰猛に、爛々と輝いており、その口元は八重歯を剥き出しに笑っていた。
ミルコは衝撃で膝は震え、脚は小さな裂傷をいくつも起こしている。
だが、王華自身もあまりの衝撃に脳が揺さぶられ、一瞬停止してしまい、逆にミルコは叫びながらも、既に次の行動に移っていた。
「チッ……!!」
「
馬の蹴りの如く、王華の懐に潜り込み両手を大地につくと、その両脚を王華の腹へと撃ち込んだ。
「ごぶ……」
血を吐きながらも空を舞う王華。
脚が傷んでいようとも、吹き飛ぶ王華を追ってミルコも追撃に跳ぶ。
毎日を死ぬ気で生きているミルコにとって、この程度はケガの内にも入らない。
空中で無防備である王華に、強烈な振りおろしを放とうと思ったところで、思ってもみなかった反撃を受けた。
「舐めるなよ……!?
──
腰を最大限に捻り、解き放ったその蹴りは、衝撃波を生み出す。
鋭すぎるその振りで巻き起こる真空の刃は、薄く、研ぎ澄まされたもの。
それはミルコのガードした腕に、浅くはない切れ込みを入れた。
「こんなんじゃアタシは止まらねぇ!!
ミルコはその腕から血を滴らせながらも、三日月のように身体をしならせ、蹴りを放ち、王華を地面へと叩きつけた。
だが、王華が地面へと叩きつけられると同時に、ミルコも山の方へと吹き飛んでいた。
王華の振り抜いた鎌は、左右に一本ずつあったのだ。
左の脚で一太刀目、右の脚は、トドメの大鎌。
浮いた状態からだったため、踏ん張りが効かなかったが、しなるミルコの横腹に、カウンターが完璧に決まっていた。
「チィ……あの兎女……!!」
墜落し、大の字で地面に減り込んでいながらも悪態を付く。
ミルコはビルボードチャートでもせいぜい二桁のランカーだった。だが、こと強さにおいては恐らく5本の指には入る。イレイザーヘッドといい、つくづくこの世界の格付けは信用できない。
王華は感覚で動くミルコとその力を、今後の障害になると判断した。
減り込んでいた地面から飛び起き、トドメを刺さんと、完全に日も落ちた夜の街へと飛び出した。
────
「あんのガキが……やってくれんなァ……」
小せぇ癖に、速く、重い。
更に言えば、技もある。
戦闘のスタイルは似ているが、狙ってくる部位が私よりも細分化されていて、小賢しいが、かなり効く。
しかも、あれで私よりも10も若いってんだから、こりゃあ将来が楽しみだ。
──ピク……
自身の特徴である大きな兎の耳が空気を裂く音を拾う。
速いな、もう来た。
腹撃ち抜かれて後出しになった分、さっきの撃ち合いは私の負けだったか。
「やってくれんじゃねぇかアーリィ!!」
「こっちのセリフだミルコ!!」
互いを認め合い、名前で呼び合う。
そのまま、高速での撃ち合いになるが、今度はお互い防御を捨てた、攻撃一辺倒の野蛮な撃ち合い。
「フハハハハハハ!!!この私と正面からやりあえるとはな!!!」
「ガキが言ってくれんじゃねェかァッ!!!」
ミルコの蹴りが王華の拳が、お互いの顔や身体に減り込んでは引き抜かれを繰り返し、打撃音が人気の無い山中に木霊している。
そこに、邪魔が入った。
「待て!微かにだが悲鳴が聞こえる……行くぞ!!」
突如攻撃をやめ、そのまま跳び立つミルコ。
王華は一瞬呆気に取られていたが、すぐさま覚醒した。
「オイ待て!勝手に決めるな!私は貴様をここで……待てと言ってるだろう!!その大きな耳は飾りか馬鹿兎!!」
んだよ。
年相応の可愛い顔もできんじゃねェか。
赤い顔して怒っている"今の"王華は、ミルコからすれば背伸びした学生が怒っているようにしか見えなかった。
だがしかし、それにしても強い。
コレほどまでに私と打ち合えるやつなんていたか?
どいつもこいつも、私とは合わなかった。遅い、弱い、偉そう。私についてくることもできないやつばかりだった。
だから、事務所はいらない。
私は一人でやりたいようにやる。
鰐淵のおっさんも、令親の言うことも、わかるにはわかるが、私について来れる奴がいないのが悪いと、そう思っていた。
だけど、コイツとなら、将来は……
ミルコに生まれた初めての感情であったが、それに想いを馳せる事はなく、兎の聴覚でギリギリ拾える悲鳴の元へと、闇夜を駆けて行く。
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なんだって脳無みたいなやつが……
グラントリノが追っている、電車を破壊した敵は、姿は違えど間違いなく脳無だった。
追ってきたのはいいものの、街中で騒ぎが起きている。
避難する人を掻き分けながらも、その中心を目指し考える。
もしもあの脳無が、USJの時と同じくデタラメな力を持っていたら……
僕はどう動けばいい?
考えろ!
どう動くのが、最善だ!?
「天哉くーーん!!!」
聞き覚えのある名前を呼ぶ声に、思考が中断される。
声がした方を向くと、そこにいたのは、飯田くんの職場体験先のプロヒーロー マニュアル。
その背景には、吹き飛ばされているヒーロー達。
それを行なっている敵は──
「なんだ……これ……」
黒い脳無と、白い脳無が二体ずつに、羽の生えた脳無……グラントリノが追っているのを除いても、この場に五体もいるなんて……
余りにも絶望的な状況に呆然としていると、ヒーローに突き飛ばされた。
「こら、邪魔だよ!さがってて!わたしらが食い止めてる!警察の避難誘導に従いな!!」
「わっ!すいっすいません!」
また一人ヒーローが、ザ・フライがやられたようだ。
大事件じゃないか……でもなぜ──
浮かんだ疑問へと思考を移そうとしたところで、女性の大きな声が辺りに響く。
「オマエらも下がってナァァァァア!!!!!」
「コレが終われば、次は貴様だからな!!ミルコ!!」
健康的な褐色の肌と透き通る白い肌の、美しい女性が二人飛来した。
そのどちらにも、僕は見覚えがあった。
ラビットヒーロー ミルコは、飛来した勢いのままに飛び蹴りを入れ、その衝撃はまるで隕石のように、出鱈目に地面を破壊する。巨大なクレーターの中で、白い脳無は上半身を失っており、一撃で絶命していた。
初めて見た、ヒーローコスチュームに身を包んだ帝さんも、蹴りの衝撃波を刃と変えて、白い脳無を真っ二つに割り、続け様に放つ、研ぎ澄まされた剣指をその頭に捻じ込むと、流石の脳無も完全に停止していた。
「なんだよ!弱っちぃじゃねェか!」
「いや、こっちの二体はそこそこやるようだ。
──なんなら、手伝ってやろうか?」
「うっせーよアーリィ!!それは、私のセリフだ!!!」
なぜか言い合いをしており、なぜか登場した時から既に血だらけでボロボロの二人は、そのまま黒い脳無と激突した。
もしかしたら、既に何体か倒してきたのかもしれない。
プロヒーローと遜色無く……いや、それ以上の強さを誇る帝さんであれば、不思議ではないか。
「ミルコが来た!!もう一人の、アーリィ?ってのは知らないが、あの可愛い子も強い!!私たちはコイツを!!」
僕を止めた女性ヒーローの号令により、翼の生えた脳無には他のヒーロー達が一斉に挑み掛かっている。
ここはもう、大丈夫だ。
僕は、なぜかミルコよりも何よりも、帝さんがいるだけで大丈夫だと、確信していた。
浮かんだ疑問の答えが出たので、この街にある路地裏を虱潰しに当たって行った。
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「おいおいおい……人がせっかくいい気分だったのによぉ……また来んのかよクソ女が……ヒーローぶってんじゃねぇか……」
せっかく先生から借りた、脳無"七体"。
今出してるのは、雄英襲撃の時より少し劣るものが三体と、有翼が一体、だいぶ劣るのが二体。
その内一体はヒーロー相手に随分遠くに行ったが、知らないジジイが相手にしている。
暴れに暴れ、破壊の限りを尽くしていた五体のうち二体は瞬殺。
それをやったのが、またあの女。
「黒霧、最後の一体も出せ。あの女も、ヒーロー殺しの名前も、完全に消してやる」
「あれは、先生からも使うなと……」
「使わせたくないなら、渡さないだろ?いいから、だせ…!」
騒動から限りなく離れた位置に、雄英襲撃時と同等の力を持った、最後の脳無が出現した。
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「ハッ!!頭潰して終わりならそこらの敵よりも随分と楽だな!!」
「………貴様は匂わんのか?」
「あん?」
翼の生えた脳無は、未だ他のヒーローが相手をしているようだが、状況は劣勢。
だが王華の直感は、そんなモノよりも、遥かに危険なモノへと警鐘を鳴らしている。
『あっちは………』
「……コレは……」
王華はその直感の、心の声のままに走る。
「オイ!?匂い………コイツァ…待て!アーリィ!!!
──チィ!!邪魔だ!!」
ミルコが何か叫んでいるが、関係ない。
この間と同じ。
敵連合の用意した、対平和の象徴。
オールマイトはもちろん、エルネスト、クロコ、ミルコ。
雄英に来てからは、格上の相手とばかりやり合ってきた王華。
だがそれは、表立って殺れる状況ではなかった。
自身の野望を実行に移すには、まだはやい。
オールマイトだけは、感情の昂りが抑えられず本気で殺すつもりで挑んでいるが、それでも足りない。
だから、ちょうどストレスの解消先が欲しかったところだった。
前回の脳無はオールマイトに譲ってやった。
さっきのヤツは、脆すぎた。
だが、今回のコレは、格好の相手。
わざわざサンドバッグを用意してくれるとは、ありがたい。
王華は笑う。
自らの敗北など想像もしていない。
ミルコとの戦闘の疲弊もどこかへ行ってしまった。
この渇きを知らない殺意の衝動をぶつけられる。
どうしようもない苛立ちを発散できる。
久しぶりに、ただ思うがままに壊す事ができる……!
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チョロチョロと鬱陶しい……!!
飛び回る、スピードだけは一丁前の羽があるヤツを踏み潰したのでようやく迎えるが、結構時間を食っちまった。
アーリィのヤツは無事なのか?
私が感じ取ったあの匂い、そして遠くから聞こえる音。
そのどちらもが、バケモノの強さを教えてくれる。
だが、音は既に止んでいる。
近づくにつれて、周りの建物の倒壊具合は激しさを増していく。
なんだ、この匂いは………
ようやく辿り着いたところで、ミルコは立ち止まった。
「お前……本当にアーリィか?」
全身は、夥しい程の傷に覆われている。
その中でも、原型を留めない程ぐちゃぐちゃになっている左腕。私の膝すらも押し退けたその額も腫れ上がり、片側が異常に盛り上がっていた。
それはまるで、角のようにも見える。
「ハーーーハッハッハッハッハ!!!」
身体の殆どを紅に染めた鬼が、巨大な肉片の上で、狂ったように高笑いを上げていた。
みんな大好きミルコ姉さんの上半期ランキングは不明だったのでトップテン入りはしていなかった、としてます。