敵か英雄か   作:eeeeeeeei

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勇者ココロのなりきり魔王ライフ

──────

 

 

 

 

 

「想ちゃーん」

 

 

 マントを翻して次の戦闘の舞台、平地へと移動を開始しようとしたところで、職場体験ぶりに友人と出会い、テンションがあがる。

 

 

「あ!お茶子ちゃん!さっきは大丈夫だったー?当くん攻撃力低いからそんなに怪我はしないだろうとは思ってたけど……」

 

「全然大丈夫!ただ、また負けてしまいましたが」

 

 

 いつかと同じように、タハーと頭をかくお茶子であったが、想は力強い笑みを浮かべた。

 

 

「やっぱり強かったーなんにもさせてもらえんかった」

 

「うんん。耳郎さんとお茶子ちゃん、二人の事は先生も褒めてたよ。それに、当くんは一番やりづらいからねぇ……」

 

 

 最初は笑っていたのだが、想も当と相対した時を思い出し、頬を掻きながら苦笑いを浮かべた。

 ふと疑問が思い浮かんだお茶子は、なんとなく聞いてみた。

 

 

「四人の中だと、誰がいっちゃん強いん?」

 

「うーん……伸くん……か、王華ちゃんのどっちかかなぁ。あの二人相手は、私もまだ勝てないからねぇ……」

 

 

 最終的に蹴り一発で三人まとめて仕留められた、十三分一くんよりも、その二人は強い……

 それに、想の口ぶりからすれば当と想の差は恐らくほとんどない。

 いったいこの四人はどれ程上にいるのかと、麗日が思ったところで、もう一人来訪者が現れたようで、想は走り出していた。

 

 

 

「梅雨ちゃーん!!久しぶりーー会いたかったよー!」

 

 

 想が太陽のような笑顔を浮かべて抱き付いた相手は蛙吹梅雨。

 梅雨も想の頭を撫でながら、久しぶりの再会を喜んでいた。

 

 

「私もよ。想ちゃん」

 

「梅雨ちゃんの相手、伸くんだけど頑張ってね。何もさせてもらえないかもしれないけど、攻略するなら────ん?」

 

 

 梅雨に伸の攻略法を、と言っても立ち回りくらいしか言えないが、話始めた想の口に、梅雨は指を当て言葉を遮る。

 

 

「想ちゃん。私たちも、本気でやってる。だから、自分たちで考えてやるよ」

 

「えぇ、お茶子ちゃんの言う通り。気持ちは受け取っておくわ。優しい想ちゃんだから、もしかして本気でやらないんじゃないかと思って、お話に来たの」

 

 

 金色の瞳を丸くしている想であったが、そっと梅雨の指を口から話すと、二人の手を取った。

 丸くなっていた瞳には、今は燃えるような闘志が宿っていた。

 

 

「梅雨ちゃん、お茶子ちゃん、ありがとう。そうだよね……

 私ね、本当はやる気なかったの。悪を倒すために、私の力はあるのだから……でも、二人のおかげでわかったよ。みんなにも必要だよね、負けイベント。私が魔王のように、一度負かしてあげる。見ててね!私の本気!!」

 

 

 そう言って、白い歯を見せて、ニシシと笑う想に、自然と二人も笑顔になったところで、想は闘いの舞台へと向かった。

 

 

 

────

 

 

 

 

「……上鳴さんはこの位置でお願いできますか?」

 

「おお!電撃なら任せとけ」

 

「八百万と俺で、この地点まで誘導すれば良いわけだな」

 

「そこにオイラがあのゆったりした服の上からでもわかる、あの桃色天然おっぱいに!!」

 

「良い加減自重したまえ!!」

 

 

 なかなか現れない想のおかげで、実際の戦闘の場で作戦を立てられたのは大きい。

 罠をしかけてはいけないとも、何も言われていない。

 

 

 前二戦を見て、八百万は考えていた。

 

 帝さんは片手片足は使っていないにも関わらず、無傷で勝利。

 十三分一さんは、パッド以外への攻撃は一度も加えていないままに勝利を納めた。

 

 恐らく、亡女さんも何かしらのハンデを背負ってここに来るはず。

 

 『敵だと思って』

 

 あの言葉と態度のおかしな中指先生の言葉の裏を取るのなら、私たちの相手は、個性の判明している凶悪な敵であり、何かしらの負傷や消耗をしていると言う想定のはず。

 

 きっと、それにも気づけと言うことでしょう。

 

 だから、早くから移動して罠を張る私たちも何も言われてはいない。

 

 U組の方も、問題児と言われてはいるけど、訓練として成立しているし、お二人のアドバイスも的確。

 ただ強すぎるから、隔離されているのでしょうか……?

 

 

 八百万はU組を好意的に捉えており、この訓練を終えた時、自分はより成長するだろうと思っていた。

 

 

 ある意味で、U組一の問題児を相手にするまでは。

 

 

 

────

 

 

 

『はじめーーーって、おい?亡女?どうした?』

 

 

 マイクを通して、開始の号令が終わり切る前に、想の様子に令親は声を掛けた。

 

 

「……貴様も気付いたか?亡女想はなぜかは知らんが本気でやる気だ。急がねば、全員死ぬぞ?」

 

 

 腕を組んだ王華の呟きが終わる前に、令親の姿はその場から消えていた。

 

 

「帝ちゃん、どう言うこと?」

 

「想ちゃんが、どうかしたん?」

 

 

 そんな王華の前に、麗日と蛙吹が不安そうな顔をしている。

 その様子に、王華は教室で二人の事を、"友達"ができたと言って笑っていた想を思い出していた。

 ニコニコと、心底嬉しそうに笑う想を。

 

 

「焚き付けたのは貴様らか。亡女想に加減などと言う概念は無い。友だというのなら、もっと奴を知るべきだったな」

 

「焚き付けた……?」

 

「そんな、私たちは"普通"に想ちゃんを応援しただけで……」

 

 

 麗日の呟きに、苛立ったような態度と声で王華は答える。

 

 

「言っていただろう?問題児だと。一般的な家庭で育った貴様らの言う"普通"と、親の顔も知らぬまま、10年近く軟禁された者の"普通"が、同じだと思うか?」

 

 

 問題がある。

 それは自身に問題がある場合と、育った環境による場合が大半。王華はどちらにも当てはまり、当は前者に当てはまる。

 そして、想は恐らく後者であった。

 

 王華のその言葉に二人は顔を見合わせて、心配そうに、A組の友達と想を見ていた。

 

 

 

────

 

 

 

「なんか、アナウンスおかしくなかったか?」

 

「既に開始している、気を抜くな」

 

「その通りです。相手は明らかな格上として、臨みましょう」

 

 

 開始の合図の後の、令親の問い掛けが気になる上鳴であったが、障子と八百万は、想の一挙手一投足を見逃すまいと集中力を高めている。

 

 

「動く気配はないな……」

 

「なぁ、飯田……なんか、雰囲気やばくないか?」

 

 

 後方にいる飯田は保須市での、ヒーロー殺しの強さが脳裏をよぎり、峰田はなんとも言えない不安に駆られていた。

 

 

「私の本気、見せてあげるね……大丈夫、負けイベントの後は大抵捕まっちゃったり奴隷になったりするけど、私はそんな事しないから」

 

 

 そんな五人を、悠然と見つめていた想はゆっくりと口を開いた。

 

 

「ふふふふふふふ………とくと見よ。そして味わえ。私の力を……」

 

 

 突如としてコスチュームは袖まで吹き飛び、その両腕の肌は焼け焦げている。

 同時に、普通ではない、異常でしかない程の電撃が辺りに撒き散らされた。

 

 

「これ……やばくね?」

 

 

 冷や汗を垂らしながら呟く上鳴と、絶句し、何も言えない四人。

 鳩走る電撃はどんどんと小さくなり、その力をより濃密に、凝縮していく。

 

 

「我が前の敵を薙ぎ倒し!押し潰せ!永遠の眠りを与えろ!!ケラヴノススピューラ!!」

 

 

 その力は、まるで雷を結晶化したような黄金に輝く大槌となり、それは見る者の視界を覆うほど、強く光り輝いていた。

 

 

「さぁ、抗って見せろ……私の、本気に!!」

 

「「…………」」

 

 

 上鳴も峰田も八百万も障子も飯田も、モニターを見ている者たちも、誰もが絶句している。

 

 直接対峙している五人は、走馬灯というのはこれを言うのだと思っていた。

 全ての動きがスローモーションに見え、幻覚のように、過去の映像がフラッシュバックしている。

 振り下ろされる力の結晶も、ひどくゆっくりと感じる。

 そして、五人ともがこう思った。

 

 これに抗う術は────無い。

 

 

 

 

 

「その武器消して動くな」

 

 

 左の親指を、背後から想の首に当てている令親。

 爪には亀裂が入り、その亀裂は爪を超え、肉を割き、手首迄がハサミで無理矢理切り開いたかのように、ズタズタに切れ込みが入っている。

 

 

「あれ?先生、なんで?これは負けイベントでしょ?オールマイトまで、どうしたの?」

 

 

 辺り一帯を包み込んでいた雷神の大槌の暴風は消え去り、残っていたのは、不思議そうな顔をしている、両腕の肉が焼けただれ、骨すらも見えかけている程の重傷を負った想だった。

 痛がる様子もなく、普通に尋ねる想であったが、後ろに立つ令親からも、正面に立つ険しい顔をしたオールマイトからも返事はない。

 

 そして、オールマイトの後ろには、生きている事にホッとしている五人の生徒たちがいた。

 

 

「離してよ。約束したの。二人に私の本気を見せるって」

 

 

 ベキベキと音を立てて、亀裂の入っていた爪は捲れ上がる。

 だが、令親は顔色ひとつ変えること無く、口を開いた。

 もちろん、親指は、離さぬままで。

 

 

「バッカ。俺とも約束したろ?今回は個性使っちゃダメだって。帝も当も、ちゃーんと守ってたぞ?」

 

 

 そう言った令親の方へ、ぐりんと首を曲げた想の声は、僅かに震えていた。

 

 

「それは、わかってるけど……"友達"と約束したの!見ててねって、言ったの!!邪魔しないでよ!!先生だって…仲良くしろって、約束は守れって言った!!貴方はもしかして、先生の皮を被った魔物!!?」

 

 

 直当てしてんのに、ここまで動けるか……

 前回は全く動けなかったはずだが、ほんと末恐ろしーな、このガキども……

 

 

「……マジで言ってんの?俺が被るのは羊か猫だけだっつーの。魔物じゃねーっての」

 

「羊も猫も、人を襲うなら退治しなきゃね……私が、殺してあげる!!!」

 

「んなメチャクチャな……動くなよ。チッ、二重掛けでもこの指じゃキチィな」

 

 

 ビキビキと、ゆっくりではあるが大剣を生成し動き出す想。

 舌打ちをしながらも、想の額に右手の人差し指を押し当てようとしたところで、令親の動きが止まった。

 

 

「とりあえず、お前は赤点補修地獄行きな」

 

 

 パッと、親指での指図をやめて垂れてくる血液をゴシゴシと乱暴にスーツで拭き取ると、令親は高速で飛来する"二人"を受け止めた。

 

 

 

────

 

 

 

 想の創り出した大槌が消えた時、王華は呆然とモニターを見続けている二人の態度に苛ついていた。

 

 

『……友達、なのかな?本当に』

 知らん。だが、私と燈のような関係でない事は確かだな。私なら、君が暴走していたらどんな犠牲を払おうとも止めるよ。

 

『私が王華を止めたのと、一緒だね。私だってそうだよ』

 むっ……

 

 ひょいと、燈は一瞬実体化して、二人の肩を叩く。

 振り向いた二人は、既に消えている燈を見ることなく、王華を泣きそうな顔で見るが、肩を叩いてきたはずの王華が妙な顔をしている事を不思議に思う。肩を叩いた、その理由も。

 

 

「帝さん……」

「帝ちゃん……」

 

 

 全く、燈は優しすぎる。

 私たちには関係ないのだから、放っておけば良いものを。

 

 

「……なにもしないのか?貴様らは亡女想の友ではないのか?」

 

 

 王華の問い掛けに、モニターを見ていた二人は同時に答える。

 

 

「「止める!!」」

 

 

 そんな二人を見て、静かに笑う"二人"。

 

 

『手伝ってあげるんだね』

 燈が仕向けたのだろう?仕方ない。

 

『王華も本当はしようとしてた癖に』

 そんな事、ない。

 

『ほんと、素直じゃないなー』

 五月蝿いぞ。

 

 

 

「手を貸してやる。麗日お茶子、貴様の個性でどちらも浮かせろ。

────早くしろ。教師共に亡女想が気絶させられるのを待つつもりか?」

 

 

 素早く蛙吹は麗日に抱きつき、麗日は蛙吹と自身を無重力で宙へと浮かせる。

 

 覚悟を決めるまでが遅い……が、その後の反応は、まぁ及第点をやるか。

 

 王華はピタリと二人の背に両手を付けると、一気に空へと押し出した。

 

 

「着地は、貴様らで上手くやれ」

 

 

 高速で空を舞う二人には、そんな王華の声は届いてはいなかった。

 

 

 

────

 

 

 

「「想ちゃん!!」」

 

 

 なんで、来たんだろう?私まだ本気出せてないのに……

 

 今の私は4のキングレオであり、5のゲマであり、ラヴォスだ。

 敗北を刻み込む事で、成長を促す筈なのに……

 

 というか、なんでそんな悲しそうな顔を?

 

 まだ誰も倒してない。

 憎悪のこもった目も、向けられてない。

 何より、約束を果たせてない。

 

 

「想ちゃん……ごめんなさい」

 

「私、帝さんに言われてショックだったの。友達だと思ってた。想ちゃんの事わかってると思ってた。でも、今の想ちゃんを見て、想ちゃんの事、全然知らなかったって、不甲斐なくなって……」

 

 

 あれ?私謝られてる、の?意味がわからない。

 こういう時、どうしたらいいんだろう?

 「き、貴様らは!?」

 でも、

 「フハハハハッ!よく来たな!」

 でもないよね?

 

 脳内にいろいろな悪のイメージが思い浮かぶが、そのどれもピンとこない。

 

 

「えっと……なんて言ったらいいか、わからないんだけど……」

 

 

 本当にどうしていいかわからなかったのだけど、急に、なんだか凄く温かい。

 

 

「もういいの、想ちゃん。別の約束をしましょう?」

 

「うんうん!私たちはこれからも友達だよ。一緒にご飯食べたり、遊んだり、もっと色んなことしよ!」

 

 

 二人は、そんな想を抱きしめていた。

 

 

 誰かに抱きしめられるのって、こんなのだったんだ……

 すごく、きもちいいなぁ。

 

 

「うん……約束…ね」

 

 

 梅雨ちゃんは泣いてて、お茶子ちゃんは笑ってて、

 

 なんでだか、私は泣きながら笑ってた。

 

 

 

 

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