敵か英雄か   作:eeeeeeeei

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余興か余談か

──────

 

 

 

 

 

「不完全燃焼だもんねー。いやーわりーわりー。でも、ヤオヨロッパイもいるし、ここは俺が人肌脱ぐぜ!さーこい!有精卵ども!!」

 

 

 想はリカバリーガールの元へとオールマイトが連れて行き、蛙吹と麗日は元の中央広場へと戻っていったところ。

 嵐の後のように、呆然と取り残されていた五人に対し、ビシッと、オールマイトのようにポーズを決めて言い放つ令親。

 

 

「……………」

 

 

 沈黙が辺りを支配したところで、イラついたような、投げやりなような態度で令親は姿勢を崩した。

 

 

「……おら!!もーいいからはじめるぞーー!」

 

 

 両手をポケットに捻じ込み、ダーク系のスーツのポケットは左側のみどんどんとその色を濃くしていく。

 

 

「俺は個性も、腕も足も使わないからさー。手負いの敵だとでも思え。一発でも入れたらお前らの勝ちでいいぞ」

 

 

 そんな情緒が不安定な令親に目を取られている五人であったが、そもそも右腕には怪我を負っており、手も足も、個性も使わないでどうするつもりだと少し困惑していた。

 

 

「さっさとかかってこんかい!!恥ずかしがってるおじさんを待たせるんじゃねーよ!!」

 

 

 とんでもない速度で障子に肉薄すると、頭突きを喰らわせる。

 頭を押さえながらも、後ろへ飛びのこうとする障子に追撃のショルダーチャージをぶちかまし吹き飛ばした。

 

 

「へいへーーい。腕の使い方がなってないぜ。せっかくいっぱいあんだから、もっと自由に使えよ。食らった後の反応は悪かぁなかったけども」

 

「いきなり……」

 

 

 数メートルは吹き飛んだ障子に苦言を呈していると、意外な言葉が意外な奴から聞こえる。

 

 はぁ?

 動きからして俺の意図に気づいてると思ってたが、そりゃないだろ。

 せっかく久々に真面目なことしてるって言うのに。

 

 

「いきなりもクソもあるか。USJん時は丁寧に時間割にでも書いてあったのか?準備万端で待ち構えたか?はじめって言っただけありがたいと思って欲しかったんだが、優等生ってなずいぶん脆いなー。あーそっか。なんたって、八百万家の"お嬢様"だもんなー?」

 

 

 嫌らしい笑みを浮かべている令親のその姿は、完全に悪役にしか見えなかったが、誰がどう考えても明らかな挑発。

 

 

「むっ……上鳴さん!障子さん!作戦通りに!!」

 

 

 流石にそれは理解しているようで、冷静に行動に移る八百万。

 

 まぁ、一年っても雄英だしな。そこは及第点をやろう。

 ふむふむ、作戦かなんか知らんが、"最後"の仕掛けはアレか?

 ん?そういや上鳴の個性も、掠ったら、一発に入るか?

 

 …………ヤベ。

 

 

「喰らえ…!!無差別放電──」

 

「本気度30%……!!」

 

 

 上鳴に対して、殺気を放つも上鳴は止まる事はない。

 その様子に、令親は口角を釣り上げた。

 

 

「130万ボルト!!!」

 

 

 亡女のが効いたか。

 コイツら30%くらいじゃもうビビんねーな。

 よきよき。

 

 

「あま〜い!ヤオヨロガード!!」

 

 

 保護色のような色をした絶縁シートに包まり接近していた八百万のシート内に、カッコ悪すぎるがゴロゴロと横に転がりながら潜り込む。

 

 

「けしからんぞ、この胸はなんだ!?ちょっとは帝にわけてやれ!!」

 

「ちょっ……最低ですわ!!」

 

 

 完全に密着して、ニヤけている令親に棍棒を創造して殴りかかる、のではなく、鋭く突いた。

 

 

 

────

 

 

 

「………殺す」

 

『ちょ!王華!今は暴れないでよ!時が来たらでしょ!』

「王華ちゃんの奥ゆかしいところ、好きだよ私!今は、とりあえず続き見てよー!」

 

 

 モニター越しに、王華の髪はくしゃくしゃと逆立ち始め、周りのA組は距離を取っていたが、中からは燈が、外からは葉隠が宥めていた。

 

 

「五月蝿い。邪魔だ葉隠透。それに、奥ゆかしいのではない。貴様らが異常なのだ」

 

「ちょっと帝、落ち着きなって」

 

 

 そんな王華の肩を掴んだ耳郎の腕を取り、一思いにへし折ってやろうとしたところで、やめた。

 

 

「貴様も、そうは思わんか?」

 

「……まぁ、思うけど……なんかイヤだな」

 

 

 耳郎にシンパシーを感じ、王華は落ち着きを取り戻していた。

 

 

 

────

 

 

 

「そのポジションは……ゆるさねぇ〜〜!!!」

 

 

 八百万は棒の使い方わかってるけど、まだ甘いな。使い方は合ってても、使い所が違うんだよなー。今の場面は突きじゃなくて、薙ぎが正解。

 

 峰田は……ふーん。意外と考えてんな。

 にしても、高校生だし気持ちはわかるが、性欲全開だなコイツ。

 だが、それもまだまだガキンチョだな。

 

 

「フッ…」

 

「クソメガネェェェェェェエエエ!!!」

 

 

 勝ち誇り、左手をわきわきとする様子の令親に、峰田は発狂している。

 

 

「おっとーーー!」

 

 

 峰田のモギモギを地を這うような、蛇のような動きで躱したところに、飯田。

 

 

「レシプロバースト!!」

 

 

 はっや〜〜。

 ふくらはぎの太さは伊達じゃないか。

 

 

「はえーからこそ、線じゃなくて面も意識しないとね。四角メガネくん」

 

 

 一直線に迫る飯田を前に、背中を地につけ、ノーハンドウィンドミルで高速回転して飯田の腕を、足を、全て紙一重で躱す。それは、傍目には飯田が令親をすり抜けたようにも見えた。

 そして令親は無意味にヘッドスピンからフィニッシュポーズまでを決めていた。

 

 

「避けられた時考えないと。速さにも種類があるのは帝も言ってたろー」

 

 

 パチパチと乾いた音がモニターの前に響く。

 芦戸一人が、モニター越しで拍手をしていた。

 

 

「まだですわ!!」

「まだだ!」

「オイラのヤオヨロッパイー!!!」

 

 

 巨大な板を創造していた八百万。

 左右からは障子と、怒りの形相の峰田。

 

 そして、

 

 

「レシプロ!!!」

 

 

 巨大な板ごと、高速で飯田が突っ込んでくる。

 

 左右は塞がれ前には壁。

 まぁ、割れば良いけど攻撃手段が頭、肩、尻くらいしかないしなー。

 後ろに引いても意味がない。

 ならばと上空へと飛んだ令親に、四方八方から峰田のモギモギが飛び込んでくる。

 

 

「これで、逃げられませんわ!!」

 

 

 けっこー、考えてんな。

 個性抜きの亡女だったらマジで勝ってたんじゃねーかな。

 

 投げられるモギモギ、それと同時に、地面からワイヤーが盛り上がってきている。

 片側を高い位置に括り付けたものを、事前に地中へと埋めていたのだ。もう一方の端を引っ張ることにより地上へと飛び出て、それは宙に舞う令親に迫っていた。

 

 

 

「へへっ!俺の、出番!!」

 

 

 障子の大きく複製させた腕やその身体で隠されていたその先には、当然のように上鳴がおり、その手には、ワイヤーが握られていた。

 

 なるほど、上手いな。

 本命は峰田ではなく、障子で隠していた上鳴。

 Bランクくらいのやつなら、ガチで引っかかってたかな。

 

 

「当たんなきゃ、意味ねー…ゾォォォォオオオ!?!?」

 

 

 とはいえ、そんな都合よくワイヤーが当たる訳もなく、余裕の表情の令親であったが、突如絶叫。

 それもそのはず、まるで大きな縄跳びのように、障子は八百万特性の絶縁手袋をしている腕で、そのワイヤーを大きく回す。

 そのワイヤーに張り付くモギモギ。

 それに張り付く令親。

 

 そして………

 

 

「疾走電流130万ボルト!!!」

 

「あばばばばばばばばばばばば…………!!」

 

 

 光と同じ、秒速30万kmで到達した電気は令親の体内を駆け巡る。

 間抜けな悲鳴を上げながら火花とスパークを撒き散らす令親は、飯田が押し倒した板に押し潰された。

 

 

「勝ったのか……」

 

「おそらく……」

 

「一発は、十分すぎるほど入れた」

 

「オイラ、もうモゲないぞ……」

 

「私達の、勝ちですわ───」

 

 

「こーら。指揮官が残心を忘れちゃダメだぞ?」

 

 

────ッ!!!

 

 

 背後からの声に振り向くと、

 

 

「でも作戦は良かった。Bランクくらいの敵なら全然やれてただろう。ただ!SSSランクの俺はまだ無理だけどな!!がははははは!!!」

 

 

 漫画のように、ストレートの金髪はクルクルと丸まり、アフロのような姿の令親が笑っていた。

 

 

 

──────

 

 

 

 蛙吹・尾白・砂藤・瀬呂・轟、その誰もが油断などしていない。

 

 

 一回戦、王華の試合は、教師の如く、教えるように余裕を持っての王華の圧勝。

 

 二回戦、当の試合は、遊んでいるかのように、パッドのみを破壊し、最後は一発の蹴りで全てを終わらせる神技で当の勝利。

 

 三回戦、想は試合には負けたが、そのかけ離れた力の差を見せつけられた。

 

 そして、第四戦。

 

 五人ともが、試合開始前を思い出していた。

 

 

 

────

 

 

 

「帝。糸宿って、強いのか?」

 

 

 この訓練が始まってから全員の解説役に定着しつつある王華は、うんざりしつつも切島のこの質問にもしっかり答えていた。

 

 

「……奴が"目覚めた"らだが、アレに勝てるものなど、この世に数えるほどしかおらん」

 

「王華ちゃんですら、伸のヤロー相手はきちーもんねぇ」

 

「五月蝿い」

 

 

 王華の言い方が多少気にはなるが、糸宿伸は当より、想よりも上。

 当の口振りからすると、その力は王華よりも上であると理解した五人。

 

 ゴクリと喉を鳴らし、五人共が、覚悟を決めた。

 

 

 

────

 

 

 

「………んん……」

 

 

 

 自分の対戦ステージが、山岳ゾーンだと分かった時から既に移動しており、ひたすらに眠っていた伸はもぞもぞと蠢いている。

 

 寝付きが異常に悪く、いつも寝ているように見えて、殆ど寝た気にならない伸は、寝苦しそうに寝返りを打っていた。

 

 

 

「…あれがU組最強?」

 

「なんとか、なりそーだけどな」

 

「たしかに」

 

「………」

 

 

 尾白は眠っている、小動物のような伸を見つけ、指を差す。

 瀬呂はその様子に勝てるのでは無いかという想像が膨らみ、砂藤は瀬呂に同意している。轟は、王華の強さを目の当たりにしており、それよりも強いと言う伸の事を。まだ計り兼ねていた。

 

 

「寝ているのなら好都合よ。轟ちゃん、開始と同時に終わらせてしまいましょう」

 

「あぁ……」

 

 

 A組の作戦は、中距離からの高火力攻撃に轟。

 中距離からのサポート、撹乱に蛙吹。

 遠距離からのサポートメインで瀬呂。

 近距離での攻撃兼壁役で尾白と砂藤という布陣。

 

 但し、開始前は中距離以上の距離を保っていた。

 

 

「………ん…ふ、わぁぁぁぁぁぁあ……」

 

 

 むくりと起き上がった伸は、小さな身体をみるみると大きくし、大きな欠伸も一つしたところで、ようやく現状に気づく。

 

 

「……何すりゃいいんだったか?」

 

「私達との、戦闘訓練よ」

 

 

 律儀に答えた蛙吹を見つめる伸と目が合った瞬間、蛙吹は思わず飛びのいた。

 

 

「ど、どうした?」

 

「梅雨ちゃん!」

 

 

 生物としての本能が、アレは危険だと判断した。

 梅雨自身も、アレは得体が知れない、本当に人間なのかも怪しいと言う、生まれて初めての感覚に驚いている。

 少しして、自分を心配する砂藤と瀬呂に気づく。

 

 

「大丈夫よ。ただ、気を引き締め直す必要があるわね……」

 

 

 冷や汗を垂らしながらも見つめる先の、何も映すことのない真っ黒な瞳。

 底の見えない深淵に囚われたかにも思えたが、それは唐突に閉じられた。

 

 

「あぁ。思い出した。気絶させれば良いんだ」

 

『あってるけど、約束も覚えてるかー?』

 

 

 先程の戦闘訓練そのままの状態で、スピーカーから令親の声が響き、伸はうなづいた。

 

 

『うぃ。じゃーはじめっ!!』

 

 

────キィィィィイン……

 

「……ッ!?」

 

 

 体育祭の時と同じ、開始直後の大氷結。

 だが、あの時よりも大きく速い。

 その大きな氷の山が、天に向かって生えていた。

 

 

「何が……!?」

 

 

 上半身を何かに押し出され、気づけば下半身は前に引き寄せられていた轟。

 

 

「……伸ばして縮めた」

 

 

 左右の手を翳し、轟の上下との距離を伸縮させ無理矢理に体勢を変えさせた伸。

 空中で仰向けになっているような轟は空へと大氷結を放っており、伸はその氷山の上に、瞬間移動のように出現すると、五回程、その氷山に手をついた。

 

 

「──神剃(かみそり)

 

 

 氷山からくり抜かれたように、氷の柱が五人を襲い、全員が一瞬にして柱と地面に押し潰された。

 

 

 

 

────

 

 

 

 

「……いい気味ねぇ」

 

 

 クルクルの髪を櫛で一生懸命にといている令親に対して、Sっ気満々の顔で、心底嬉しそうに笑うミッドナイト。

 

 

「うるせーぞ睡。また、公衆の面前でドMの醜態晒させてやるから、落ち着けっての」

 

「はぁ…?」

 

 

 二人の間で火花が飛び散っているが、U組の演習結果の議題へと会話は移る。

 

 

「そもそも、亡女は大丈夫なんですか?」

 

「彼女には、一晩ベッドで眠りさえすれば治ると言う奇跡のような力があるから、問題はないだろう」

 

 

 初めは順調だったU組の演習試験。

 想の暴走により一時はどうなるかともおもったが、上手くまとめた蛙吹と麗日と、王華。

 

 王華の変化には皆が一様に驚くも、良い変化であると受け取っていた。

 だが、問題は想。

 

 アレを喰らったら、教師でありプロヒーローである自分たちでも、ひとたまりも無いと思える程の力。

 出所である想を倒す事は可能だが、その秘めた力に戦慄を覚えたのは確かであり、やはりU組は危険であるとの意見は多かった。

 学校外へは、まだ出すべきでは無いと。

 

 

「いや、アイツは大丈夫っすよ。逆に今、蛙吹と麗日から引き離す方がアイツにとってのストレスになる。亡女はようやく世間を知った。今は同年代の、ガキと合わせる方が良いと、担任としてはそう思いまっす」

 

 

 ミッドナイトとのキャットファイトを中断して令親は言うが、矛先は令親へと向かい、無茶苦茶だの、教師としての自覚はあるのかなどと散々叩かれていたが、言われ慣れているのか本人は何処吹く風と聞き流している。

 一番の問題へと話は飛んだ。

 

 

「それよりも、糸宿だ。アイツ、強すぎねーか?」

 

「我々教師陣でも、一対一で対抗できるのは限られる。個性の相性でもイレイザーヘッドか、ミッドナイト、オールマイトくらいだ……武器でも持っていたら手がつけられんぞ」

 

「……誰の言う事も聞く事は聞くってのが、また不気味だ。校長は、糸宿の過去の詳細については何かご存知なんですか?」

 

 

 糸宿 伸の過去。

 教師陣も知っている事は、彼の家族に母親と兄妹がいると言うことと、その家族が生きているのか、死んでいるのかわからない状態という事は知っていたが、なぜそうなったかは知らない。

 伸がここに連れてこられた理由は、敵を複数体殺害し、その場に居合わせたヒーローすらも瀕死の重傷を負わせたから。と、過去については詳しくは知らされていなかった。

 

 

「彼も彼で、また特殊だからね……中指くん」

 

「ん?言っていいすか?まぁ、良くある…わけでもないッスけど、オールマイトさんから言った方が良いんじゃないですかね?アイツを保護したの、オールマイトさんでしょ?」

 

 

 思い口を開き、伸にまつわる全てを聞いた教師陣。

 誰も何も言わぬままであったが、令親は沈黙を破る。

 

 

「とりあえずですけど、アイツも言いつけは守ったんですから、連れて行ってやってくださいよ。林間合宿」

 

 

 何か考えがあるのか、適当な事を言っているのかはわからない。

 だが、最終的に会議の結果は、令親の希望通りとなった。

 

 

 

 

 

 "伸"本人は特に問題はないが、周囲から危険視される程の問題児。

 それは純粋に、その高すぎる戦闘力が主な理由だった。

 

 U組最強。

 いや、現時点でプロヒーローでも敵うものはごく僅かと言えるほどの男。

 

 U組対A組の戦闘訓練第四戦である、伸の試合は、開始からわずか10秒足らずで五人ともが全滅と言う結果であった。

 

 




無口なキャラは扱いづらい……
と無意識に避けていた伸くんに次回スポットをあてようと思います。

読了ありがとうございました!!
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