敵か英雄か   作:eeeeeeeei

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復讐か逆襲

──────

 

 

 

 

「なんで俺が雄英の尻拭いを…こちらも忙しいのだがな」

 

「まぁそう言わずに…OBでしょう」

 

「あいも変わらず、ぐちぐちとケツの穴のちぃーちゃい男じゃのぉ。ワシがやるけぇ帰ってもええんで?」

 

「なんだと……?」

 

「煽らないでくれクロコ。SCCATの派遣は助かっているが、ヒーローの力も必要だ。雄英からヒーローを呼べない今、エンデヴァーも大局を見てくれ」

 

 

 集まっているのは、警察組織にSCCATの特別チーム。そして、No1ヒーローであるオールマイトをはじめ、エンデヴァーやベストジーニストといったトップ10入りを果たしているヒーローも多く集まっていた。

 クロコの言葉にその身から立ち登る炎の勢いを増していくエンデヴァーであったが、塚内の言葉に2人とも鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

 

「今回の事件はヒーロー社会崩壊の切っ掛けにもなり得る。総力を持って、解決に当たらねば」

 

 

 八百万と泡瀬は耳郎と葉隠を助け出しながらも脳無に発信機を取り付けるという大手柄をあげていた。

 そのため、すでに敵のアジトの場所は判明しているが、2箇所に分かれている。警察の地道な聞き込みにより拉致被害者である爆豪の居場所は既に判明しており、主戦力は爆豪の奪還と保護に向かい、分隊としてもう一方のアジトを襲撃し、完全に退路を断つというこちらの部隊も二手に分かれる作戦。

 

 

「俊典。俺なんぞまで駆り出すのはやはり……」

 

「"なんぞ”なんぞではありませんよグラントリノ!ここまで大きく展開する事態。そして、帝少女の失踪と、拳藤少女らの相手の特徴……」

 

 

 グラントリノもオールマイトも、あの日を思い出していた。

 奴を仕留めたと思ったあの日。

 目の前で救えなかった命がひとつ。

 そして、怒れる少女と、逃げおおせた子供。

 

 

「あの嬢ちゃん……小僧と遠見も来るか」

 

「えぇ、恐らく……そして、奴も必ず動きます」

 

「オール・フォー・ワン…」

 

「俺は隠居したつもりだったんだがな……」

 

 

 二人の会話の切れ目に、話しかけてくるものがいた。

 

 

「おい…八木」

 

「……久しぶり。中指くんは、一緒じゃないのか?」

 

 

 オールマイトこと八木俊典の同級生であり、同じ雄英高校ヒーロー科を卒業した鰐淵玄誇。

 

 

「あいつはよぉわからん。しばらく好き勝手する言うけぇどっかにゃおるじゃろぉとは思ったったが、グラントリノまで呼び出しとるのを見たら……こりゃあ、そう言う事か?」

 

「……あぁ」

 

「鰐淵、お前も油断はするな」

 

「アンタにボコされた時のままじゃあないで。まぁええわ。

……八木。ワシはお前に勝ち逃げされとるんじゃけぇ、死なんとけよ」

 

 

 グラントリノの僅かな教員期間の間、同級生であるクロコもオールマイト程ではないと言え、叩きのめされた記憶はまだ消えていない。

 そして、入学当初はオールマイトよりも完全にクロコの方が強かった。だが、だんだんとではなく、段飛ばしで強くなっていくオールマイトにクロコは負け、以来その差が開く事はあっても縮む事は一度もなかった。だが、ワン・フォー・オールの事を知らないクロコであっても、オールマイトとの差が僅かに縮んでいるような、そんな気がしてならなかったのだ。

 巨体を揺らして下がっていくクロコであったが、そこで塚内の号令がかかった。

 

 その数分後、雄英の謝罪会見が終わるのを合図に、突入作戦が開始する。

 

 

────

 

 

 

 突入作戦開始の一時間前。

 切島、轟、緑谷の三人と、ストッパー役で同行を決めた飯田と八百万の五人が八百万の案で街で買い物をしている頃。

 

 王華はビルの屋上でひとり、その縁に腰掛けて、空は暗くとも、ネオンに明るく照らされている街を見下ろしていた。

 

 

「………」

 王華……本当にやるの?

「勝算はあるんだ。私にも、まだ奥の手はある。だから…そんな顔をしないでくれ」

 ……見えてないくせに。

 

 

 独り、街を見下ろしていた王華は苦笑した。

 燈は表に出ておらず、王華の内側に存在している。

 顔など見えるはずもないのだが、王華は敢えてそう言った。

 

 

「わかるさ。君のことなら」

 ……本当に?

 

 

 そう言った燈は王華の前に完全に実体化する。

 王華の顔を両の手で包み込み、唇が触れ合うほどに、燈が酸素を必要としていた時であれば、呼吸がお互いにかかるほどの至近距離で王華を見つめる。

 その眼は、どこか悲しそうにも見えたが、オーラとして存在するが故に、地面のない空に浮かぶその姿も顔も幻想的で、美しかった。

 

 

「……私はずっと止まったままだ。奴に敗北を喫したあの日から。だから」

 

『強い王華じゃなくてもいいの。私が憧れたのは、確かに昔の王華だけど… 私と友達になってくれた後の王華の方が、好きだよ……?仇なんて取らなくていい。恨んでるし、二人の夢だけど、今はきっと……』

 

「奴もそうだが…もう一人、いや、二人、殺したい相手もいる。燈を奪った奴も、その切っ掛けとなった者も、この手で消してやりたいんだ。私の気持ち、君にも伝わっているはずだ。この溢れんばかりの怒りが……のうのうと生きながらえていた奴らを見た時の、自分自身の不甲斐なさが……!!」

 

 

 燈の手を取り、言葉を遮った王華の身体は震えていた。

 燈が死んだというのに、奴らはなぜ生きている?

 オールマイトへ虚言を吐いた皇貴も、そのわずかな隙で皇貴を攫い逃げていった遠見も。

 私へと振るわれた拳を、その身を呈して守ってくれた燈を殺したオール・フォー・ワンも。

 あんな屑の言葉に動きを止めたオールマイトも。

 全てが憎い。

 だがそれ以上に、自分が一番許せない。

 憎む相手への言葉は、そっくりそのまま自分へと帰ってくる。

 

 皇貴を早々に始末できていたら。

 父と母と同様に、あの日使用人も皆殺しにしてれば。

 オールマイトではなく、私がオール・フォー・ワンを討てていたら。

 燈は死なずにすんだ。

 ましてや、自分が守られる対象になるなど…

 燈の代わりに、今もこうしてのうのうと生きているなどと……!!

 

 今の王華は、自分自身を一番憎んでいた。

 

 

『わかった……一緒にやろう。でも、忘れないで。

 私はずっと、王華と一緒だよ。

 ──大好き』

 

 

 ちゅ…と、軽い音を立てて燈の唇が、私の唇から離れていく。

 一瞬、何が起こったのか理解できなかった。頭の中は真っ白で、何も考えられない。何秒か、何分か、時間の感覚も抜け落ちていたのでわからないが、我に返って燈の顔を見た時、してやられたと思った。

 悪戯が成功した時の子供のような笑顔。

 頬を染める事などできない身体になってしまったが、確かにはにかんでいるその顔。

 

 

『王華のはじめて、貰っちゃった』

 

「む……燈は、はじめてじゃないというのか?」

 

 

 一方的に奪っておいて、その言種はなんだと思う。そもそも、相手は誰だ?まぁ、これも悪戯の一つだろう。どうせ、冗談だ。

 と思っていたのだが、返ってきたのは予想外の言葉だった。

 

 

『え?うん』

 

 

 当然のようにうなづいた燈。

 その瞬間、何かを失ったような、自分の身体に穴が空いたかのような気持ちになった。

 どんどんと、自分が空虚になっていくのがわかる。

 私にそんな趣味はなかった。が、男に抱かれると言うのもまた想像にない。

 だが、燈はあるというのか?誰だ?思いつく相手が存在しない。四六時中一緒にいたというのに、いったいいつ……

 

 

『お母さんとね。小さい時に』

 

 

 ふふふと笑う彼女に一瞬怒りが湧いてくるも、ほっとした気持ちの方が、安心の方が勝っていた。

 相変わらず、人に安らかな気持ちを与えてくれる。

 燈を殺した奴らへの復讐を果たしたならば、君の望む私になろう。

 あの日までの、私へと戻ろう。

 今の生活も、らしくはないが悪くはないと思っていた私の、その先に。

 全てを清算した後に、だが。

 

 

「……わかるか?私の気持ちが」

 

『もちろん。じゃあ、なおさら頑張らないとだよ。それが私へのご褒美なんでしょ?』

 

「あぁ。例えこの身が滅びようとも、未来永劫を共にしよう」

 

 

 燈が好きだ。

 燈の全てが愛おしい。

 ただ……口付けを交わした時、死んでもいいと思ってしまった。

 アレには勝てないと、オールマイトにも勝てないと、心の隅で思ってしまった。

 このまま雄英で学生生活を続け、燈と、学友と言える者たちと過ごす自分を想像してしまった。

 それは、私じゃない。

 少なくとも、奴らを討ち果たすまでは、私は帝王、帝王華だ。我心を縛る鎖など、全て引き千切り、取り除いてくれよう。

 

 

『頑固だなぁー。でもいいよ。死んでもそばに居る私だよ?もしも王華が死んだら、地獄を案内してあげるね』

 

「クククク……それでこそ。

──そろそろ行こうか。私達の(てき)を倒しに」

 

 

 ヴィランもヒーローも関係ない。

 私達の…この世界にとっての敵であれば、滅ぼすのみ。

 

 

 相変わらず私の事ばっかりで、自分自身の事は全然大事にしない。

 だからこそ、私が大事にしてあげたかった。

 ずっと側で、支えてあげたかった。

 王華を縛っているのは昔から、敵でも英雄でもない。

 私なんだよ…

 

 

 燈の思いに気づく事なく、王華はビルの屋上から飛び降りた。

 

 

 

────

 

 

 

「不思議なもんだよなぁ……何故ヒーローが責められている…!?」

 

 

 敵連合のアジトでは、雄英高校の会見の様子がテレビに映し出されていた。

 カウンターに頬杖をつき、興味なさそうに眺めている当。

 死柄木は自分たちの在り方を話しながらも爆豪の拘束を解く感じか。

 というか、雄英も記者も俺には全く触れずだな。ちゃんといないものとして扱ってんのな。雄英らしく無い気もするし、この会見自体に少し違和感がある。

 選択肢をいくつも浮かべ、次々と当選させていくと、寄り道しながらもその答えへと辿り着く。

 そう仕向けたのは、警察。それすらも仕込んだのが、予想通りの人物。

 王華ちゃんも、独自に動くか。

 アイツに対しての年季の入った怒り具合には、幽霊の女の子が関わっているのは明白。

 あぁ見えて、俺からすれば何がしたいのかブレブレのお姫様に、ようやく理解ある付き人がついたように見えた。が、果たして何するつもりなのか。

 ふーーーむ。

 今後はどうすっかなー。

 

 拘束を解かれた爆豪が暴れているが、関係ない。

 狭い空間だったがかなり寝たので調子は戻っている。

 後は、身体を起こしとくか。

 頭を一度空にして、軽くストレッチをはじめたところで、何やら騒がしい。

 

 

「そう言うこったクソカス連合!したくねーモンは嘘でもしねんだよ俺ァ。テメェは、どうなんだよ?」

 

 

 トントンと頭を叩いてるところで、爆豪が俺へと話しかけていた事に気づいた。

 

 

「あん?俺はやりたいようにしかやらねーよ。過程は別にどうでもいい。結果に繋がるなら嘘でもつくし地面でも靴でも舐め回すぞ?」

 

 

 プライドなんざいらねー。

 やりたいように、やりたいことをやるだけだ。

 この後の展開は見えた。

 王華ちゃんと違って、俺は随分と久しぶりだなぁ……

 

 

「手ェ出すな。お前らも、お前もだ」

 

「あいあいさー」

 

 

 死柄木に適当に返事をしつつも、別にこのやる気は後々のやつなんで、今暴れる気は全くないんだけどなと内心で思う。

 ゆっくりと、爆豪が飛ばした顔に付けていた手を拾う死柄木。

 爆豪はコマで、今は時間がないと言う。

 わかるっちゃわかるけど、そんなに爆豪欲しいかな?

 扱うのめんどくさすぎる気がするけど、まー生徒拉致ってヒーローの評価は下げてるし、雄英の生徒が敵になるってのも仕掛けたいなら俺を使えばいいと思うが、そもそも問題児として受け入れられている自分は、その役にはなれそうにない。

 

 そこで、鳥肌がプツプツと立ち始める。

 見てるな、アイツが。

 

 

「先生。力を貸せ」

 

 

 んっ…?

 やべ、もう来たか。

 

 

「先生ぇ……テメェがボスじゃねえのかよ?……白けんな」

 

「黒霧、コンプレス。また眠らせてしまっておけ。ここまで人の話聞かねーとは…逆に感心するぜ」

 

「聞いて欲しけりゃ土下座して死ね!」

 

 

 ジリジリと下がる爆豪だが、そんな必要はないんだよなー。

 

 

「おいおい、ビビんなよばっちゃん。おいでみたいよ?」

 

 

──コンコン!

 

「どーもォ。ピザーラ神野店です──」

 

 

 俺が扉を指さすと、ノックのような音と、注文した覚えもないピザの宅配に、一瞬ではあるが全員気を取られている。

 

 そして……

 

──SMASHH!!

 

 轟音を響かせて、壁が割れる。

 俺が居るのはカウンターの奥。

 トガヒミコの横で、全員が扉に注目したときにはカウンターの下へと潜り込んでいた。

 飛び出してきて、すぐに伸びては敵連合を絡めとる木々。

 隣で捕縛されるトガを見ながら、相性の悪さに舌打ちをする。

 シンリンカムイか。手数の多さからやり辛い相手。

 もう少しここがいいかな。

 あのジジイとガキンチョははなっからいねーけど、他の奴らは一網打尽にされている。

 んだよ。敵も全然危機感ねーなー。

 

 

「もう逃げられんぞ敵連合…何故って!?」

 

 

 ひどく懐かしく感じる。

 その時はこれ程ではなかったと思うが、肌がひりつくこの感覚。

 俺の作った組織をほんの数分で壊滅に追い込んだヒーロー。

 

 

「我々が、来た!!」

 

 

 オールマイトと共に、次々と現れるヒーローたち。

 めっちゃ有名どこばっかりじゃねーかよ!

 あのジイさんは見たことねーけど、荼毘の頭を蹴り飛ばしたあの速さは相当なモン。

 

 

「怖かったろうに…よく耐えた!ごめんな。もう大丈夫だ少年たちよ!」

 

「こっ、怖くねえよ!ヨユーだクソッ!!」

 

「俺も全然ヨユーっすよ!」

 

 

 ぴょんとカウンターの裏から飛び出した俺に敵連合の視線が突き刺さるも、今は無視。

 底抜けに明るくアピールだけしておこう。

 もうちょい、もうちょい時間が欲しい……

 今じゃ焦っても意味はない。

 拘束されないまま今の立ち位置を取れたのは上出来。

 後は、きっかけだけ。

 

 

「何そっち側と仲良くしてんだよ……何ラスボスがのこのこ来てんだよ……」

 

 

 いーぃ感じに怒ってるなぁ。

 脳無を呼ぼうとするも、脳無がいないと言う黒霧。

 そりゃーワープ持ち相手に挑んできてんだし、対策くらいはしてると思ったけども……こりゃーアジトが何箇所あるかは知らんけど、既に抑えられてんのかな。

 

 

「敵連合よ。君らは舐めすぎた。少年達の魂を、警察のたゆまぬ捜査を」

 

 

 チラリと俺を見られても、困るな。

 この後……邪魔してやろうとしてんのになぁ……

 まっ。警察の努力は認めよう。みんな本名バレてるみたいだし。

 

 

「そして、我々の怒りを!!」

 

 

 とは言えそれがマイナスになるかは別問題だし、怒りで強くなる事はほぼ無い。脳内麻薬で色々誤魔化してるだけ。

 本当に強くなるのは、脳味噌と身体のリミッターを外した時だよ。

 

 

「おいたが過ぎたな。ここで終わりだ!!死柄木弔!!」

 

 

 アンタみたいにね。

 オールマイト……!

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