敵か英雄か   作:eeeeeeeei

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取るか取られるか

──────

 

 

 

 

 

 当とオールマイトの戦闘開始から5分後。

 それと同時に、二度目のオール・フォー・ワンによる無差別な大規模破壊が行われた。

 

 

「………うっぜー足止めしてくれたじゃねぇか。コラ」

 

 

 柄の悪い、チンピラのような声が静かに響く中、クレーターの中心に立つオール・フォー・ワンは、パイプが繋がった黒いマスクで見えないが、たしかに笑っていた。

 

 

「あの瞬間、攻めではなく、救いに動くとは思わなかったよ。それに、まだ未完成とは言え、"ハイエンド"2体をこうも早く片付けるなんて、成長したようで嬉しいよ。令親。」

 

 

 はる…ちか?

 それって……

 

 

「……二人とも、立派だった。お前らはやっぱスゲーよ」

 

 

 中指先生も、SCCATに所属していたはず。

 だから、オール・フォー・ワンを無視して、二人にだけ声をかけたんだと思っていたが、視線を移すとそうではなかった。

 ボロボロのスーツに身を包んだ先生の腕に抱かれているのは、個性が解けているMt.レディ。他のヒーローはと言うと、ベストジーニストは腹が裂け、ギャングオルカもさっきよりも血みどろとなり沈黙している。

 そして、SCCAT所属のヒーロー二人の身体だったであろう物が、ベストジーニストとギャングオルカの周りに転がっていた。

 きっと、そのダメージの差から見てとるに、庇ったのであろう。

 

 

「中指先生……?」

「今、いつ現れたんだ…?」

「と言うか、全員速すぎて、俺には、何も見えねぇ……」

「……下手に動かない方がいい。俺たちには、どうする事もできねぇ」

 

 

 四人とも、この世界トップレベルの戦いを間近に、力の差を思い知っていた。

 だが、いくら雄英の教師といえど、ナンバー4のヒーローであるベストジーニストでも敵わない相手に……無謀すぎる。

 

 緑谷の不安は最もであったが、オール・フォー・ワンの言葉に別の意味で驚愕を受けた。

 

 

「さっきのが、最大のチャンスだよ。そこで仕掛けてこなかったのは、僕の元に、帰ってくる気になったからかい?」

 

 

 え?僕の元…帰ってくると言ったか…?

 じゃあ、中指先生は、オール・フォー・ワンの……部下…?

 

 

「んなわけ。オールマイトに殴られすぎて、頭パーになったんか?」

 

 

 親しげに話すオール・フォー・ワンに堂々と尻を向けると、その姿を消した。

 一瞬で、数十メートルも移動し、Mt.レディ、ベストジーニスト、ギャングオルカの三人をいつの間にか地面に寝かせている令親。

 そっと下ろした時に、絶対に目線は向けられていないにも関わらず、四人は見られている感覚に陥る。

 それもまた一瞬で、いつの間にか元の位置まで移動しており、中指を天へと突き立てた。

 

 

「テメーは真っ正面からボコボコにしてぶち殺す。もののついでに、そこらへんの有象無象も殺しといてやるよ。オラ、かかってこんかい」

 

 

 突き立てた中指をくいくいと曲げながら挑発する令親。

 

 

「誰だか知らないけど、舐めてんじゃ……」

「舐めるに決まってんだろー?B級」

 

 

 マグネは視界を外してはいない。

 レベルが違うというのは、まさにこんな事を言うのだろうと場違いな事を考えていた。

 敵としては駆け出しでもなんでもない。ヤバイ人間というのは何度も見てきた。

 だが、この男は、その中でも頭一つなどではなくいくつも突き出している。

 確かに、乱入者が目前に迫ってきているのはわかっていたのだが、全く身体が動かない。それも良く考えたら、動かないのではなく、あまりにも速度に差がありすぎて、身体が反応できていないだけであった。

 

 小さな悲鳴をあげて、完全に沈黙したマグネの次は、スピナー。

 そして、

 

 

「マジかよ!?このおっ──」

「刺します」

「反応できても、その後がカス」

 

 

 トガを、ビキビキと固められた中指のデコピン一発で気絶させ、腕を庇いながらも個性を発動させようとしたコンプレスを天へと蹴り上げたところで、オール・フォー・ワンと激突する。

 

 

「あん?弱くなったか?」

 

 

 昔と違う戦闘方法に少し思案する令親は拳の応酬をしながらも距離をとった。

 

 

『「遅すぎ──う、ああぁ。 ……えっ?」』

 

 

 そんな令親に向け、倒れ伏している王華もとい燈が文句を言おうとしたが、己の口から、思ってもいない言葉が飛び出し不思議に感じるも、どうやらこの肉体の持主が遂に目覚めたらしい。

 

 

「……帝の事は、そっちで何とかしろ。オイッ!!ガキども!!とっとと逃げろ──ヨッ!!」

 

 

 令親は、オール・フォー・ワンのぶくぶくと膨らみ始めた腕を、目にも映らない速度で接近すると蹴り上げた。

 天へと向けられた腕から放たれた衝撃波は、月明かりに照らされた雲を割る。

 そのまま頭突きをかました令親は、そのエメラルドグリーンの瞳を爛々と輝かせていた。

 

 

「僕が目をつけてた四人は、取らないで欲しかったな」

 

「早いもん勝ちー。アンタがオールマイトにやられてくれたおかげで助かったわ」

 

「まぁ、一人は僕の元に来てくれたけどね」

 

 

 オール・フォー・ワンの発動させた個性【槍骨】により、身体中から突き出される鋭利な槍状の骨の一本を掴み、へし折りながらも別の場所へと突き立てる。

 だがそれは衝撃反転により令親の腕へとダメージが返されるが、血を吹き出した腕の上から、無理矢理もう一方の手で深く押し込んだ。

 初撃は返されたが、一拍おいての二撃目はオール・フォー・ワンの腕へと確かに刺さっている。

 

 

「どーだろな?あいつは俺に似てるから、相当に捻くれてんぞ」

 

 

 両腕を構え、放たれる衝撃波よりも疾く、両足を大きく広げてその腕を左右に無理やり蹴り開く。

 と同時に両腕を頭に打ち付けんとするも、すんでのところで躱される。

 

 

「チッ。てかあんた、セコい戦い方になったもんだなー。お似合いだけども」

 

「随分と減ってしまったからね」

 

 

 お互いに会話をしながらも繰り広げられる超速の肉弾戦。

 大した決定打をいれられぬままであったが、突如令親が声を荒げた。

 

 

「すぐに全部────オイッ!!引けバカ共!!」

 

「おや?僕のあげた【複眼】に、何か写ったかい?」

 

 

 焦ったように叫ぶ令親とは対照的に、そのマスクの下では笑みすら浮かべているであろうオール・フォー・ワン。

 そして、この場に似つかわしくない馬鹿笑いが響いた。

 

 

「ガハハハハ!!満身創痍だなあ!!豚ぁ!!!」

 

 

 ここに来て、またも乱入者。

 それは、王華と燈にとってもう一人の因縁の相手である実弟、皇貴。

 なんてタイミングの悪い……

 

 

『嫌な時に……嫌な顔……』

 

 

 ホントーにこの男の事は、王華の弟とはいえ…大ッ嫌いだ。

 

 

「この時を待っていたんだ!!俺様が、燈を手に入れるこの時を!!」

 

「う、うわぁぁ!?」

 

 

 燈は既に力を使い果たし、肉体を動かし反撃をしようと試みるも、身体は全く動かない。

 それどころか、あの帝王華が飛び込んできた弟に、明らかに怯えているのだ。

 歯痒い、ここに来て、あの衝撃波に身を呈したせいで、私の力はほとんど空っぽ。

 

 

「ハッ!無様だなぁ。ようやく夢から覚めたか?オマエの語る言葉など、叶うことのない妄想だと理解したか!?ハッハッハッハッハーッ!!」

 

 

 王華の頭を踏みつけ高笑いを上げている皇貴と、大地にうずくまり震えている王華を、この場にいる全員がありえないと眺めている。

 あれが、傲慢と自尊心が服を着ているような帝王華の姿か、と。

 そして、燈は自らの信じる絶対の存在の不様な姿に、涙していた。

 

 

『王華、まさかそれ程に……本当にごめんなさ──』

「これで燈は、俺様のモノだ!!」

 

 

 個性を発動させようとした皇貴であったが、そんな皇貴に挑みかかる者がいた。

 令親でも、燈でも、王華でもない。それは誰も予想していない人間であった。

 

 

「失せろこのクソがぁ!!!」

「あぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

 

──BOOOOM!!!

──SMAASH!!!

 

 特大の爆発が皇貴を包み込み、直後に緑色の閃光が皇貴を殴り飛ばした。

 

 

『爆豪くんと、緑谷くん……?』

 

「う、あ?…え?」

 

 

 呆然としている王華に、爆豪は吠えた。

 

 

「何してんだゴラァ!!"こっち"は任せたんだろうが!!テメェがやられてんじゃねぇよ!!」

 

「帝さん、何があったのかは知らないけど……僕が、君を救ける!!」

 

 

 王華に悲しみと怒りの混ざり合った顔を向ける爆豪とは対照的に、背を向けたまま、フルカウル状態を維持したままに皇貴を見据える緑谷出久が、そこにいた。

 

 

『王華、本当にごめん。でも後で謝るから。王華が治ればいいと、強くなればいいと、個性を使ってきたのは本当。でも、言えなかったの、私の本当の気持ちを…言えるタイミングも……』

 

「私は弱者じゃない……豚じゃ、ない……私は、奪われる側じゃない…奪う側なんだ……」

 

 

 うずくまったままに、地面にでも語りかけているのか。

 燈の言葉にも耳を傾けることもなく、その長い金色の髪を地面に広げながら、まるで子犬のようにぷるぷると震えている。

 

 

『おう…か?』

「なに言ってやがる……バカかお前は!!?」

 

 

 燈は悲しそうな顔で王華を見つめ、爆豪は振り返り吠える。

 皇貴はそんな王華を鼻で笑いながらも、爆豪を蹴り飛ばし、左手で王華の髪を掴んで無理矢理に立たせた。

 

 

「させねぇっつってんだろが!!」

 

「喧しい蝿だ」

 

 

 すぐさま立て直した爆豪の爆破を首筋に受けるも、皇貴はビクともしていない。

 王華の髪を掴んでいる腕を振り、爆豪を王華で殴り飛ばし、王華の顔を自らの顔の前まで持ち上げた。

 

 

「かっちゃん!!」

「お、オオォォォォ!!!」

 

「次々と湧いてくるな。喧しいと言っている。レベルの差もわからんか?凡人が」

 

 

 左足を振るい、咄嗟に防御のためにクロスした緑谷の腕に切れ込みを入れ、直後に右足を振るい、突っ込んできた切島を吹き飛ばした。

 

 

「………フッ!!!」

 

 

 轟の放つ氷壁であったが、既に皇貴は轟の横に立っていた。

 

 

「はえぇ…帝クラスの、バケモンかよ…!」

「こんな家畜と一緒にするな。俺が今の…帝家当主だッ!!」

 

 

 轟に向かい、軽く振るわれた右腕でいとも簡単に轟を吹き飛ばすが、その僅かな会話の隙に、高速で飛び込む飯田。

 

 

「レシプロ…!!」

「速いな。──だが、それだけか?」

 

 

 悠々とその蹴りを受け止めた皇貴は飯田の頭を地面へと埋める。

 スッと目を細めて見据える先には、最後に残された、八百万百。

 かつての戦闘訓練のU組のように、一対多であろうと圧倒的な力の差を見せつける皇貴であったが、八百万は想と対峙した際、明確に死を感じたのだ。

 走馬灯を見るほどの濃い死のイメージ。それを乗り越えたのだ。今更、皇貴の殺気で、ここで止まるような彼女ではなかった。

 

 

「まだですわ!!」

 

 

 堂々と立つ八百万の横には、大砲。

 轟音と共に弾は打ち出されたが、既に皇貴は跳躍の体勢へと移行していた。

 

 

「ハッ!!そんなもの、この俺様に当たるはずがなかろう──ムッ!?」

 

 

 砲身が、上?

 

 

 

「帝さんなら気づいたでしょうが、あなたは私たちを舐めすぎです。最初から当てる気など……ありませんわ!!」

 

 

────カッ!!!

 

 

 周囲を覆う眩い光。

 それは全ての視界を覆いつくす。

 その瞬間に、爆豪と緑谷が左右から皇貴が掴んでいる王華を引き剥がす。

 ぶちぶちと、その艶のある金色の髪が嫌な音をたてる中、爆豪は王華から手を離し、個性を発動させた。

 

 

「クソデク、離すんじゃねぇぞ!!コイツは、俺がブッ殺すんだよ!!」

 

 

 爆破により、その髪を焼き切り、緑谷は王華を担いだままに走り抜ける。

 

 

「帝さん……もう、大丈夫ッ!!!」

 

「あ……え……?」

 

 

 腕の中で、そう言って、引きつりながらも確かに笑顔を向ける緑谷に、弱々しい目を向ける王華。

 

 

「大人しくしてろ!クソがッ!!」

 

 

 この場ですらも、その口の悪さは健在。

 そういって、口とは真逆に、どこか心配にも似た感情を爆豪から感じ取っていた王華は、怯えたような目を見開いて、驚いたような顔をしていた。

 既に他の4人も一目散に逃げの姿勢を取っていた。

 

 

「引きますわよ!華々理さんの言うことが正しければ、そろそろ──」

 

「──限界近いが、そうも言ってられねぇ、な!!!」

 

 

 轟の左半身は既に自身の放つ冷気により冷え切っている。だが、奥歯を噛み締めながらも放った氷壁は今までで一番大きく、雄英一年生達と皇貴を完璧に分断した。

 

 

「振り向かないで!みんな、走って!!!」

 

 

 完全に出し抜いた。

 切島が飛び出したその時から、既に四人の作戦は決まっていた。

 そこに爆豪が乗るかは賭けであったが、王華に固執している爆豪なら、きっと。

 そう、思っていた。

 

 

「やった…やったぞ俺たち!!後は中指先生に任せて……」

 

 

 走り抜け、避難誘導をしているSCCATや警察の姿が見えるところまできたところで、切島は達成感から声を上げる中、爆豪はある事に気づいた。

 

 

「オイ……デク……テメェ、”何”持ってんだ……?」

 

「え?……な!?」

 

 

 デクが腕に抱いていたのは、帝王華ではなかった。

 いつすり替えられたのかもわからないが、その体温から察するに、きっと、ついさっきまで生きていたであろう、誰かの死体。

 そして、後ろから聞こえる声に振り向く。

 

 

「カカカカカカ……まぁ、よくやったんじゃないかね?子供にしては」

 

 

 品の良さそうな老人が、帝王華の頭を掴んでいた。

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