敵か英雄か   作:eeeeeeeei

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出すか出さないか

──────

 

 

 

 

 

「さぁ…どうするか……」

 

「開催の確定は結構。問題は、U組だろう」

 

「出すしか、ないんじゃないかな?」

 

「私は反対です!!あの子たちは力ばかりでまだまだ不安定!とてもじゃないけど雄英体育祭には──」

 

「だが、マスコミの一部は既に重傷者数を把握していた。人の口に戸は立てられんよ。それは、主審としての業務に差し支えがでるから、という個人的な意見では無いのか?」

 

「いや、私も反対。無駄に怪我人が増えるに決まっている」

 

「けど!アイツらが出たらゼッテェー盛り上がるぜ!!」

 

「盛り上がる上がらないの話じゃあない…………あなたはどう思います?オールマイトさん」

 

 

 教師陣が会議をしているのは、個性発現後のこの社会で、今や形式となり規模も縮小された今のオリンピックではなく、個性発現前の、世界のスポーツの祭典と言われた『かつてのオリンピック』に匹敵する、いや、日本ではその代わりだと言える観客数、規模、人気を博する雄英体育際に関して。

 まずは、敵襲撃事件直後の今、開催の有無に関して。

 それに関しては、敵に屈するわけにはいかないと、万全の警備体制を敷いた上での開催ですぐに満場一致。

 問題となったのは、その後の議題だ。

 

 生活環境に難があり、全員が全員、親代わりも含め、理由はどうあれ、"両親を殺害"していると思われる四人の生徒たち。

 力は四人ともが十二分にある。だが、その精神性は測り難く、世に出すべきか否かという点で、議論は白熱していた。

 ちょうど1時間も経った頃、煮え切らない会議に、昨日大怪我を負い、ついさっきまで集中治療室にいた相澤が、さっきから会話に参加していないオールマイトへと話を振った。

 

 

「…………」

 

 

 相澤の視線の先にいるのは、髪が触覚のように垂れ下がった、頬も身体もガリガリの骸骨のような、見るからに病弱そうな男。

 その男は目を瞑り、腕を組んだまま動くことはなかった。

 これはオールマイト本来の筋肉ムキムキの大柄な姿、『マッスルフォーム』ではなく、彼元来の姿である『トゥルーフォーム』である。

 元々受けた大きな傷から力が弱ってはいたが、【個性】の譲渡によりその衰えは加速の一途を辿っている。

 

 返事がない、ただのしかばねのようだ。

 

 と言われてもおかしくないほどに動かない。

 

 

「……オールマイト?」

 

 

 心配、なわけではないが、ピクリとも動かないオールマイトを見つめる一同。

 

 

「「ウォッ!!!」」

 

 

 であったが、その黒い目を、カッと見開く。

 そして、本当に動くのかと思えるほどに、その重い口をゆっくりと開いた。

 

 

「…………彼らも、成長しているのだと、私は思う。恐らく3人は問題ないが……はたして帝少女がどう動くか……」

 

 

 答えになっているのかいないのかはわからないが、今は雄英高校の教師の一人。

 慣れないながらも教育者目線で、考えに考え抜いて出した答え。

 クセも力もある四人とはいえ、

 

 基本的に女の尻と自身の楽しみのために動く十三分一。

 正義の処刑執行人である亡女。

 何もしたくない物臭人間の糸宿。

 

 この三人は正直不安視していない。

 逆にこの三人は全くやる気を見せず、全国のお茶の間にサボりまくる雄英生徒を見せる事になりかねないとの話が主だ。

 

 ただ、その四人の中でも更に異質。

 オールマイトしか知らないが、秘めた野望の為に動くであろう王華の動きは全く読めない。

 

 

「アーハァァァン!?結局答えになってないぞーー!」

 

 

 煮え切らないオールマイトの発言にプレゼント・マイクがツッコミを入れる。

 結局、あーでもないこーでもないと話は続き、会議の結論が出たのは、その更に1時間後の事だった。

 

 

 

────

 

 

 

「クソ学校っぽいの来たぁぁ!!」

 

 

 敵襲撃事件から一夜明けただけの今日。

 最初は興奮冷めやらぬ様子から、包帯塗れの相澤の登場にさらに教室はざわつき、その発表された内容、雄英体育祭の開催決定によりその熱は爆発した。

 

 かに思えたのだが、峰田などは消極的のよう。

 しかし、体育祭を中止にすると言う事は、多くのプロヒーローも見ており、一年の一度しかない、高校生活の中でも計三回しかないチャンスの一回を棒に振るという事になる。

 そして、ヒーロー科のある高校の中でもトップの雄英高校生が、敵襲撃という事件の後であれ、怖気付くはずもなかった。

 

 

「峰田ちゃんの言うこともわかるわ。でも、私は小さい頃から夢見た世界に、自分を見せるチャンスを捨てる気はないわ。少なくとも、私は最大限アピールするつもりよ」

 

 

 珍しく朝の予鈴ギリギリで教室に入ってきた、晴々とした顔の梅雨の一言で、クラスの意思はまとまった。

 

 

 

────

 

 

 

 A組が相澤から体育祭の話を聞いている頃、U組では……

 

 

「────と、言うわけで君たちにも出てもらう事にしたのさ!」

 

 

 教壇に乗る半鼠人、基 校長の説明を聞いた後、当がブンブンと手を顔の前で振り、猛烈に拒否反応を示していた。

 

 

「パスパスパス!!ツラ割れちゃったらこの先の人生やりずれーじゃん!!!そもそも学校って言っても体調不良の人間を出席させる権限はないはずでしょ?俺、まだ一昨日の傷が痛むんですよ。結局入院もさせてくんないしさぁー。と言うかそもそも俺らみたいな隔離クラスの時点で公にする気はなかったはずじゃん。それがなんで掌返したようにいきなり全国中継の…………」

 

 

 ギャンギャンと喚く当の抗議の声が15分も続いたところで、会話の切れ目に校長がさっきと同じ表情で、同じ声量で、同じ言葉を話した。

 

 

「────と、言うわけで君たちにも出てもらう事にしたのさ!」

 

「人の話聞いとんのかこのネズ公がッ!!」

「いい加減、五月蝿い」

 

 

 ガタリと立ち上がった当の首筋に、音もなく忍び寄っていた王華の手刀が振り下ろされる。

 大した鍛錬も積んでいない一般人の首であれば、切断してしまう程の恐ろしく速く、鋭い王華の手刀を間一髪でかわす事に成功する当であったが……

 

 

「っぶねーな!いくら王華ちゃんでも、俺を殺す気ならこっちだっておとなしくしてねーかんな?」

 

「貴様の【力】など既に攻略している。これは……躱せんぞ!」

 

 

 珍しく笑顔を引っ込め、殺気を全開にした当に対して、王華は表情を変えず攻勢に出る。

 出鱈目に、両の掌底を空へと連続で繰り出す。だが余りの速さ故に残像が消える前に新たな残像を生み出していく程の速度。

 それはどんどんと加速していき、当の眼前に迫るその数が10を超えたあたりで残像は消え、当の背後から振り下ろされる手刀が、首の皮一枚のところで止まっていた。

 だが、同時に当の回し蹴りも背後にいる王華の腹を正確に捉えている。

 

 

「「────ッ!!」」

 

「帝少女、十三分一少年、その力こそ体育祭にぶつけるべきだと思うぜ」

 

 

 恐るべきはオールマイト。

 そんじょそこらのサイドキックであればその格闘センスで倒してしまう当に対し、個性を発現していようと当てる事のできる王華の超スピードを正確に捉え、止める。

 しかも同時に、背後に回るで"確定"したため放たれた当の蹴りも同時に止めていた。

 箸で蠅を掴んだと言われるかつての、天下無双の大剣豪、宮本武蔵の逸話よりも、それは困難を極めるだろう。

 

 

「チッ……離せ」

 

「冷めちった。もーいーよ。好きにしろよ」

 

 

 一瞬で燃え上がった殺る気は消火され、机に両足を投げ出して座る当を一瞥し、オールマイトへと強烈な視線を向けた王華。

 

 

 「あのー。私も出たくないです。勇者の力は、誇示するためのものじゃないので」

 

 

 ようやく静かになったところで亡女も手をあげて辞退の声を上げるが、校長は全く変わらない。

 

 

 

「────と、言うわけで君たちにも出てもらう事にしたのさ!」

 

 

 話にならない校長に、当は話しても仕方がないと視線を天井に向けて我関せずのポーズ。

 王華もオールマイトを、穴が開くなどと言うレベルではなく、視線だけで殺せるのではないかと言う程睨みつけながらも席についた。

 

 

「よーやく続きが話せるね!これは決定事項だから覆る事はないのさ!ただし、君たちにもそれなりの事情があるからね。真面目にやってくれさえすれば、【個性】の使用は各々に任せるのさ!」

 

 

 観念したような顔をする当と王華。

 舌打ちをする王華と、王華に睨まれたまま、いそいそと校長の横へと移動するオールマイト。

 その後諸々の注意を受け、破ればその場で失格にするそうだが、失格になった場合は、ここでの生活にペナルティがついてくるとの事。

 そして最後に、校長はゴソゴソとかばんを漁ると、あるものを取り出した。

 

 

「十三分一くんの言うこともわかるし、亡女くんの顔は幼少期とはいえ世に出ているからね!みんなにはこれをつけて欲しいのさ!」

 

 

 校長が取り出したそれを見て、王華は一気にやる気を無くし、美的センスのあるミッドナイトへと直談判をしに職員室へと向かった。

 

 

 

 椅子に置いている座布団の上で丸まっている伸は、気持ちよさそうな顔をしたまま、最後まで起きる事はなかった。

 

 

 

────

 

 

 

「選手代表!!1年A組爆豪勝己!!」

 

 

 雄英体育祭もいよいよ始まり、選手入場後、一年ステージの主審である18禁ヒーロー『ミッドナイト』が声高らかに宣言する。

 

 18禁なのに高校の教師をしても良いのか?というツッコミは無しだ。

 全身を透明なタイツで覆い、卑猥とは言わないが、セクシーの一線は超えているような格好で爆豪を待ち構える。

 

 当の呼ばれた爆豪はジャージのポケットに手を突っ込んだまま、太々しさ全開で登壇した。

 もちろん、マイクの前に立とうとも、その両手が抜かれ、人目に触れる事は無かった。

 

 

「せんせー

 

 

 俺が一位になる」

 

 

 

 態度と言葉は比例するようで、A組からはやると思ったと言う声が上がるも、他のクラス、特に同じヒーロー科であるB組からは壮大なブーイングが鳴り響く。

 だが、爆豪はそんなB組には目もくれず、ある一点だけを見据えて、ただでさえ悪い目付きを更に悪くさせていた。

 

 

「その他大勢にキョーミはねぇ。そこのクソ不審者ども!!テメェらも潰して俺が勝つ!!」

 

 

 B組の後方にいる、確かに不審者にしか見えない者たちに向けて吠えたところ、観客席はざわつき、隣にいたミッドナイトは注目させるなと言わんばかりの顔で爆豪を強制的に台から引きづり下ろそうとするも、爆豪は抵抗し睨み続けている。

 

 

 漫画でいうガリ勉キャラのようなグルグルメガネに、大きなマスクをつけて、顔を隠した三人。

 茶色い髪をピッチリと七三分けにし、ベストジーニストのような頭の男は爆豪を見返している、訳ではなくよく見ると顔は常にミッドナイトの胸元に向いている。

 そのマスクの下に隠れている口元は、だらしなく歪んでいた。

 

 桃色の髪を後ろでチョコンと縛っている、同じく眼鏡にマスクの少女は、

「梅雨ちゃーーーん!がんばってね!」

 などと声を張り上げながら、A組の蛙吹に向けて手を振っており、爆豪や、この体育祭自体、そもそも眼中にないと言った様子。

 

 黒髪ストレートの偉丈夫も、同じく顔は見えないが、この中でただ一人だけ、地面にあぐらをかいて座っており、船を漕いでいる、といったなんともやる気のない態度を、とっていた。

 

 そして最後に、金色の嘴に白い羽で覆われた、鷹の顔をモチーフにした仮面をつけた、嘴と同じ金色の髪を靡かせた女は腕を組み、仁王立ちのままに言葉を返した。

 

 

「キャンキャンと五月蝿い。まったく、イレイザーヘッドは犬の躾もできんのか?」

 

 

 ただでさえ怪しい四人組の中の、その中でもまるでトップであるかのように一人違う仮面をしている女の声がゆっくりと、波紋のように広がっていく。

 マイクなどないはずなのに、不思議ととおるその声は、同じ出場者達、そして壇上にいる爆豪の耳にも届いた。

 

 そして、一瞬の静寂の後に……

 

 

「テメェ上等だコラァァァア!!!この場でぶっ殺す!!」

 

『言われてんぞミイラマァァァァァン!!!』

 

 

 壇上と実況席、二つのマイクから同時に爆音が鳴り響いた。

 

 爆豪はそのまま個性を使い飛ぼうとしたところで、教師陣に抑え込まれ、言われた通り、まるで犬のように犬歯を剥き出しにしてグルルと唸っている。

 

 実況席ではひたすらにプレゼント・マイクが爆笑しており、会場内にはその笑い声だけが木霊していた。

 

 

 

 

「王華ちゃんは一位目指すの?」

 

「無論。出ると決まっている以上、頂点は私以外にありえない」

 

 

 爆豪と同じく、もはや病的な程に負けず嫌いである王華は、犬歯のような八重歯を剥き出しに笑い、その仮面の奥で、燃え盛る紅の瞳をギラつかせていた。

 

 

 

────

 

 

 

 あの仮面の女と眼鏡にマスクの三人は何なのだと騒ぎ出す報道陣と、A組以外の面々。

 B組も知らぬ間に自分たちの後ろから入場してきた四人に気付いておらず、焦ったように距離を取る者もいた。

 その中で、シゲシゲと眺めている一人が王華へと近づいていく。

 

 

「あの……もしかして帝さんでしょうか…?」

 

「……貴様が私になんのようだ?」

 

 

 大きくぱっちりとした黒い眼と、植物のような長い緑色の髪が神秘的で、誰がどう見ても美人の部類に入るルックスをもつ少女。

 B組の女子の中でもその個性の汎用性の高さと強さ、更に礼儀正しく丁寧な物腰で人気の高い女子生徒、塩崎 茨であった。

 もちろん王華が彼女と話をしたことなどないが、彼女の事は知っていた。

 そもそも王華の頭はそんじょそこらの人間とは出来が違う。

 本であれば一度読んだだけで内容を全て覚えてしまう程に記憶力もいい。

 そんな王華のデータベースには、雄英生のリストは全て記憶されていた。

 

 

「……私はただ、過去に貴女を知り、憧れていただけですから」

 

「馬鹿か貴様は?」

 

「え?」

 

 

 自分に憧れを抱いていたのだと言う告白をした茨に対し、ノータイムで暴言を吐く。

 そもそも考え方が違うのだ。

 この女が、一体どこで自分と交わっていたのかは知らない。

 

 だが、なぜか王華は話を続ける事にした。

 

 憧れとはなりたいと思い描くも、自分では及ばないと言う考え方。

 では頂点とはなにか、それは絶対の存在。

 それが故に、感情は二通りしか許されない。

 崇拝か、恐れか。

 どちらにせよ、仰ぎ見る事しかできない頂きに自分はいるのだと、王華は考える。

 

 しかし、今はその考えを述べる事はしなかった。

 

 

「語るのであれば、憧れではなく理想を語れ。理想は現実になるが、憧れは一生虚像のままだ」

 

 

 体育祭に対して、どうしてくれようと思考を巡らしているところを邪魔され少し苛立っていた王華であったが、淡々と、だが珍しく諭すような態度を取っていた。

 

 

「……貴女からすれば愚かなことかもしれませんが、私は確かに憧れを抱いたのです。あなたたち"お二人"に」

 

「…………」

 

 

 茨の言葉に一瞬だが、王華の身体がビクリと震えたように見えた。

 特に答えることもせず、もう話すことなどないと言うように、茨から目を離した。

 

 そんな中、主審であるミッドナイトの号令により続々と他の生徒がスタート位置に移動する中、そんな喧騒も、スタート位置への移動すらも無視してその場から動かない四人組。

 

 完全に奇妙な空気を作り出すU組に、プレゼント・マイクの実況が暴走し始める。

 

 

『怪しさ満点のカルテットカルト集団は余裕のつもりか!!!だが、今年の1年は甘くはねぇぜ!!!今ならコッソリ移動したってだれも文句は言わねぇぞ!!

 って!!それでもシカトォ!!??いったい何なんだコイツらわよぉぉ!俺……なんか嫌いだアイツら』

 

『お前が煽ってどうする。放っておけ』

 

 

 

 王華は少し昔を思い出し、己がここにいる意味を思い出していた。

 忘れたことなどない。

 忘れたことなどある筈もない。 

 

 すまないな。

 もう少し、時間がかかりそうだ。

 

 私と、君の理想を叶えるには……

 

 




職員室での一コマ


貴様はこれで世に出ることをどう思うのだ!

たしかに……無しね!!
パワーローダーのところに、何かあるはずよ!

これなんてどう?

あら、いいんじゃない?どうかしら?

うむ!これならば良し!!


だいたいこんな感じ。
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