欲張りファンタジーの世界で生きたい   作:ゼラチン@甘煮

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二話/調査その一

 

 

 通り魔事件の被害者のほとんどは一人で夜に道を歩いていた時に襲われた。彼らが通っていた道は普段からあまり人通りが少ない道で監視カメラも設置されていなかった。被害が出始めた時には対策として同じような人通りが少ない道にカメラの代わりとして監視魔法を使い怪しい人物がいないか二十四時間態勢で監視していた。だが犯人にはバレていたようで魔法が使われていなかった道で被害が出ただけだった。当たり前の話だが監視魔法を使える人員や彼らが持っている魔力量にも限界がある。まさか全ての道にカメラや魔法を設置するわけもなく、半ばいたちごっこのような状況が続いていった。

 

 

 と、これが今明らかになっている情報でありわざわざ調査して聞くことのない情報......なのだが。

 

「え!監視魔法も意味なかったんですか!?」

「お前は一応サイトウの助手なんじゃないのかよ...なんで知らねえんだ」

 

 この女、長雨は今回の依頼における相棒なわけだが早速暗雲が立ち込めてきた。

 

「とりあえず俺たちがすることは被害者に話を聞くことだ。警備隊の所へ行っても特にデカくもない個人事務所の二人にまともに対応してくれるとも思えないしな」

「被害者の居場所はわかっているんですか?」

「個人の住所はわからないけど運ばれた病院はもうわかってる。面会時間が終わらないうちに行こう」

 

 警備隊が話を聞きやすいようになのか、被害者は皆一つの大型病院に運ばれている。実際に会えるかどうかはまだわからないが行ってみるだけ行った方がいいだろう。

 

「ところで、それは持っていく必要があるのか?」

 長雨の腰に差してある刀を指差す。サイトウもそうだったがこの事務所はそれを特徴とでもしているのだろうか。

 

「いつ通り魔が現れても大丈夫なようにです。油断大敵ですよ」

 刀を見せつけながら自慢気な顔をする長雨。まだ昼間なのだから通り魔の心配はないと思う。

 

「これでも私は結構強いんですよ。見有さんにも通り魔にも余裕で勝てちゃいますから!」

 さらっと俺を倒す対象に入れないでほしい。

 


 

 

「これは...想像以上だな」

 

 病院には予想していた三倍ほどの数の警備隊で賑わっていた。病院を出入りする人の荷物検査をしているみたいで中には身分証明書のようなものを見せている人もいた。こんなに数がいるのはただ単に通り魔事件の影響だけではない気がするがなんにせよ不都合でしかない。

 

「やべえな。ここにいるのは拳銃持ってる素性不明の男に刀持ってるボロい個人事務所の助手だ、怪しさの塊だぞ」

「物陰に隠れて見ている時点でどっちにしろ怪しさの塊だと思うんですけど」

「俺はともかく長雨は刀さえどうにかすれば入れるんじゃないか?」

 

 法律とかでは別に禁止されてない重火器の所持だがさすがに病院への持ち込みは警備隊に止められるだろう。こうなるならアウルムにちゃんとした身分証明書をつくってもらうんだったな。

 

「私もこうなるなんて思ってなかったんでこの刀以外何も持ってきてないんですよね」

「まじかよ...」

「見有さんも同じじゃないですか!」

「俺は財布も持ってきている。一緒にするな」

 

 

 

 

「ねえ、何してんの?邪魔なんだけど」

 

 二人でギャーギャー騒いでいると背後から声をかけられる。警備隊かと振り返ると、腕に包帯を巻いた青年がこちらを睨み付けていた。

 

「あー、ごめん。すぐどく」

「別に道を塞いでいるわけじゃないからいいんだけどさ。はあ、僕としては早く腕の怪我の調子を診てもらいたいのにこんなに警備隊がいるなんて聞いてないよ」

 

 ......ん?別に警備隊がいることと早く診察してもらうことはあまり関係なくないか?警備隊に足止めされるのが嫌なのはわかるけども。

 

「じゃ、僕は行くから。警備隊の近くで怪しい行動はやめなよ。ただでさえ最近物騒なんだから、さ」

 

 そう言って入口の方に向かう青年。警備隊も特に怪しむ仕草をせずに数十秒話した後に青年を病院内に通した。

 俺たちもあんな簡単に終わればいいんだがな。

 

「どうします?警備隊の人はしばらくここにいそうですよ」

「今日は帰ろう、明日以降も続くようなら別なやり方を考える」

「...ですね」

 


 

 

「で、戻ってきたんだ。これぐらいの被害でそんな数の警備隊が動くのは俺も予想外だったなあ」

「ごめん、何も情報は得られなかった」

 

 今まで依頼ではこんな状況数えるほどしかなかったしその時は他のアプローチ方法がその時点で存在してたからすぐに諦められた。今回の依頼はこれをやれば解決につながるというのがない。だからこそ少しでも近づけられるよう地道な聞き込みをしていこうと思ったんだが、厳しいものがある。

 

申し訳ないです(もうしふぁふぇふぁいでふ)

「長雨ちゃんは何食べてるの?」

「帰りに見有さんに買ってもらった肉まんです!」

「元気な返事だなあ」

 

「なあ、一応ここは事務所でしかも探偵なんて前書きがついてるんだろ?身分証明書の偽造とかは無理なのか?」

 

 アウルムに頼めばすぐなんだろうけどあいつに頼んだら変なこと書かれてそうでできるなら頼りたくない。

 

「そうだなあ。パッと見せるぐらいだったらいいんだけどそのレベルの警備なら最悪魔法を使われて本人確認される可能性がある。そうでなくてもかなりリスクが高い方法だ、正規の方法で用意したほうがいいよ」

「そうか...」

 

 頼みたくねえなあ、まあ背に腹は代えられないか。今までが珍しかっただけできっとこんな状況は今後何度もあるだろう、その時にはちゃんと対応できるようにしておきたい。

 

 

「...ごめん見有くん、要求を一つ追加しても良いかな。俺の知り合いが依頼を持ってきたんだけど協力してくれない?」

 

 久しぶりに会うアウルムのことについて考えているとサイトウが申し訳なさそうに苦笑いをしながら手を合わせ頼んできた。長雨と一緒に調査をしたのはこの依頼を協力して行うにあたってどうせやることだ、あんなんで要求とはそもそも思っていなかった。

 

「もちろん。しばらくこの依頼もかかりそうだし俺も暇なのは嫌だからな」

「ありがとう。早速だけど依頼について簡単な説明だよ」

 

 そう言うと懐から写真のようなものを一枚テーブルに置く。

 

「その知り合いの息子が最近夜中に出歩いているらしいんだ。通り魔事件のことがあるだろう?巻き込まれたら危ないしもしかしたら事件に関わっているかもしれない。そこら辺も含めて彼が何をやっているのか調査をしてほしいって依頼が来たんだよ。あ、この写真その息子」

「息子の歳はわからないが別に夜中勝手に出歩くくらいはあるんじゃないか?」

 

 この依頼はすぐ終わりそうだな。どんな見た目か知るため身を乗り出して写真を確認する。

 

 

「なっ!?」

どうしたんですか見有さん(ふぉうひふぁんふぇすふぁふぃふぁりふぁん)......ぶほっ!?」

 

 なるほど、そう繋がるのか...。これはアウルムに頼む必要はなくなったかもな。

 

「こいつ、さっきの男じゃねえか」

「もう面識があるなら話は早い。彼の名前は間宮聖也(まみやせいや)。君たちが知ってるかはわからないけど、数十年前から活動している暗殺者の家系、間宮家の跡継ぎ候補だ」

 

 


 

 

「ふーん、よりにもよってサイトウ探偵事務所かあ」

 

 僕の可愛い(見有くん)が協力をサイトウ探偵事務所に頼んだと従者から連絡された。個人事務所と協力するのも良いかもとは言ったけど、わざわざあそこを選ぶなんて本当に見有くんは面白い。

 

「それにしても、僕が君の存在を公表した意味をわかってないのかなあ」

 

 通り魔事件とは関係なく一部施設において警備隊が警戒態勢に入っていると知ったから公表してあげたのに。スカイ家お抱えだということを公表した時点で警備隊にもきっと君の存在は認知されてる。よほどじゃなければ顔パスくらいは余裕なのになあ、大人っぽく振舞おうとしてるけどそういうことを考えつかないところが可愛い。

 

 

「君の身分証明書もとっくにつくってあるのに全然頼ってくれないんだもんね、君は」

 

 彼が生き残ったあの日からつくっていた身分証明書を取り出す。

 

「今までは送らなかった対人の依頼、君はどうするのかな?」

 

 彼の写真と、そこに書かれた『見有・スカイ』の名前をなぞりながら僕は笑った。

 

 

 

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