他の人に見つかる前に部屋へと運び寝かせる。応急手当はしたがこの傷だとちゃんとした医者に見せた方がいいな。
こいつがてっきり通り魔だと思っていたんだがどうやら違うみたいだ。おそらくはこいつ自身が通り魔に襲われでもしたんだろう。
「おい、なんでそんな怪我してるんだよ。通り魔に襲われでもしたのか?」
本当に通り魔がこいつを襲ったのならかなりヤバい。サイトウの話だったらこいつは能力者でそこそこの実力がありそうな感じだった。そいつをここまでボロボロにできる力があるのなら、思ったより厳しいかもしれない。
「別に、転んだだけだよ。...そういえば君、昨日病院前にいた人じゃん。奇遇だね」
「転んだだけって、もう少しましな嘘つけよ」
「うるさいなあ、少なくとも通り魔にやられたわけじゃないよ。別にやられたつもりもないけど」
間宮はそう言って悔しそうに拳を握りしめた。通り魔じゃないってどういうことだ?通り魔以外に襲われる可能性は少ないと思うが、それともやっぱりこいつが通り魔で襲おうとしたところ返り討ちにあったのか。
「そんなことより助けてくれてありがとうね、怪我が治ったらちゃんとお礼してあげるから楽しみにしてなよ」
「はいはい、警備隊には連絡しないでやるから早く直せ」
これからどうするか。場合によってはこっちの事情を説明してこいつも協力させた方がいいかもしれない。なんにせよまずはサイトウたちに報告するか。
「...ねえ、君」
「ん?どうした。どこか痛むのか?」
「いや......なんでもないよ。それより君スカイ家の人だよね?それにしては弱そうだけど、何か特別な能力でも持ってるの?どんな能力でも僕以下だと思うけどもし使えそうだったら僕に協力させてやるよ」
なんだこいつ。
「バレッタ様、昨日はどこに行ってたんですか?探してたんですよ」
「通り魔事件の重要参考人を見つけたんだが逃がしてしまった。あと様はいらない、同じ警備隊だ」
あの青年は俺が思ったより根性があったらしい。勝てないと判断したのか傷だらけの体を引きずりながら背中を見せて逃げていく青年。そこまで甘いつもりはないがその姿を見て追い続けることができなかったのも事実だ。
あんな傷なら一人で治すのも難しいだろう。病院に来ていないかと思ったが、さすがにこの数の警備隊がいる病院には来ないか。
「通り魔事件が本命じゃないわけだしな...別に良いだろう」
「なにか言いましたか?」
「なんでもない。それよりも携帯電話をなくしたんだが病院の電話の場所を教えてくれないか」
本部への定時連絡を済ませるため電話を借りる。朝早いこの時間ならまだ電話も繋がるだろう。
予想通り数回ほどのコールが鳴ったところで受話器から声が聞こえた。
『はい、国家警備隊四番隊です。申し訳ありませんがお問い合わせは国家警備隊一番隊の方へとお願いします。』
「副隊長バレッタだ。隊長はいるか」
『...ずいぶん早い連絡だな、支給した携帯電話はどうした』
俺の声を聞いたとたんに低く少し不機嫌そうな声になる。
「すまない、なくした」
『はあ...まあいい。で、特別連絡することはあるのか?』
「隊長は俺のエネルギーシールドを破った時を覚えているか?」
『...破られたのか?』
「破られる寸前だった。向こうの方がガス欠になってくれたがあと数発食らってたら確実に砕けていた」
『うちの隊員の中には寸前どころかヒビ一つ入れることができるやつすらいないだろうな。かなりの実力者だったのか?そいつは』
単純な実力で言えばほとんどの隊員より弱いだろう。だが、
「これからが楽しみだった」
これに尽きる。
『まさかそれを言うためだけに忙しい私へ電話したんじゃないだろうな...?』
依頼二日目。サイトウへ報告、そして長雨と合流し調査の続きをするためにとりあえず事務所に来たのだが。
「何ここ?もうちょっとマシな所じゃダメだったの?」
何故か間宮も付いて来た。安静にしとけと何度も言ったが聞く耳を持たず結局事務所に着いてしまった。
仕方ないからこのまま事務所に入る。サイトウはなんだかんだ対応してくれるだろうしな、まだ出会って二日目だがそこか信頼できそうな気がする。
「お、見有くん今日もよろ...しく」
「よろしく。つまりそういうことだ」
俺と一緒に入ってきた間宮を見て一瞬固まりはしたものもすぐに平常へと戻る。
おおむね期待通りの反応だ。間宮も今のところは怪しんでないみたいだし
「あっ、見有さん!今日もよろしくお願いしまーす!」
俺を見るや手を振りながら近づいてくる長雨。
こいつが俺の唯一にて最大の不安だ。出会って二日目だがわかる、こいつはアホの子だ。何をするかわからない。今までの助手としての経験で空気を読んでくれ、頼む...!
「あーっ!その人新しく調査する人じゃないですか!どうしたんですか!?」
「長雨ちゃん!?」
アホの子!!
「ふーん。まあいいよ、父さんがそこまでするのは意外だったけどね。僕は通り魔なんてダサいことは絶対にしないし夜出歩いてたのはただの散歩だよ。良かったじゃん、依頼が一つ終わって」
観念して事情を話すことにした。ここで変に誤魔化しても間宮の不信感を増やすだけだし仕方ないというやつだ。
「通り魔はしない、ね...本当かな?」
サイトウが煽るように間宮に話しかける。
「はあ?何言ってんの?」
「通り魔事件なんだけど、被害者は二通りいるんだ」
「え?それは俺も初めて聞いたぞ」
ここに来る前に事件について色々なニュースを見て下調べはしたがそんな情報はどこにも書いてなかったぞ。
「まあこれでも事務所の社長だから。...最初、襲われた被害者は皆外傷を負っていた。証言でも刃物を持って襲われたと言っていたことからその傷だろう。だけど、被害者が増え始めた時、違うタイプの被害者が出てきた」
「ああ、それは俺も知ってる。目立った外傷がなく必ず気絶している被害者、ニュースで報道されたのはそっちのタイプだった」
「......」
「これはついさっき出た情報なんだけど、被害者は皆
「...人を魔力欠乏症に追い込むなんて、普通じゃ無理だよ。それを僕がやったとでも言いたいの?」
「俺は君のお父さんから君の能力についてある程度聞いている。君が人の魔力を奪うなんて簡単にできることもね」
「......ちっ、ウザイなあ」
部屋の雰囲気がどんどん重くなっていく。間宮はさすがにこの傷で暴れることはしないと思うが、こいつの持っている能力次第では怪我なんて関係なくサイトウを攻撃する可能性はある。
その時を考えて懐の拳銃をこっそり取り出しておく。
「その傷が誰につけられたかは聞かないし間宮くんがどうして魔力を奪っているのかも聞かないよ。ただ忠告はしておく、警備隊の数も多くなってるし国家警備隊が来ているっていう噂まである。やめておく方が身のためだよ」
「......」
しばらくした後、先に動いたのは間宮の方だった。
「帰る。じゃあね」
「お、おい。怪我はまだ治ってないんだぞ」
「僕を一般人の尺度で測らないことだよ。あとサイトウって言ったね...僕を通り魔と同じにするな。魔力を奪っているのは僕の『能力』のためだよ、燃費が悪いんだ」
そう告げた後、俺に向かってなのか、背中を向けたまま手を一回だけ振った。
「...で、依頼はどうするんだ?」
「あ」