ペルソナ5~怪盗従者~   作:砂原凜太郎

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 投稿遅れて大変申し訳ございませんでしたぁ!!APEXにドハマリしてしまい、申し開きの使用もございません!!サーセンでした!!


【天才少年】

 朝、変な城で変なもじゃもじゃに会って死にかけ、昼間に大遅刻を喰らう羽目になった。俺、雨宮蓮の転校初日は、そんな摩訶不思議で散々な形で終わった。

 まぁ、元々、ここに来たのも散々な理由だったな。と、自虐する。

 そんなこんなで、帰路に就いた俺の隣には、小学生位の背丈の、いや、話を聞いたところ、本当に年齢は小学生らしい。海外で実証されている【飛び級制度】その日本での実用化の為の実証例として、この修尽学園高校に通う、【天才少年】。

 飯伏銀がいた。

 

「なぁ、」

「な…………何?」

 

 話しかけると、このようにまるで小動物のようにビクついた動きで反応する。もともとコミュニケーションが苦手なのか、それとも、常時、年上が周りにいる空間がプレッシャーなのか。

 

「なんで俺に声なんかかけたんだ?俺のうわさは、広まってるのだろう?」

 

 かかわらない方がいいんじゃないか?というのは、少し意地悪な質問かもしれない。だが、俺の今の学校でのかかわりと言えば、暴力沙汰を起こしたらしい竜司と、なんか悪役参謀みたいで何考えてるか分からないヒューベルト。まぁ、あいつは信頼できると思うが、正直、この二人は、純粋無垢な12歳(子供)の教育にはよろしくない気がする…………。

 

「…………うん。…………障害で捕まった…………って。あと、カツアゲ、殺人、盗みに、…………象牙の密売?…………あと、田舎の裏社会の裏のトップだとか。」

 

 なんか気が付いたら大犯罪者になってないか?何だそのモリアーティ的な存在は、

 

「ちょっと待て。なんかうわさが暴走してないか?それは確定で少年院行きじゃないのか?…………。」

「うん…………。ここまでやったら…………少年法でも…………守り切れないし。…………そのそも、そんな田舎じゃ象牙の密売は無理。だと思う。」

 

 まぁ、面白半分で流された噂という事か。

 

「…………大変だね。」

「…………ああ。」

 

 12歳児にそう言われるとは、これは相当疲れた顔をしてるな…………。

 

「しかし、天才少年…………か。何か、詳しい科目とかあるのか?」

「…………心理学。」

「心理学?」

「ボクは…………あんまり上手く人と絡めないんだ。」

「…………ギフテッドというやつか?」

「ううん…………それとは別。ボクは…………『じへーしょー』とかいう病気らしくて。」

 

 自閉症。さっきから目を合わせようとしないのはそれでか。確か、どこかの本にそんなことが書いてあったな。

 

「あんまり周りと上手くなじめないんだ。…………だから、相手の心が分かれば、上手く空気が読めるかな…………って。」

「…………難しい話だな。」

 

 人の心というのは、そんな単純なものじゃないだろう。

 

「…………わかってる。でも、皆と、仲良くなりたいし…………。」

「そうか…………。すまない、話をそらしてしまったな。話を戻すが、なんで俺に声をかけたんだ?」

「…………興味があったから。」

「興味?」

「傷害で捕まったって。それで、転校初日に理由もなしに大遅刻。オマケに、坂本君と一緒にいたっていうし。」

「ああ。」

「でも、ボクが教科書丸々渡したら、返してくれたし。なんか、【超絶ヤバい問題児】のイメージとはちょっと違って、もしかして、何か逮捕には理由があったんだと思ったんだけど、でもそうしたら大遅刻の説明がつかないし…………。」

 

 なるほど。

 

「まぁ、お前の読みは正しいな。確かに逮捕には理由があったな。」

「…………大遅刻の方は?」

「まぁ、それも理由がある。」

「何?その…………理由って、」

「気が付いたら謎の城にいて、鴨志田によく似たピンクのブーメランパンツ一丁の変態の王様に殺されかけたって言ったら?」

「…………。」

 

 ジト目で返された。まぁ当然か。

 

「本当は?」

 

 さっき話したことが真実だ。

 

「冗談だ。他校の不良ともめててな。時間がかかってしまった。」

「ふぅん…………まぁ、ヒューベルト兄ちゃんも一緒だったみたいだし、そうなら納得…………。」

「ヒューベルト…………兄ちゃん(・・・・)?」

 

 あの悪役参謀が…………兄ちゃん?血縁…………じゃないよな。確かあいつは、ドイツ人の血が入ったクォーターだったはずだ。

 

「ボクもさ…………入学当初、色んな噂を流されたんだ。」

「…………。」

「選ばれたのはコネだって、ほんとはそんな学力なんてないって。ボクだって、努力はしてるのに…………。」

「似た者同士だな。」

 

 口からこぼれた第一声は、それだった。俺は前科者、彼は天才少年。立場のイメージは真逆だが、心無いうわさを流され、周囲から浮いたあぶれ者。俺達は、似た者同士だ。

 

「…………そう…………だね。」

「俺ではだめか?」

「…………え?」

「友達が欲しいんだろ。」

 

 銀の望みを簡単に訳せば、そうだ。心を理解するなんて難しいことを言っているが、そういうことだ。

 

「…………うん。でも、ボクはじへーしょーだし…………きっと迷惑かけちゃう…………。」

「そんなことは関係ない。」

「関係…………ない?」

「多少の迷惑も笑って受けるのが友達という物だ。」

「…………そうなの?」

「ああ。」

 

 そう言うと、銀は、初めて俺に目を合わせた。

 

「うん。ありがと。」

 

 そして、笑いかけてくる。なんだか、心にしみる笑顔だな。

 

『次は~東太子堂。東太子堂駅です。』

「おや、降りる駅なんじゃないのか?」

「…………うん。…………あのさ…………。」

「ん?」

 

 席を下りた銀は、こっちを振り返る。

 

「蓮兄ちゃん……って、呼んでもいいかな?」

「ああ。好きにしろ。」

 

 そう言うと、パッと顔を明るくして、

 

「じゃぁまたね!!蓮兄ちゃん!!」

 

 と、笑って走っていった。

 

「まったく、微笑ましいな。」

 

 一人残された俺は、帰りの電車でそう呟いた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「聞いたぞ、学校、初日から半日もさぼったんだって?」

 

 そして、帰った先に待っていたのは、佐倉さんの追求だった。

 

「…………、すみません。」

「朝ちゃんと起きたと思ったらこれだ。なんかあったら、人生終わっちまうんだ。保護観察の意味、分かってるんだろうな?まぁ、今回は仕方なかったみてぇだから怒らねぇけどよ。」

 

 ヒューベルトのホラ話を、皆信じ切っているみたいだな…………やっぱり、悪役参謀の才能があるんじゃないだろうか…………彼。

 

「…………すみません。」

 

 すると、佐倉さんの携帯が鳴った。

 

「おっと。」

 

 通話ボタンを押して、五本の指を使って携帯の上部を持つ独特な持ち方で、携帯を耳に当てる。

 

「…………おう。今店閉めたところだよ。…………わかってる。ちゃんと30分で帰るって…………。」

 

 と、甘い声で言う。…………佐倉さん、結婚指輪はつけてないが………そういえば、初日に車で送ったとき、サブシートには女意外なんたらかんたらと…………

 私服も妙に小洒落ていたし、まさか、愛人?

 

「おい、何悟ったような顔してる。なんでもねぇ。」

 

 そんなことを考えていると、佐倉さんから釘を刺された。

 

「…………ああ、何でもないよ。最近、バイトを雇ってな。」

 分かったらさっさと上がって寝ろ。俺は帰るからな。店の品に手を付けようとするんじゃないぞ。…………だから、ただのバイトだって。」

 

 聞けば聞くほど愛人に見えるな。まぁ、佐倉さんにはそう釘を刺されたし、そうだな。

 

「分かりました。」

 

 電話を切った佐倉さんと入れ違いに、俺は屋根裏部屋に上った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《翌日》

 …………大変だった。昨日半日サボったせいで周りの視線が痛かったし、厳しいと噂の公民の牛丸先生のチョークを額に受けてしまった。

 傷害でパクられた俺が言うのも難だが、これって体罰じゃないのか?文字通り額が痛い。

 そんな中、俺達は昨日坂本に教えてもらった屋上に集まった。

 

「なぁ、あの城、俺達また行けんのかな?」

「さぁな。」

「行ったところでどうするのです?」

 

 正直、俺たちの感想はそれだ。俺とヒューベルト、あと謎のジ〇ニャンに見えなくもない。

 

「どうなるってよ、気にならないか、あの…………。」

「『彼ら』の事か。」

「私も、あなた方を運んだ騎士を付けている途中で見ましたがね…………あの、拷問のようなことを受けていた生徒ですか。」

「…………お前、見てたのかよ…………けど、拷問を、受けていた(・・・・・)とこ。」

「いえ。ただ、謎の拘束具が顔面につけられている生徒や、拷問を受けている人間特有の目をしている人間が多くいましたから。」

「目?」

「諦めている目ですよ。来る日も来る日も責め苦が続く。ですから、思考放棄して、はいはい相手の言うことを聞いていればいい。そうすれば、楽だと。」

「お前…………。」

 

 その言い方、もしかしてだが、

 

「経験あるのか?」

「さて、どうでしょう。ククク…………。(まぁ、前世では、する側、される側両方の訓練は受けましたが結局、することはございませんでしたな。)」

 

 …………やはり、ヒューベルトには悪役参謀の素質があるな。

 

「けどよ、あそこが夢だったって、そんなわけじゃないんだろ。だったらよ、あそこに乗り込んで、証拠写真なり物証なりを取ってくれば!!」

「そううまくいくとは思いませんが、あのゴミカスクソモジャモジャゴリラを貶められるものが手に入るならば、良いかもしれませんね。」

「ヒューベルト、お前、鴨志田にヘイト高すぎないか?」

「当然でしょう。」

 

 うん。まぁ、そうと言ってしまえばそうなんだが…………。

 

「まぁ、証拠写真を残すっていうのは、いい案だと思う。」

「加工かどうかは、専門家が見れば一目でわかりますからな。」

「?」

「堅物の教師共に送ったところで、そんな物、信じられるわけがないでしょう?だから、先にあの変体ブーメランパンツ鴨志田が暴行をしているところなんかをネットに上げて、話題をさらうのですよ。」

 

 ヒューベルト…………お前、やっぱりやる事がえげつないな。

 

「そうすれば、少なからず、専門家の目にも止まるでしょう。そうすれば、その写真や映像が合成でないことが分かる。そうすれば、自然と鴨志田に疑問が行く!!そこで、坂本殿の出番ですよ。」

「は?俺?」

 

 いきなり話を振られた坂本が、疑問符を浮かべる。

 

「ええ。『俺、秀尽学園に所属してんだけど、バレー部、何時もボロボロになっててヤバい。』とか、『鴨志田先生の預かりになった陸上部、暴力沙汰起こした部員がいるんだけどさ、暴力沙汰が起きた原因が、鴨志田先生の厳しすぎる体制が原因だったって。』とか、色々と悪評を流すのですよ。もちろん。複数のアカウントでね。」

 

 あ、アカウントと携帯なら貸しますよ?と、数台のスマホを見せてくるヒューベルト。

 

「金持ちかよ!!」

「ええ。少々、株などを嗜んでおりまして。いいですな。ああいうのは。」

「すげぇ…………。」

 

 と、竜司は戦慄しているが、正直、俺もこれには驚いたぞ。

 

「でもよ、何で俺じゃなきゃいけないんだよ?」

「やはり、実体験をした人の言葉の方が、しっくりと来るのではないでしょうか。」

 

 と、悪い笑みを浮かべながらサラッとそんな事を言うヒューベルト…………怖いぞ、そろそろ。

 

「さてと、それでは行きましょうかね。」

「へ?行く?」

 

 そう言って扉を開け、階段を下りて行こうとするヒューベルトに、坂本が聞き返す。

 

「決まっているでしょう。思い立ったのであれば、行動に移すしかありません。我々意外にあの世界に行けた者もいないのですから、この実験の実験台(モルモット)は、我々でないといけませんので。」

 

 そう言い、ニヒルに微笑む。まったく、それは、今から実験場に行くモルモットの顔じゃないぞ。

 

「じゃぁ、行くか。」

「おう。鴨志田に一泡ふかせてやろうぜ!!」

 

 こうして、俺達は、屋上を後にした。




 次回、ヒューベルトの目論見は果たして成功するのかどうか、そして、竜司、覚醒!?

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