超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】   作:燐2

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渇望

太陽が沈み、空が暗くなった頃、空はボロボロの体を引きずるように足を進めアイエフ達と合流した。まだ冷静だった時にシェアクリスタルと共にもしもの時とラステイションにある空の拠点の場所を記した地図を髪を操作してアイエフの懐に入れていたのだ。居なかったら居なかったでそれでも良かったが、扉を開けると葬式途中の酔うな重い雰囲気があった。まさかとネプギア蘇生失敗?と不安が過り聞いてみるが、それは問題ないということ。ただティシフォネのあの一言が、まだ若い女性にとっては嫌悪感を抱くには十分であり、露骨に顔を逸らす者もいた。それは仕方ないと割り切り空は空いていた席に座り、腕を枕代わりにして机の上で眠るように草臥れた。

 

「……あれはどうなったの?」

「別次元に送り込んだ。……まぁ、当分は大丈夫かな」

 

隣に座っているユニの言葉にやつれた声で返す。体を何度も何度も殺され続け、その都度再結合するのは確かに慣れている。しかし、その数は数億回にも及ぶ殺傷の前に体が不死の体としても限界がある。更に空には『旧神の証』による『人間を何らかの行動で殺す行動』の命が体に刻まれており、あれだけの戦いに街に被害が及ぼうとするのなら体が勝手に動き、守りに入り、更に町ごと吹き飛ばすような攻撃を繰り出そうとすれば体の動きが制御され鈍くなりその瞬間、都合のいい生体サンドバックの出来上がり。故にあれは一方的にやられるだけの無邪気な子供と蟻のような戦いだ。

 

「当分って……貴方でもあれはどうしようもないの?」

「あいつを殺すのと全世界滅ぼすのどっちが大変と聞かれたら、ティシフォネの存在を知っているのなら誰もが前者を選ぶね」

 

例え世界創世を行うための世界破滅が起こってもアレの体を傷付けることは不可能だろう。事実、昼時の一方的な戦いに出来るだけの反撃を行ってもティシフォネの体を一つも傷つけることは出来なかった。世界を灰にする力がある魔剣や触れた不純を浄化させる聖剣もどんなものでも貫くような神槍でも、どんな概念や因果律等といった人智を超越した神の如き力でも彼女を傷付けることは不可能で、逆にその力を反射される。

アイエフ達からすれば、理解を超えた魔境に至る存在だ。

この世界、ゲイムギョウ界の神と言ってもいい存在は『守護女神』と『冥獄神』だけだ。しかも後者は一般人では知らぬその隠すべき怨念が込められた神の名前、その存在を知りもするがまだまだ分からない部分も多い、目の前の今のゲイムギョウ界が生まれる前の原初のゲイムギョウ界から介入があった夜天 空という異世界からのイレギュラーに聞いたこともあったが、その点だけは言っても理解は出来ぬと曖昧な答えが返ってきたのは覚えている。

 

「人の身でも、女神の身でもどうしようもない敵。正に空しか頼れる存在しかいないみたいね」

「……………」

 

ワザとらしく語るアイエフにコンパの横目に見る恐ろしいという感情が宿った瞳が空の顔を写した。その本人は何も語りはしなかったが考え込むような唸る声と共に顔を上げた。

 

「そういうことになるかな。だからこそ、僕等は別行動が一番いいよね」

 

その提案に否定する者はいなかった。

 

「---だけど」

 

だけど、ともう一度零し空は唇を噛むように声を出す。

 

「ケリをつけたい。そしてあいつの狙いは女神か冥獄神にある。だからもうちょっと一緒にいていい?」

「……ケリ?」

「レイス・グレイブハードは僕の知人だ。あいつが関わっている時点でマジェコンをこの世界で未知なる技術が取り入れられているのも想像がつく。君達と一緒にいればあいつが自らこっちに来る確実に……だから………」

「性犯罪者をこのまま一緒にいることに賛成するとでも?あと、それって私達は都合のいい釣り餌よね?……いや、ネプギアやユニの女神はともかく人間である私達はどうでもいい存在よね」

 

空は何も言わなかった。それが事実であることを濁す必要はないと言うように。

アイエフは、誰にも見えない所で白くなるほど手を握りしめた。

コンパも口を開こうとせず、様々な思いが混じり合った坩堝の中でユニは静かに立ち上がった。

 

「私は空をこのまま居させていい……だけど、条件がある」

「………なに?」

 

照明が生み出した影がユニの表情を一層黒くする。

女神と呼ばれるその慈悲深く感じるその欠片も感じさせない修羅の表情で。

 

「なんでもいい、私に力を頂戴。もう、私は誰も失いたくない。失わせたくない。----私は女神なのよ」

 

強硬な意志に燃えるその瞳に光は無い。己の存在理由、存在価値、その全てが壊れかけている憐れな少女に誰よりも口を空けるより早く、閃光がユニの額に打ち込まれそのまま床に後頭部を強打。そのまま糸切れた人形のように意識を失った。そして残ったのは唖然と口を開くアイエフとコンパ、そして髪が人の手のように合わせて放ったデコピンの形のまま停止している。目を合わさずに放った空は、罪悪感があるのか頭を掻きながら小さくため息を付いた。

 

 

「君達女神は王道に進めばいい、暗黒面に墜ちるなんて時代の先走りすぎ」

 

 

最後の最後まで取り返しの無い所までいかないとあの魔剣は抜かないつもりだった思いが倒れているユニの姿に歪んでいく。自分が介入した時点で悪いのか、紅夜がそもそもゲイムギョウ界に居ない方が良かったのではないのか、どれだけ議論しても無駄な過去の出来事に頭痛を覚えながらこれからの事を憂鬱に思いため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「ここで会ったが百年目!天チューぅぅ!!!」

 

レイス・グレイブハードが一番最初に行ったのは、仕事を押し付けられ阿修羅の表情を見せた部下をデコピンで撃退する事であった。疲労困憊故に完璧な奇襲の思わぬ反撃に割れたハートが尻尾の先端にあり、黒い羽を生やしたネズミ『ワレチュー』は空中を何回も回転しながら、壁に激突。目を回してそのまま意識を失った。

 

「ん、ご苦労さん」

 

片手に持っているトレーを落さないように来客用の机に置き、仮眠用の布を取り出して床に転がっているワレチューを掴んでソファに放り投げて布を被せる。トレーに乗せているのはダイコンやニンジン等をよく煮て柔らかくした一人用の鍋だ。作った側からすれば熱いうちに食べてほしいのだが、扉に経った時に向けられた殺気から直ぐに諦めた。

 

「よし、どこまで進んでいるかなー」

 

それなりに広く作った個人用の事務室兼来客室。四大陸の物流や盗んだ情報が載った書類、マンガ等を見上げる程の本棚の前に置かれた椅子に座り、机に置かれた書類を一つ一つ目を通してワレチューが行った書類整理の進行状況を一通り確認して、紙束をトントンと合わせて確認済みをシールが付けられた入れ物に入れる。

 

「さてと、これからどうするかね……」

 

レイスは机に座り行儀悪く足を重ねて机に山住になった書類を落さないように置いた。肘掛に肘を置いて拳を作り頭を置いて静かに考えを始めた。

 

「空は人命より、世界と自然を主軸に考えるからよっぽど大きく動かない限りは本気で敵対することはないだろう。ティシフォネは……まぁ俺が言えば簡単にこちら側に付くが意味ねェな。あいつ俺の状況知ったらラスボス単独で撃破しにいくだろうし、余裕で勝し」

 

それ自体は別にどうでもいい話。

というより、レイス自身ゲイムギョウ界なんて最初からどうでもいい話だったのが、犯罪組織マジェコンヌの幹部の座にいる以上は最低限の仕事は熟さなければならない。

 

「正直な所、このままだとゲイムギョウ界終焉エンド直行なんだよなぁー」

 

頭を掻きながらモンスターからの被害状況が記憶された書類を一枚一枚退屈そうに読んでいく。犯罪組織マジェコンヌの作り出すマジェコンのお蔭でシェアは確保できているが、【汚染化】したモンスターの被害は目を隠せない。組織を使い出現次第、駆逐を繰り返しているが、そもそもモンスターが生み出されるのは人の『負』によるものであり、【汚染化】の原因は女神の加護が弱くなったのが原因だ。このまま活動を続けていけば新種のそれも危険性の非常に高いモンスターが生まれる可能性も十分になる。

 

なにより、こちら側には女神の様にモンスターを絶対に侵入させないシステムがない。

そして、自分たちの行動は正に自分の首を絞めつけ、苦しんでいるのにそうしないと救われないと勘違いしているバカの愚行。

 

「……でもな。空の事だから女神がもしゲイムギョウ界に置いて守護としての役割を担うことが出来なくなった場合の対処もあるだろうなぁ。まぁ、それでも来る終焉を回避できるかは別問題だけど」

 

更にマジェコンヌ側のシェアは確かに八割とゲイムギョウ界を支配しているが、その全員が心から信仰している訳ではない。所詮マジェコンヌのしていることは危険性の高いモンスターを退治し、その活動を大袈裟に宣伝して、マジェコンを撒き人々の意志を徐々に女神から遠ざける事。

しかし、長年信仰してきた対象を直ぐに変える程にゲイムギョウ界人も非情ではなく今の状況はあくまで女神の関心が薄れていき、マジェコンヌへ向かっているというのが今の状況だ。

 

「正直、マジェコンヌ四天王を含めたマジェコンヌも人の心の光にはなりえない」

 

人は姿が見えない大きな者には崇拝を抱きやすいが同時に恐怖を抱きやすい。変わって信仰自由化された際に女神は常に世間にその姿を良く見せ、モンスター退治にも積極的だった。その事によってその姿を見せ、その力を見ている者達にとっては安心感を抱くだろう。更にあの容姿だ。一般人からすれば羨望を越え希望になれる存在だというのも納得が出来る。

 

 

ーーーレイスからすれば、女神は神様と言うより嗜好思想の塊。下手に力を得たアイドルという認識でしかない。

 

 

「マジックも美人ではあるけれど……正直、万人受けじゃないしなぁ……。他の奴らはブレイブはともかく他の面子が人に好かれそうな性格と姿じゃない……」

 

まるで人に媚びる為のアイドルのようだと再びため息を付き、足を床に戻してノートパソコンを開いた。そこには新型の自立兵器の設計図が映りだされている。それは秘密入りにラステイションで技術を独占していたアヴニールを引き込み、更にリーンボックスで破壊された物を回収して修復した偽造品だが、その性能は女神の力を一時的に封印できる恐るべき兵器。

 

「FDVシステム……ねぇ。確かこのシステムの責任者は……ああ、あいつか」

 

「もうこの世界に私の信仰すべき女神はいない」。そう言ってマジェコンヌの門を叩いたリーンボックスの元教院長であるイヴォワール。その顔写真がディスプレイに表示される。元より年寄りの容姿か見える貫禄と教院長まで上り詰めたカリスマ性、故に優秀であったがレイスが知っている。

邪神に関わる者からこそ、はっきりと分かる狂信に塗れた薄汚れた光を照らす瞳を態度と口でマジェコンヌを信仰しているように見せて、その信仰は別の所へと注がれている事。

 

「……はぁ、絶対にこいつやらかすな。けど勝手に切り捨てる訳にはいかないんだよな……」

 

レイスの素顔は基本隠されている。どこであっても。幹部という地位で女神に匹敵する実力から頭のまわる者はその正体に気づき始めている者もいるが、顔も見せない奴が幹部という地位でしかもリンダという下っ端をいつも傍に置いているのだ。出世を狙う者や、只の嫉妬か彼に従う者もいるが、面白く思っていない者もいる。そう言った者はイヴォワールに集まり、大きくなっていないが水面下でマジェコンヌは二つに分かれていると言ってもいい。

話し合いで済ませばそれでいいのだが、イヴォワールはこちらの話を聞くように見せて全く聞かない更にこちらに憎悪を抱いている有様だ。その理由は分かるが、こちらもこの声と顔は一種の切り札である以上変える事は出来ない。

 

「とりあえずテストしないと……えっと、場所はここでいいか」

 

手元にある通信装置で同行させるメンバーにメールで連絡を入れると、レイスは憂鬱な気分で山積りになった書類を片付ける為に気合を入れようとパンッと眠気を吹き飛ばすように両頬を叩い取り掛かった。

 

 




新次元アクションネプテューヌUとかモンスターハンターフロンティアとかデスティニーやってたらいつの間にか凄く間が空いていました。更新遅れて申し訳ないです(←待ってくれている人はいないと思うが)

今の所、鬱イベントはあと2~3回くらいあるかな?後は苦悩がほとんどになるのかな?……自分で言うのもなんだけど本当にこれネプテューヌ?と思いながら書いちゃっています。これからも更新遅くなってしまうと思いますが、よろしくお願いします。


※シリーズを重ねる事にノワールのツンが徐々に幼稚になってきたのは気の所為だろうか……

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