超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】 作:燐2
約五か月ぶりの更新です。
仕事や新しいゲームなどをやりながら、頭の中では色んなネタが浮かんだししていましたが、どうしてもパソコンの前に座ると指が止まってしまって結局寝てしまったり長々と続いて、これじゃダメだとせめてmk2は完結させたいと思って見直して編集して漸く話を進める様になりました。
仕事の関係もあり更新の速度はかなり遅いと思いますが、完結目指して再度心を新たにして頑張っていきます!!
---日は昇り始めたばかりの肌寒い時間に剣撃の風を切る音と銃撃音が街はずれの何もない平原で幾度も響いていた。
閃光の軌跡が残る美しいビームブレイドの連撃は虚を切り裂き、スコープの中央に定めて撃ちだされた魔力の弾丸は目的の人物を射抜くことなく過ぎ去る。
相手は無手で、本人曰く『力が半分になって更に十分の一も出せない程に弱っている』と言っているほどだが、二人にとってはただの出鱈目だと思うほどにその動きは速い。まるで雲を相手にしているかのような錯覚を覚える程に。
しかし、それは二人の勘違いによるものだ。ネプギアとユニ、二人は女神候補生であり勝利するべき存在であるが故に、命を危機にするほどまでに戦い抜いた経験があまりに少ない。反対に彼女たちの相手をしている空は、卑怯と呼ばれるほどの破壊能力や空間操作する力を持っていても、それを無効化されたり、そもそも自分より圧倒的に力の強い者どもを数え切れぬほどに戦い抜き、勝利を収めてきたのだ。潜ってきた修羅場が違いすぎ、生きてきた世界もまた違う。
故に空がしているのは単純であった。ただ彼女達より遥かに判断が速いのだ。
「ユニ、敵の動きを予測してないとこうなるよ」
まるで残像が残る様な速さで乱舞するネプギアの剣術を、その振られ次の剣撃に移行する刹那の瞬間を狙って拳打が腹部に突き刺さる。かはっと吐き気と痛みによる刺激に動きが止まったネプギアを流れる様に足を払い、態勢を崩した所で掌底が彼女の体を弾き飛ばす。その方向はユニの方角であり、咄嗟に銃口をネプギアから外した隙に、大きく跳躍して撃ちだされた砲弾のように肉薄してきた空の対処に遅れた。急いで銃口を向けようとするが、飛び蹴りによって得物はユニの手から吹き飛び、視界に黄金の髪が映った瞬間には腕を掴まれ、そのまま一本釣りの要領で地面に叩きつけられ意識を黒に染まる。
「相手に姿を悟られないスナイパーならともかく、見えている状態だと常に動き回らないと接近された時に言いサンドバックになる。とはいっても彼女の性格上、隠れて撃つのはちょっと向かないから体術の基礎、それと味方と合わせながら敵との距離と予測する多重思考でも教えようか」
「……ッ」
意識を失いぐったりとするユニから手を離し、空が向き合ったのは拳打と同じ位置に掌底を撃ち込まれ腹部を片手で抑えながら立ち上がるネプギア。あの一瞬で同じ場所を撃ち込まれ酷い吐き気と痛みが彼女を襲うがその瞳はまだ戦意を失っていない。くすっと小さく微笑んだ空はゆっくりと歩き出す。その態勢は一見隙だらけだが、それは何時もの事だ。
ネプギアは知っている。その姿勢に自分たちの姉とその仲間が、違う方向から同時に攻撃して、同時に吹き飛ばされた事を。だが、迷うこと無かった。体中全てに力を込めて、風の音すら聞かない程の集中力で地面を蹴った。
「---へぇ」
それは最速の攻撃を繰り出す為の構え、両手に持ったビームブレイドを顔の横に添えた突貫の動きに対して、少し驚いた様子で空が息を漏らした瞬間には、刃は空の体に触れようとして、離れた。
「甘い……っと!?」
その動きは直ぐに分かった。そしてどこを狙うのかも見切った故にそれは、足の位置を入れ替えるだけで簡単に躱すことが可能だ。そんなこと、ネプギア自身が一番理解している。
強引に右足を突き刺すように地面に打ち付け、力ずくで突撃した加速を抑える。最速の速度を急停止させるために無茶をさせた右足から頭へと危険信号を響かせるが、構うものかと足を反転させ空の方へ向け、左足を軸に飛び掛かる。
「ミラージュ・ダンスッ!!」
奏でる様な軽やかな動きから連続の斬撃。全力で放った突貫を囮にした本命の攻撃すらも瞬く間に見抜いた体が派手に後ろに飛ぶ、片手を地面につけて軽やかに一回転を決め、何事も無かったように立ち尽くすがその頬には一閃が走っていた。
「…………まさか、ここまでやるなんて」
「ギアちゃん凄いです!!」
「空を傷付けた……!?ネプ子でもかなり時間掛かったわよ!?」
アイエフとコンパの賞賛の声に無意識に強く握りしめた拳を解いて朝の訓練終わりと伝えると、ネプギアはビームブレイドの刃を消して首を振るう。
「いえ、ただ運が良かっただけです」
「それでも、凄いわ。運を味方にするのも勝負の世界じゃ必要なことよ」
「流石女神候補生、ネプ子の妹です!。あ、足大丈夫ですか?」
仲間から声にネプギアの表情は一切変わらず、ただ光の刃が失った柄を見つめていた。その様子に空は横目で見ながら、倒れたユニの頬を指で何度か突くと紅い双眸が薄らを開く。
「あの瞬間によく受け身を取れたね」
「全然……ダメ、よ。……その傷、はネプギアが?」
既に血が止まり塞ぎつつある頬の傷を空は手でなぞる。
「僕もまだまだって事だね。立てる?」
「えぇ、これからプラネテューヌに、戻るのよね…」
「君も行くの?せっかく自分の国に戻ってきたんだし、シェア回復に専念したら?」
既にとある人物から唯一ゲイムキャラの居場所の情報を持っている教祖ケイから等価交換として要求された超レア素材『宝玉』の情報を得た彼女達は今日出発する予定だ。因みにもう一つの超レア素材である『血晶』を持つとされるモンスターの住処はティシフォネと空の異次元との戦禍に巻き込まれ消し飛んだということで、空がモンスター発生の地である冥獄界に三時間ほど粘って手に入れた。
「…………ねぇ」
「力って物はね。何かを犠牲して得る物なんだよ他人から譲り受けた物で合っても、それは同じ」
立ち上がったユニは服についた土を落しながら数日前を思い出す。今は当たり前の生きているネプギア、彼女は一度死んだ急所を貫かれたゴミのように捨てられた。それを復活させたのは空、そして原因を作ったのも空だ。
空はあの悪魔を別次元に飛ばす事には成功したがいずれまた現れて、その標的は空と関わった全てであり一番先に襲うと予測している。そして、あの悪魔に抵抗する手段は、例え女神で合っても絶対に不可能と言われている。そんな相手に抵抗する為に、ユニはどんな手を使っても力が欲しいと己の無力と憎悪を持って空に提案したが、返事は気絶するほど強烈なデコピンだった。
「守るための力を得るために何かを犠牲にするって矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、それが事実なんだ。もっと払いやすい代償を用意した方がいい、時間を掛けて修行とか困難を仲間と乗り越えてとか、そんな王道的な展開を繰り返しても十分に君は強くなれる」
「……ネプギアもそうなの?」
「あれは、君の知るネプギアじゃなくて僕の知る胸糞悪いネプギアだよ」
空は勝手に髪について土を払ってネプギアに視線へと移す。その瞳は今までネプギアに向けていたどこか保護者のような心配するような物ではなく、懐かしそうな、そして警戒するような意味深い眼差しでユニは頭を傾げるその様子に空は話を続けた。
「あれは何もかも犠牲したのに、手に入れた物は手の間から落ちて最後に自滅していったそういう女神だよ」
「……どういうことよ」
「ネプギアの蘇生に使ったのは、別次元のネプギアがゲイムギョウ界を統治していた時に作り出されたシェアクリスタルなんだ」
ユニだけにしか聞こえない程の小さな声で話された内容に大きく目を開いてユニは空を見つめる。
「あの次元のネプギアは唯一の女神、ゲイムギョウ界を統治する絶対の神、そんな時代に生み出されたシェアクリスタル、エネルギーの質が全然違うから、意識に影響が出ているんだよ」
こうなることは予想していたけど、とため息と共に吐きだして頭を抱える。こうなったのは自分の行いだと罪悪感に押しつぶされるように。
「確かにネプギア、なんだか別人のようになったわね。守護女神戦争の時のお姉ちゃんよりも……もっと一人に見える」
ユニが思い出したのは最も高い壁であり厳しい姉の姿。そんな彼女も今は仲間と言う存在が出来たからなのか性格が丸くなってきたが、守護女神戦争時に他国の女神と敵対していた時は常にピリピリとした緊張感を纏って話しかけにくく、正に国の為に全てを背負うとしていた時の姿を思い出す。
今のネプギアはそれに類似していた。アイエフやコンパの言葉もまるで耳に入っていない様、常に別の世界を見ているように疎開感を出している。
「一人で何もかもしなければならなかった。頼みたかったアイエフもコンパもただ人間として頑張れと残して年老いて死んだ。少しでも頼れる人間が次々いなくなって、だから世界を救うために家族を友達を、その手で殺して孤独になったネプギアは、守護女神としての機能だけを遂行するための
目を大きく開き驚愕に染まるユニのその頭に空は手を置いて、壊れそうな物を大事に扱うように撫で始める。
「力はただの道具、それを使うだけの技量と精神がなければ、力は自分や相手を傷付けるだけの凶器になる。そんなのは嫌だよね?」
「でも、私がやらなきゃ、誰がやるって言うのよ。私は女神候補生なのよ……ッ」
人間のように”両親”はいない。夢を与えられる物ではなく、この世に生を享けたその時から既に将来が定められているそれが女神候補生。それが、ゲイムギョウ界にとって当たり前の事、必然の犠牲、その中で生きていかなければらない。拳を握りしめ訴えるユニに空は、まるで手のかかる子供を慰める様にしゃがんで目線を合わせ微笑んで話す。
「大丈夫だよ。君が、君達が諦めない限りは、どんな危ない状況になっても身代わりになるから」
握りしめてくれたその手は、とても冷たかった。