超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】   作:燐2

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仕事が休みの土日に更新が集中すると思います


終末へのプレリュード
墓守り


―――――三年の月日が流れた。

 ギョウカイ墓場にて消息が分からなくなった女神達の行方不明は、混乱を防ぐために国民たちには伏せられたが、人間ではどうしようもない強大なモンスターへの脅威が、薄々と女神はいなくなってしまったのかと噂が広がりつつあるそんな時期。

 

 ゲイムギョウ界のモラルは低下続きであった。

 増加するモンスターによる被害が止まらず、それによって国民の鬱憤が溜まり、それを和らげる娯楽にあったのは誰でも簡単にダウンロードが行えるマジェコン。最初は政府が取り締まっていたのだが、女神不在の出来事に徐々に権限や発言力が失っていき、いつしかマジェコンを提供できる謎の組織『マジェコンヌ』が信仰対象へと移り変わっていく。

 

 貧困や裕福関係なく誰もが自由に遊べる。世の中にそんなことを実現する夢で描かれる様なアイテムに誰もが魅了されていき、それが邪教と分かっていても親は子に女神ではなく、マジェコンヌを勧めるそんな時代になりつつあり、そこに誰もが笑顔になれるような世界は合っても、それは女神達の望んだ明るい未来とは決して言えない民度の低い無法世界へと腐っていった。

 

 

 その様は、目の前の現実から体を背けた世捨て人が闇の部屋に閉じこまっていくように見えた。

 

 

 

 

 

 

 青い空でもなく、灰色の雲が覆っている訳でない。そこには不気味な紅い雲が世界を覆っていた。

 見渡して分かる物は。原型が残っているか分からない謎の物質。人々が忘れた物が辿りつく場所であり、死んだ魂が集まる世界。到底、人の住める大地ではない負が蔓延するそれに足を進める二人の影があった。

 腕が隠れてしまうほど大きいコートを羽織り、二葉のリボンでサイドテールを作った幼い顔つきであるが大人びた雰囲気がある少女とミニスカートにセーターと一見すれば、今時の可愛らしい服装をした童顔の少女だ。

 ビクビクと足を震わせて体を小さくしながら歩く、クリーム色をした少女の前を歩く茶髪のサイドテール少女は、その頼りない姿を見てため息を吐いた。

 

「ギョウカイ墓場、空からは天国と地獄の境界線、死した魂が集い、負が冥獄界に流れる場所って言っていたわよね」

「そ、そ、そ、そうですね…」

 

 恐怖を隠せない震える彼女を見て困ったように頭を掻く少女――――『アイエフ』。

 本来であるのならこの場所に来るのは、自分だけであった筈なのだが、うっかり今回の依頼の事がばれた。そして彼女の親友である『コンパ』が付いていくと言いだし、結局二人で来たことに改めて後悔が溢れ出した。その様子にコンパは大丈夫です!と頼りない声でアイエフに向かって叫ぶ。

 

「コンパ、分かっていると思うけどここは相手の組織のど真ん中よ。そんな声を出したら見つかるわよ」

「ご、ごめんなさいです…!でも、私もねぷねぷ達を助けたくて…!」

「分かっているわよ。全く紅夜からは連絡無し、空も別世界で任務とか言って帰ってこない。それを狙った様にマジェコンヌって意味の分からない組織のお蔭で女神のシェア率はどん底にされて、ネプ子達もここに来てから三年間も音沙汰無し……本当に厄介極まりないわ」

 

 まるで墓場でもいる様な寒気を感じながらアイエフは身震いをする。耳を澄ませば荒々しく叫ぶモンスターの咆哮。距離はある物の油断は出来ない。明らかに今のレベルでは太刀打ちできない凶暴なモンスターがうようよと徘徊している可能性が高い。どんな気配も直ぐに感知できるように感覚を鋭くして近くの大きい岩石の裏へ移動する。

 

「コンパ、イストワール様から貰ったシェアクリスタルは持ってきているわよね?」

「はいです!バックの一番奥に大切にしまっているです!!」

 

 コンパがバックから取り出したのは、虹色に輝く手のひらサイズの宝石。女神の信じる人々の精神エネルギーを教祖のみが伝えられるという特別な技術で結晶化したシェアクリスタル。プラネテューヌの教祖であるイストワールが製造したこれを使用すれば、一時的に女神に大きな力を付与することが出来るアイテムだと伝えられている。もし、捕まっているようであればこれを使い、女神を復活させ共に脱出せよ。それがアイエフ達の任務である。

 

「…っと、よし。周囲にモンスターはいないわね」

「あいちゃん、女神達がどこにいるか知っているです?」

「知らないわよ。全く無茶な任務ね…、知らないこんな広い場所でネプ子達を探して連れ戻せって」

 

 見上げる程に大きな岩石を軽々と登り、低い姿勢でコートの中から双眼鏡を取り出して、周囲を警戒するアイエフ。煮え滾る焦心を抑えながら冷静に周囲を見渡し安全なルートを絞っていく。戦闘になれば騒ぎになり、何が出てくるか想像がつかないからだ。人間である身なら苦戦したとしても、女神にとっては倒せる相手。調査と名目でここに訪れた女神達のレベルならば、徘徊しているモンスターに苦戦することはまずないと考えられる。なぜ、帰ってこれない理由と考えた時、この近くに四女神でさえ圧倒するほどのモンスターがいるのか、全く想像がつかない『何か』がいるのか。

 

「会ったらミイラとか勘弁してよね…!」

 

 イストワールの力により、生きていることは絶対だと調べられているが、逆に言えればそれ以外の事は全く分からない状況だ。蟻一匹でも見逃さないつもりで、更にモンスターに見つからないことを意識しながら、血眼になって探し始めるアイエフとそれを理解し邪魔にならないように静かに待機するコンパ。この周囲にはいないと判断して、岩石から降り、アイエフを先頭に先ほど確認したモンスターの徘徊する以外の場所を慎重に移動していく。

 モンスター誕生の地と最も近いこの大地、故にブラッディハードの事が何度も頭に過るが、今は女神の事に集中すべきだと意識を切り替える。

 

「!あいちゃん、誰かの声がするです」

「罠の可能性もあるから私が先行して調べるから隠れて待ってて」

 

 女神同士の友好条約が結ばれるまでの一年間、それから屈辱を飲みながらの三年間の間の鍛練を重ねた。昔と比べた頃と違って自信を持って強くなっていると自負しているがだからこそ、人間である身ならば、一切の傲慢は許されない。自分に自信がある物と言えば足の速さとルウィー出身だからこそ会得できた魔法。モンスターのような馬鹿げた力がある訳でもなく、女神のような自由に空を飛べ、圧倒的な戦闘能力がある訳でない。常に全力を出し切ること、それが人である身に許された事。

 

「いたわ」

「ねぷねぷ…!」

 

 岩陰から見えた景色は障害物が少ない開けた場所だった。その奥に岩石に不自然に開けられた所には人影がある。双眼鏡で確認してみればケーブルのような物が女神達を捕縛している姿がよく見えた。

 

「迂回していくわよ。いきなりこんな開けた場所、何かある可能性があるわ」

「……分かったです」

 

 今まで以上に真剣な雰囲気にアイエフにコンパはお互いに表情を引き締める。救いだったと思えることは全員が同じ場所に囚われていたことだろう。奥に進む事に重くなる空気、地獄への道に進んでいることを冷や汗が流れ、息が詰まるが一切の気は抜けない。一体どこから何が出てくるのか、一歩踏み出すごとに集中力が汗と共に流れ、地面に落ちていくような感覚が襲う。それでも歩むことを止めない二人は、戦士としての素質があるのだろう。そんな二人に天は微笑んだのか、それとも嵐の前の静かさなのか、二人は無事に女神の元にたどり着くことが出来た。

 

「コンパ」

「はいです」

 

 阿吽の呼吸。バックから取り出したシェアクリスタルを苦悶に歪む女神達の前に献上するように出す。この世界の女神を信じる想いの結晶が、独りでに浮かびそして温かな光が溢れた。シェアクリスタルに込められたシェアエナジーが解放され、温かな光の粒子が、シェアクリスタルの放つ光が弱っていくごとに女神達の顔色を徐々に生気を戻していく。女神候補生二人に四女神、この世界ではこれからの未来に必要不可欠な存在、そして次の世代に繋げなければならない可能性ーーー

 

「へぇ、信仰するだけでいざ居なくなったら別の物に縋る奴が大半だと思ったが、まさか神様を助けるために地獄の一丁目に来る輩がいるとは中々いい信仰者がいるな。いや、友達思いと言うべきか?」

「「!!!」」

「脅かし成功―――。自己紹介は必要かな?」

 

 いつの間にか、岩石の上に見下ろす影。闇夜を思わせるそのコート姿は何者かは、自らの意志で地獄に墜ちた者を重なった。

 

「――――こぅさん?」

「違う!あいつは、紅夜じゃない!!」

「そうだよ胸の大きいお嬢ちゃん、俺の名前は―――――レイス、今は名乗っている」

 

 名乗った黒のコートに全てを隠した何者かは、アイエフの動きより先に地面を蹴り、彼女たちの後ろをさも簡単に取った。あまりに自然でその流れる動作に警戒心が一気に上がる。口調は友好的だが、その内心は一切読めない。今の状況はコンパは女神達の方に向き、それを守るようにアイエフが立っている。深いフードによって表情は見えないが、精神を逆撫でしつつ面白がっているその控えめな男の笑い声に嫌な冷や汗が流れ始める。

 

「って、結局俺は名乗ったな。さて、戦の始まりはお互いに名前交換から始めるべきだと思うんだが……どうだ?」

「言うわね。私が貴方と戦った所でどちらが最後に立っているのか分かって言ってるのなら、貴方は卑怯者よ」

「そう言われてもな、無名の墓石とか寂しいだろう?」

「まだ死ぬつもりも殺されるつもりもないわ。これでもまだうら若き乙女よ」

 

―――――どうする。必死に思考を回転させる。

 彼から誘うように溢れる闘気、明らかに人間レベルではない。最低でも女神、最悪の場合はブラッディハードと同レベル。

 逃げるという選択肢を選んだ時、どう考えても二人で逃げ切ることは不可能だ。ならばどちらかを囮にする?死ぬ気なら時間は稼げるかもしれないが、相手が目の前の一人だとは思えない。そもそも、いきなり姿を現したのだ、既に侵入者の連絡が仲間に流れていると考えてもいい。コンパの足では逃げきれないかもしれないが、逆にコンパを囮にする選択肢は最初から除外している。それは彼女が親友だからという簡潔な理由だ。

 

「ふぅーん……、小さいな」

「これでも需要あるわよ」

「ははは、確かに大きなお友達から喜ばれそうな体型だな。かなりタイプだ」

「それじゃ、私の顔に免じてここは見なかった事にしてくれないかしら?」

「名前も知らない合ったばかり美少女のお願いか、ドラマチックじゃないか。いいだろう、俺は花粉症で今日は目がとても痒い、今から急いで目薬を買ってくる。途中で女神達を助けようとしている不届き物を見たような気がするが、目が痒いから後で確認してこよう」

 

 そう設定を言い残すとアイエフ達に背を向け、歩き出してその背中は遠くなって消えるまでアイエフは震える手で持つカタールを収める事はしなかった。一見すれば無防備に見えるそれも、一切の油断はない。もし飛び掛かったその瞬間、地面に倒れているのは自分だと安易に想像ができた。コンパは、今まで以上にないぐらいの深い安堵のため息を吐くが、アイエフの顔は強張ったままだ。何故なら、俺は(・・)――――その一言が意味深げに強調されていたからだ。

 

「コンパ、逃げ―――――」

「侵入者―――――発見ッッッ!!!」

 

 空から古びた鐘を鳴らす様な煩く高い男の声と共に黒い鉄槌が流星の如く落ちていく爆発。

 振り下ろされた巨大な力より先にコンパの手を引き、爆風に押し出されながら地面に転がり、カタールを地面に突き刺して直ぐ様に態勢を整える。

 

「くくく――――――ふはははっははははは!まさか、まさか!こんなところにくる酔狂がいるとはなぁぁぁ!!レイス以外にやっとやりあう相手が来た!感謝するぞ人間!!」

 

 目の前で天を穿つ勢いで高く笑う男の声。人間のものでは狂気を叫びながら、アイエフの数倍はあるだろう背丈に全身は攻撃的で刺々しい黒鎧が悍ましい。体の至る所に飾られた頭蓋骨の様な形とその手に握る黒光りする長いハルバート、その暴虐的な雰囲気と激しい闘気は正に戦いの中でしか生きられない狂人戦士そのもの。

 

「さっきの奴より絶望的なまでに話の余地はないわね。コンパ!私が引きつけるから撤退の準備を!」

「で、でも、女神さん達がまだ……!」

「ここで私達が倒れたら、次にここに来る度胸がある奴なんてゲイムギョウ界にはもう、いないわよ!!!」

 

 両手に持ったハルバートを回転させ、構えた瞬間その姿は霞んだ。未だに立ち上がっていないコンパを突き飛ばし、同時に地面を蹴った。次の瞬間、稲妻が落ちたと錯覚するような土煙と耳を劈くような地響きが衝撃波のように響き渡る。土煙の間に見えたのは、地面にめり込んだハルバートの刃と獲物を見つけた鈍く輝く飢餓の眼光。

 もしあと一歩、行動が遅かった場合は、粉砕され地べたに転がる肉の塊になっていた。それだけの威力を前に戦慄しながらも、冷静に心を落ち着かせながら周囲を確認する。未だにシェアクリスタルは女神達の前に浮かんでおり淡い光を放っている。だが、未だに女神復活の予兆は一切見えず、そしてここで”女神”復活まで時間稼ぎが出来るとは到底思えない。

 

「鮮血と喝采に溺死しろぉぉぉ!!!!」

「――――――あ」

 

 殴るように振り下ろされる凶刃。その狙いはアイエフではなかった。

 速く復活してと殺意をむき出しにする獣を目の前にしながら意識を傾けてしまったコンパだった。風を切り裂く刃を前に脳裏に過ったのは楽しい仲間たちの思い出、悲痛の叫び声に救いの手はブラッディハートと女神でさえも届かない程に遠く見えて。

 

 

 

「エクスマルチブラスターッッ!!」

 

 奇跡のように女神『候補生』は目覚め狂気の刃を止めた。

 

「ぐ、うぅ!?」

 

 横からの高威力のビームによる突然の奇襲に振るった斬撃は的が外れ、態勢を大きく崩した。呆然と口を空けアイエフを対象に解放された『二人』の姿にコンパは瞳に希望が照らされる。

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

 プロセッサユニットから光の推進剤を莫大に噴かせ大気を貫く、薄い紫色の閃光。まだ態勢を整えていない狂人との距離はほぼゼロ、力の限りを振り絞ったシェアエナジーは銃口に集まり解き放たれる。

 震えながらも引き絞られるトリガー、銃口を溶ける勢いで放たれる極太の光線によって線上にあった岩石をも貫きながら、その奥にその奥まで直進して狂戦士の断末魔が、耳に届かない距離まで指を離す事はなかった。

 そして二人は目撃する。一人は淡いピンク色の流れるように伸びた髪をして花畑でひらひらと飛ぶ小さな蝶のようなバックプロセッサが特徴的で、万能兵器M.P.B.L(マルチプルビームランチャー)を持ち、もう片方は身の丈を超える程の女神専用に作り出された戦車砲と言っても過言ではないほど巨大な銃であるX.M.B(エクスマルチブラスター)と素早く動き敵を撃ち貫く為に軽量化されたプロセッサユニットを身に纏う二人の女神候補生の姿を。

 

「ネプギア、それにユニも……」

「良く分かんないけど、ギリギリ?だったわね……。ごめん、もう限界」

「アイエフさん、コンパさん。お姉ちゃんを……」

 

 復活してからのフル稼働。例えるなら、温めていないエンジンをいきなり臨界まで動かせる無茶な行動に女神化は解除され、熱が完全に抜けた様に意識を失い地面に倒れるネプギアとユニ。そんな二人に駆け付けるアイエフとコンパ。

 

「どう?」

「二人とも過剰なシェアエナジー消費に気を失っただけです。でも、これでねぷねぷ達を助けるだけの時間が――――――」

「……無理ね」

「どうしてですか?」

 

 影が出来るように頭を下げ指を指す方向。捕まった女神達の足元には宙に浮いていた筈のシェアクリスタルの神々しい輝きは無くなり、そこらに転がる石の様に灰色へとなっていた。

 

「多分、この二人を復活するだけしか無かった」

「それじゃ……」

「撤退するわよ」

 

 鉛の様な重たい声。コンパも苦し紛れに頷くことしか出来ない自分の無力感を抱きながら、二人は女神候補生二人を抱えてギョウカイ墓場から脱出するために足を進めた。

 切り捨てた希望とその背中に抱えた希望、その二つのあまりに重さが現実の残酷さを噛み締めるだけしか出来ない人間の限界を感じさせた。

 

 

 




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