超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】   作:燐2

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深層

 海。生命はここから生まれたと言っても過言ではない神秘的領域。

 数年前、産業革命時のラステイションの海は工場から流れる廃棄物によって見るに堪えない惨状であったが、この地の女神はその海を見て心を酷く痛め、直ぐに美しい海を取り戻す為に動いた。己の利益だけを優先する企業を制する為に様々な政策を造りだし、女神の働きによってラステイションは工業的な観光領地だけではなく、美しい砂浜と透き通る海が広がるゲイムギョウ界でも五本指に入るとされる程の有名観光地になった。

 

 そんな場所に紅夜達は来ていた。勿論遊ぶ為ではなく、この地のゲイムキャラを探す為にやってきたのだ。ラステイション教祖の神宮寺ケイだけが許されたゲイムキャラとの通信によるとこの場所にいるという事だ。

 

 紅夜たちは足を進める。日はちょうど昼時ということもあって、多くの人が訪れていた。海で遊ぶ、つまり愉しみを目的とした人がほとんであり、本都市ほどではないがそれでも、見渡す限りの人混みがあったが、彼らから無自覚で放たれる負は少なく、紅夜が顔色を変えずに進める程だ。

 

 パーティー中には少しだけ遊びたい者もいるが、自ら課せられた使命にぐっと今は我慢と胸に刻んで、近くの危険性がかなり低いダンジョンに足を運んだ。そして、神宮寺ケイに指定された場所に赴くと――――――。

 

「よう、お前ら、最初に会った時と比べてちょっとはマシになったか?」

「………むぐっ!?」

「………ぢゅっ!?」

 

 三人組(そのうち一匹はネズミ)は海水浴気分なのか、かき氷を食べていた。因みにレイスは練乳、リンダはイチゴ、ワレチューはチーズ味で、三人海を眺めながら食べている横には黒い靄を纏った鎖がゲイムキャラを縛りつけていた。必死に助けを求めているのか声を出そうとするゲイムキャラはネプギア達の姿を見た瞬間、更に声にならない声を激しく上げる。

 

「――――――何をやっているの?」

「かき氷、喰ってるんだけど?うまいぞー」

「あ、頭がぁぁぁッ」

「ぢゅうぅぅぅぅぅ!!!」

 

 お前ら何やってんだよーと鋭い頭痛に顔を歪ませる一人と一匹にゲラゲラと笑うレイスはカップに残ったかき氷を豪快に口に放り込んで、立ち上がる。それと同時に全員が臨戦態勢に入った。

 

「ッ―――――と、さてさて始めてみる奴等や久しぶりに見た奴がいるな」

 

 ある者は屈辱を味わった敵意を、ある者は怨敵を目の前にしたような純粋な悪意を、ある者は人外離れた化物を見る様な畏怖を、ある者は静かに闘気を瞳の中で燃やす者。それらを一通りレイスは確認して――――一人、目を丸くして棒立ちする少女を目にして、懐かしそうに静かに笑う。

 

「日本一、どうだ。俺の出した問題は?お前はなんの味方だ?」

「………さてね。少なくても私の正義を間違っていないと言ってくれる人がいるから、アンタを討つ」

 

 抜かれたペンギンのような形状をした銃を手に、今まさに飛び掛かりそうな日本一に満足げに笑みの深さが増す。

 

「ふむ、っで、あれほど無様に敗北したのに、よく来たな女神候補生のお二人さん?」

「「――――――!!」」

「一応、お前ら見つけたら捕縛しろとか言われているから、会った以上は今度こそ手足の二、三本は覚悟してもらおうかな」

 

 レイスがポケットから取り出したディスクにリンダとワレチューは体を揺らして、この不自然に開けた場所の隅っこに緊急避難する。それを確認したようにレイスはそのディスクを地面に落すと、怪しい空間が地面に広がる。溢れ出したのは精神を逆撫でするような嫌悪感を黒い霧の様な物、その中に怪しく煌めく赤い瞳。

 それは化外の物。人に害する人の意志。穢れ歪んだ悍ましき気配は、誰よりも紅夜――――ブラッディハードはその正体に気付く。それは、この世の地獄である冥獄界で蝗害の如き数、激流のような激しさと速さで繰り広げられる弱肉強食の人柱。

 

「ッ―――――それは!?」

「一時的にこっちとあっちを繋げた。俺自身だと相手にならないが、これぐらい倒せるレベルだよな?」

 

 隠されたフードの奥の表情は、誰もがその声を聞いてだけで狂気があると言わせる程の邪神のような笑みだと連想させた。不安定で不定形な黒い霧は凄まじい速さで体を形成させていく。鋼鉄をも切り裂く鋭い刃、大木を思わせる太い腕。幾多のモンスターを葬ってきたのだろう不気味な赤黒い色をした凶悪で巨大な斧。生半可な刃物では傷つけられない逞しい肉体。餓えた狼のような赤く鋭い瞳は見下ろし。その大きな図体をより大きく見せる殺意の塊。

 

「お、流石兄貴、猛争化した接触危険種を呼ぶ出すなんて女神達終わったな」

「ちゅ、可哀そうでちゅ。そもそもお前一人いればゲイムギョウ界支配できるんじゃない?という理不尽の塊のような人から見れば、この程度のモンスターを召喚するのは朝飯前でちゅ」

 

 取り巻き二人は疲労の欠片も感じさせずに息をするように召喚したモンスターに畏怖の念を抱きながらレイスに賞賛する。モンスターとは負の塊、ゲイムギョウ界と冥獄界を犯罪神の加護によって一時的に繋ぐことが出来るが、それを操るとなると凡人にとっては自分より弱いモンスター程度しか召喚できない。システム的に出来ない事もないが、その場合モンスターに乗っ取られるか喰われる自爆の危険性が孕んでいる。

 

「何かしらの力が無ければ、善の行いも悪の行いも等しく、負け犬の遠吠えと変わらんぞ。故にお前達の力、俺の敵となりえるか見せてくれ」

「■■■■■■ッ――――――!!!」

 

 レイスが指を鳴らすと同時に空気が振動する咆哮がネプギア達を吹き飛ばす勢いで放たれ、モンスターの姿が消える。刹那遅れて地面が爆発するように粉砕される。

 

「上ッ!!」

 

 太陽を背に巨体とは思えない跳躍から己が体を乗せた必殺の一撃。紅夜が叫ぶと同時に一人を残して、全員がその場から逃げ出す。

 

「空亡ちゃん!?」

「…………」

 

 凶悪なモンスターを居ないように、否最初から彼女が視界に映り認識しているのは一人しかなかった。脳天目掛けて振り下ろされる凶刃にネプギアの声が空亡に届き、無造作に手を血濡れた斧に向け、自身の従者の名前を呟く。

 

Destruction(デスクトラクション) havoc(ハヴォック) dragon(ドラゴン) ovre(オーバー) booster(ブースト)!!!』

 

――――――その刹那、炎と氷の旋風が巨体のモンスターの落下を止めるほど激しく渦巻く。

 

「………ちょっと、貴方は邪魔だ」

 

 それは一瞬の出来事だった。ネプギア達が消えたと錯覚させるほどの速さでモンスターの懐に潜り込み槍の様な真っ直ぐな一撃が腹部を抉り体内に侵入する。

 

Burn(バーン)!!』

 

 その無機質な声がモンスターの最後だった。体内を蹂躙する猛火は瞬く間にモンスターの肉体を何倍にも膨張させて命の花火を咲かせた。地面に巨大な質量を持つ物体が落ちた様な音と共にレイス以外が唖然としたのは、空亡の姿、滑る様な洗練されたフォルムに氷の中に炎を閉じ込めた宝玉が至る所に光るドラゴンを連想させる周囲を圧倒させる覇気を放つ鎧を身に纏っていた。

 

「……な、なんでちゅと……」

「兄貴の呼び出したモンスターが一撃、チートだ……」

「……………」

 

 これが現実なのかとリンダとワルチューは互いに頬を抓り合い、今や影も形もなく桜のように散る火花に震える。それにレイスは腕を組み、うーんと唸るように声を出す。

 

「……空気、読めよ。くうちゃん」

「………ここは一般人もそれほど離れていない場所です。もしかしたら無用な、被害が出るかもしれません。それにあのモンスター、確かにネプギア様達は、倒せるでしょう。しかし、アイエフさんやコンパさん、日本一さんやがすとさん……誰か一人か二人くらい、確実に死んでますよ?」

「だから意味があるだろう?」

「……この邪知暴虐の邪神め」

 

 機嫌良く口笛を鳴らすレイスに龍鎧を装着して平均的な青年程度の背までになっている空亡は忌々しそうに懐かしそうに舌を打つ。誰がどう見ても初めて会う様な関係ではない事は空気で感じられていた。

 

「あ、兄貴、そこのバケモノと知り合いなんすっか!?」

「ああ――――こいつは」

「空亡ちゃん、貴方はレイス・グレイブハードの何なんですか?」

「………この人は」

 

 鎧を解除して、見知った雪の様な長く白い髪を揺らしながら、澄んだ瞳は悲哀を映して、口元はまるで笑っているように。レイスは表情が見えないが、家族と再会したように喜劇を見た様な弾んだ声で、二人は同時に口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。俺の最愛の娘」

「久しぶりです。私の最悪のお父さん」

 

―――――その真実は、紅夜にとってレイスに抱く理解できない殺意を理解させてしまった。




………やっと原作が進む。
見返したらコンパSAN値低下、しているしアイエフもかなり低下。日本一とがすとは初期値で保っているけど、これ本当にどうなるんだろう?
というか、女神TEEEEを基盤にしている脳内設定だからメーカーキャラの動かし方が非常に難しい。戦闘では本当に微々たる事でしか活躍させれないし……今更後悔中。


※FGO 第三章の感想「アステリオス、育てよう」以上。
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