超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】   作:燐2

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爆発

―――――――いま、彼女と奴はなんと言った。

 不動の境界線に一滴が落ちて、深く水面に波紋が広がるように、意識が震える。それを理解するなと理性が訴えるが、既に結論は証明され出された答えが体中を支配する。

 

「………あ、そうだな。うーん、まぁいいか」

 

 そう呟いた男は悩むように唸ったが、直ぐに良しと言って顔全体を隠す程の深いフードに手を掛けて捲った。隣にいたコンパが「……嘘」と口に手を当てて驚愕に顔色が染まっていた。全員似たような表情だった。俺は、既に目の前の男が誰か分かってしまった故に驚きもしなかった。ただ、新しい鏡に映しだされた穢れに穢れた己の姿を見てしまった様な心境だった。

 

「――――初めまして犯罪組織マジェコンヌで幹部させてもらっている零崎 紅夜だ。以後よろしく」

 

 それは紛れの無い俺の顔をした男が、俺の名前を口にした。

 

「え、ええ、兄貴が二人!?兄弟はいるとか言っていたけど冗談かと……」

「……漸く合点がいったでちゅ、アンタのような存在と性格がこちら側にいればそりゃ顔を隠すでちゅ――――――リーンボックスの英雄」

「早速わかったがワレチュー、流石俺の部下」

 

リーンボックスの英雄。人間に害する存在の神となった俺にとっては汚名でしかないその名は一度何もかも失った俺が、もう一度全てを取り戻したくて、結果的にリーンボックスの腐った部分を切り取れた偉業ということになって、そう呼ばれるようになった二つ名。

 

「あ、貴方は何者なんですか……!?」

「簡単に言うとだな。このゲイムギョウ界に来る前のそこの俺が造った(コピー)が生まれる前の(オリジナル)だ」

 

 …………そうだ。思い出した。立ち込める霧に光が差し込むように、俺は目の前の男のことについて思い浮かんだ。元々俺は目の前の男が空との戦い後に精神を破壊され、その精神を再構築する時間の間だけ、この体を管理する為の後付け処理装置―――――それが、俺と言う人格の正体。

 

「と言う訳でお前も久しぶりだな。デペア?」

『キャプテン……まぁ、最初から合った時に分かったけどね。例え体が変わってもその悪性に見た太陽のように禍々しく輝く魂は例えどのような地獄を見たとしても、一度見てしまえば決して忘れる事は出来ないだろうね』

 

 デペアが紅夜(オリジナル)と話す。その声音は今まで俺との会話ではなかったほどの親愛の念が満ちていた。

 ネプギア達は目を丸くして何度も俺と紅夜(オリジナル)と見比べている。

 

「見れば見る程そっくりというか……鏡のようにしか見えないですの」

「うん、って、紅夜?だ、大丈夫?」

 

 空亡と紅夜(オリジナル)が相対している現状を見る。俺の視線に気づいたのか、懐かしそうに、一度通った道端に落ちていた石が同じ場所に合ったと感傷的になっているのか、腕を組んで何度も頷く。

 それに俺は黙って、背中に背負っている緋曜日を抜いた。抜くだけの力で抜いた刃が地面に落ちて金属音を響かせる。

 

「……くうちゃん、今度は手を出すなよ。じゃないと手足引き千切るから」

「お父さん、一体何をするつもりですか」

「どれだけ育っているのか、ちょっとした味見だ」

 

 ――――――全力で、地面を、蹴った。一気に紅夜(オリジナル)に肉薄する。トリガーを引いて、弾丸が飛び出し、爆熱推進装置が爆炎を放出しながら赤熱した刃を叩き込んだ。

 

「……いきなりとはな。さぁ、日本一はある程度答えに近づいてつまらなくなったから、今度はお前だ――――――さぁ、お前はダレ(・・)だ?」

 

 紅夜(オリジナル)は地面に突き刺した黒い大剣で防御している。持っている自身ですら熱く感じる熱波を浴びている筈なのに、棚に並べられた商品を見分けるような涼しげな顔をしていた。

 全身が熱という熱が暴走するような感覚に襲われた。こいつをなんとかしないと、こいつの口を一生開けないようにしないと、分からなくなる。なにもかも。

 

「だ、だ、ま、れ……!」

「………お前は男か?女か?子供か?青年か?老人か?それぐらい分かるだろ?」

「黙れぇぇぇぇぇ!!!!」

『紅夜、落ち着こう!?何いきなり切りかかっているんだよ!』

 

 イォマグヌットを抜こうとした瞬間、白い大剣が肩を貫いた。鋭い金属音と共に緋曜日が手元から遠ざかり、黒い大剣がもう片方を貫く、そのまま地面に突き刺され苦痛の声が口から洩れた瞬間、紅夜(オリジナル)は両手に持った大剣を捩じった。骨が砕かれる音、肉が引き千切れる音と焼かれる匂い、悲鳴が響く様に聞こえた。

 

「お兄ちゃん!!」

「お、そういえばお前等ちょっと忘れた」

「――――絶対に、許さないッ!!堕ちろッ!!」

 

 黒い閃光と薄紫色の閃光が空を駆け巡り、爆発音と金属音が奏でるように交差して鳴り響く。駆け寄ってくるコンパやアイエフが何か語りかけてくるが、何も聞こえない。全ての意識は紅夜(オリジナル)へと向けられているからだ。

 

 

 俺は、一体、誰だ。

 

 

 当たり前に答えれる問いを口に出来ない。目の前の存在、俺のオリジナル、今地を這っている俺は……誰なんだ。冥獄神ブラッディハード、負を統括する悪の神、そういう存在なのは分かっていても、俺はそれを許容できても受け入れる事が出来ない中途半端者だ。

 そんな俺でも、守りたい者があった筈だ。何もかもが染まった闇の中でも、血達磨にながらも足に力を込め前に進ませた物があった筈だ。

 

 それが俺であった証明だった。

 

「力が上がっても、やっぱりまだ満足できるほどじゃないなぁ!!」

「キャァァァ!!!」

「ネプギア!?」

「仲間潰されて余所見しない。ということでチェックメイトッ!!」

 

 紅夜(オリジナル)にはない(コピー)だけの全てが合ったはずなのに。

 

「そんな、二人がこんなに早く……!?」

「アホか、俺はあれより強い女神を四体同時に相手して態々(・・)殺さずに捕らえたんだぞ?無手でも十分すぎるだろ。常識的に考えて」

 

 ………あぁ、そうか。最初に会った時に紅夜(オリジナル)に無尽蔵に殺意を抱いた理由が。

 俺は奴の残滓だ。夢を描いて、理想を胸に愚直なまでに進み最後は砕けてしまった心残り。

 絶望だけがあった地獄を造ってしまった本人が、正気に戻ったと勘違いして何を守りたいと、何かを救いたいと決意をした。けれどそれは狂気だった。紅夜(オリジナル)がしたかったのは贖罪故に行動、それ故に守り救うこと自体が目的でありその中に善も悪も関係ない。

 また昔のように幾多の地獄を造りだし、守った者や救った者に何度も利用され、裏切れても死ぬことが許さない罪遺物という体は世界を滅ぼし続けた。そこに意味は無かった。紅夜

(オリジナル)にとっての目的は、誰でもいい誰かを守り救う事だから。それは狂気の善意であり災厄の救世主であり――――描いて夢が地獄だと知らず、守って気でいて、救った気でいて己の罪の大きさすら見ずに、俺の存在すら真面に理解しなかった。最低の自己満足であった。

 

「そ、そうか……そういう、ことか」

「紅夜、起きたの待ってて直ぐに抜くから……!!」

 

 その善意が体に残っている魂にしがみ付いている。その妄信的な強固の意志が、どれほど負に飲まれても辛うじて俺と言う形を再構築させ続けた根源だった。

 だから、だからこそ、目の前の紅夜(オリジナル)の存在を誰よりも、その残留思念()である俺は一生の怨敵だと憎むだろう。 

 あれは理想とは違う。

 あれは殺戮を悦とする邪神。

 あれは元々の己であり、否定し続けなければならない過去と未来。

 

「――――あはは、最初から、(ニヒル)だったんだ」

 

 だとしたら、俺のしてきた。いや、俺だと思っていて動いていた俺は本当は別人。俺という最初から後付処理機能として生み出された俺は何もしていないんだ。今まで発してきた薄っぺらい決意も覚悟すらも、全部俺じゃない。

 

『……紅夜?』

 

 ――――なんて、傑作だよ。偽物どころか贋作にも劣る。目の前の紅夜(オリジナル)の砕かれた思念がしてきた事を、勝手に自分がしたように偉い顔し続けて来たって事か。あはははっはははははははは。

 

「………俺は、本当、誰だよ」

「ど、どうしたの?頭でも打った?」

 

 あぁ、ムカついてきた。

 凄く。無性に、誰かを殴りたい。

 あぁ、ちょうどいい奴がいるじゃないか。

 凄く。都合がいい誰かに意図して舞台を作ってくれたようだ。

 あぁ、ならやるしかない今までの人生とか何もかも目の前の残滓が造ってしまったものだから。

 

「が、がああああああああッ!!!」

『いっ!?ちょ、何をしているの!?』

 

 冥獄神の機能をフルに使う。周囲の負をかき集め、デペアの認証無しに半場無理やりブラッディハードと化す。肉が幾ら引き千切れようが、骨が砕けようか関係なく、俺から二つの大剣を抜こうとしているアイエフ達を弾き飛ばして自分で抜き取る。噴水の様に血が地面を降り注いでいるが、大丈夫だろ。きっと多分。

 物理的な要素を感じないエネルギー状の双翼。それは、壊れたテレビなどで見える砂嵐と雑音を刻み紅いノイズ色の翼が広がる。光を反射しない黒色の武骨なプロセッサユニットに血の脈動のようなラインが心臓の鼓動を連想させる様に駆け巡る。勿論、その際に身に纏っている黒い外套はなくなって、ミイラのように体に巻いている包帯もなくなり、赤子少年青年老人といって男女の負に染まった悍ましい人面図が露わになって、レイス以外全員が言葉を失う。

 

『……嘘、コントロールでき……いやこれ力づく?』

「ん?……空気が変わった。……あれ?もしかして、只のコピーだったから問題なかったはずが……あ、ブラッディハード化させる為に封印していた黒歴史の一部が漏出してしまってた?」

 

 うあああ、超痛い痛い痛い。両腕が縦に割れている!涙が出る程に痛い。最遺物の不死性のお蔭で直ぐにくっ付いて、ちゃんと両腕が動くけど痛みはまだ残っている。

 けど、まだ全部じゃないけどちゃんと思い出せた。ネプテューヌと一緒に旅したこと、ノワールに仕事の愚痴を聞かされたところとか、ブランに貴方の巻いた種とか滅茶苦茶なモンスター討伐依頼を押し付けられたり、特にベール!俺に半裸になる執事服とか着かせやがって、お前は鼻血だしながら写真撮っていたけど、俺は穴が合ったら入りたいほど恥ずかしい想いをしたんだぞ!

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――零崎 紅夜!!!」

「お、おお……」

 

 頭が可笑しくなるほどのネガティブエネルギーを強引に操作しつつ全スラスターを後方に向け、体を前かがみにする。

 

「一発、殴らせろぉぉぉぉぉっぉぉ!!!!」

「わーい、唐突な覚醒イベントに困っちゃう☆」

 

 俺は、絶対、お前を、許さねぇ。

 

 




主 人 公 覚 醒。
……とまではいかないですけど、マシになったかな?

本当はルウィーにしようかなとプロットを見直したら一つの事に多くの事を押し込み過ぎたことに気付いて、主人公覚醒(性格)をこっちに持ってきた。
やっと、主人公側も鬱以外の事が書けそう……。(根本的な問題は全く解決してないけど)
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