超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】 作:燐2
未知の未来
それは、血まみれになりながらも、必死に手を伸ばして掴んだ結果、絶望的に死亡した残された者の物語だった。
我欲に塗れた人は、自らの作り出した檻を壊して未来に羽ばたいた。それは、進化と呼べる新たな意識の始まり。だけど、その為に人は今まで守り温かみをくれた飼い主を道端に生える雑草を抜く様に殺した。人を守る者として、誰よりも人を愛した神様が人の為に作り出した全ては、満開に咲く花畑を焼き尽くす行為だった。
創造は破壊なくして成立しない。例えどれほどの苦行を克服し、困難を乗り越え、自身と言う限界から超克した素晴らしい神様がどれだけ人を愛しても、人は神様の純潔にして純粋な愛を拒んだ。
本来なら、そこから神様からの解放、人の真なる自由と混沌が始まる―――――その筈だった。
『呪いあれ!!人類種に永劫の呪縛を!人類種に永遠の闘争を!人類種に癒えぬ終極の絶望輪廻を!!この人類史上最も禁忌の可能性とされた邪知極点!決して沈まぬ黒い太陽、蒼穹は明けぬ深夜、故に砕け得ぬ闇!故に世界終末の夜の具現―――――――我が名は『黒闇天の魔導書!!!』
私達が……いや、お兄ちゃんが相打ち覚悟で倒したこの世全ての悪とされ、全ての人の負を抱え込んだディスペア・ザ・ハード
全ては人間という種に対する復讐心で。大好きな人を殺した人間達を束縛して、ずっと苦しめる為に。
永遠に与えて、永遠に奪う続けて、その絶望する表情を何よりも喜びとして、その希望の表情を何よりも痛みとして、自分自身も血反吐を吐きながら、もう偽りでしかない光を幻想しながら、ずっと、ずっと。
それは、何のために涙を流しているのかも分からなくなった。
とても、悲しい、邪神になってしまったモノの物語だった。
◇
『マジェコンヌ騒動』――――――人々の中では、そう記憶に刻まれた事件から一年の月日が流れました。プラネタワーの頂上に設けられた私室のバルコニーから見下ろす景色はあの時と比べて順調に修復できています。
「……あれは、凄かったなぁ」
天地を覆うモンスター。ディスペア・ザ・ハードの意志であるレインボハートは空さんを仲間に引き連れて、行ったのは冥獄界とゲイムギョウ界との融合。それが意味するのは新しい世界の誕生と共に私達が住む世界の破滅でもありました。しかも、レインボハートはこちらの脅威を見做して、並行世界とアクセス権を持つ空さんを利用して異なる並行世界の冥獄界をこちらの冥獄界と繋いで、それこそ那由多まで届く恐怖を超えて傍観するだけしか出来ないモンスターの軍勢を呼ぶ出したのです。
それでも、やるしかなかった。冥獄界の深部にて他の世界を繋いでいる空さんを止める為にレイスさんと空亡ちゃん、ティシフォネさんが悪夢のような数をしたモンスターの軍勢に突貫。空亡ちゃんが置いて行ってくれた従者とお姉ちゃん、マジェコンヌ四天王の皆さんが四大陸の守護。
そして、私達女神候補生とお兄ちゃんが全ての元凶である元女神レインボハートを討伐することになりました。
「―――――ネプギア?」
「あ、うん。どうしたのユニちゃん」
振り返るとユニちゃんが少し不満げに腕を組んでいました。
「なに、ボーっとしているのよ。急ぐわよ―――――今日が約束の日なんだから」
「……うん、そうだね。今日……なんだね」
約束の日。そう、今日が、お兄ちゃんが私達の目の前から消えた日。そして帰ってくると約束してくれた日。
「ラムちゃんやロムちゃんは?」
「あの子達なら既に行っているわよ。プラネテューヌで一番ギョウカイ墓場が近くに合った場所に。……というか、現地集合ってみんなで決めた事でしょ!?」
「……そうだっけ?ごめんね」
もう一度ごめんなさいと頭を下げるとユニちゃんは深いため息を吐いた。うう、凄く呆れられてる……。
私が申し訳なくて、頭を上げられずにいるとユニちゃんは私の隣に立ってプラネタワーから見下ろす事が出来る光景を目にした。
「……まぁ、気持ち分からなくないわよ。あの時、本当にみんな必死で、出しきって……結果、世界は守れたわ。最低限の被害でこれ以上ない程に理想的にね」
皮肉が込められた声、だった。多分空さんたちに深く関わる事がなければ、もっと爽やかな気持ちでいられてだろう。でも、私達が知っている空さんがどんな思いで、人を守り続けてきたのか、どんな祈りを女神達に教えてきたのか。
「【神様は栄光と破滅両方を与える。それをどう使い愚かになるか進歩するかは自分自身の選択】」
「……レイスさんの言葉だね」
「空亡といい、レイスといい。この世界以外に色んな物を見てきた人たちの言葉は本当に訳分からないわよ。でも―――――心に刺さる言葉だらけよ」
私達は知った。本当の神様は人から与えもするが、奪う事も平然とすると。ただ与えるばかりする私達はそういう権能を持たされた人工的に作られた神格だと。
それは空さんが作り出した物、人を守る為に人を縛る為に人の可能性を操作する為の端末が私たち守護女神という仕様だった。
頭を上げて街並みの景色を見ながらここから始まった旅を思い出しながら呟いた。
「私達よく耐えたよね」
「……レイスより空亡が一番きつかったわ。あの子、私達の事は好きだと言っていたけど、守護女神というシステム自体は吐き気がするぐらい嫌ってみたいだから、言葉の一つ一つが私達の存在意義を否定しているような気がして……」
がくりと肩と頭を落すユニちゃんを見ながら苦笑する。あれでも、そうとう私達を気にかけてくれたとレイスさんが言っていたし、本気ならそれこそ私達の心をあっという間にブレイクしちゃいそう。でも、空亡ちゃんは気持ちは同情してしまう物、けどその権利は私達には無い。だって、ずっと神様に呪われて、殺されかけて、何より大切な家族を引き裂かれて恨まずにはいられない。
そして、私達の女神としての行いに対していつも疑問を抱き問い掛けてくる質問は考えたことも無い事だけど、人の人生を大きく左右する私達だからこそ深く慎重に考えなければならないことばかりで凄く勉強になった。……ユニちゃんが言う様に心折れるかと思ったけど。
「……本当に色々あったわね。まさかマジェコンヌの四天王がこちらに寝返るとか」
「あはははは、レインボハートさんの目論見がばれた時点で『マジェコンヌ』という犯罪組織はほとんど無意味だし、あのマジェコンの所為もあってあっという間に解散されたね」
マジックさんは元より最初から姿かたちもないマジェコンヌを妄信するように洗脳されていたし、ジャッジさんは強い奴と戦えればそれでいいバトル脳、ブレイブさんは未来ある子供たちの未来を滅ぼそうな奴なぞ成敗してくれる!と一番先に離脱して、
因みにマジェコンの本当の機能は平たく言えば人をモンスターに変えてしまう恐ろしい機能。それは私達が使える
「そういえばあの人(?)達って今頃どうしているのかな?」
「ブレイブと変態はこっちの世界に残って活動中、他二人はレイスが帰った世界に付いて行ったみたいね」
空亡ちゃんから異世界からの侵略が日常茶飯事で毎日世界崩壊の危機だということを知っている身からすれば、絶対に行きたくないけどマジックさんは私達と同じ恋する乙女で、ジャッジさんは戦闘狂だからちょうどいいのかもしれない。因みにティシフォネさんと空亡ちゃんもまた遊ぶに来ると帰って行って、その時にレイスさんの直属の部下だった下っ端さんとネズミさんも付いて行った。
「――――――っと、ネプギア。そろそろ時間よ」
「うん、今日帰ってくるんだよねお兄ちゃん」
「帰ってこなかったら私達でネクストフォームになってあらゆる手を使ってでも探し出すわよ」
ユニちゃんの言葉にくすっと笑い返して私は頷いた。お姉ちゃん達は一人で発動できるけど、私達四人揃って初めてなれるネクストフォームの
走り出すユニちゃんを追って部屋から出ると直ぐに目に入ったのはイストワールさんとそのお兄さんで車椅子に座っているゼクスさんだ。
「ネプギアさん、少し待ってください」
「はい?」
「感動の再会なのは十重承知で大変喜ばしいことなんですが……ネプテューヌさん、今日の仕事全部放り投げているですが」
イストワールさんは胃痛に顔を歪めた顔で辛そうに声をだす。
数日前から落ち着かなかったお姉ちゃんの事を思い出して、思わず頭を抱える。
「………あ、あははは、で、出来る限り早く帰ってくるように言ってみます……」
「お、ね、が、い、します……」
「うむ、行ってくるがいい。英雄の凱旋だな」
手を振るう二人に返しながら、ユニちゃんの後を追いました。
場所はそれほど遠くは無く、女神化して空を飛べば、それこそ数分で到着する程で私とユニちゃんはその場所に――――――何もない崖、向こうにはギョウカイ墓場の残骸が見えるだけの海にやってきました。
「おーそーい!」
「ネプギアちゃん……こんにちは…」
「みんな遅くなってごめんね?」
諸事情でみんな来れないけど、女神達全員に私達を含めた女神候補生、アイエフさんやコンパさんが集まっていました。
「ネプギア!もうお腹すいたよー」
「はい、サンドイッチ持ってきたよ」
朝から、いや日付が変わった今日の夜からずっとこの場にいたお姉ちゃんに私はサンドイッチの入ったバスケットを渡す触れ合ったその手は、まるで氷のように冷たかった。
「わーい!ありがとう……あれ?」
「皆さんの分も用意しました。………皆さんならお姉ちゃんのように待っていると思いましたから」
「………本当に良く出来た妹ね。ネプテューヌ」
「えぇ、勿体ないですわ。ネプギアちゃん、もしよろしかったら私の妹になりませんこと?」
「コラー!!ネプギアは私の妹だから!誰にも渡さないよ!」
私を抱き締めて猫のようにベールさんに威嚇するお姉ちゃん。その肌はやっぱり寒かった。
最後の姿、お姉ちゃん達はお兄ちゃんを見る事は出来なかった。その理由、ディスペア・ザ・ハードの意志はレインボハートで私の最後の一撃が彼女を堕ちた者ではなく、女神としての意識を戻した。その時に教えてくれたのはディスペア・ザ・ハードの本質、つまり人間の負の集合体であるが故に指向性のない恐るべき自己破滅の奔流を抑える役を必要とする事。
放置してしまえばまたレインボハートは負に汚染され元踊りになるだろう。かと言ってこのまま世界を滅ぼそうとしているレインボハートの意志を完全に倒してしまえばディスペア・ザ・ハードの本質は誰も主体となる意思っがなく、それは理性のない獣ど同じで、近いうちにまた同じことが、しかも今度はただ暴れるだけの災害が引き起こされる内容だった。
そうしないために、お兄ちゃんは新たなディスペア・ザ・ハードの核となった。
一刻を争う状況で判断して決意したお兄ちゃんは感謝と慈悲を持ってお兄ちゃんの
「……全く、時間も決めてないのにどうしてこうも集まるのかしら」
「そういうブラン様はどうして私達より速くに?ネプ子より遅くだとしても、もう六時間以上は待っていませんか?」
「ッ、ひ、暇だったからよ。……悪い?」
「全然悪くないです。ブラン様もこぅちゃんのこと大好きなんですね」
「うせぇ、あいつには色々デカい貸しがあるから礼を言わないといけないだけだ!」
みんなそれぞれ旅を思い出を語っていると、もう日が落ちかけているのが目に見えました。けれど、誰も帰ろうとはしません。だって、信じているから、世界を覆う責務を笑って引き受けて、私達と同じ夢を見続けたいと心から行ってくれた大切な人がいるだから。
ギョウカイ墓場と冥獄界はありません。つまり負が集まる所がありません。
それはつまり、今までと違って女神の加護が薄い場所なら又は負が集まってしまった場所ならゲイムギョウ界どこでもモンスターが出現してしまう可能性が生まれます。
モンスターの負によって生まれてしまう物。それは誰かひとりが背負っていい物ではありません。誰もが見続けなければならない。誰かが背負う事が当たり前なのです。
私達、守護女神はこれからもずっと戦い続けるでしょう。
人を守る為に、そう在れと定められたからではなく、自分の意志で、時に人を裁く機会もこれから多くなってしまうかもしれません。
だけど迷わない。私達が歩いた道を辿り多くの人が夢を歩めるように。
「―――――――ただいま。みんな」
『おかえり!!!』
風と共に懐かしい声に私達は振り向き歩き出します。この先にある【未知なる未来】に幸福あれと祈りを込めて――――――――
とりあえず終了いたしました。
このような形で終ってしまって本当に申し訳ありません。
因みにどうして紅夜が帰ってこれたというと、ぶっちゃけ空やレイスに自分の分身つまり分霊の作り方を教えてもらっただけです。
あと、このトゥルーエンドではとにかく展開が速くてまとめ切れないのにこれが本ルートで、このルートじゃないとV編とかV2編とかに続きません。まぁ、V編だと空、空亡、ティシフォネ、レイスという四人の規則外チート共が本気で全力全開しちゃうんで元から没ネタですどね。
さて、V2をプレイして面白かった。そのあといつものようにviteで外伝が発売されていますが、どうしてかもうプレイする気力が出てこずにここら辺が自分の限界か思いつつ今回このような駄文で終わらせていただきます。
応援してくれた方々、見てくれた方々、このような結末で本当に申し訳ありませんでした。