超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス【凍結】   作:燐2

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崩壊

「よう、名も知れない美少女さん。三日ぶり」

 

 まるで別世界でも潜り込んでしまったようにあれほど牙を剥いて襲撃してきたモンスターが雲のように消えて突然地震でも起きたかと思うほどの轟音が響くバーチャフォレスト。異変に気づき、最悪の事態が脳裏に過ったネプギア達はその場に急いだ。木々の間が生み出した自然のトンネルを走り抜き、光の差し込む非人工的な広い空間へと出た。そこには、バラバラに粉砕されたゲイムキャラだった物。彼女達に気づいたレイスは嗤っているような声で黒剣を肩に担いだ。

 

「兄貴、こいつ等は?」

「ほらこの前言ったろ?あのピンク色の髪をしたのがプラネテューヌの女神候補生で、あっちの黒髪がラステイションの女神候補生だ。あと二人はギョウカイ墓場に女神救助の為に来た勇気ある馬鹿二人だ」

「うへぇ、命知らずな奴」

 

 リンダの口から思わずあり得ない者を見た様に声が零れる。

 あそこは煉獄の地。正しき魂は転生する場所。穢れた魂は冥獄界に落される場所。

生命を持つ者が足を踏み入れる事すら烏滸がましい神聖で邪悪な墓場。今はマジェコンヌが支配しているその大地に足を踏み入れる事は間違いなく死を意味する。

 何故なら、あそこは女神の守護範囲に入っていない故に【汚染化】された凶悪なモンスターが一般的に周囲に這っており、更に一人一人女神すらも上回る力を持ったマジェコンヌ四天王に見つかってしまえばただでは済まない。そのあまりにも危険な場所故にマジェコンヌの本拠地もそこに造るのは危険と判断されたほどだ。弱肉強食の世界、強い者だけが存在を肯定できる魔境の地。ただ崇めていた者が、神の危険を知り命を賭けてまで助けにいくほどの覚悟を持った人がいたのかと感心しながらリンダは頷く。

 

「あ…、あなたは…」

 

 その場で彷徨うように現れた死神のような存在。憧れであり絶対的な存在であった四女神を一人で倒した『何か』。無様に敗れた記憶が蘇る。死臭を放つ禍々しきプロセッサユニットを纏い、振るわれる鎌の一撃に叩き伏せられ苦しむことしか出来なった未熟な記憶が鮮明に蘇ってくる。

 

「貴方が……、お姉ちゃんを…!」

「そんな熱い目を向けられても、照れるぜ」

 

 烈火の如き怒りの視線にレイスは変わらず笑う。どうして酷い事をしてきたのに、そんな顔で居られるのか彼女達には理解できない。

 

「ふざけないで!私は貴方を絶対に許さない。蜂の巣にしてやる!!」

「おーおー、恐い怖い。リンダ下がってろ」

 

 激昂に流されるように女神化。ユニの体には女神を象徴するプロセッサユニットが、展開させ姿が変わる。軽装な姿からスクール水着のような服装。流れるように伸びていたツインテールも髪色は黒ではなく、白く染まり螺旋を描く髪型に。身の丈以上のある攻撃的な巨大な砲台を軽々しく構え、その双眸から敵意を燃やし引き金を躊躇なく引いた。

 撃ちだされたエネルギーの弾丸は音速の速さで大気を貫く。銃口から弾丸を予測して回避する事は出来ても、既に殺意が込められ放たれた魔弾をレイスは肩に担いでいた黒剣を縦に振るった。

 

「緑の女神の突きの方が速かったな」

 

 甲高い音が鳴り響く。一刀両断、切り裂かれた魔弾は空中に拡散していく。

 ぎりっと歯を強く噛む。砲口の上に投影されたターゲットスコップを除き、

 肩を狙い三発。

 頭を狙い二発。

 足を狙い四発。連続して魔弾は飛翔する。

 そこに一切容赦も躊躇ない。元より憧れであり、最大のライバルとして定めている姉を倒した相手。全力で倒しに行く以外の思考は全て排除されている。

 

「は、あまーい。あまーい」

 

 精神を逆撫でするような笑い声で全てを切り裂く。その場で、誰もが剣舞が見えた者はいなかった。腕が動く、そう見えた瞬間には既に振られた後であった。

 

「ほら、どうした?俺はまだ傷一つない。その程度かーーー候補生」

「---舐めるなぁ!!」

 

 煽り言葉を吞み込み、怒りを更に燃やした。ネプギタ達の声は冷静を失ったユニの耳には届かない。砲口が上下に開き、シェアエネルギーが紫電を散らしながら収束していく。赤子ほどの大きさまで圧縮された球型が造られ、迷いなくトリガーが引かれる。固定化され、荒れ狂うエネルギーは一定の形に押し込まれていたのが、一方の方向に解き放たれ、加速した光の束が大気を貫く。

 射線上に立ち尽くす変わらず幽霊のように嘲笑うレイス。面白おかしく気味の悪い笑い声を響かせながら、鈴音のような音の直後に剛剣が振り下ろされた。たったそれだけで神という絶対的な存在が放った閃光が切り裂かれる。

 更に、光の束の間に駆ける細い剣閃は、一瞬の判断によって銃を盾にしたユニの体をトラックが猛スピードで撥ねた如く、その体は後ろに吹き飛びステージの枠を破壊しても止まらず、太い蔦に体を捻じ込む形で漸く停止した。

 レイスは蚊を掃ったような満足気に頷き、黒剣を地面に突き刺して、その柄に両手を重ねその上に顎を置いて除く様にネプギア達を見た。フードの奥の闇の中に光る眼光に三人の体が震えた。

 

「次、どうぞー」

 

 長い時間縛られた面接官の疲労に籠った声のように呼んでくる。後方で退避していたリンダが笑う。残酷だ卑怯だ鬼畜だと楽しげに、四女神を単独で討伐した相手に女神『候補生』が何を出来ようか。

 

「……どうして、どうして…こんなことを…!」

 

 拳を握りしめ叫ぶネプギアにレイスは鼻で笑う。

 

「自己満足、それ以上も以下もない。仕事が終わった時の達成感。趣味が物作りでイメージした通りに完成に近づいている時とか喜びを感じるだろう?そんな感じで好きな事を俺はしている。お前だって好きで女神なんて肩苦しい職種をやっているんだろ?それはお前が望んでやっている事だろ?それと同じさ」

「貴方と……貴方なんかと一緒にしないでください!!」

「いや、同じさ。世間による善と悪の目あるだけで、お前も俺も好きな事をやっているだけだ」

 

 欠伸をしながら退屈な視線がフードの奥からネプギア達を射抜く。素人ならば地面に剣を突き刺し体重を掛けて休憩している様は一見隙だからけに見える。しかし、理解できない者と相対して混乱するネプギアの隣で、この状況をどう打破しようと思考を動かしているアイエフは誰かが近づいた瞬間、見えない速さの不可視の斬撃により両断されるのが安易に想像が付いた。

 

「ブラックシスターのように姉を傷付けられて怒っているのか?それとも女神様には理解できない俺が怖いか?少なくても、俺も気長い性格でもないし動かないなら、こっちから行くぞ?」

「――――――ッ!」

 

 漆黒の剛剣を抜き取り、天に向け力の限り振り下ろした。爆発並の大きな轟音を響かせ、その衝撃は小規模の地震のように周囲を激しく揺らす。

同時にその強靭の刃から発せられた剣圧が、破壊した地面によって発生された周囲の砂煙が雲状に広がせ姿を隠した。

 

「コンパ、左右を警戒して!ネプギア上から来るからしれないから貴方も女神化して応戦用意!」

 

 大樹の中に製造されているこのダンジョン構成からして下から来ることは少ない。

更に先ほどの一撃、本気なら既に奈落の底に突き落とされていただろうが、それをしないのは近くにレイスの部下であるリンダがいたからだろう。故に襲撃場所は限られてくる。

 空を飛べないアイエフとコンパが左右からの奇襲に、逆に女神化すれば飛べるネプギアは上に注意するように指示を飛ばす。相手との実力が離れすぎて、気を失っているユニの回収のタイミングが掴めない。下手に背中を見せば一方的に倒されるのは考えなくても理解できる。

 蔦の隙間から漏れるように差し込む陽光。地面を見たアイエフは自分達以外の影を見た。

 

「へぇ、前の去り際といい優秀だな名も知らない美少女!!」

「ネプギア!!」

 

 上を見れば陽光を喰らうように大剣を背中に隠しているレイスの姿。アイエフの声はネプギアには届かない湧き出る感情が怖い、恐ろしいと、理解できない異物に警報を出す。

 どうして平和になったゲイムギョウ界に酷い事をするのか、どうしてそんな簡単に誰かを傷付けることが出来るのか、悪魔のように笑い、破壊行動を繰り返すレイスの姿がどうしようもなくネプギアから常識から外れた存在で、何より頭に過るのは女神なのに何も出来ずに囚われた弱い自分が語る―――――女神()に勝った相手が自分勝てるわけがない。

 

「殺す気はない。だが---腕か足の一本二本は勘弁しろよ」

 

 震えては武器を掴めず、目の前の恐怖を覆す勇気は心になく、そもそも戦う前から負けるというイメージを浮かべて硬直する体は良い的のような薪人形を作りだしていた。

 アイエフが叫ぶ、コンパがネプギアの肩に触れて突き飛ばそうとしている。だが、先ほどのレイスが地面に向けて放った斬撃を思い出せば、集まっている段階で何をしようが無意味だ。

 

 死を与えんと振り下ろされる無慈悲な断罪の一撃。

 深いフードの奥で煌く紅と蒼の双眸は、最後まで簡単な事なのに方向性を定めることが出来ない愚者を映して心底つまらないと思いながら剛剣を振り下ろそうとした瞬間、視界の全てが真っ赤に染まった。

 遅れて爆発音と爆風に体が吹き飛ばされ、地面に落され転がって漸くレイスは冷静に撃たれたと理解した。

 

 

「な、何が起きたです!?」

「………ご都合展開って奴よ。あぁもう、空気を読みすぎよ!」

「お兄、ちゃん……」

 

 燃え上がる炎の如き大型の回転式拳銃の銃口から残煙が上る。彼女達が振り向くと体を隠すような漆黒のコートに所々に美しい緑色のラインが描かれた服装をした一人の男性が歩く。

 最も特徴的な炎を見る様な紅蓮と蒼穹を見る様な紅と蒼のオッドアイ。黒染みた銀色の荒れた髪。幼さが微かに残り成人に近づいた十代後半の整った精鋭な顔つきだが、顔の左顔だけを残して包帯が巻かれている。よく見ると腕にも特に左手にはギブスでも付けているのかと疑うほどに過剰な量の包帯が巻かれている。

 

 なによりネプギア達が驚いたのは空気だ。三年前、女神同士の友好条約が結ばれたその記念すべき日に彼は笑顔と共に去った。

 優しげに笑い、誰よりも強くて姉の次に憧れた人物。女神の対極の力を持ちながら、それを世界の為に使うと、前に進む事を決意した輝かしい人。

 

 だが、目の前にいるのは一瞬だけ見れば別人だと勘違いしてしまうほどだった。

 何日も寝てないのだろう、目元に濃く浮き出た隈。長い年月の中で風化しながら激しい戦争に身を投じてボロボロになったコート。枯れ果て疲れ切り、死が来るのを待っているかのような生の抜けきった闇を映す瞳。それはまるで墓場から死んだこと自覚無く彷徨う生霊を連想させた。

 

「ユニを、回収して、ここから、脱出しろ」

 

 途切れ途切れ振り絞るような喋り方で懐かしい声。

 

「お兄ちゃん…、どうしたの…?怪我、してるの……?」

 

 あまりに可笑しい記憶の中で笑っている彼と今の彼は存在そのものが違うようだった。雲泥の差と言ってもいい。口の中が嫌に渇いてきて吐き気がする。カタカタと歯が鳴り、レイスを相対した時より恐怖を感じた。それは女神だけにぶつけられる物が原因だった。虚無を見る様な静観な瞳に宿った唯一の感情が狂うように彼女達にだけに注がれる。

 

「ネプギア!!」

「ぁ、ぁ……」

 

 体が栓を抜かれたように力が入らずその場で膝が地面についた。楽しかった記憶に亀裂が走りバラバラと涙と共に剥がれ落ちていく。優しかった彼は、変わり果てた姿で女神達に容赦なく憎悪に燃え滾る双眸で殺意を込めて突き刺すように睨んでいた。

 

 




更新遅れて申し訳ありません。色々と忙しかったんです。本当にスイマセン……。
さて、遂に登場させることが出来ました主人公()。
女神のなのに何も出来ないフルボッコ。
三年間捕まってネプテューヌ達の作り出した世界が滅茶苦茶。
協力しようと言いたかった空からお説教、ネプテューヌ達並に頼りなる紅夜はむしろ殺しに来るというオマケ。
紅夜に会えたと思ったら別人のように変わっていて、空の言うとおりに殺気剥きだしに睨まれて楽しかった過去の記憶が崩壊。

簡単に纏めるとネプギアが置かれている状況です。
SAN値必要かもしれないレベルです。はい。……いつになったら希望方面に行けるだろうか。


誤字脱字、質問などありましたら感想でよろしくお願いします!!
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