それでは、どうぞ!
横浜基地グラウンド
武side
今日は207分隊が対人訓練をするらしいから俺は賢治を連れてグラウンドにやってきた。
昨日はランニングしているところしか見てないから、個々の実力がどんなものか今の俺なら詳細が分かる気がするし、賢治なら的確なアドバイスができるかもしれないと思って連れてきた。
今朝こいつの部屋に行くと何かの資料を見ていたから徹夜したんだろう…こいつが俺よりも先に起きる事は今までなかったから絶対だ。
「おお、やってるやってる」
「ほ~、サバイバルナイフを使った対人訓練かぁ」
昨日、俺が涙を堪えてたところに着くと、訓練兵達が一対一で格闘訓練をしていた。
「―――ふんふん、抜きん出ているのは御剣と彩峰か、しかしど~も残りの二人は格闘戦は向いていない様だな。特に珠瀬は根っから格闘戦が駄目と見た」
…着いてまだ30秒も経っていないのにそこまで見抜くか、恐ろしい奴だな本当に…
でも、賢治の見解は確かだ。
冥夜は無現鬼道流剣術を会得していて剣術に置いてはこの基地では最強だろう…俺と賢治が来た事でそれは無くなっちまったが。
次に彩峰は近接戦では異常なほど強いのに遠距離ではいまいちの極端な奴だ。
何故ここまで近接戦が強いのかは俺も今だわからんが、その為に鍛え上げられた肉体が207分隊の中で一番の耐久性を持つ。
この世界での委員長は榊総理に反発して自分を周りから『総理の娘』の七光りではなく、一人の『榊 千鶴』として見て貰いたくて徴兵免除を蹴って訓練兵になった。
後は元々の硬い性格もあるけど、規律に厳格な面が大きいから自然と指揮を担当する様になった。
強襲掃討という中間で近接戦闘の武装は短刀二刀のみの為、戦闘の技量はどうしても他のポジションよりも遅れてしまい劣ってしまう反面、隊員全員を見渡すという難しい事をするのだ。
たまは元の世界では弓道部では右に出るものはいないという程の強さだった…上がり症がなければだけど。
一度目と二度目の世界ではそれも関係するのか上がり症も引き摺られているがスナイパーとしては極東一のレベルを誇る。
だが近接は皆無…と本人は言ってるけど一般衛士よりは強い。
元々争いごとが嫌いな為に近接戦では引いてしまうから、遠距離の方が適任なんだろう。
そして今は入院していないが、美琴は元の世界では父親に拉致られてあっちこっち訳の分からない場所に連れて行かれて自力で戻ってくるという偉業を成し遂げ、その際に身に付けたサバイバルスキルがこの世界でも引き継がれているという謎の共通点…
BETAのいるこの世界でなんでサバイバルスキルが身に付くのかが謎だ。
「ん~~…さてさて、あの訓練をやらせるのは訓練効率が凄く悪いなぁ」
「そうなのか?」
「ああ、はっきり言えばあの訓練はこの世界では大して役に立たん。彩峰には微妙だし、他の三人では長所を丸潰しに加えてこれから機体で戦うのなら自分自身の動作を機体に反映させるはずだ。あの訓練内容じゃ機体を動かすのに足手纏いになる」
確かに、俺も機体を動かすのに時の狭間に行ってからは俺の動きを機体に反映して戦っていた。
その方が戦いやすいし、違和感を感じたら自分の動きの方を省みれば直ぐに機体にも反映出来る。
「よし、俺達が一肌脱ぎますかな!」
「おおっ? でもお前大丈夫なのか? 俺はともかくお前はこれから機体や武装を造るんだろ?」
「設計図や詳細は既に博士に渡したさ。それに俺が直接関わった方があいつらの機体も造りやすいだろ?」
「ああ、成る程ね」
訓練兵相手に特機を造ると言うもし周りに誰かが居たら卒倒するか反発するかの内容だけど、ぶっちゃけここの基地には今のあいつらの状態でもあいつらより強い奴って数えるほどしかいないんだよね。
「行くぞ武ッ」
「おうッ」
といっても、俺達が身につけてる技は人間相手に使ったら人間がミンチになるんだが…俺より生身の戦闘に長けてる賢治に任せたら大丈夫かな。
「よ~う、やってるなぁ」
「っ!? 敬礼!!」
《ザッ!!》
「イヤイヤ、やらんでいいって」
俺達が近付くといち早く気付いたまりもちゃんが敬礼をし、それに続いて分隊の皆も敬礼をしてきた。
しなくていいのに。
「さて軍曹、ちょっと訓練についていいかな?」
「はっ! 何でありましょうか!」
「単刀直入に言うとな、この対人訓練は本人達の長所を潰しているんだ」
「っ!?」
「「「「!?」」」」
単刀直入過ぎだこのバカたれ…
賢治side
さてさて、いきなりこんなことを言われたら教官というプライドに多大な傷を負うことになるだろうが、本人達の今後のためだからこのまま行かせて貰おう。
「訓練は皆平等の内容で行うのは訓練校…集団で行うのなら当たり前だ。だが今の訓練内容では正直彼女達の持つ力を頭から潰している内容だ」
「ッ………」
気付いてはいるんだな。
だけど訓練校な上に周りの目もあるから特別なプランを行えない…
なら、中佐である俺達がすればいいんじゃね?
「周りの目があって出来ないなら俺達の階級を盾にすればいいだけのことだ。よって今からまりもちゃんと共に俺達もお前達の教官になろう」
「「「「「!?」」」」」
「ポジションからして榊・珠瀬が俺、御剣・彩峰が武な」
「お、お待ちください!」
「ん?」
班分けしてたらまりもちゃんから待ったを掛けられた。
どったのかな?
「ち、中佐が教官に成られるのは光栄です! し、しかし訓練兵に専属で付くのは越権行為になるのではっ!」
「だが俺にとっちゃあ周りの目を気にする事で個々の長所を潰すことの方が許せんさ。何か文句が来たら俺のところに連れて来い」
「し、しかしっ!」
「あら、中々面白いこと言うじゃない?」
「っ!?」
武side
まりもちゃんが異を唱える所に先生がピアティフ中尉と霞を連れてやってきた。
おっかしいなぁ、先生ってこんなに時間有ったっけ?
外を出歩いてるの数えるぐらいしか見た覚えが無いんだが…
「け、敬礼!」
《ザッ!》
「あーもう、あたしにそんな堅ッ苦しいのはしなくていーって何回言わせるのよ」
「おろ、博士は何でここに? 俺の案はもう見終わったのか?」
「あんたが提出してくれたあの強化案? それならあたしの権限で直ぐにでも実現出来る様にしたわ。そこまで大掛かりな事じゃないし、あんたがほとんど製作するんだから。それに今日は何やら面白い事をするみたいだから見に来たのよ」
いつの間にそんな情報が…って霞か。
隣で小さく俺の方にブィってVサインしてる…やべ、可愛い抱きしめたい。
《ポッ》
霞、リーディング自重しなさい。
「あが~~」
俺が前に教えたリアクション…本当に前の世界の霞がそのまま来ちゃったんだな。
後ろに居るピアティフ中尉が霞の突然の行動で目を丸くしてるし。
「…ん? 彩峰、どうした?」
「…二人の実力を知らない」
ああ…そういえば彩峰、無能な上官には従わないって性格だっけ。
元の世界でも一匹狼だったなぁ…よくそれで今までイザコザになってるんだよなぁ。
「彩峰! 中佐に向かって何て口の聞き方を!!」
「でも事実」
「彩峰っ、貴様!!」
「まぁまぁまぁまぁ」
委員長が彩峰の発言に噛み付くが彩峰は止まらずそのまま突っ切る。
それにまりもちゃんが噛み付くがそこに賢治が待ったをかけた。
「彩峰、お前の言う事も確かだな。いくら上官だからといって
「ッ…」
「そこでだ」
賢治が彩峰の思っていることを代弁して話した。
彩峰と冥夜が興味を示す反応をし、たまがアワアワしてるけど委員長とまりもちゃんは硬い表情をしてる…
そんな反応を無視して賢治は俺達から少しだけ離れたところに移動してこっちを向いた。
「ならば、今から俺の実力を見せようか」
その場で手を広げながら言った。
賢治の実力―――インベーダーと生身で戦っていた男の実力が今ここで示されるか。
次回、賢治無双です!
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