Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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お待たせいたしました!

戦術機戦闘の始まりです!

それでは、どうぞ!


第十七話

涼宮 茜side

 

 

 

 ここは演習場を監視する管制室。

 今朝、PXで207A分隊だったメンバーと朝食を皆で取ってると、お姉ちゃんが偉くご機嫌な水月先輩と一緒にやって来た。

 ご機嫌の理由は今日の午後、撃震の改修機と模擬戦をするらしい…

 撃震の改修機って、帝国斯衛軍の『瑞鶴』じゃなかったっけ?

 ともあれ、私達も興味を持ったので副司令に見せてもらおうと副司令を探していると前から伊隅大尉がやって来て、私達も模擬戦を見ることになっていたらしいので一緒に管制室まで向かった。

 管制室には既にヴァルキリーズは私達新人以外は居た。

 

 

「どんな機体になったんだろうね?」

 

「ん~、でもいくら撃震の改修機だからと言って、不知火とじゃ勝敗は目に見えてるよね~?」

 

 

 多恵の疑問に晴子が答える。

 晴子の言う通り、第一世代の撃震と第三世代の不知火じゃ越えられない壁がある…いくら改修したからといって、あの鈍重な機体では機動性で負けるわよ。

 

 

「揃ってるわね~」

 

 

 私達が新型機のことについて話していると、副司令が神宮司軍曹を連れて入ってきた。

 

 

「敬礼!」

 

 

 

<ザッ!!>

 

 

 

「あ~もぅ、面倒だからいいって言ってるじゃないの」

 

「して副司令、今日のこの模擬戦はどのような目的がお有りなのですか?」

 

「うまいことスルーする様になったじゃない、伊隅」

 

 

 伊隅大尉が副指令の言葉を流して今日の目的を聞いた。

 大尉、いつものことだからって、流石に副司令にそれは危険なんじゃ…

 ほら、神宮司軍曹もあわあわしてますよ!

 

 

「まあいいわ。さて、今日のこの模擬戦なんだけど…第一世代のスペックを第二・五世代にまで上げるのが目的よ。といっても、乗ってる衛士の技術が半端なくスゴイから、それなりに戦える奴じゃないと意味が無いのよ…瑞鶴がF-15Cに勝った時みたいに衛士の小細工では無くね」

 

「「(通じた!?)」」

 

 

 私達の驚愕を無視するように副司令は今回の模擬戦の目的を説明してくれた。

 

 

「失礼ですが副司令、その役目でしたら速瀬中尉ではなく神宮司軍曹が適任なのではないですか?」

 

 

 宗像中尉がそう言って神宮寺軍曹を全員が見る。

 軍曹は突然自分に目を向けられてビクッと反応されたけど、直ぐに表情を戻した。

 軍曹は伊隅大尉らヴァルキリーズがまだ訓練兵の時から教官として先輩達を育て上げたお方だし、私達の時も教官だったし、前線に出ていた時は中隊規模の隊長もしていたから…実力は横浜一よね。

 

 

「あのねぇ、まりもは今まで撃震しか使ったことないし、目的は第一世代を第二・五世代にまで上げることなのよ? なら、第三世代の不知火でマシな腕を持つ奴を使うしかないじゃない?」

 

 

 そっか…神宮司軍曹は撃震にしか乗らないから、不知火に乗っても使い勝手が違うから実力を出し切れないわね。

 あれ、でも何で第二世代の陽炎を飛び抜かしていきなり不知火なの?

 

 

「副司令、何故第二世代の陽炎を抜いて第三世代の不知火とするんですか?」

 

「イーグル相手ならスペックで既に安全面も含めて越えてるから第三世代の不知火なのよ。不知火と互角、又はいい勝負になれば証明されるわ」

 

 

 私が思っていたことをお姉ちゃんが代弁してくれた。

 そして返ってきた返答は、既にスペックで陽炎を越えている!?

 加えて安全面もって一体…

 

 

「すごい…そんな機体をいつの間に…?」

 

「そんなの何時だっていいじゃない。話は戻すけど、そんな機体を操縦する相手も当然強い…なら、不知火の衛士もエース級じゃないと釣り合わないじゃない? それで伊隅にやらせようにも他の仕事があるから、暇そうな速瀬に白羽の矢がたったわけ」

 

 

 確かに水月先輩なら、私達ヴァルキリーズの中では伊隅大尉の次の腕前だし、相手に喰らい付いていくテクニックではヴァルキリーズ1だから不知火の性能を引き出せてるはず。

 でも暇そうって…PXでいつも暇暇って愚痴ってたから否定出来ない。

 

 

「それに、後でゴチャゴチャとしつこく文句言う奴を今の内に納得させれるなら、そうした方がいいじゃない?」

 

 

 そっちですか…副司令、さっきの私の納得を返してください…

 

 

「まぁ、これから始まる模擬戦を見れば性能がどれだけ上がったか、分かるはずよ?」

 

 

 モニターに目を移す副司令と神宮司軍曹、それに釣られて私達もモニターを見ると、演習場に水月先輩の迎撃後衛を装備した青い不知火が映されていた。

 

 

 

 

速瀬side

 

 

 

 

 ふっふっふ、やっと一暴れできるわ。これまでずっっっと訓練ばっかりだったから退屈で退屈でしょうがなかった。

 昨日の夜に副司令から模擬戦の話しを聞いて本来なら伊隅大尉がする役目を私にしてくれたのには感謝感激よ!

 おかげで興奮して夜は眠れなかったけど…それでも、今日と言う今日は今までの鬱憤を晴らしてやる!

 模擬戦開始時間まで後15分…ちょっと早く来過ぎたかしら?

 

 

「お?」

 

 

 対面上空から戦術機反応…来たわね、あたしの獲物が!

 

 

「…なに、あれ?」

 

 

 演習場に着地した相手の戦術機の装備は迎撃後衛…所々撃震の面影を残しているけどあの寸胴な足が少し細くなり、肩も小さくなっている…そして何より、カラーリングの統一性が無く、メチャクチャでツギハギだらけに見える。

 網膜投影に映るあの機体に『擊震改』

 あんなのでまともに摸擬戦なんて出来るのかしら?

 

 

『――――時間です。状況を開始してください』

 

 

「ま、あたしは鬱憤をアレにぶつけるだけだし、関係ないけど!!」

 

 

 管制塔からの指示と共に速瀬はペダルを強く踏んで跳躍ユニット全開で得物の撃震改に突っ込む。

 互いの距離があと10mになったところで不知火が長刀を背中の担架から抜刀し、真正面から斬りかかった。

 しかし―――

 

 

「避けられた!?」

 

 

 撃震改は不知火の攻撃を右足を軸にして半回転する要領で避けた。

 まるで人間の細かい動きをさも当然のようにし、何をする事も無く立ってこちらを向いていた。

 

 

「ナメんじゃ無いわよ!」

 

 

 左の担架にマウントされている突撃砲を左腕で握り、ぼーっと突っ立っている撃震改に撃つが、撃震改が左手に装備してる多目的追加装甲によって防がれる。

 

 

「まだまだぁー!」

 

 

 牽制の様に撃ちながら撃震・改に接近し、長刀を右手に持ち替えて上から下に斬り込んだ。

 だが、それもまた片足を軸に半回転する要領で軽く避けられる。

 しかし、速瀬もさっきと同じ繰り返しはせずに突撃砲を持つ左腕を後ろに向かって大きく振りかぶり、撃震改に一撃をぶつけようと突撃砲をオートで発射するが、撃震改は半歩下がって上体を軽く仰け反らして避けた。

 

 

「何で当たらないのよ!?」

 

 

 その後も、不知火は撃震改に一撃を当てようと奮闘するも、全て避けられていた。

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

「こいつは…」

 

 

 俺は呆れていた。

 今回の模擬戦は、俺達が改修したこの近接型撃震改の性能を証明するために対戦は第三世代で、衛士は武が強いと太鼓判を押すという速瀬って奴が相手だ。

 だが、実際はどうだ?

 その速瀬が乗る不知火は牽制の銃撃はしては来るものの、撃震改が持っている盾…多目的追加装甲を構えながら俺は後退して防いでいる。

 ここまでの攻撃は特に悪くはない。

 しかし、近接戦闘時の不知火はそのまま右腕に持っている長刀を大振りで振り回すだけ…

 とてもじゃないが攻撃が単調過ぎる…これで博士直属部隊のエース?

 あまりにも隙が大き過ぎる。

 

 

「ふざけやがって……戦いを舐めてやがるッ」

 

 

 模擬戦であろうとも、シミュレーターではなく実機を使用していれば死ぬ事もある…例え死ななかったとしても、重症を負うこともある。

 こいつは実戦を経験して天狗になってる傾向がある…ちと灸を添えてやらねぇといけねぇな…

 

 

 

 

管制室side

 

 

 

 

『くッ、ちょこまかと逃げ回ってッ!』

 

 

 状況開始から10分、撃震改は不知火の攻撃をずっと防御するか避けるばかりだ。

 突撃砲で撃てば盾で防ぎ、長刀で斬りかかれば避ける、時に多目的追加装甲でいなされるのツーパターン。

 それも、避け方が第二世代並の身軽さ…いや、それ以上の身軽さで避けている。

 改修したからといって、元は撃震なのになんでこんなに素早く避けれるのか…

 それ以前に、なんであんな細かく動かせれるのかが、モニターを見ているヴァルキリーズの心境だ。

 

 

『これでッ―――』

 

 

 不知火は弾の尽きた突撃砲を撃震改に投げつけたと同時に跳躍ユニット全開で撃震改に吶喊した。

 撃震改は流石にこれは予想外の攻撃だったのか、多目的追加装甲で飛来する突撃砲を防いだ。

 

 

『―――終わりよーーーー!!』

 

 

 多目的追加装甲を構えて硬直している撃震改に不知火は長刀を両腕で持って唐竹割りを繰り出した。

 すると驚いた事に、撃震改は多目的追加装甲を捨て踏み込んで不知火の懐に入り込み、不知火の両腕を掴み、肩部で衝撃を受け止めた。

 

 

『嘘ッ!? 受け止めた!?』

 

『―――残念だったな』

 

『へ?』

 

 

 オープン回線から突然、不吉な言葉が流れてきた。

 モニターには速瀬のバストアップ映像と、サウンドオンリーと描かれた映像が映されている。

 その不吉な言葉と同時に、撃震・改は両足を地面にどっしりと叩きつけて構え、不知火の手首と肩を掴み―――

 

 

『迂闊に近寄り過ぎだ、―――大雪山おろしぃーーー!!』

 

『ふぇぇッ!? な、なぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!?』

 

 

 速瀬の乗る不知火が撃震・改に、錐揉み回転をしながら天高く放り投げられたのだ。

 

 

「「ええぇぇぇーーーーーーーーー!?」」

 

 

 これに管制室にいる夕呼以外の面々は驚愕した。

 あの伊隅と宗像、風間までもが…副司令は腹を抱えて笑っているが。

 

 

『はっはぁ!!』

 

 

 撃震改の新型跳躍ユニットが激しく火を噴き、上空へと放り投げられた不知火に向かって垂直に跳ぶ。

 

 

「トドメを刺すつもりか!?」

 

「速瀬中尉!!」

 

「水月!!」

 

 

 管制室からは速瀬の名を叫ぶ声が上がり、声に出していない者も表情が切羽詰った表情だ。

 上空に放り投げられた不知火にユニット全開の撃震改が迫る。

 

 

『臥龍空破ぁぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――やめんかボケぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 

<ドゴォォッ!>

 

 

『ぐぼぁッ!?』

 

 

 トドメとばかりに右腕を上に突き出して飛翔する撃震改。

 しかし、速瀬へのトドメは突然乱入してきたツギハギ色の不知火の跳躍スタンプキックにより阻まれ、それを食らった撃震・改は、そのまま落下して倒壊ビルに直撃した。

 乱入して来たツギハギ色の不知火が錐揉み回転落下中の速瀬中尉の不知火を空中で優しく受け止め、ゆっくりと着地する。

 

 

『中尉! 大丈夫ですか!?』

 

『きゅぅぅ~~~~……』

 

『(よかった、たいした怪我も無く目を回して気絶しているだけだ)』

 

 

 網膜投影に映る速瀬中尉のバストアップには髪があっちこっち飛び跳ねて目を回して気絶している姿が見えた。

 

 

『ぉ、ぉぉぉ…てんめ、武! いきなりスタンプキック食らわすとは何事だコラ!!』

 

 

 瓦礫の中から撃震改が現れ、謎の不知火に向かって指を差しながら言った。

 

 

『それはこっちのセリフだ! 戦術機相手に何で大雪山おろし使ってんだ! 機体の脆さは直に触れたお前がよく知ってんだろうが!』

 

『うるせぇ! そいつが何も考えずに猪見てぇに突っ込んでくるだけのバカだからシバき上げただけだ! ここが戦場ならそいつはとうの昔に死んでたぞ!? 現にあんなに俺が隙だらけだったのに攻略して来なかっただろうが!』

 

『だからって有人機に大雪山おろしをするなバカ! 見ろ! 中尉が乗ってるこの不知火! 操り人形になってるじゃねぇか!!』

 

 

 そういって謎の不知火は速瀬の89式機械化歩兵装甲を自動操縦で救護班の元まで後退させ、離れたのを確認してから速瀬の不知火の両脇を持って前に晒し出した。

 速瀬の不知火の四股は辛うじて配線と内部を保護するカバーが破れてギリギリ繋がっている状態の二つで繋がっており、ちょっと揺らすとプラプラと揺れる。

 仕舞いには喰らえば風穴を空けられる臥龍空破までを繰り出そうとしていたのだ。

 数多の戦闘(・・)と経験し、大切なモノを失ってきた黒崎は油断、慢心を絶対に許さないが、模擬戦でここまでしたのは恐らく速瀬が模擬戦を遊び(・・)と勘違いしていたからだろうか…

 

 

『俺達以外の人間は脆いんだぞ! 俺が介入してなけりゃ大惨事だったぞ! 中尉に後遺症が残ったらどう責任取るつもりだったんだこのバカ!!』

 

『うるせぇ! なら今度はお前が相手か武ぁぁぁ!』

 

『上等だ! てめぇのそのイカれた常識。今日こそ叩き直してやる!』

 

 

 撃震改が不知火に再度指を指した後に両拳を胸部の前で三回カチ合わせ、不知火が速瀬の不知火を遠くに運び終えてから正拳突き三回と、各々の鼓舞をして両機のアイカメラがギィン! と力強く光り―――

 

 

『いくぜぇぇぇぇぇえ!!』

 

『おぉぉぉぉぉぉぉお!!』

 

 

 

 ―――ガァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!

 

 

 

 両機が跳躍ユニットをフルスロットルで噴かして急接近し、互いの右拳を勢い強くぶつけた。

 

 

 

 

 

涼宮 茜side

 

 

 

 

「……なにこれ?」

 

 

 誰が発したかわからないが、それに同意するように殆んどのものが頷く。

 

 

「……大尉」

 

「……何だ?」

 

「少々幻を見ているみたいで…昼寝をして来てもいいですか?」

 

「気持ちはわかる、だが我々が見学を志願した以上、途中退室は許さん」

 

 

 大尉達が現実逃避を開始し始めたが、仕方ないと思う…何故なら―――

 

 

『『オォォォリャァァァァァァァ!!』』

 

 

 

 ―――ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 

 

 オープン回線で戦術機同士が激しいインファイトを繰り広げているからだ。

 それも、明らかに戦術機の性能以上の動きをしての格闘戦。

 ハイキック、回し蹴り、空中二段蹴り、かかと落とし、ジャブ、瓦割り、一本背負いと…上げればキリがない程のラッシュが演習場で繰り広げられている。

 驚くべき事に戦術機では出来ない格闘技を戦術機がしているということなんだけど、これが副司令が言っていた改修機の性能なのかしら……

 あれ、でも改修したのって撃震だけじゃなかった?

 それと今日の模擬戦は撃震の改修機であって不知火の改修機はないわよね…?

 最初見たときは大して不知火のフォルムが変わっていなかったから気付かなかったけど、所々手が加えられている。

 不知火の顎の出っ張りと肩部が短くなり、拳にまで伸びている出っ張りが無くなってすっきりとしている。

 管制室で私が不知火の改修点を思い返していると、両機が両腕を掴み取っ組み合いになり、撃震改が徐々に不知火を押し始めた。

 

 

『パワーでこいつに勝てると思ったかぁぁ!!』

 

 

 すると不知火は無理に力押しを受けずに力を右に流して避け、撃震改は勢いに囚われてたたらを踏む。

 

 

『スピードじゃこっちが上だぁぁ!!』

 

 

 その隙に不知火が右足を軸に機体を反転して右腕を振りかぶり、左足を前に踏み込むと同時に撃震改に右ストレートを繰り出す。

 撃震改は右腕を勢いよく振り、その反動を用いて上体を無理矢理不知火に向けさせ、両腕を交差して不知火の右ストレートを寸での所で受け止めた。

 

 

『ふぅんッ!!』

 

 

 撃震改が不知火の右ストレートを弾き飛ばすように両腕を左右に弾き、不知火は上体を仰け反る上体になったが、それだけでは終わらなかった。

 

 

『まだぁぁ!』

 

 

 そのまま左腕を下から斜め右に突き上げる、ボクシングのスマッシュを繰り出して撃震改の顎を狙った。

 それを撃震・改は頭を右にズラしてギリギリで避け、そのまま不知火の右肩を掴んで左足の腿に左腕で持ち、どっしりと構えた。

 

 

『せぃりゃぁぁぁぁぁ!!』

 

 

 撃震・改が不知火に先程の大雪山おろしという技を繰り出す。

 中の衛士は強大な遠心力の影響をモロ食らっているのでひとたまりも無いだろう。

 

 

『なんのぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 

 しかし、その途中で不知火は右腕のナイフシースを撃震改の頭部に打ち付けて拘束から逃れ、空中で回転の勢いを使って体勢を立て直し、跳躍ユニットを噴かして右足を突き出し、垂直に撃震改に迫る。

 

 

『鷹爪襲撃ぃぃぃぃぃぃぃい!!』

 

『ッえぇぇぇい!』

 

 

 撃震改はまるで自分が人間の様に頭を軽く振り、直ぐに不知火の方向を見る。

 不知火が迫ってきているのを見た撃震・改は右拳を硬く握り締めて腰まで持っていって屈伸をし、跳躍ユニットを噴かして不知火目掛けて飛び上がる。

 

 

『臥龍空破ぁぁぁぁぁぁぁあ!!』

 

 

 ―――ガキィィィィィィィン!!!

 

 

 交差する二機、不知火は地面に着地し、撃震改は空中で反転して不知火を見据える。

 すると、不知火と撃震改の間に何かが落下してきた。

 

 

「……今のアレ、何?」

 

「……破片?」

 

 

 双方の攻撃で双方共にダメージを受け、機体が衝撃に耐え切れず破損した。

 こちらが問答をしているうちにも両機は空中で交差するように戦っている。

 その交差し合う度に破損した装甲やら何やらが地面に自由落下していくのが見える。

 管制のモニターに記されている撃震改といつの間にか展開されていた不知火の両機の状態をふと見ると、全てがレッドゾーンになっていた。

 

 

「ってちょちょちょちょ!? 全部レッドゾーン!?」

 

「うそ!? そんな状態でまだあんな動きをしているの!?」

 

 

 しかし、そんなレッドゾーンは食えるのか? みたいな勢いで戦い続ける二機。

 次第に演習場にある倒壊した建物やメチャクチャになった道路が更に無残に破壊されていく。

 …私達、訓練はどこですることになるの?

 

 

「アイツ等…誰がここまで好き勝手暴れていいと言った…ッ!」

 

 

 ―――ゾックゥッ!!

 

 

 ひぃ、副司令から黒い何かが出てきてるぅ!?

 

 

「待って、あいつは確かあの時……なら、これが一番ね」

 

 

 さっきまで腹を抱えて笑っていた副司令が黒いナニかを滲み出しながらブツブツと独り言で何かを決め、管制の拡声器のスイッチを入れ、仰け反るまで息を大きく吸い込む。

 それを見て嫌な予感がした私達はその場で耳を力強く塞いだ。

 

 

 

【―――やめんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!】

 

 

『『ぎぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁあぁぁぁあぁ!!!?』』

 

 

 

 ―――ズゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!

 

 

 

 予感が的中し、副指令の爆声音が管制室内に響き渡り、全員が耳を押さえて蹲った。

 そして、何かの叫び声と何やら重機が崩れ落ちる音がスピーカーから流れてきたのでモニターに目だけを向けると、撃震改が前のめりに倒れた。

 しかも、ピクピクと人間のように痙攣をしているという…何アレ、気持ち悪い。

 

 

『ぐぉぉ、み、耳が……うぉぉぉぉ!? 賢治ぃぃぃぃ!! しっかりしろぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!』

 

 

 不知火から衛士がペイルアウトして撃震改の背中の管制ユニットに行き、ハッチを操作して管制ユニットをペイルアウトさせて衛士を引きずり出した。

 不知火の衛士は撃震改の衛士を肩に担ぐと、直ぐにその場から人間ではありえないような速さで救護班の元へと走っていった。

 

 

「あいつらは……模擬戦で何で演習場をメチャクチャにしてくれてんのよッ!!」

 

「(シミュレーターでアレだけの動きをしていたんだから当然でしょ)………」

 

 

 神宮司軍曹が副司令をジト目で見ている。

 神宮司軍曹はあの衛士二人が何者なのかを知っているの?

 

 

「神宮司軍曹、軍曹はあの衛士のことをご存知なのですか?」

 

「…ええ、存じ上げております。伊隅大尉も知っている男です」

 

「…まさか、あの二人ですか…?」

 

 

 あの二人?

 ここにいる伊隅大尉以外のヴァルキリーズが首を傾げた。

 

 

「ピアティフ、あの馬鹿共に目が覚めたらブリーフィングルームに来るよう言っといて。さ、行くわよアンタ達」

 

 

 副司令はピアティフ中尉にそう告げて管制室から出て行った。

 ていうか、第一世代の改修機だからって第三世代の不知火と互角に渡り合うってどんだけ?

 

 

 

 

―――ブリーフィングルーム・茜side

 

 

 

 

「さ~て、今回の撃震改の本来(・・)の改善点を説明するわ」

 

 

 何故か本来と言う言葉を副司令が強調した気がした。

 水月先輩は気絶してるだけで直に目が覚めるだろうと医療班が教えてくれた。

 よかった、無事で…

 

 

「先ず、この撃震改は近接戦闘を目的とした機体よ。改善点は機体を見れば一目瞭然だし、整備と開発の知識が無いあんた達じゃ詳しく説明すれば一日では終わらないから、大まかに説明するわ」

 

 

 改善点としてまず、機体の稼動部分に特殊なモーターを組み込んでパワーを上げ、機体の握力が人間で言えば43だったのが、改修後は51にまで上がったこと。

 腕も腕立て伏せを数回増やす事が可能になる程パワーが上がったこと。

 脚部は無駄な装甲の厚さとスペースを省き、新しく造った特殊装甲を使って脚部に発生するストレスを少しでも削減して地上戦では踏ん張りの利くようになったこと。

 他は、必要の無い箇所の装甲は最低限削って重量を減らし、機体のバッテリーと推進剤の消費量を減らすこと。

 装甲が邪魔で今まで稼働できなかった範囲まで手足が動かせれるようになったこと。

 バッテリーも改良されて長く持つようになったこと。

 

 

「それで…あの動きを可能にしたのですね?」

 

「あれはアイツ等が化け物なだけよ。普通なら吐血か内臓に大ダメージ、もしくは脳みそがシェイクされてあの世行きよ」

 

 

 風間少尉の言葉を副司令はばっさりと切った。

 ふとブリーフィングルームの入り口が賑やかになってきたので入り口を向くと、事は起こった。

 

 

 

 ―――ドォォォォンッ!!

 

 

 

「おいこら博士! おめえ俺を殺す気か!? Ah!?」

 

「おい賢治、落ち着けって!!」

 

「あら、やっと来たわね。あんたはそんな簡単にくたばる程柔な人間じゃないでしょう?」

 

「死にかけたわ! 実際死にかけたわ! あんな大音量で耳に直接流されたら死ぬわ!」

 

 

 突然の物音に吃驚して一斉に入り口を見ると、国連軍の制服を着た男の一人が扉を蹴破って博士にツカツカと迫り、その後ろからは同じく国連軍の服を着た男が呆れた様な表情で普通に入ってきた。

 えっと…誰?

 

 

「貴様! 副司令に向かって何て口の聞き方だ!!」

 

「あん? ああ、お前さんあん時の。元気にしてたか?」

 

「貴様!!」

 

「大尉!?」

 

 

 大尉があの男の態度に業を煮やし飛び掛かった。

 しかし―――

 

 

「―――何処見てんだ?」

 

「「!?」」

 

「あの時は無意識に避けていたから見てなかったが、中々いい動きするじゃねぇか」

 

 

 大尉の背後にあの男が立っていた。

 見ていた私達には何が起こったのか…いつの間に動いたのかも、気付かなかった…

 

 

「貴様「おやめ下さい、大尉!」―――神宮司軍曹!?」

 

 

 神宮司軍曹が二人の間に入って伊隅大尉を制止した。

 

 

「失礼いたしました! 中佐!!」

 

 

 …え? 軍曹、今…何とおっしゃいましたか?

 

 

「そ、コイツはさっきの撃震改の衛士の黒崎 賢治中佐。後ろに居るのがあの不知火を動かしていた白銀 武中佐よ」

 

 

 ………ゑ?

 

 

 

「「「中佐ぁぁぁぁーーーーーーー!!!?」」」

 

「んがががががががが!?」

 

 

 二人の階級を知らない面々は全員叫んだ。

 うそよ! あたし達と大して歳が変わらない見た目なのに中佐だなんて!

 で、でもあれだけの動きが出来て階級が小さいとそれもそれで怪しい…

 

 

「くぉぉぉ、いきなり叫ぶなよ…」

 

「見た目は大して年が変わらないのに自分達より位がうんと高いからな、これぐらいの反応があってもおかしくはねぇよ」

 

 

 耳を抑えてうずくまる黒崎中佐の横で白銀中佐が冷静に私達の反応を納得しているけど、私達は今だ混乱しているわ。

 

 

「で、撃震改の性能を見ての感想はどうですか?」

 

「あの撃震改にはまりもを乗せて再試験よ。あんた達のあれは規格外だからボツよ」

 

「イツツ、おいおい、そりゃねえぜ。せっかく性能をフルに活用したのによぉ」

 

「おだまり!! 何処の世界に演習場を戦術機のドッグファイトでメチャクチャにする化け物がいるってのよ!!」

 

「あははは…」

 

 

 あれは機体の性能ではなく、もはや衛士の技術なんじゃ…いえ、それ以前に機体があんな動きできるわけが無い。

 それに…私はずっと気になってることがある。

 

 

「副司令!」

 

「ガルルルル…何よ涼宮」

 

「恐れながら、お二方に質問したいことがございます!」

 

「「俺達に?」」

 

 

 私にはあの時…二人がペイルアウトした時から聞きたかった疑問がずっとあった。

 

 

「お二人は…何故強化装備を付けていなかったのですか?」

 

「「あ…」」

 

「「あ~………」」

 

 

 二人は苦笑いをしながらどう言ったものか…って表情をしている。

 何で強化装備の有無で悩むのよ?

 

 

「ぶっちゃけな、あれは俺達には邪魔なだけなんだよ」

 

「えぇ!?」

 

「あれ付けてたら身動きが制限されるし、なんちゃって脆いからさ。別に網膜投影は全身装備してなくても出来るように設定は出来るし、鍛えてるから特に問題はないのさ」

 

 

 カラカラと黒崎中佐は笑いながら言うけど、鍛えてるからって強化装備をつけてアレだけの衝撃が来るのに生身で平気ってどういう鍛え方してるのよ!?

 

 

「なんか…千鶴達、大変な上司が付いちゃったね」

 

 

 晴子があはは…と苦笑しながら言うと、それに元A分隊が頷いた。

 私達の視線の先には、正座をさせられて副司令にガミガミと怒られている中佐二人と、脇で説教されている内容を聞いてジト目で見ているピアティフ中尉と伊隅大尉、神宮寺軍曹がいた。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

賢治無双と書いてましたが、実際は賢治と武のドッグファイトになってました(汗

感想、アドバイス等をお待ちしております!
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