Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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あけましておめでとうございます!

新年明けての投稿です!

それでは、どうぞ!


第十九話

冥夜Side

 

 

 

 

 先程の榊と珠瀬の早撃ち、見事としか言えぬ。

 二人が元々射撃に目を見張るものが有るとは思っていたが、黒崎中佐が出した訓練メニューで二人の腕があそこまで上がるとは…

 私と彩峰は白銀中佐にご教授を頂いているが、あそこまで劇的な成果が出ているかどうか…自覚できぬな。

 

 

「えへへ、中佐に褒められちゃったね♪」

 

「嬉しそうだな、珠瀬」

 

「うん!」

 

 

 今の珠瀬の雰囲気と、あの時の雰囲気とは全く異なる…

 こんなにも小動物にしか見えない珠瀬が、あれほど鋭い威圧を出すと誰が思えるであろうか。

 

 

「中佐の訓練メニューのお陰ね。これだけで私達の出来なかった事が出来るようになったんだから」

 

「…榊、よければその訓練メニューを私にも見せてくれぬか?」

 

「え? 構わないけど…いいのかしら?」

 

「構わぬだろう、我等には我等の訓練メニューがあるし、そなた達とは訓練内容が違う故に興味を持っただけだ」

 

「そう、なら…はい」

 

「感謝を…これは…ッ」

 

 

 榊から見せて貰ったこのクリップに留められた訓練メニューの束…一つ一つの筋トレに詳細と絵を描いてわかりやすい。

 成る程、腹筋もただやるだけではなく、腕を前で交差してすることで余分な筋肉を付けない上に、内側の射撃の際に必要な筋肉を刺激して柔らかくする…腕立て伏せと背筋も同じように絵と個々の詳細が描いてある。

 これ程まで正確で綺麗な訓練メニューは、私は見たことがない。

 

 

「なるほど。この訓練メニューを見ながらならば、黒崎中佐が不在でも訓練をできたのが分かる」

 

「ええ、おかげで一人でする時も見ながら出来るし、理論も書いてあるから納得して訓練できるわ」

 

「ま、誰にでも取得がないとね」

 

「何か言ったかしら?」

 

「ブンブン」

 

 

 読み終えた訓練メニューを榊に返して食事を再開すると、二人のいつものやり取りが始まった。

 この二人は変わらずこの通りだ…だが、見ていてあの頃の様な険嫩な雰囲気は醸してはおらぬ。

 逆に、見ていて退屈しない。

 ここまで皆と砕けて接することが出来るようになったのも、白銀中佐の助言があってのおかげだ。

 珠瀬達にあまり差をつけられぬ様、私もウカウカとしておられぬな。

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 さて、向こうに土産として持って行くものを俺のHDDから抽出して纏め上げたんだが、俺が今でも頭に残るのは珠瀬と榊があそこまで育つとは思わなかった事だ。

 いかに俺が作ったメニュー通りに訓練したとして、こんな短期間であそこまで技術は身につけれないぞ?

 それをやってのけたんだ…これは二人の才能とセンスか、はたまた何らかの修正が掛かっているのか…

 いずれにせよ、これからが楽しみだ。

 訓練次第であいつらは戦場から常に生きて帰ることが出来る。

 

 

「なあ武。確かお前、あいつらと最後の戦いに出る時には腕は全員エース級だったと言ってたな?」

 

「ああ、XM3搭載してからだが、当時の俺と同じ腕…いや、個々の長所は俺より腕は上だったさ」

 

 

 ほう、今は6月として、10月22日から共に訓練したとしても最後の戦いが1月1日…3ヵ月ないのに同等の腕までか。

 もはや鬼才だな。俺でもそんな短時間で戦闘技術はモノにできん。

 

 

「なら、あいつらは鬼才だな。いくら三日間朝と夜の筋トレと夕方の射撃訓練をしたとしても、あんなに上達はせんよ」

 

「鬼才…か、確かにな。元々訓練前から身に付けていた特技っていうアドバンテージも加わっていたから出来たってのもあるかもしれないけどな」

 

 

 ふむ、そのアドバンテージが今回の訓練に活かされているっていう事か。

 あれほどの吸収力と腕なら、次の訓練はこれをさせてもいいか。

 

 

 

 

―――グラウンド―――

 

 

 

 

 翌日、二人の次の訓練メニューを少々変えて纏めた俺は、またクリップに留めて榊と珠瀬の下に行き、早速二人に新しい訓練内容を説明した。

 

 

「今日もお疲れ様だ。昨日言った通り、お前達二人の成長スピードには驚いた。向こうの様子は全く俺は見てないからわからんが、恐らく向こうの成長スピードも目を見張るものが多々あるだろう…さて、今日からお前達に追加する新しい訓練メニューだ」

 

「……え?」

 

「あ、あの…ちゅ、中佐…これは?」

 

 

 俺が榊と珠瀬に渡した新しい訓練メニューをパラパラと捲って行く内に二人は硬直していった。

 榊なんかは顔が引き攣っているが…無理もない。

 逆の手で利き腕と同じ成果を出す事と、走りながら的を撃つこと。

 そして二丁拳銃…聞けばシンプルなメニューだが、難易度はかなり高い上に射撃をしている人間ならこれらが如何に高レベルかが分かる。

 正直、この訓練は一ヶ月…早くて二十日後からやらせようと思っていたんだが、僅か三日で速撃ちをモノにするとは思わなかったので、二段階飛びぬかしてこれにした。

 

 

「これはお前達があまりにも成長幅が高くてな。本当ならそれを分割してやっていこうと思ったんだが、お前達なら一編にしても大丈夫だろう? その訓練メニュー通りにすれば合格不合格の確認をするまでまた俺は必要なくなるだろうしな」

 

 

 実際、俺が本当に必要になるのはこのメニューを得た時からだ。

 射撃が出来ないのに銃剣を教えたとしても、まともに当てられず無駄弾を使うだけだ。

 あれには瞬時に狙いを定めて撃つ…0.3秒以上掛かれば隙だらけになる戦法だ。

 二人の長所である射撃を先ずはマスターさせてから銃剣に入らないとな。

 

 

「…黒崎さん」

 

「ん? おぉ、霞ちゃん。どうした?」

 

 

 俺の背後に霞ちゃんがやって来た。

 既に霞のことは207分隊とヴァルキリーズは知っているみたいなので紹介はしてないが、最近よく見かけるようになったのと、話しかけるとちゃんと答えてくれるようになった事に喜んでいた。

 余談だが、霞ちゃんは何故か知らんが俺にまで懐いてしまった。

 無論武と比べれば天と地の差はあるが…何でよ?

 

 

「博士が呼んでます」

 

 

 博士が? 何の用だろ? こっちは今訓練中なんだが…

 

 

「それ、今じゃないとダメ?」

 

「ダメです」

 

「おおぅ、マジかよ…」

 

「「(まじ?)」」

 

 

 ピシャリと霞ちゃんに言われちゃったぜ。

 おいおい、訓練兵の講義中にいきなり呼び出すとは何事よ?

 もう00ユニット…鑑 純夏ちゃんの必要な理論は武が渡したから時間はあるだろうに…

 さては動くのが面倒で引きこもってるのか?

 ったく…

 

 

「すまんな、博士から呼び出しを喰らったから…二人は早速その訓練メニューを実行しておいてくれ」

 

「「は、はぁ…」」

 

「じゃ、行こうか霞ちゃん」

 

「はい」

 

 

 霞ちゃんを連れて俺は博士のいる執務室まで向かった。

 

 

「……とりあえず、やろっか。訓練」

 

「……そうね」

 

 

 二人は黒崎の訓練メニューを見ながら訓練に打ち込んだ。

 しかし、あまりの難しさに二人が悲鳴をあげている姿を、近くを通った司令官がコーヒーを片手にのんびりと見ていたりいなかったり…

 

 

 

 

―――横浜基地地下17階執務室―――

 

 

 

 

<プシューッ>

 

 

「やっと来たわね、黒崎」

 

「おいおい、こっちは訓練生の講義を抜けて来てんだ。そんな言い方はないだろうよ?」

 

 

 途中で霞ちゃんと別れて一人で博士のいる執務室に行ってドアの前に立つと、軽く炭酸の抜ける様な音と同時にスライド式のドアが開いた。

 中に入ると、案の定博士は執務室でコーヒーモドキを飲みながら待っていた。

 

 

「何よ、せっかくアポが来たから教えてあげたってのに」

 

「それぐらい自分で言いに来いよ…しかし、もう来たのか。帝国(あっち)国連(こっち)は相当険悪なのによく通ったな。相手は誰だ?」

 

「相手は純国産なんてつまらない物に拘らずにF-15Eを導入して不知火と吹雪を創りあげた、帝国技術廠主任『巖谷 榮二』中佐よ」

 

 

 ほう…この世界の帝国にそんな行動力がある奴がいるとはな…どんな奴か少々楽しみだな。

 

 

「彼の方が日本のことをよく考えているわね。日本の技術では戦術機の開発は進まないから、国粋派と周りの反対を押し切って国連主催のプロミネンス計画に便乗して【XFJ計画】を始動したわ。現地に行ってるのは本人ではなく身内だけど」

 

「いいじゃねぇか、本人は中佐という地位にいるから動けないんだ。その身内も安心して送り出せれる相手なんだろ? 因みに聞くが、アポを取る為に渡したのは何だ? 何も渡さずにアポを取るわけがないだろ?」

 

「あー、それね。あんたが演習場をドッグファイトでぶち壊した映像を音声を切って直接本人に送っただけよ」

 

 

 

 ………は?

 

 

 

 お゛お゛お゛お゛お゛い゛ぃ!? 何俺のある意味の黒歴史を渡してんだこのアホは!!?

 

 

 

 

―――帝国技術廠 第壱開発局副部長執務室―――

 

 

巌谷side

 

 

 

 

「う~む……」

 

 

 昨日、国連軍横浜基地の副司令から新規の武器と戦術機の開発の為の場所提供の要請が送られて来た。

 もちろん、それ相応の見返りを渡すと付け足してだ。

 私自身、彼女の事は特に思ってはいないが、帝国軍は国連軍のことを毛嫌いしている。

 その国連軍の者を帝国技術廠の中でうろつかせれば、間違いなく帝国軍の者が問題を起こす為に易々と承認はできない。

 …しかし、香月副指令から極秘に送られてきたこの戦術機同士のドッグファイト…加工したとしてもココまで加工できる技術を今の世界にはない…ならば、このドッグファイトの映像は本物ということだ。

 正直な話、この映像が本物と分かってもう一度見た時鼻水が流れそうになった…

 戦術機が人間顔負けのドッグファイトを繰り広げる上に、第一世代の改良型が第三世代の改良型と互角に戦っていたのだから。

 加えて、従来の戦術機で…管制ユニットとOSでここまで細かい動きが出来る筈がない上に、衛士に強大な負担が掛かり身体が原型を留めれるはずがない…

 なのにアレだけの動きを繰り返しているのだ。

 ならば、何らかの緩和システムを搭載している筈だ…

 そしてこの動きを可能とする黒崎 賢治中佐と白銀 武中佐。

 名前を聞いたこと無いのが気掛かりだが、私以上の手練だろう。

 もし…もし、この動きを可能とする技術を日本が手に入れれば…日本はまだ、戦える…ッ。

 だが一つ気になるのが、映像データと共に付いて来た香月副司令直筆のこのメッセージだ。

 

 

『二人に妙な小細工をすれば、帝国軍の存亡が危うくなります。くれぐれも、口にはお気をつけて。香月 夕呼』

 

 

 それは我々帝国が二人に何かをした時、国連軍が動くのか、はたまた副司令直属の部隊が押し寄せてくるのか…

 このメッセージが何の意味を表しているのかわからないが、こちらがおかしな行動をとらない限りは問題にはならないだろう。

 無論、向こうがこちらに難癖を付けてきた時には抵抗させてもらうが。

 

 

 

 ―――コンコン

 

 

 

「中佐、黒崎中佐と白銀中佐をお連れしました」

 

 

 む、噂をすれば来たか。

 

 

「入れ」

 

「はっ!」

 

 

 ―――ガチャ

 

 

「失礼致します! どうぞ、こちらです」

 

 

 はてさて、どれほど屈強な者がやってくるのかと内心警戒しながら相手が入ってくるのを待っていた…だが、次の瞬間、私の予想を違う意味で越えた人物が入って来た。

 

 

「初めまして。俺は国連軍横浜基地所属になっている(・・・・・)黒崎 賢治だ。あと、俺のことは階級で呼ぶのは止めてくれ」

 

 

 まだ外見二十歳前後の…唯依ちゃんと歳が変わらない青年がやって来たのだ。

 

 

「おい、賢治! お前少しは自重しろって! 失礼致しました。国連軍横浜基地所属 白銀 武中佐であります!」

 

「あ、ははは、いや、構わないよ白銀中佐。同じ階級であり、尚且つ横浜基地の副司令直轄の部下なのだから私よりも権限は上だからね」

 

 

 私はすぐさま表情を隠して対応する…本当に彼等があの二機を操っていたのかと一瞬思ってしまったが…二人が醸し出す雰囲気が段違いだ。

 ここまで気圧されたのは、紅蓮中将とあった時以来か…私も長年軍人であり衛士だ、相手が隠していても実力の一枚ぐらいはわかる。

 普段通りでこれだけの雰囲気を醸すということは、それだけの修羅場を常にくぐってきたことだ…だが解せない。

 この時代、BETAがいるこの時代でここまで修羅場をくぐるまでの裏世界など米国以外ないはずだが…いや、ソビエトがあるがあそこは最前線だ。

 裏でここまで力を付ける程の修羅場はないはずだ…一筋縄では行きそうにない。

 

 

「本日はようこそ、帝国技術廠へ。私はここの副部長を務めている『巌谷 榮二』中佐だ。よろしく頼む」

 

「ああ、こちらこそよろしくな。純国産に意固地になる馬鹿共と違うアナタとなら、いい関係を築いていけそうだ」

 

「だ か ら 賢 治 !」

 

 

 どうやら、この黒崎 賢治中佐は口調は誰とでも普段とは変えないようだ…よかった。

 ここに唯衣ちゃんが居たら声には出さないにしろ、顔か雰囲気で相手は察してしまうからな…

 相手は横浜の女狐と呼ばれる香月副司令が警告を発するぐらいの人間だ。

 会議に掛けられる前に召されてしまうだろう。

 

 

「まぁまぁ白銀中佐。それで、今回我々帝国技術廠で制作するにあたって何らかの見返りを送ると言っていたのだが、一体何なのかね?」

 

「ああ、これだ」

 

「失礼、拝見させてもらうよ………こ、これはッ!?」

 

 

 私に差し出してきた書類を手に取って見ると、そこには驚くべきことに日本に配備されている戦術機『撃震』の改良案と新型OSのデータが記されていた。

 それも、日本が求めている近接型(・・・)の改良案だ。

 

 

「日本で配備されている四機の内、一番多いのは撃震であり日本は近接戦闘を主としているからな。対価としてはそれの改良案ぐらいはないと思って用意した。その二つをやるよ」

 

「なッ、い、いいのかここまで凄いものを!?」

 

「それは試作機で既に撃震の更なる改良型を横浜基地に置いているからな。俺と武の機体を造る為の代金だ」

 

 

 場所と機材を提供しただけで、世界シェアを取得できそうな設計図を易々と……この男は一体…何者なんだ?

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 よかったよかった、俺が博士に最初に提出した撃震の強化案とモーターの設計図だけで俺と武の機体を製造する場所を借りれるなんて安いもんだ。

 何分、俺専用のハンガーにするには博士からもらったあのハンガーじゃ、造ろうにも機材がなくて到底無理だから改装中だ。

 技術廠にしかない重機等もハンガーに導入しないといけないからハンガーの増築、今回は時間が掛かるんで俺特注のハンガーが出来上がるまでは帝国技術廠(ここ)を間借りして造るしかない。

 一応、博士に必要な機材がこっちに有るか確認してもらったんだが、何も言わずにここを勧めたって事は全部揃っているんだろう。

 

 

「驚いた…既存する機体の関節とマニュピレーターを改良するだけでここまで機体を底上げ出来るとは…」

 

「ん? たった5%しかスペックが上がらないのにか?」

 

「何を言っているんだ君は! この5%を上げるだけに日本は、いや全世界は未だたどり着けていないのだぞ!」

 

「………」

 

「それに、この撃震は試作とはいえ瑞鶴の性能を越える機体だ! 第一世代に課せられた機動力を見事に克服している上に防御力が上がり、燃費も改善されている! さらにはこの撃震に合った新型のOSもだ! これほどの機体をその若さで造り上げたことに、私は帝国を代表して敬服する!」

 

 

 成る程…元衛士だったから5%でも上昇箇所をみて判断したか。

 ここまで喜ばれるともうちょっとオマケしておけばよかったなと思っちゃうなぁ。

 …やったら次はガトリングを撃たれそうで怖くて持って来れなかったんだがな。

 

 

 ―――――――――――――!!

 

 

「ん?」

 

 

 何だ、この不快感…あっちは確か海…海から感じる…?

 いや、近付いてくるのか……まさか?

 

 

「賢治、どうし……ん?」

 

「武、その様子だとお前も感じたのか?」

 

「…ああ」

 

「ん? どうしたのだ二人とも?」

 

 

 

 ―――ファーンッファーンッファーンッファーンッ!!

 

 

 

「なッ!? こ、これは…!」

 

「クソが…」

 

「来やがったか…」

 

 

 そう、このけたたましいサイレンの意味は只一つ

 世界を…地球を貪りつくす宇宙からの侵略者

 人類の敵

 武の敵

 

 

 

 

【Cord911】

 

 

 

 

 BETAの来襲だ

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

次回、賢治と武のヒューマン無双です!

これからもどうぞよろしくお願いいたします!

感想、アドバイス等をお待ちしております!
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