Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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お待たせいたしました!

武と賢治のヒューマン無双です!

それでは、どうぞ!


第二十話

武Side

 

 

 

 

 マズい、今から横浜に全力で戦術機を取りに戻ったとしても戦線は横浜とは真逆だから戦線に間に合わない。

 かと言って、帝国軍の戦術機を借りたとしても俺達の機動に耐える機体は、不知火と武御雷、そして辛うじて瑞鶴だけだ。

 だが瑞鶴は斯衛軍の機体だし、ましてや武御雷なんか国連軍所属の俺達に絶対に貸してくれはしない。

 不知火の数も無い…これじゃ帝国はBETAに飲み込まれてしまう。

 

 

「おい武、BETAはこの時期にも来てたのか?」

 

「…悪い、俺は10月22日より前のことはテンデ覚えていないんだ…まさか、因果律の影響が…」

 

「そいつは俺じゃ分からんが、同じ世界とはいえ多少の異なりは生じるはずだ。その異なりが…あのBETAだって話だろう。全く厄介な異なりだがな…」

 

 

 多少の異なりでBETAがこんな早い時期に出現って、冗談キツイことこの上ないぞ。

 しかも、今の帝国はもう疲労困憊でこれ以上人間を失えば帝国軍は持たない。

 帝国軍とはあのクーデターの時以外は接した事はないけど、技術廠に入る途中に帝国軍のハンガーの横を通ったからちょっとだけ覗いてみれば、整備班が疲労の顔一色で作業をしていた。

 壊れた戦術機を分解して比較的被害の少ない戦術機に無理矢理パーツをくっつけたり、あっちこっち走り回っているのを見た賢治は呆れた表情をしていた。

 ここまで人手が足りないのに、何であんな雑用を数少ない整備班だけが担ってるんだと呟きながら…

 

 

 

 ―――キィーーッ

 

 

 

「こんなところに居たのか」

 

「「ん?」」

 

 

 屋上のドアが開いた音がして振り向くと、通信端末を片手に持っている巌谷中佐がやって来た。

 

 

「探したよ、いきなり私の執務室から居なくなった時は戦線に参加したのではないかとヒヤヒヤした」

 

「そのつもりだったんだが、戦術機がないからどうしようかと考えていたんだよ」

 

 

 今回は俺達の戦術機と武器を造る為に交渉に来ただけだから戦術機は持って来てはないが、武器は持ってきている。

 念の為と思ったけど、まさかこんな早くに因果律の異変が起こるとは予想もつかなかった…

 

 

『スターダスト1よりHQ! 弾薬と推進剤が底を尽きた! 至急撤退を求める!』

 

『HQよりスターダスト1。撤退は認められない。繰り返す、撤退は認められない』

 

『なッふざけるな! 術を無くした俺達にここで死ねとでも言うのッぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

『隊長ぉーー!!?』

 

 

 屋上から戦況を見ている俺達に、巌谷中佐が持ってる端末からHQとの通信が聞こえる様になっている様で、罵声や悲鳴が聞こえて来た。

 今すぐにでも飛び出して行きたい気持ちを俺は必死で抑えている…巌谷中佐も端末を持っていない手を拳の色が白くなるまで強く握っている…俺と同じ気持ちなんだろう。

 夕呼先生からは、俺達の力を見せるべき時ではないと釘を刺されてるけど…でも、いくら永い時を修行して来た俺にも、限界というものはある…!

 

 

『スターダストマムよりスターダスト5! A―5地区よりBETA出現! A―7地区まで下がって! 応答してスターダスト5!! 葵!!』

 

 

 スターダスト? さっきHQに撤退要請を出していたのがスターダスト1…

 指示を一人にだけ出しているって事はまさか、スターダスト5しか生存していないのか?

 だが、スターダスト5から返答がない…まさか、通信機がやられているのか!?

 

 

「おい、A-5地区って、あの孤立してる不知火の所か?」

 

 

 賢治の発言と同時に爆発音がし、発信源に目を向けるとここより遥か先に爆煙が立ち込めている箇所がある…

 視線を向けた時には爆煙が立ち込めているから俺は全然見えない…

 

 

「…まさか、ここから肉眼であの距離まで見えるのか?」

 

「…鍛え方が違うんだよ、一般人とはな」

 

 

 二人が話しているうちに俺は賢治が示した方向を見る。

 すると、爆煙が僅かに晴れBETAに囲まれて孤立している帝国軍のカラーリングをした不知火が一瞬だけだが、俺の目にも見えた。

 この距離ならここからダッシュすれば何とか間に合う距離だ!

 くそ、こうしちゃいれない!

 

 

「待て! 何処に行くつもりだね?」

 

「決まってます、戦線に参戦するんです!」

 

「駄目だ! ここは我々帝国軍の管轄であり、君達は我が帝国の客人であり国連の人間だ! 今君達が行って戦死してみたまえ! 国連との間に決定的な溝を作ることになる上に世界は光を失う事になる! それに戦術機がないのにどうやって戦うつもりだ! まさかアレと生身で戦うなんてことを言うつもりではないだろうな!?」

 

「くッ…!」

 

 

 そうだった…俺は『前回』の時は、まだ可能性の見えないひよっこだったから先生に頼って自由に動く事が出来た…だが今は、賢治と共に力をつけ、中佐と言う上位に就いてからは自分の立ち位置が逆に自分の行動の足枷になってる…

 

 

「武…」

 

 

 政治や米国…各国の、今後の計画のことを考えれば、今俺達がここで介入する事は望ましくないって、俺達の力をここで見せるべき時期ではないって、基地を出る前に夕呼先生に言われた……だが……だがよぉッ!

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これじゃあ力をつけて帰って来た意味がねぇじゃねぇかぁぁぁーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ビリビリビリビリッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 あの空間での闘いで培ったこの力! あの世界で培ったこの力! 今ここで使わないでどうする!!

 目の前の救える命を見捨てて何が救世主(メシア)だ!!

 

 

「客人光云々関係ねぇ! 行くぜ賢治ぃ!!」

 

「合点承知だぁ!!」

 

 

 俺と賢治は持って来ていた俺達の武器を持って屋上から飛び降り、戦線の中へと全速力で駆けていった。

 頼む、間に合ってくれ!!

 

 

 

 

巌谷side

 

 

 

 

「――ッはぁ! はぁ…はぁ…あの二人はっ! 補給中のカッパー3を補給が終わり次第直ぐに戦線に向かわせろ! 国連軍の黒崎中佐と白銀中佐が戦線に無断で参戦した! 補給を急がせろ! …しかし、何て跳躍力と速さだ。もう後ろ姿が見えなくなるとは…それにあのプレッシャー…一体何者なんだ彼等は…」

 

 

 白銀中佐が駆け出しそうになったのをその場で止めれたと思えば、突然恐ろしいまでのプレッシャーを発しながら叫んだ。

 そのプレッシャーで私はその場で硬直してしまった…自賛する訳ではないが、私も戦場に出ている以上、幾度も修羅場を潜って来た…だが彼が放った恐ろしいまでのプレッシャーは、私の修羅場で感じたプレッシャーを軽々と超える程のモノだ。

 私は二人を止めようとしたが身体が動けず、二人が戦場に駆けて行くのを只、見送る事か出来なかった…

 人間があんなに恐ろしいプレッシャーを発することが出来るのか?

 あの恐ろしいプレッシャーから解放された私は、直ぐに補給中の戦術機を補給が終わり次第向かわせるよう命令したが、間に合うかどうか…

 私も出撃の準備をした方がいいな。

 ふと私は足元にタイルの破片があることに気付いた。

 破片を辿っていくと、二人が立っていた箇所には、まるでタイヤがスリップしたかのような跡が四つと、その直ぐ後ろの砕けた床のタイルが残っていた。

 

 

 

 

帝国軍少尉side

 

 

 

 

 帝国軍の少尉である彼女は、戦線で孤立していた。

 突然のBETA来襲によってスクランブルをかけられて出陣した第一陣であり、BETAの圧倒的な物量に小隊の皆は彼女以外、BETAに殺されたのだ。

 いくら撃っても斬っても潰しても涌き水の様に湧いて出てくるBETAを相手に弾薬も底を尽き、更には跳躍ユニットが片方が破損して葡萄飛行も出来ず歩行で行動している為、機体も身体もボロボロの状態だ。

 正しく最悪のコンディションだ。

 

 

「くッ! このッ…きゃああああ!?」

 

 

 彼女の駆る不知火が目の前の要撃級に短刀を背中に刺して絶命させて短刀の寿命が尽きて折れた。

 折れた廃棄したが、背後から迫った要撃級に気付かず、肉弾戦の土俵である要撃級の腕のフックを背後から食らい、彼女の駆る不知火は装甲を飛び散らせて横転する。

 

 

「くっ、機体が動かないッ? 損傷は―『ガリガリガリガリッ』――う…うそ…ッ!?」

 

 

 体勢を立て直す為に彼女はアームレンカーを操作するが、仰向けに倒れた機体が持ち上がらなかった。

 網膜投影の右上に機体の損傷箇所が表示されており、全体がレッドゾーン表示、さらには管制ユニット内部に火花が散っていた。

 機体の損傷を見た瞬間、彼女の耳に直に何かが削られていく音が複数聞こえてきた。

 彼女は直ぐに理解した…戦場で削れるような音がする現象は、自分の機体に戦車級が取り付いたことに…

 

 

「い…嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 迫りくる死の恐怖から脱出しようと、ペイルアウトの操作を彼女は我武者羅に操作するが、フレームが歪んでいるのだろうか、ウンともスンとも管制ユニットは動かない。

 彼女は管制ユニットの中で顔を涙と鼻水で目茶苦茶にして泣き叫んで助けを求める。

 しかし、無情にもガリガリと装甲が削られる音だけが近づいて来るだけだった。

 

 

「た、助けて! 誰か助けてぇぇぇぇ!」

 

 

 オープンチャンネルで助けを求めるが、通信機能が壊れているのか画面が砂嵐で映らない上に誰も返事をしてくれない。

 彼女の部隊は既に彼女以外全滅している。

 近くに帝国軍の機体は見えるのは見えるが、向こうも自分達に群がってくるBETAの対応に精一杯だった。

 そして…装甲が削られていく音が管制ユニットに大きく響くようになった次の瞬間、戦車級の人間に模した強靭な歯が管制ユニットを食い破って現れた。

 

 

「いや、いやッいやいやいやいやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 彼女は頭を振って泣き叫ぶが戦車級の歯が全部見えるぐらいの穴が開き、戦車級は彼女を食らおうと管制ユニットに開けた穴を自分が入れるように押し広げて行く。

 もはや彼女の表情は出撃する時の表情とは別物になっていた。

 

 

「死にたくない! 死にたくないよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 しかしこの状況では、例え戦術機が助けに来たとしても戦車級と共に彼女まで潰す事になる。

 戦車級一体が通れる穴を開けた戦車級は彼女を食らおうと大きく口を開けて迫った。

 まさに、絶体絶命であった(・・・)

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!」

 

 

 

 

 

 

 

「でぇい!」

 

 

 

 ―――ガッ!!

 

 

 

「オルァァ!」

 

 

 

 ―――ズザァァァァ!!!

 

 

 

 

 彼女を食らおうと直前まで迫った戦車級の強靭な上下の歯がガチンと鳴って閉じられた。

 しかし、鼻の先まで迫った戦車級の歯が何も食らうことなく、耳に何かが聞こえた次の瞬間、急に戦車級が遠ざかって行った。

 

 

「吹っ飛べこのツクシ頭がぁ!!」

 

 

 

 ―――ゴォォォゥ!

 

 

 

「無事か!?」

 

 

 日本では耳にすることはできなくなった獅子の咆哮と共に、戦車級は彼女の目の前から吹き飛んで行った。

 管制ユニットに入る光が遮られたと同時に男の声と姿が見えた彼女は、その男に向かって腕を差し伸ばすが、張り詰めていた恐怖と緊張が一気に抜けて意識を失った。

 その男は彼女の死という因果を捻じ伏せた。

 それは正しく、生命の源の申し子だからこそ成せる業であった。

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

「おいおい、ここで気絶されたらマジ困るんだが…」

 

 

 A―5地区の孤立している不知火に群がるBETAを駆逐して管制ユニットに入っていった戦車級を引きずり出して吹き飛ばし、何とか衛士を救出することは出来た…が、肝心の衛士が気絶してしまった。

 この有象無象の中を人一人抱えて脱出することは出来るが、無事に出られるかとなれば厳しい。

 何せ救出相手が訓練している衛士とはいえ、俺達からすれば一般人(・・・)に変わりはない。

 意識のない奴を片手で抱えて俺の全力の動きをすれば、間違いなく抱えた奴の首の骨は折れる…

 それほどの動きをしないとこの地獄の中から脱出は不可能だ。

 叩き起こそうにも今ここで起こしてしまえば逆に発狂して暴れそうだから面倒臭くなるだけ…どうしたものか。

 だが、考えるより先ずは進路の確保だな!!

 

 

「いくぜぇ! トマホーーォク! ブーーーゥメラン!!」

 

 

 俺達目掛けて群がってくる戦車級をゲッタートマホークで切り捨てた後に、頭上でゲッタートマホークを回転させて戦車級に向けて投げ放つ。

 投げ放たれたゲッタートマホークはその名の通り、ブーメランとなって回転しながら戦車級を斬り飛ばしながら戻ってくる。

 それにより進路を確保した俺は、気絶した衛士を肩に担いで不知火から離れ、近くに見つけた平たい岩があるところに衛士を寝かせてからまた群がってくるBETAを切り裂いていく。

 戦車級の人間の様な両腕とツクシのような頭を纏めて斬り落とす。

 どうやらツクシ頭を斬れば絶命するようだな。

 群がってくる戦車級は後を絶たず、俺がここまで殺してきた数は合わせて覚えている限り83体を超えていた、って! 本当に鬱陶しいなこいつら!!

 いつから荒野には赤いツクシ畑が広がるようになりやがったんだ!!?

 

 

「くそったれ、やっぱり戦術機を持ってくればよかった!」

 

「魔人千裂衝!!」

 

 

 

―――ゴォォォォォォォ!!

 

 

 

「賢治!!」

 

「武か!?」

 

 

 俺の後方から武がダブルトマホーク二本で下から上へと連続で切り上げ、最後に溜め斬りを使った奥義を放ち、戦車級の群れを斬り裂き吹き飛ばしながら俺の所にまでやって来た。

 

 

「スターダスト5は無事か!?」

 

「ああ、気絶しちまったがな!お前はどうだ!?」

 

「こっちは駄目だった! くそ!!」

 

 

 救助した衛士の状態を話しながら迫ってくるBETAを縦横無尽に斬り裂いて行く。

 武もまた戦車級に取り付かれた戦術機に向かったが、どうやら間に合わなかった様だ。

 そして、武が俺と合流してから初めて要撃級が戦車級を割って現れた。

 

 

「弧月閃!」

 

「裂空斬!」

 

 

 要撃級のサソリのような腕を俺達に振り下ろして来るが、それを俺達は左右に避け、俺がゲッタートマホークを頭上で回転させて勢いよく下から上に三日月を描くように振るい、右腕を根元から切り落とし、武が要撃級の腹の下に潜って下腹をダブルトマホークを構えて縦向きに身体を丸めて回転をしながら腹を斬り開き、要撃級は絶命した。

 身体を支える四本の足の力を失った要撃級は、その場で崩れ落ちて近くの戦車級を巻き込む。

 俺達は二人で気絶した衛士を守る為に、衛士の横たわる岩を基点にBETAをドンドン葬って行く。

 

 

「魔神剣・双牙!!」

 

 

 武がダブルトマホークを一振りしてで地面を這う衝撃波を繰り出し、二振り目にそれよりも大きな衝撃波を繰り出した。

 それに当てられた戦車級は形を変えながら他の戦車級を巻き込んで吹き飛んでいく。

 

 

 

 ―――ドドドドドドドドドッ!!

 

 

 

『無事か!? 救援に来た! 早くこっちに移れ!』

 

「何だ、援軍か!?」

 

 

 

 

武side

 

 

 

 

 賢治と合流してから一緒にBETAを駆逐していくと、後方から銃声が響き渡り、俺達の周りに群がるBETAは掃討されていった。

 音声がする方に視線だけ向けると、片腕に突撃砲を握り、担架には長刀一刀だけの帝国カラーの不知火が跳躍ユニットを噴かして着地した。

 

 

「おいおい! 片腕しかない戦術機にどうやって一般人が跳び移れんだよ! アホだろあいつ!」

 

 

 確かに…それに装甲もアッチコッチ欠けて中身が露呈して、更には火花が走っている。

 それにこのBETAの中、俺達ならいざ知らず、どうやって普通の人間が戦術機に避難できるんだ?

 膝立ちをすれば群がってくる戦車級の餌食になる…少しでもBETAから気を逸らすと食われるぞ!?

 

 

「賢治! ならスターダスト5をあの不知火に乗せよう!」

 

「その方が良さそうだな!」

 

 

 相変わらず数の減る事がない戦車級を斬り崩しながら会話をする俺達。

 変わったとすれば、不知火が来て要撃級と突撃級を突撃砲で足止めしてくれているぐらいだ。

 

 

『くッ! キリがない! 何!?』

 

 

 援軍に来た不知火は突撃砲を撃ち続けるも要撃級の奇襲により、最後の腕を殴り飛ばされてよろける。

 

 

「爆砕斬!」

 

「剛魔神剣!」

 

 

 その勢いで体勢を崩され無防備となった不知火がそのまま要撃級の餌食になる所を、俺と賢治が直ぐに不知火に奇襲を掛けた要撃級の両腕を抉り崩して援護する。

 

 

 

 ―――ザッ!

 

 

 

「何ボサッとしてんだ! ここは俺達が抑えてやっからコイツを連れてさっさと下がれ!」

 

『な、何を馬鹿なことを「んなボロボロな戦術機では戦闘できんわ! それよりもコイツを連れて早く下がれ! 精神状態がヤバいんだ!」―――くそッどうなっても知らんぞ!』

 

 

 二機の周りに群がるBETA共を葬りながら隊長機に賢治が夕呼先生特製の網膜インカムでこっちにやってきた機体に通信を入れてスターダスト5を回収して下がるよう命令した。

 不知火の衛士はユニットを開放して岩に横たえて気絶している衛士を抱え、うまい事管制ユニットの中に入れて下がって行った。

 見た目からして明らかに戦闘に参戦できる状態でなかった上に旧OSの為、即座の動きに対応できず要撃級の攻撃を簡単に受けるから、はっきり言ってあれだけ損傷している機体が近くに居たら俺達にとって邪魔になるだけだ。

 ならば、スターダスト5をあの不知火に預けて後方に下がらせたほうがこっちは動ける。

 …昔の俺では思い付かない考え方だ。

 これは俺の驕りだろうか?

 

 

「クソ、これじゃマジでキリがねぇ!」

 

 

 賢治が要撃級の攻撃を上空に跳んで回避すると、突撃級が賢治に向かって突進して来た。

 尽かさず賢治は避けようとするが―――

 

 

「何ッ!?」

 

 

 ―――ドォォォン!!

 

 

「うぼぁ!?」 

 

「賢治!? ごっ!?」

 

 

 賢治はその場で何に驚いたかは分からないが、そのまま突撃級に轢かれてしまった。

 それに気を取られた俺は要撃級にアッパーカットの様に下から上に殴られ、同様に吹き飛ばされる。

 だが、俺達は歯を食いしばって体勢を空中で立て直し、大地に足と片手を着かせて砂煙を上げながら止まり―――――

 

 

 

 

 

 

「「上等だBETA共ォォォォォォォ!!」」

 

 

 

 

 

 

 ―――――力を解放した(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 この時、二人は初めて本気を出した。

 二人が何故今まで本気を出さなかったのか…それは、今居る空間が時の狭間ではなく、普通の空間である為に、自分達が力を出せば世界にどのような影響を及ぼすのか分からなかったからだ。

 だが、現状はそうは言ってられない上に二人は怒りを買い、力を解き放った。

 二人から放たれる膨大な殺気に、大気がビリビリと震える。

 しかし、BETAは二人の発する殺気に関係なく突き進んで来る。

 力を解放している二人の背後にそれぞれ、三体ずつの巨大な幻影がビリビリと現れた。

 鬼神と大日如来、騎士と阿弥陀如来、羅刹と不動明王…それぞれを彷彿させる上体の幻影が六つ、二人から放たれる膨大な殺気により具現化されたのだ。

 

 

 

 

 

 

「「地獄の戦いを見せてやらぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 

 

 

帝国軍side

 

 

 

 

「すげぇ…なんて奴らだ。BETA相手に生身で応戦してやがる…」

 

 

 黒崎に命令され、スターダスト5を管制ユニットに入れて下がった不知火の衛士は今、基地の外で急ピッチで不知火の両腕の換装をしている管制ユニットの中で黒崎達の様子を望遠モードで見ている。

 この不知火は偵察も兼ねた少々特殊な機体の為、一般の不知火とは違い、望遠機能や音声収拾の機能が一段階上なのである。

 二人が吹き飛ばされた時に「だから言わんこっちゃない」と管制ユニットの中で毒づいた。

 しかし、二人が宙返りをして体制を立て直してから雰囲気が一気に変わったのが投影を通じて見えたのと同時に、身体が何かを感じて震え上がった。

 視線を再び戦場に向けると、網膜投影に映される映像はまさに信じられない光景だった。

 先程まででも生身でBETAと戦っているのが信じられない光景だったのに、更に速さが上がり、縦横無尽に駆けてBETAを葬っていく二人が映っていた。

 加えて、この映像は帝国のHQと横浜基地のHQ、そして副指令の執務室にも繋がっているので、映像を見ている面々は戦術機から送られてくる映像を目の当たりに固まっていた。

 訓練中だった207B分隊とA-01もHQに集合しており、二人の無双っぷりに唖然としている。

 特に夕呼は、ピアティフから珈琲を受け取る時にうっかり手を滑らせ、足に熱い珈琲を零してノタウチ回るほどだった。

 

 

『『オオォォォォォォーーーーー!!』』

 

 

 要撃級の両腕は根本から切り飛ばされ、歯を食い縛った様に見える感覚器感も上下に切り飛ばされ、広い背中は全長程の巨大な斬り付けた跡を付けられて絶命した。

 突撃級は二人が一体の突撃級の頭角の下に潜り込んだ途端、突撃級が一瞬浮き上がった様に見えたと思えば急に突撃級が崩れ落ちた。

 自らの下腹を大地に擦らせていた跡には、BETAの特徴である紫色の液体が止め処なく擦れており、突撃級の勢いが止まって尚、液体をあふれ出しながら絶命していた。

 それと同時に、突撃級の頭角の下にある二つの頭は、風船が割れた様な血肉の飛び散り方をしていた。

 

 

 

 ―――ギュイィィィーーーンッ!!

 

 

 

『やれぇ賢治!!』

 

『行って来い武!!』

 

『『空破特攻弾ぁぁぁぁん!!!』』

 

 

 

 その場で飛び上がった白銀はダブルトマホークを横に構えてジャイロ回転をして黒崎が戦車級に目掛けて白銀を蹴り飛ばす。

 弾丸の様に高速回転しながら赤い絨毯を彷彿させる戦車級の群れの中を一直線に突き進んで行き、左右には距離が離れているにも関わらず戦車級の群れから血しぶきが次々と噴き出ていく。

 

 

『でぇぇや!』

 

 

 

 ―――ザァッ!

 

 

 

 回転を止めて着地した白銀の掛け声と共に、血飛沫をあげた戦車級の群れからは切り口に沿って崩れていく。

 その後、二人は左右に別れて戦車級を人間では考えれない程の怒涛の勢いで殲滅していく。

 

 

『吹っ飛べ! 獅子戦吼!』

 

 

 ―――ゴォォゥ!!

 

 

 黒崎が腕を下から上に突き出す様な格好を戦車級に向けると、獅子の顔を模したモノが現れ、ソレに当たった小型種が纏めて吹き飛んで行く。

 

 

『烈震虎砲!!』

 

 

 白銀もまた爪を立てるように右腕を小型種に向け勢い良く突き出すと、こちらは虎を模したモノが現れ、同じように小型種を纏めて吹き飛ばしていく。

 加えて、ソレに直に当たった小型種は血肉が飛び散りながら吹き飛んでいた。

 二人は現実とは掛け離れている世界を今ここで繰り広げていた。

 HQのモニターと網膜投影に映し出ているA-5地区を含む周囲のBETAが二人に集中して行くのが映し出されるが、その数を記す赤い光が信じられない事に二人が暴れだしたのと同時に徐々に減っていく。

 

 

『それで済ませるかよ!』

 

 

 黒崎が戦斧を強く振って要撃級を斬ると、要撃級が何かに縛られたかのように硬直した。

 

 

『裂衝! 蒼破塵!!』

 

 

 目の前で二連続で交差するように振り、戦斧に力を溜めて下段から上段へ振り上げる。

 すると、要撃級の身体が浮き上がって巨大な風穴が開いた。

 

 

『『『なっ!?』』』

 

『まだだッ!』

 

 

 対する白銀は文字通り突撃して来る突撃級の真正面から左手の斧でタイミングを合わせて切り上げた。

 すると突撃級もまたその場で硬直した。

 

 

『喰らえッ! 翔破裂光閃!!』

 

 

 両腕で目視出来ない速さと数で斧で斜め上に突きを繰り出し、最後に右腕を引き締めて力を貯めて突きを繰り出した。

 すると、突撃級は浮かび上がらずとも体に無数の風穴とど真ん中に大きな風穴が空き、絶命した。

 

 

「…もう、訳わかんない」←彩峰

 

 

 HQの面々は黒崎と白銀の異能と捉えられてもいい、決定的な瞬間を見てしまった。

 その二人のもとに、BETA最大の要塞級が一体現れた。

 巨大な足で二人を突き潰そうと前足二本を持ち上げ、一直線に突き出す。

 二人はバックステップでソレを避け、大地に斜めに突き刺さった二本の足を一気に駆け上がる。

 

 

『クタバレェェェーーーー!』

 

『オオォォーーーー!!』

 

 

 先に足を2/3まで駆け上がった黒崎は跳躍して要塞級より高い位置に浮かび、白銀が1/3まで上ると要塞級の首目掛けて跳躍する。

 

 

『刻め!!』

 

 

 黒崎が戦斧を振り下ろすと共に見えない何かが発され、要塞級の上の首が抉れる。

 

 

『滅せよ!!』

 

 

 白銀が振るう二本の斧からも見えない何かが発され、同様に要塞級の下の首が抉れる

 

 

『虎牙破斬・(アギト)!!』

 

 

 二人は斜め上下から渾身の一撃を要塞級の首に駆けて放つ。

 すると、要塞級の首がなんと、胴体から斬り離れされて崩れ落ちた。

 この奇天烈な出来事に思わず見ている全員がこれは夢ではないかと、何かしらの方法で確かめるが、夢じゃない事を知った全員は現実をまだ理解できないでいた。

 あの要塞級で最後のBETAの反応が消え、今回の戦いは人間の勝利になった。

 HQから知らさせる勝利の二文字に各部隊から歓声が轟くが、HQや戦場で二人の奇想天外な無双っぷりを見た面々は歓声を上げるも、引き攣っていた。

 

 

 

 

巌谷side

 

 

 

 

 破損した不知火が戻って来てもカッパー3の補給が終わらず、私自ら陽炎を駆って戦線へと直行した。

 発進直前まで端末から流れるHQからの指示と罵声、その中に二人の人間が介入したと聞いた時は発進許可が出ることなく私は発進して急行した。

 するとどうだ、急に何かに睨みつけられたような錯覚に陥り、その場で硬直してしまった。

 白銀中佐のあのプレッシャーを超えるプレッシャー…これが何なのかはわからないが、私は直ぐに頭を振って再び陽炎を操って二人の反応の場所まで向かう。

 するとどうだ…過ぎ去っていく下にはBETAの残骸、それもあまりにも不自然なものだ。

 戦術機の長刀で斬ったとしても、切り口が鋭利な刃物で切った様にきれいな状態にはならない…ならばこのBETAの残骸はどう説明する?

 真っ二つに斬られた切り口、内部爆発でもしたかのような亡骸、はたまた貫通をしている亡骸等、BETA全種がだ。

 そこで私は網膜投影に映されているBETAの反応が無くなる事を知ると、直ぐ目の前に二人の反応があった。

 その二人は今、絶命した要塞級の背に立っていた。

 得物から紫色の液体を滴らせて立つその姿はまさに、生きる存在を滅する鬼と悪魔の様であった。

 私は陽炎で二人がいる要塞級の前で着地すると、二人が要塞級の上から落下した。

 

 

「ッておおおぃ!? 無事か君達!?」

 

『……―――…』

 

「ん?」

 

 

 落下して重傷を受けた可能性があり陽炎を屈ませると、音声を拾った。

 

 

『くそ…力が……』

 

『飯…』

 

 

 音声を最大で拾い上げると、二人から発せられていた。

 空腹かい…(汗)

 

 

 

 

帝国軍食堂 武side

 

 

 

 

 ―――ガツガツガツガツッ!

 

 

 

「お、おい…あの人、何人分食ってんだ?」

 

「知らねぇよ、あの空皿の数からして10桁は行ってるだろ?」

 

 

 ムグムグッ危ない危ない、まさかこの程度暴れただけでエネルギーを全て使い切るとは…

 やっぱりあの空間とこっちの空間じゃ燃費が全然違う様で、賢治も糖分を大漁に摂っている。

 

 

「恐ろしいまでの食欲だ…君はいつもこんな食欲なのかい?」

 

「ん? ああ、いや…」

 

 

 俺は口の中の物を一気に飲み込む。

 

 

「俺は普段そんな食わないんですけど、あの力を使うとどうやら直ぐに空腹になるみたいなんです」

 

「確かに…キミ達をここまで運んでいる最中に君達の戦いっぷりをログで観て見たが…恐ろしい強さだったな。その代償が恐らくカロリーとして、これだけの量が必要となるのは頷けれる」

 

 

 だが解せない…あの空間でならば力を使ったとしてもこんなに空腹になりはしなかった…何でだ?

 

 

「ふ~、助かった~…しかし、食い過ぎたな流石に…」

 

「ふぅ…力を使ったんだ反動だ、仕方ねぇさ。食料なら俺達が今開発中の食料が完成次第帝国に流せばいいさ」

 

 

『『えッ!?』』

 

 

「おいッそんな事勝手に決めていいのかよ!?」

 

「俺が主任なんだ。別に構わんさ。てかこんだけ食い散らかしたお前が何言ってんだよ」

 

「うぐッ…」

 

「…君の引き出しには、一体どれほどの技術が入っているんだい?」

 

「さぁな~」

 

 

 食料開発と言う言葉に回りはどよめくが今の俺には関係ない、今は先生の後の説明についてで頭がいっぱいだ…

 先生は相手に借りを作れるなら作るだけ作って、見返りを搾り取れるだけ搾り取るけど、それを賢治はタダでって言ってるから…

 力を許可なく使った事だけでもカンカンだろうに…これ以上先生の逆鱗に上乗せするような事はしないでくれ。

 

 

「さて、カロリーは補充したし。そろそろ行くか武」

 

「だな、ご馳走様でした」

 

「あ、あのッ!!」

 

「「ん?」」

 

 

 カロリーを摂り終えて椅子から立ち上がって出口へ向かう途中、女の子らしい声が聞こえて振り向けば、帝国軍の軍服を着ている17歳ぐらいの女の子が立っていた。

 スターダスト5じゃない…この声は、スターダストマムか?

 

 

「あの、この度は危ない所を助けていただき、ありがとうございました!!」

 

「あ~…誰だ、お前さん? スターダストマムか?」

 

「ッ!? はっ! 帝国軍第123連隊スターダスト小隊オペレーターの|艸場(くさば) 円中尉であります!」

 

 

 声で賢治も覚えていたか。

 

 

「あの不知火の衛士は今、どうしてるんだ?」

 

「はッ! 葵でしたら中佐方に助けていただいた後、直ぐに医務室で治療を受けています。症状は打撲と精神的な疲労で眠っています」

 

 

 …精神的疲労で終わればいいけど、まず無理だ。

 …恐らくあの時の衛士はPTSDに罹る可能性が8割を占めてるだろう。

 周りがちゃんとフォローし続けたらPTSDは和らいでいくけど…時間に余裕がない帝国側は薬の投与で無理矢理精神を持ち直させる措置をとらせるだろう…この世界ならそうなる。

 

 

「もっと早くに介入していれば…」

 

「言うな武。仕方なかったの言葉じゃ括れねぇが、今回ばかりはどうしようもなかった…」

 

「…ああ、解ってる」

 

 

 もし、彼女がPTSDに罹っていても、横浜に連れてくればリハビリを兼ねて仕事を割り当てれるのではとふと頭を過ぎったが…そんな余裕は俺達にはない。

 戻れば戻ったで俺達は戦術機製造の為の作業や俺は力仕事とバグ取り、霞は賢治のOS作成とその他の開発の手伝いと、目まぐるしい程やる事がある。

 とてもじゃないが患っている奴が担える仕事じゃない。

 先生が手伝ってくれたらまだマシになるかもしれないけど、先生は途中と結果のチェック以外は関わらないだろう…ODLの情報漏洩の対策もあるしな。

 

 

「礼にはおよばん、それよりも介入が遅くなってすまなかった…」

 

「い、いえ! とんでもございません!」

 

「俺達は一旦戻ろう。準備もある」

 

「ああ…また会おうな、艸場中尉」

 

「はっ!ありがとうございました!」

 

 

 背中に少尉のお礼を受けて俺達は基地の門まで巌谷中佐と共に向かった

 

 

 

 

巌谷side

 

 

 

 

「しかし驚いた…君達は一体どこでそんな技術を身に付けていたんだね?」

 

「それは夕呼博士に聞いてくれ」

 

 

 二人を門まで送る道中、先のBETA来襲について話していた。

 この二人の戦闘力…恐ろしいとしか言い様がない。

 いかに強い人間であっても、人間の10倍は力があるBETAと生身で戦っていたんだ。

 訓練だけで身に付くような芸当ではない…なるほど、副司令が私に送ってきたメッセージの意味が分かった。

 確かにこの二人に妙な小細工をして逆鱗にでも触れてしまえば…帝国軍は滅ぶのは確実だ。

 戦術機二機で落とす要塞級すら二人で落としたのだから、人間と戦術機相手には、まず遅れは取らないだろう。

 

 

「なあ、巌谷中佐」

 

「ん? 何だね、黒崎君?」

 

 

 二人は階級で呼ばれるより、君付けで呼ばれる事を望んだので私はそう呼ぶようにした。

 ふふふ、堅苦しくなくていい…唯衣ちゃんも、この二人のように柔らかくなって欲しかったんだが、何故あんなに厳しい子に…

 

 

「あの葵って衛士が…帝国軍からお祓い箱にされるようなら、俺に教えてくれ」

 

「ッ! まさか」

 

「そのまさかだ」

 

 

 彼等を正門まで送る道中、黒崎君があのスターダスト5の待遇について私に提案してきた。

 

 

「賢治、お前…」

 

「PTSDに罹った者が再び戦場を駆けるには…かなりの時間が掛かる。軍の上層部なら、薬で無理矢理精神を安定させるか、お払い箱の二つに一つだ。今回は俺達国連に助けられたというレッテルで…恐らくお払い箱になる可能性の方が高い。その場合、俺達が彼女を引き受ける」

 

「だが俺達にそんな余裕はないぞ? 俺もそうしたい思ったがこれから…」

 

「最悪食堂で働いて貰おう。京塚のおばちゃんなら発狂した奴でも取り押さえられる」

 

「………」

 

 

 さらっと横浜基地の戦力を口にした二人だが、二人は…私に真剣な眼差しで言っている。

 

 

「…何故だ」

 

「「ん?」」

 

「何故そこまで帝国に拘る? 帝国と国連の不仲は、君達が分からない筈がないだろう? 他にも米国や中華統一、欧州連合、大東亜連合等、行く先はあるはずだ」

 

 

 どうしても聞きたかった…国連に属する者が何故、不仲である帝国の技術廠で戦術機と武器の製造の場所を借りに来たのか…場所が近いからという学校選びの様な理由で決めれるほど、簡単な問題ではない。

 

 

「簡単だ。他所の国もいいが、米国のやり方は気に食わん」

 

「!?」

 

「それに、夕呼博士の目的が俺達の目的と一致しているし、御宅等は国連を嫌っているが俺達は別に嫌っちゃいないさ」

 

「俺達は救いようの無い奴以外は見捨てはしません。それが犯罪者だろうが、異国人だろうが、関係はありません」

 

「………」

 

「それに基本、私腹を肥やす為だけや国の為と偽りの正義を翳す奴以外は敵対しない。だが、俺達の逆鱗に触れる事をしたら真っ向から潰して行く…それだけだ」

 

「……君達は」

 

「?」

 

「君達は―――――救世主にでもなるつもりか?」

 

 

 

 

「「―――ああ/ええ、そのつもりだ/です」」

 

 

 ―――眩しい

 

 …なんという、粋な心だ。

 私は…今のこの時代で、こんなにも大きな事を軽々と言う者を…見たことがない。

 

 

「あ、そうだ。これは今日の後始末代だ」

 

 

 黒崎君はズボンのポケットからUSBメモリを取り出して私に投げ渡してきた。

 

 

「じゃあな、巌谷中佐。また来るぜ」

 

「本日はここで失礼します。また明日」

 

 

 二人は帝国軍の門に着くと、私に別れを告げて横浜基地までそのまま駆けて帰った。

 恐ろしい…私よりも若い青年が…唯依ちゃんと同じかどうかの歳の子がここまで考えているとは…香月副司令の力があるとはいえ、ここまで自由に動くとは…

 そして何より、一度決めた信念を貫き通す…あの目を持つ者が、我々の味方になってくれればどれだけ心強いことか…

 

 

「…欲しいな、帝国軍(こちら)に」

 

 

 私は自然と、言葉に出していた。

 今の日本が…世界が欲する心を持つ男達だった。

 篁…まだまだこの世界は捨てたものではないな。

 さて、彼が私にくれたデータは何なのか、閲覧の為に手持ちの端末に繋げて中身を見ると…

 

 

「…合成緑茶の改良データ?」

 

 

 ………地味に嬉しいデータだ。

 早速、使わせてもらおう。

 

 以降、合成緑茶の改良型が食堂に出るようになってから帝国軍内の食事に関してのストレスが10%だけ、和らいだという。

 

 

 

 

武Side

 

 

 

 

 はあ、着いた着いた我が家同然の横浜基地。

 まさかBETAが上陸するとは全く思わなかった。

 こんなイレギュラーが来るって事は、次からはBETAは頻繁または増えて現れると考えた方がいいな。

 

 

「お疲れ様です! 中佐!」

 

「おう、お疲れ様」

 

「こっちにまでBETAの影響はないか?」

 

「はっ! スクランブルが掛かりましたが、こちらに異常はありません!」

 

 

 門の前にまで行くと、あの時、俺達を押さえ込もうとした門番二人が俺達に敬礼をしてきた。

 あの後、俺達が門番の所にまで行くと土下座をして謝ってきたので、次にやらなけりゃいいと言って顔を上げさせた。

 外人なのに日本の土下座を知っているとはと俺は思った。

 軽い返事を返して俺達は先生のいる執務室に向かう。

 さて、本来の目的は果たせたし、先生に報告のついでに今回のイレギュラーについて話すとするが、その前に…

 

 

「なぁ、今日力を使って思ったんだが…」

 

「ああ、いくら通常空間に戻ったからと言って、俺達がここまでエネルギーを消費するのはおかしい…」

 

 

 まさか…いや、そんなはずはない。

 でも、俺だけじゃなく賢治までああなったってことは…

 

 

「もう気が付いているだろう武。この世界にゲッター線は流れていない」

 

 

 そんな…ゲッター線が流れていない…ということは、この世界はゲッター線から見捨てられたという事になるぞ。

 

 

「…原因は…何なんだろうか…」

 

「こればっかりはわからん。ゲッター線の意思は俺達人間では測りしれんし…武蔵さんは、何も言ってはくれない」

 

 

 何か…何かあるはずだ。

 G弾…人が地球にそれ放って環境を破壊したから見放されたのか…だがそれなら、ゲッター線の残り香があるはずだ。

 それがまったくないということは、それよりも前に見捨てられたということだ…BETAの地球侵略を許してしまったからか?

 

 

 

 ―――プシューッ

 

 

 

「う~い、戻ったぞぉ……お?」

 

「待っていたわよ、アンタ達…」

 

 

 考えながら歩いているといつの間にか執務室にまで辿り着いていた。

 賢治の軽い挨拶と共に中に入ると、地の底から発するような声を先生が発し、椅子に座って両肘をデスクに乗せて顎を手の甲に乗せて黒い何かをゆらゆらと背後から発しながらこっちを見据えていた。

 そして部屋の隅っこには、頭を抱えてプルプルと震えて蹲る霞と、霞を抱きしめながらガタガタと震えているピアティフ中尉がいた。

 

 

「…アタシ、言ったわよね?」

 

「な…何がでせうか?」

 

「アンタ達が行く前に…力を、時がッ、来るまで! 使うなと!!」

 

 

 話しが進むに連れて先生の発する語彙が強く強調され、顔が黒い笑みから眉が吊り上がって徐々にデビルマンレディの様に怒りの表情へと変化していく…

 その間に霞はウサギの様にピョンピョンと涙目で走って俺の後ろに隠れ、ビクビクとしている。

 ピアティフ中尉は漫画のように足を渦巻きのように走って賢治の後ろに隠れてガタガタ震えている…

 あれ、ピアティフ中尉ってこんなキャラだっけ?

 長い時間、先生が今発しているあの黒い何かが漂うこの部屋にいたから…キャラが崩れたんだろうか?

 先生はユラリと椅子から立ち上がって背中に両手をもって行ってるんですけど…っておおい!?

 

 

「待て待て待て待て! こっちには霞ちゃんとピアティフ中尉がいるんだぞ!」

 

 

 

 ―――ジャキキンッ!

 

 

 

「「いいッロケラン!?」」

 

「死ねぇぇぇーーーー!!」

 

 

 

 ―――ドゴンドゴオォォォォン!

 

 

 

「「ぎゃああぁぁーー!!?」」

 

 

 

 ―――ドゴオォォォォォォォン!!

 

 

 

 背中の何処にそんな質量を収納していたのか、ロケットランチャー二丁を双肩に担いだ先生が俺達に向かって戸惑い無く撃ち放ってきた。

 尽かさず俺が霞を、賢治がピアティフ中尉を抱えて左右に緊急回避をした。

 破裂と共に響く轟音にサイレンがけたたましく鳴り、立ち込める爆煙は流石オルタネイティブ4の責任者の部屋と言うべきか、煙りは直ぐに無くなった。

 木っ端微塵となった元スライド式のドアを冷や汗を流しながら見た後に先生の方を見ると、既に両手に突撃砲のモデルであるP90を構えて俺達に銃口を向けるところだった…

 

 

「逃ぃぃげるなアンタ達ィィィィーーーーーーー!!!」

 

 

 

 ―――ドドドドドドドドドドドドッ!!

 

 

 

「「「「いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」

 

 

 俺達は先生の視界から消えるまで二人で二人を抱き抱え、猛ダッシュで逃げ出した。

 後ろを走って追い掛けて来る博士を撒いたのはいいが、しばらくの間、先生の怒りの咆哮と銃声は暫く止む事はなく、地下19階は大惨事となり、その後始末を俺達がするハメになった…意味分かんねぇ…

 

 

 

 

帝都城side

 

 

 

 

 ここ帝都城の奥にある荘厳な雰囲気を醸し出す一室に、4人の人物が居た。

 

 

「こ、これは……」

 

 

 第一声を放った赤い斯衛服を身に纏い、緑色の美しい長い髪をストレートに伸ばして眼鏡を掛ける女性『月詠 真耶』は、先のBETA来襲で白銀と黒崎の無双っぷりを観て驚きの声を放った。

 

 

「むぅ…鎧衣、この映像は誠の事か?」

 

「御意にございます。紅蓮殿」

 

 

 岩のようにゴツゴツとした筋肉を堂々と晒し、威厳の雰囲気を発する男『紅蓮 醍三郎』は鎧衣という男に問う。

 鎧衣と呼ばれた、時期ハズレのコートを羽織ってハットを被り、常に細く笑みを浮かべて内心が読めない表情を浮かべる男『鎧衣 左近』は答えた。

 

 

「二人の身元はどうなっている?」

 

「この二人の名は国連軍所属:白銀 武中佐、黒崎 賢治中佐でございます。国連軍横浜基地に数日前から突然姿を現したとのことです」

 

「数日前だと? これ程の力を持つ者が世間に知られずとも、戦場で噂は流れているはず…むっ? 待て。国連に居る月詠から上がった謎の人物は…もしやこの二人では?」

 

「はい。先日、真那が調査をしていたのがこの二人で間違いありません」

 

 

 月詠は懐から写真を二枚取り出して中央に出す。

 その二枚の写真には、映像に出ている白銀と黒崎が写っていた。

 

 

「この二人はあのお方が居られる207B分隊の教官をしております。そしてその成果については、黒崎が担当する二人は、黒崎が出した訓練メニューを忠実にこなし、銃の早撃ちで的の中心に当てるのに僅か三日で成し遂げました」

 

「何だと…僅か三日でそれほどの技術を身に付けただと…ッ!?」

 

 

 月詠自身、護衛という役職で銃の訓練も行ってきた。

 そして、的の中心に当てるのには並大抵の技術と訓練では出来ない…なのに、僅か三日で訓練兵が成し遂げたということに驚愕していた。

 

 

「しかし、そのような力を持つ者の噂を全く耳にせんとは…規制をしていたとしても強さ等は隠し切れぬはずだが…解せぬ」

 

「そして本日、この二人は帝国技術廠に赴き、新たな戦術機と武器の製造を要請していたとの事です」

 

「国連の人間が、帝国に…だと?」

 

「はい、国連にも技術廠はあるのですが、そこで新たに開発をすれば彼の国が介入してくるが故に、我々帝国に極秘に要請して来たのでしょう。ですが、ここまで派手に暴れれば極秘の意味の無くなりますがね」

 

 

 笑みを浮かべたまま話す鎧衣、そして二人が帝国技術廠で新たな機体と武器の製造を要請してきたことに驚愕する月詠と紅蓮。

 この男は賢治と武が帝国技術廠を訪れていた訳を知っている様だ。

 

 

「―――鎧衣」

 

「はっ」

 

 

 鎧衣は上座に座る紫色の艶やかな長い髪に細い瞳を持ち、高尚な簪を挿して白く飾りの付いた衣を纏う女性の前で跪き、頭を下げて臣下の礼をとる。

 

 

「その二人の素性を直ぐに調べ上げよ、これは上意です」

 

「御意、【煌武院 悠陽】殿下」

 

 

 鎧衣は音もなく、踵をかえしてその場から消えた。

 

 

「…何者なのでしょうか…この者達は?」

 

 

 鎧衣に命令を下した女性―――日本帝国政威大将軍である『煌武院 悠陽』は、モニターに映る二人を見て言った。

 彼女には、双子の妹が…双子は世を分ける忌児とされ、自我を得る前に引き離され、影で生きることを強いられた妹がいる。

 その妹に護衛として付いている者達から、妹がいる国連軍に新たな人間が近付いて来たと報告があったが、まさかその二人がBETAを生身で相手している人物とは思わなかった。

 悠陽は白銀と黒崎を見て思っていた。

 私にも、力があれば…妹を取り戻せれる力があればと…

 そしてこうも思った。

 この二人ならば、妹を自分の下にまで連れ戻して来てくれるのではないかと…

 

 

「―――――冥夜」

 

 

 そなたは…私を、恨んでいますか?

 

 願わくば、そなたに幸があらんことを……

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

生身でインベーダーと戦って来た賢治と武だから成せる戦闘シーンでした!

感想、アドバイス等をお待ちしております!
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