今回は二十話の後日談です!
それでは、どうぞ!
米国side
「「「………」」」
日本にBETAが来襲した翌日、アメリカ合衆国大統領官邸ホワイトハウスにてアメリカ合衆国の重鎮勢が一同に会する程の出来事が起こった。
それは先日の日本で起こったBETA上陸の時である。
米国にとって、日本がやられたとしても大きな資金源が無くなる訳でもなく、自分達に逆らう国が無くなるだけであって特に痛いところは無い。
寧ろ、日本が弱れば弱る程、米国は日本への圧力を強くすることができるのだ。
しかし、今回集められたのは原因はその思考を一掃しなければならないかもしれない出来事が起こったからだ。
そう、黒崎と白銀による『生身で戦うヒューマン無双』の映像である。
「これは…何の茶番だ?」
陸軍長官が額に青筋を浮かべながら低い声で言った。
自宅で優雅にワインを飲みながら休暇を謳歌している矢先に、大統領による緊急招集で休日返上で呼ばれたはいいが、内容がこの良く出来たCGだ。
「ジャップはどうやら…こんな手の込んだ暇つぶしをするほど豊かになったようだな」
次に発したのは、米国のボーニング社の重役だった。
各国の親米派から送られてくる戦術機の情報を捌いて自分達の技術にしようとしている時に、同じく緊急招集で呼ばれたらこのCGについてなのだ。
「ならば輸出量の値上げをしようか、ここまで手の込んだ合成を作って流す程だ。搾れば更に搾れるだろう―――」
「い、いえ、それが…」
「―――何だ?」
外務省の最高責任者が自分の言葉を遮った仕官に睨みを効かして言う。
「て、帝国に忍ばせている
「ふざけるな!」
陸軍長官が円卓のテーブルを殴って怒鳴り散らす。
「こんな馬鹿なことが実際に有ってたまるか! 戦術機をいとも簡単に破壊する要撃級と突撃級の攻撃を受けて傷一つないなど、ありえはしない!」
事実、吹き飛ばされてからの映像で二人をアップにすると、服が汚れた以外に怪我らしいものは見当たらなかった。
むしろ、やられた後の方が力を増しているのである。
この様なこと、何時しかのヒーロー映画で起こるテンプレな展開が実際にあってたまるかと、それが本当に出来るなら人類は劣勢に立たされてはいないと憤慨した。
「こんな動きを人間が出来てたまるか! 我々はこんな茶番のために―――」
「―――残念ながら、これは事実だ」
「何ッ!?」
陸軍長官の叫びにかぶせるように発言したのは、日本海近くで帝国の偵察をしていた海軍長官であった。
「我ら祖国が誇る最新の望遠機能で今回の帝国の戦闘を監視していた…一時は帝国軍はBETAに押されていたが、その男二人が介入してからBETAの数が圧倒的に減っていった。F-22Aにも上陸させて映像を撮らせて確認した。視点は別だが内容はまったく同じだ…艦のクルー全員も直に確認している」
「ば、ばかな…」
陸軍長官は円卓を殴った勢いで椅子から腰を浮かせたまま固まった…それもそうだろう。
今映像で映っている、人間が武器を両手、片手に迫ってくるBETAを並みの戦術機が葬る数の何倍ものキル数を上げているのだ。
一人が否定を覆し、明確な証拠を挙げたことにより、それぞれの頭の隅に置かれた
『二人は日本にいる』
と言うことは、自分達米国と敵対しているかもしれない。
もし二人が自分達と真っ向から敵対した時、果たして自分達は無事に居られるのかと…
「―――この男共の素性を直ぐに洗い出せ。どんな手段を使っても米国に必ず引き摺り込むのだ」
今まで沈黙を保っていた米国の大統領が口を開き、各員に命令をする。
帝国は第四計画『オルタネイティブ4』を支持する国であり、米国の第五計画『オルタネイティブ5』と対立し、さらには自分達米国が所有するG弾を用いた戦略ドクトリンを敵視している派閥に当たる。
正体不明の輩であっても、黒崎と白銀を第五計画に引き摺り込めば自分達の発言力と行動力が今以上に、いや格段に上がるのは間違いないだろうと、大統領は考えた。
「しかし大統領、奴らの情報はこの、国連軍横浜基地所属の中佐とまでしか分かっておらず、下手に動いて横浜の雌狐に見つかりでもすれば―――」
「それを何とかするのが貴様等軍人と諜報員の役目だ! それでも世界一の力を持つ米軍の士官か貴様は!?」
大統領は弱音を吐いた陸軍少将を怒鳴り散らした。
しかし、陸軍少将の言い分もこの場にいる者達で解る者がいるというのも確かだ。
BETAを相手に遅れを取らないこの二人の逆鱗に触れでもすれば、いかに武装した兵で二人を囲い、更に自分の傍にも武装した兵を置いたとしても安全は確保出来ず、逆に殺される可能性がある。
「大統領、ならば私に一計ございます」
起立をして発言したのは、海軍少将であった。
少将と言うには身体が太って服はパンパンに張り、額も油が常に顔を覆っており、ライトに当たれば反射する程酷く、とても軍人とは思えない容姿をした男だ。
「お前か…分かった。ならばお前に全て任せる。使えると分かれば手段は問わず、必ず引き摺り込むのだ」
「お任せ下さい、大統領」
ロックウィード・マーディン社の社長であるマルクは、海軍少将の表情を見て悪寒が走った。
彼の父は昔、日本と戦争をしていた時に流れ弾に撃たれ、川に流されている所を日本人に助けてもらった。
敵国の人間であるにも関わらず親身になって手厚い看護をし、戦争で日本が負けたと知っても自分を責めなかった日本人の暖かい心。
完治した父は日本人の家族に見送られて米国に戻った後に軍を引退し、現ロックウィード・マーディン社に入社して技術を身に付け、恩人の住む国の日本企業とのビジネスを試みた。
しかし、直ぐにBETAが現れたことによりビジネス所ではなく、自国で戦術機を作ることを優先する他なかった。
そして時が経ち、1998年7月にBETAの日本侵攻での共闘でやっと日本に恩を返せると思い、父は財産を使って輸送品の中に10月頃に届くように食料も送った。
ところが10月、米国は条約を一方破棄して日本は多くの命を散らした。
そして父が送った食料は結局、届くことはなくそのまま帰ってきた。
それから日本が米国に対しての批判や憤りが募っていくが、父は絶えず日本に陰ながら自分は日本を見捨ててないと支援していった。
しかし、翌年に発令された明星作戦が完璧なトリガーになってしまった。
G弾を独断で2発投下。
参戦していた各国と本国の日本の衛士達を巻き込んでG弾は横浜で炸裂し、不毛の土地へと変貌した。
これにより各国と共に日本は米国を強く嫌うようになり、父は日本に恩返しが出来なくなってしまった。
日本に対する恩の気持ちはいつしか日本を愛するにまで成長をしており、密かに日本の物を自室に飾っていた。
その事を幼い頃から父が死ぬまで聞いていたマルクは日本を強く愛し、自分が父に変わり恩を返そうとして今の社長と言う座にまで上りつめた。
しかし、今の米国内の日本を卑下する目が日本へを恩返しを邪魔して出来ず、歯痒く思っている。
疲弊している日本からまだ絞り出すのかと、日本を庇う事が出来ない弱い自分に毎晩悔しく思って酒を飲んでいる。
さらに、この海軍少将は汚い手でその座まで上りつめた男であり、その男の一計と言う事はまた汚いのだろう。
「ではこれにて解散とし、諸君等の奮闘を祈る。全ては祖国の為に」
「「「祖国の為に」」」
「(また私は…日本の力になれないのか…ッ!)」
今日のマルクは、いつもより酒を多く飲むことになるだろう。
武side
はぁ、イレギュラーでBETA来襲、力を解放して疲れた身体で夕呼先生の猛襲から逃げるので、身体はもうボロボロだ…
それに―――
「どうだ、賢治?」
「…駄目だ、あれからほとんど回復しない」
「回復~? 何のことよ?」
昨日の執務室爆砕によって俺達が修復するまで立ち入り禁止となった。
今は執務室の壁を撃震の装甲で強引に塞いでいるだけなので、賢治特製の作業部屋に先生と霞、俺、賢治は集まっていた。
唯一、純夏がいる部屋に被害がなかったのが幸いだ。
「昨日、俺達が帝国軍のとこで暴れたが、ゲッター線が無い変わりにカロリーを大量に消費する事がわかったんだ。そして回復もまた遅い事がな」
「カロリー~? まぁ、あれだけ動けばフルマラソン5回分以上のエネルギーを使うのは想像できるけど…寧ろ寿命を縮めて力を発揮していると言った方がもっとしっくり来るわね」
「まぁ、俺達はゲッター線の恩恵を得て戦っていましたから、その恩恵無しで力を使ったので、別のものを代償にしていたとは思っていたんですけど…まさかその代償がカロリーとは思いませんでした」
「俺は糖分が8割だな。甘いのを異常に摂りたくなってた」
「何よその空想な代償…そんなのと引き換えであれだけの力が使えるなら、誰だって喜んで差し出すわよ」
先生は信じられないかもしれないけど事実なんだ。
俺達はゲッター線の恩恵で今まで力をフルに使えていたけど、昨日力を使った後の反動が大きかった…
あれだけで一気にエネルギーを奪われるなんて思いも寄らなかった。
加えて賢治はエンペラー艦でも糖分を常に摂取していた事から、代償は糖分が多いか…
「さらに言うなら、力が落ちていた…俺は全盛期の半分出ているかいないかだ」
「BETA総kill数が二人合わせて1178体なんて人類初の記録だけでなく、並みの戦術機を駆っても中々出来ない事よ? まだイチャモンつけるわけ?」
「イチャモンではなく事実だ。あの時の突撃級くらいは簡単に避けられるのに体が動かなかったんだ…てか、よく数えてたな?」
「空中に居たから動けないのは当たり前でしょ? 寧ろ要塞級の時に何で空中で
「…数えながら固まってました」
映像を再生して数えてる最中に俺達の動きに固まるピアティフ中尉が浮かび上がる…
普通の人の意見ならそうなるよなぁ…空中を跳ぶのを初めて見た時、俺も目を疑ったし…
それを俺にやらせようとした賢治に一瞬頭がおかしくなったかと思ったけど、それが出来るようになったからなぁ…
「俺の場合はパワーはそんなに落ちて無いですが、スピードが落ちました。要塞級の腕を駆け上がる時にあれ程時間が掛かるのは、今思えばありえません」
「まさかゲッター線がないだけでここまで弱くなるとは…インベーダーが相手じゃないからまだマシかもしれんが、これじゃもしもの時を考えるとキツイな」
「あれで? 仕舞いには要塞級を二人で殺しておいてまだ言うの? それにインベーダーってアンタ達がアタシに言っていた、地球外生命体のアレ?」
「はい、ですがBETAは人間に寄生したり物質を取り込んで変化したりしないだけまだマシです。俺はインベーダーと戦える様になるまで、相当な時間が掛かりました…」
「アンタ達ね…それと何か攻撃する時に何か叫んでたけどアレは何なの?」
「技名だ。武と会う前も俺は異世界に落ちたりしていてな、その世界で伝授してもらった技と、後は自分で編み出した技だよ。繰り出す時に技名を叫んでしまうのはその世界での癖だな」
そう、俺も賢治と一緒に異世界に落ちたりはしたが、俺達が繰り出した技達は俺と出会う前に賢治が異世界に落ちたその時に伝授してもらった技と、未来永劫時の狭間に戻った時に編み出した技だ。
俺は賢治から教わって自分なりにアレンジしたり、自分で技を編み出したりして今まで戦って来た。
「ふ~ん、色んな世界があるものねぇ」
「と言っても俺達が落ちる場所は人間がまともに住める場所じゃなかったからな。唯一住めたのはこれから新しい機体を作る技術を教えてくれた世界ぐらいだ」
ああ、アインストの世界には俺たちの相棒と一緒に介入して色々と暴れまわったなぁ。
ゲッターと同等の性能を持つ機体にビックリしたけど…
「…話は反れたが、今回俺達が要塞級に放った『虎牙破斬・顎』は、二人で放つ
「も~アンタ達の話に一々突っ込みを入れるのは疲れたわ」
先生はジト目でこっちを見ながら言った。
ずっと静かな霞はというと、俺にマーキングでもする様にしがみついて頭をグリグリと擦り付けている…
もういなくなったりはしないって…
これからは純夏も一緒だしな。
「力を使った時の代償を考えると、食料開発を尚のこと進めないといけないな…蜂蜜は蜂がいなけりゃ作れないから掻き集めて蜂蜜農場でも作るか。他の糖分は精々、サトウキビとフルーツ全般か…どうやって作ろうか?」
「…はあぁ、もういいわ。アンタ達のエネルギー源が食材であると分かった以上、プラントが出来上がるまでの間はこっちで適当に用意するわ」
「助かります」
「俺は天然の甘い物な。
賢治のエネルギー源は糖分…食糧問題の無い世界ならば特に問題はないけど、この世界では食料を蓄えるだけでも厳しいのに、エネルギー源が糖分と限定されているから代用が難しい…
賢治にとってこの世界は結構難しいだろうな。
「まったく注文の多い連中ねーアンタ達は…こっちはアンタ達が仕出かした後始末をしてるってのに」
「はははは…すいません」
「力で黙らせていいなら黙らせるが?」
「お前は自重しろってのッ!」
「そうです、自重して下さい」
「霞ぢゃん!?」
事実、俺達が暴れていた映像が帝国の上層部と各国のスパイに行き渡り、俺達についての問い合わせが
俺の存在は以前と同様、多分城内省でも確認中だろうけど…賢治はどうかな?
この世界本来の『黒崎 賢治』がどうなっているかは知らないけど、もし本来の『黒崎 賢治』が実在していたら面倒なことになる。
帝国で思いっきり名乗っちゃったしな。
「本ッ当に世話が焼けるわねアンタ達は…わかったわよ。アンタ達が行動不能になったらこっちの仕事がまた増えるだけだから、用意しといてやるからしっかり働きなさい」
「…頼んだ」
「メンタルが強いのか弱いのかどっちよアンタ?」
霞にまで言われてメンタルがズタズタになった賢治は暗い声で返事した。
こいつは霞にだけ弱いのか?
さて、そろそろ冥夜達の訓練の時間だから行かないとな。
「賢治、そろそろ行くぞ」
「…ああ、もうそんな時間か。じゃあ霞ちゃん、これらのプログラムの作成を俺達が戻ってくるまでにそこのPCで出来るだけやっておいてね」
「はい」
直ぐに立ち直った賢治は、USBメモリと数十枚の紙の束を霞に渡した。
お前、霞を扱き使い過ぎだろ…
「何よソレ?」
「俺達と訓練生達専用の戦術機のサンプルさ。予想よりもはるかに早く訓練の成果が出ているからな。俺達の戦術機を作る合間に訓練生達の戦術機も造るのさ」
「アンタは…」
先生は頭が痛いと思わせるような、片手を額に当てて言う。
俺はもう賢治の常識外なスペックには慣れた。
「最初に機体の製造に取り掛かるのは俺達の機体だけだ。訓練生達のはまだ先になるが、それぞれの長所を重んじた機体にするから念入りにデータを取らないといけないし、生半可な技術じゃないからこの世界じゃ俺と霞ちゃん、博士じゃないと出来ない作業さ」
「そのアタシには何もくれないじゃない?」
「アンタ文句扱いてやらんだろ?」
「当たり前じゃない♪」
「ダメだこりゃ…」
何にせよ、これから本格的に動き出すから油断は禁物だ。
情報漏洩を防ぐためにも俺達は巌谷中佐の所に行ったんだ。
巌谷中佐なら親米派を臭わせる奴を作業に組ませないだろうし、極少人数で製作するから部品だけは先生に頼んで作ってもらい、組み立てと仕上げを帝国技術廠でする方針だ。
…俺達が帝国技術廠にいるからって武器戦術機制作の交渉とかそういった事にたどり着くことはないと思う。
いや、既に殿下の側近の方の月詠中尉が出てきてるんだから調べられてるか…
警告はしといたからもう突っかかってくることはないと思うけど…大物が出てきたらどうしようか。
やっとだ…やっと、俺の望んだハッピーエンドの為のスタートが切られたんだ!
純夏も、冥夜も、彩峰も、委員長も、たまも、美琴も、柏木も、まりもちゃんも、伊隅大尉も、速瀬中尉も、涼宮中尉も!
もう、誰も死なせはしない!!
いかがでしたでしょうか?
感想、アドバイス等をお待ちしております!