Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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第二十二話

賢治side

 

 

 

 

「よし、今日はここまでだ。各自、今日のレポートと寝る前の訓練を忘れるなよ? 解散!」

 

「「ありがとうございました!」」

 

 

 今日の訓練も終わり解散となったが…BETA来襲から周りの目が一気に変わっていた。

 ある者は俺達を見た瞬間逃げ出したり、崇拝する様な眼差しで見たりと色々だった。

 だが佐官クラスだけはしつこく絡んで来てウザかったな。

 横浜基地じゃない制服を着てたのもいたが揃いも揃って『俺のところに来い』とか『その力を国連の為に使え』とか、何か外人も混ざっていたから親米派か?

 ムカついたから殺気をブチ当てて追い払ったり失禁させたりして撒いたが…あの程度で尻尾巻く人間が佐官クラスとは、笑わせてくれるぜ。

 それに、何かいかにも噛ませキャラみたいな少尉二人が訓練兵にしつこく絡んで来てたな。

 あろうことか男の方が御剣に手を出しやがった。

 キレた武が烈震虎砲をブチかまして壁貫通したから、一年間は動けんだろ。

 動けるようになったとしても下っ端扱いは決定してるがな。

 女の方はその場で腰抜かして顔を土気色にまでして失禁してたから、もうあんな馬鹿共は来ないだろう。

 …何でこうなったんだろうなぁ?

 

 

「そりゃアンタ等が悪いわ」

 

「何でだよ?」

 

「常識を考えたら分かるでしょぉがぁぁぁーー!!」

 

 

 

 ―――ドドドドドドドッ!!

 

 

 

「アババババババ!?」

 

 

 場所は変わって俺の仕事室に戻ったんだが、さっきの疑問を夕呼博士に相談したら逆に怒られた。

 さらには『M4A1 CQB-R』を即座に構えて俺に戸惑いなくフルオートで撃ち込んでくる始末…

 何かランクアップしてる上に銃を撃ち込むのがデフォルトになってね?

 それと言わせてくれ。

 アンタが常識を語るな。

 

 

 ―――ズキュンッ!

 

 

 おい、博士は命中率は皆無と武は言ったな。

 今眉間に迷いなく撃ったぞ。

 

 

「何で全弾避けるのよ、まったく…それにしても、なかなか鬼畜なプロテクトねこれは」

 

「ん? ああ、こいつか」

 

 

 夕呼博士が言ったプログラムというのは、俺が今製作中のOSに付けたプロテクトの事だ。

 このプログラムは俺が独自に作ったオリジナルで、例えるならコインの裏表のようなものだ。

 ソースを開いて見れば何の変哲の無いプログラムだがそれは表の関係ないプログラムであって、裏で本来のプログラムが動いている。

 さらに裏へのアクセス方法も俺の特殊な操作方法をしなければいけないという鬼のプログラムだ。

 霞ちゃんは俺が帰って来てからこのプロテクトの存在に知って今必死で解いているが、解除できずに今に至る。

 ききき、勝ったぜ(笑

 

 

「―――出来ました」

 

「霞ぢゃん!?」

 

 

 嘘だろ!?

 このプログラムの解除は俺が独自で編み出した方法じゃないと出来ないッ……うん?

 あれ~、おっかしいなぁ…これ、俺の編み出した解除方法の通り奇麗に解かれてる。

 霞ちゃ~ん、何で俺の編み出したプロテクト解除方法を知ってるの~?

 って、露骨に顔ごと逸らしているよこの子。

 

 

「なぁ霞ちゃ~ん? もしかして俺の頭の中を覗いたりしてないかなぁ~?」

 

 

 

 ―――ギギギ

 

 

 

「ソンナコトナイデスヨ?」

 

「霞ちゃ~ん? 人と話をする時はその人の顔の目を見て話すようにって、博士に言われてないかなぁ~?」

 

 

 霞ちゃんの両頬に両手で添えて俺の方に向かせようとするが、霞ちゃんは絶対に向かないように顔に力を入れてギッチギッチと膠着状態に入った。

 俺の手は血管が浮き上がるほど力を入れているというのに、霞ちゃんは顔に汗を滲ませてビクとも動こうとしない…やるね、霞ちゃん。

 

 

 

 

夕呼side

 

 

 

 

 社がここまで感情を露にするなんて…白銀の言う『前の世界』では白銀が社に一体何をしたのかは知らないけれど、自分の意見を主張するようになったのには感謝だわ。

 以前までなら自分の意見は何もない、ただ其処にいるだけの人形…00ユニットの状態だった。

 しかしそれが、二人がやってくる直前に初めて自分で動こうとした…あの時以来だわ。

 私が社を拾った時に初めて見せた、あの時の僅かな笑みの様に…

 おかげで最近はあたしに話しかけてくる事が多くなっていい息抜きだわ。

 二人には癪だけど、感謝しているわ。

 

 

 

 ―――ありがとう

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 霞ちゃんとのO☆HA☆NA☆SIを終えた俺は、基地地下内に創設されたハウスにやってきた。

 流石にエンペラー艦でやってたプラントは技術がまったく足りないから、HDDから抽出した品種改良法を博士がアレンジしたので試しているが…順調だな。

 開始してたった一週間でもうトマトが緑色に実った。

 その内何個かを検査しているが、副作用になったり、変異したりする様な成分は無い。

 他の野菜も順調に実を成してきて成分の検査を進めているが、天然の野菜と大して変わらないと結果が出ている。

 

 

「経過からして、上手くいきそうか?」

 

「行きそうにも何も、品種改良とこの特殊ハウスでここまで早く実を付けて検査も問題無しと来たら、行くしかないじゃ無いですか」

 

 

 研究員が若干興奮気味で答えるが、この反応を見ると嬉しく思う。

 エンペラー艦では当たり前の様に使われていた何の変哲のない技術が、人の渇きを満たすものになるのはとても気持ちのいいものだ。

 もちろん、悪用されたらそれに比例して俺の怒りのボルテージが上がるがな。

 さて、作物が失敗すること無く予想以上に多く実って来ているし、3~4割を帝国に渡して後は横浜基地が食うか…

 いや、ここの空気はあまりにも怠けていてあの程度の殺気で佐官クラスが尻尾巻いていたんだ。

 他の部隊…ヴァルキリーズ以外はハッキリ言って使い物にならんだろうし、訓練サボって怠けてる奴等にこの世界では超高級食材の天然食材を食わせたくはない…

 

 

「よし、なら作物の検査と実食で問題無ければ、ここにある全種類の作物の4割は帝国に送ってくれ。6割は更なる研究と保存だ」

 

「帝国…ですか?」

 

「ああ、ちょいと向こうに借りが有るから」

 

 

 それだけで何かを察したのか、研究員は何も聞かなかった。

 気の利く研究員で感謝感謝だ。

 因みに研究員は難民の中に居た研究者だ。

 他にも農作業をしていた奴や今回のプロジェクトに必要なスキルを持つ連中等を先に発掘してここに雇っている。

 今回はプロジェクトが秘匿な為に暫く地下で缶詰状態になっているが、本人達はそれを了承して今働いて貰っている。

 住まいも使っていないハンガーを間取りして作った仮設住宅に移って貰い、直接ここに継る通路を使っている。

 他の分野でも勿論発掘するが、それはもう少し先だな。

 案件は博士に渡してあるから先に動くかもしれんな。

 

 

 

 

武side

 

 

 

 

 さて唐突だが、冥夜と彩峰の経過だが…冥夜は元から剣術をやっていたというアドバンテージがあるから飲み込みは早いが、本人は身についているという実感がないからか焦りを感じている。

 目に見えて成果を出している委員長とタマに比べて自分は全然成果が出ないのが悔しいみたいだ。

 それは…仕方ないとしか俺からは言えない。

 何故なら元から染み付いている技術が、新しい技術を遮っているからだ。

 これは彩峰も同じだ。

 我流で身に付けた喧嘩殺法が同じく、進展の邪魔をしているのだ。

 ここも賢治が入ればすんなりと行くんだが…そうしたら今までの技術は殆んど消されるからそれはそれで問題になるし、二人の事は俺が良く知っているから任されたんだろう。

 落ち込んだりした時にどう励ましたらいいか、イライラしていたらどう対応すれば落ち着くか…二人は委員長とタマ以上に複雑な事情を持っている。

 賢治が二人を受け持てば二人の技術を半分以上新しい技術に塗り替えられてしまう。

 それの何が問題かって?

 時間(・・)だよ。

 来年の元旦に桜花作戦があるのに、たった6ヶ月で長年培った技術を新技術に塗りかえて適応するなんてタイムロスもいいところだ。

 だから俺は、二人と対峙して戦いの中で動きを指摘しながらという回りくどく、しかし確実な方法を選んだ。

 

 それに委員長とたまは何の技術を持っていなかったから何の反発も無く技術を吸収しているだけだしな。

 冥夜と彩峰が気にする事は無いんだが…無理か。

 

 

「………ん?」

 

 

 廊下を歩いていると前から走ってくるのは…美琴か!?

 本人は俺に気付いたらその場で立ち止まり、敬礼をする。

 だが俺はそんなのはお構い無しに、体が勝手に美琴に近付く。

 美琴は自分に近付いてくるのに動揺しているが、俺には関係ない。

 

 

「…お前が、鎧衣 美琴訓練兵か?」

 

「は、はい! 第207B分隊、鎧衣 美琴訓練兵であります!」

 

 

 …駄目だ、顔に力を入れていないと涙が…

 

 

「お前の事は既に資料で確認している。お前が復帰次第、黒崎中佐が担当するグループで鍛錬をすることになる。そこで精進し、次の総戦技評価演習を通過して衛士となれ」

 

「はッ!」

 

 

 …くそ、何で怪我の労いの言葉を掛けてやれねぇんだよ。

 こうでも言わないと涙が出てしまう…ッ

 

 

「おお、武じゃねぇか。ん? そこにいるのは…鎧衣訓練兵か?」

 

「え? は、はい!」

 

 

 賢治…?

 

 

「ああ、敬礼は解いてくれ。俺が黒崎 賢治だ。俺は階級があるから仕方ないだろうが、堅苦しく接するのはやめてくれ」

 

「えッ!?」

 

 

 敬礼をしたまま硬直する美琴。

 お前、何も知らされていない奴にそう言うのはやめろって…

 あぁ~、でも美琴の性格なら…

 

 

「―――はい、わっかりました~☆」

 

「…流石は噂の鎧衣だ。ここまで順応能力が高いか…」

 

 

 ちくしょう、やっぱりだ。

 ものの数秒で実行するとは…俺のシリアスを返せ。

 

 

「お前さんは俺が訓練を担当する。個々の長所を生かした訓練をするから楽しみにしておきな」

 

「わぁ~、長所を生かしたか~。 楽しみだな~♪」

 

 

 周りに誰もいないのが幸いだ。

 こんなのが見られたらいつ美琴が責められるか分かったものじゃない…やった奴は俺が許さんがな。

 

 

「早い事身体を全快して退院して帰って来い。お前の仲間が待っているぞ?」

 

「はい!」

 

 

 元気良く返事をして去っていく美琴。

 その後姿は、俺が知る美琴と全く同じ活発さだった。

 

 

「賢治…」

 

「危なかったな、武」

 

「ああ…すまない。また世話を掛けた」

 

「気にするな。お前はやり直せるチャンスを得たんだ。俺と違ってな…」

 

「賢治…」

 

 

 お前…いつまでそんなに背負い続けるんだよ…

 

 

「武。お前は絶対に遣り遂げろ。俺は俺の好きなように…お前の求めるハッピーエンドの為に好きに動く」

 

 

 賢治…

 

 

「…ああ、よろしく頼む」

 

 

 俺は改めて、賢治と握手した。

 だが賢治、俺のハッピーエンドの中にはお前も入ってるんだぞ?

 

 

 

 

月詠side

 

 

 

 

「どういうことだ…」

 

 

 斯衛から送られてきたあの二人の資料を見て私は硬直した。

 何故なら…白銀 武は―――

 

 

「死亡…だと…?」

 

「真那様…」

 

 

 馬鹿な…明星作戦で死亡なっている死人が何故生きている…まさか…冥夜様の命を…ッ!

 いや…ならばここまで時間を掛ける意味がない。

 更には…

 

 

「黒崎 賢治は…存在しない?」

 

 

 どこにでも有りそうな名前が…存在しないだと?

 黒崎の家名を徹底的に調べても『賢治』という名は一つも無い…

 顔写真だけでも城内省が駆使して見つからないとなれば、偽名か?

 

 

「…何者なんだ、この二人は…」

 

 

 しかし、我々の役目は只一つ…冥夜様を守る事。

 冥夜様を誑かし、命を狙うのであれば…例え…BETAに生身で渡り合う者達であったとしても、刺し違えてでもお守りする。

 それが私の…斯衛の赤の服を纏う、月詠 真那としての使命だ!

 

 

 

 

 




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