Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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お待たせいたしました!

それでは、どうぞ!


第二十五話

 

 

 翌朝早くに二人が横浜基地の正門に向かうと技術廠から来た迎えの車が待っていた。

 二人だけなら走って行った方が速いのだが、巌谷中佐が手配したと運転手に聞き二人はその好意を素直に受け取って乗車した。

 しかし、乗ったとしても何もすることが無いので賢治は昨日、ヴァルキリーズが乗っていた吹雪と速瀬が乗っていた吹雪のデータ等を端末で確認、武は黙々と自分の武器を磨いたりしていた。

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

「おっかしいなぁ…」

 

「何が?」

 

「あの時速瀬が何で跳躍ユニット噴かしたかだよ。OSもCPUもメモリも全部確認してるのに何処にも問題ねぇんだ。複数のプログラムを組んだ後に発生する動作も細かく確認してんだが、それも問題ねぇんだ」

 

 

 な~んであそこで跳躍ユニットを噴かしたんだあいつ…

 くそ、操作記録までは機体が無いと確認出来ないから解決のしようがねぇ。

 まいったなぁ。

 

 

「キャラ補正って奴か? それともバグキャラってことでいいかね?」

 

「そりゃお前のことだ、賢治」

 

「おいこらてめぇ、言ってくれるじゃねぇか武ェ…」

 

「(何でこんな会話に繋がったんだこの人達…バグキャラって何だ?)」

 

 

 もし本当のバグなら早いとこ見つけないと実戦でバグったら終わりだぞ。

 訓練で起こらなくても、バグってのは本番で必ず起こるもんだ。

 切羽詰まった時とか特にな。

 バグがあるならしっかりと取り除かないとなんだが…でも見付からねえんだよなぁ~。

 参ったぜ。

 

 ※実際は速瀬が踏ん張った際、誤ってペダルを左右同時に踏んだのが原因である。

 

 

 

―――キィーッ

 

 

 

「お二方、帝国技術廠に到着致しました」

 

「お、着いたか」

 

 

 もう着いちまったか。

 ならバグ出しは横浜基地に戻って機体にコードを繋いでからやるか。

 その方が正確かもしれんし。

 

 

「あれ、巌谷中佐?」

 

 

 ん? おおっと、巌谷中佐自らお出迎えかよ。

 

 

「良く来てくれた二人共! 歓迎するよ!」

 

「暫く世話になるぜ、巌谷中佐。ん?」

 

 

 車から降りた後、偉く歓迎ムードな巌谷中佐と握手を交わした。

 周りには誰もいないという事は、人払いをしたのか?

 それと後ろに居るのは…見覚えが有るんだが…ああ、思い出した。

 

 

「帝国軍第123連隊スターダスト小隊オペレーターの艸場(くさば) 円中尉だっけか?」

 

「は、はい! そうであります!」

 

「スターダスト5の様子はどうだ? まだ眠ってるのか?」

 

「はい、スターダスト5【飛鷹 葵】中尉でしたら…時々意識を取り戻しますが直ぐに狂乱して…ですが、直ぐ後に何かを呟いてまた眠るのです」

 

 

 何かを呟く?

 思わず俺と武は顔を合わせてしまった。

 呟くって何を呟いたんだ?

 

 

 

――――回想

 

艸場side

 

 

 

 

 中佐方が横浜基地に戻られてからずっと、今も葵は、医療室で魘されています。

 医者が言うには精神的負荷が余りにも大き過ぎて脳が意識を取り戻さない様にしてる状態らしく、暫く眠っている状態だと言われました。

 眠っている間も顔を青くして脂汗を掻いていて、とても苦しそうです。

 そんな私に出来る事は、葵の汗を拭いたり着替えさせたり、隣で手を握って呼び続けることだけでした。

 

 

「葵…?」

 

「うぅ…ッ!」

 

 

 看病を初めて翌日、着替えさせようとすると葵が強く魘され出したのです。

 ナースコールで医者を直ぐに呼び、駆けつけて来た医者と看護婦は直ぐに脈や電子機器でバイタルを確認しますが、次第にもがき苦しみ出しました。

 

 

「う、うぅッ…うあぁぁぁぁーーーーー!!」

 

「葵ッ! どうしたの葵!?」

 

 

 ついに叫びだした葵を私は抑え付けながら必死で呼び掛けましたが、抑える事は出来ず弾き飛ばされてしまいました。

 葵の叫び声で近くを通った上官二人が葵を取り抑えに掛かりましたが、錯乱している人間の力は並大抵の力ではありません。

 上官二人でやっとベッドに押さえつけるようになり、医者は鎮静剤を取り出しましたが、突然葵が目を見開いて天井を見ながら固まりました。

 

 

「葵、葵!?」

 

「―――――、―――…」

 

「葵、葵ーー!」

 

 

 右手を天井に向けて伸ばして何かを呟いた後、パタリと糸が切れてしまったかの様に眠りました。

 その後、バイタルは安定していたそうです。

 

 

「何を呟いていたかは…あまりにも小さい声でしたので、取り押さえていた上官も聞き取れなかったみたいです」

 

 

 一体…何を掴もうとしていたの、葵…

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 …こりゃ重傷だな、まさか魘されて暴れ出すとは…

 医学に関しては詳しくないが、ショック性の治療なら何度も経験があるから後で行って見るか。

 

 

「それと彼女と艸場中尉なんだが、あの後私の部下として置くことにしたんだ」

 

「ん、どういうことだ? オペレーターとしてなら他の隊が欲しがるだろう?」

 

「…君達が飛び出す前に聞いただろう、艸場中尉がスターダスト5に出した指示を。撤退命令が出ていないのに撤退させる指示を送った事が帝国軍としてふさわしくないだの、恥晒しだので更迭させられるところだったのでね。だから私が引き抜かせてもらったんだ」

 

 

 …アレの事か。

 まぁ、HQの許可なく撤退を指示したのは頂けないってのは…軍規としてそうだろうが、恥晒しは無いだろう?

 プライドだけは高いなぁ帝国軍は…技術力や友好性は下の癖に。

 

 

「まぁ、私が引き抜く事に上の連中からの批判が凄かったが、君達二人の名を出したら一気に静かになってね。これからも面倒事が起こったら君達の名を使おうかと思ったぐらいだ」

 

 

 おい、たった一戦しか出ていないのに俺達の名はもう其処まで広がっているのかよ。

 それと俺達の名で面倒事全部解決しようとするなって。

 

 

「それはそうと、先日貰った合成緑茶は帝国軍の中では必要不可欠な存在になってるよ。そのデータから合成玉露も作る事が出来た。感謝している」

 

「おお、そうか。こっちも吹雪をありがたく使わせて貰ってるぜ。おかげでOSのデータが取れて次の段階に進めれる」

 

「そのOSは、どの様なものなんだ?」

 

「ああ、それは―――「おい賢治、また勝手な事すると先生に命狙われるぞ」……」

 

 

 ……………あぶねぇ、危うく夕呼博士にまた獄殺(デストロイ)されるところだった…

 

 

「どういうことだい?」

 

「博士の逆鱗に触れると鉛玉の嵐が吹き荒れるってことだよ…何度殺され掛けたことか」

 

「鉛玉の嵐、ですか?」

 

「副司令と言えば、君達は香月副司令をガードしなくて大丈夫なのか? 彼女の立場としては、基地内とはいえ一人では危険だろう?」

 

「「その必要はない/ありません」」

 

 

 寧ろ博士がガードマンとしてでもやっていけるぜ。

 

 

「二人で即答か…何故と、聞いても?」

 

「「今の夕呼博士/先生の命狙ったら返り討ちに遭うから」」

 

「俺達は1日1~2回の頻度で殺されかけてるからな。あのトリガーハッピーから逃げ切れたら、逆に褒賞をやりたいぜ」

 

 

 その内BETA相手に博士無双とかしそうだ。

 

 

「どんな状態か分かり兼ねるが…君達が言うには問題はないという事だね?」

 

「そそそ、命狙われても返り討ちにするだろうから、心配しなくていいさ」

 

「室内でロケットランチャー二発にマシンガン二丁を遠慮なくぶっ放しますから、先生は…その被害者は俺達とオペレーターと身内です」

 

「「(え~~~………)」」

 

 

 夕呼博士は俺達が一緒にいる様になってからパワーアップしている気がするがな…

 例え基地に博士の暗殺を企てた者が入ったとしても負担は少ないだろう。

 いや、寧ろ率先して博士が潰しに行くかもな…ストレス発散を名目に…

 

 

 

―――横浜基地

 

 

 

 

「ヘックチッ!」

 

「…博士、風邪ですか?」

 

「ふん、アタシが風邪を引くなんて有り得ないわよ。絶対あいつ等が噂してるわね…帰って来たらどうしてくれようかしら…ピアティフ~、コーヒー頂戴~」

 

「……(お願いですから副司令を怒らせないで下さい中佐~【涙】)」

 

 

 

 

 ―――ゾゾゾゾッ!

 

 

 

 

「「(ウォォォォッ!?)」」

 

「ど、どうした二人とも…?」

 

「いや、ちょっと…悪寒が…」

 

「…君達でも、頭が上がらない人物がいるってことだね」

 

「ええ、まあ…そういうことです…」

 

 

 ああ、こりゃ横浜に戻った時が怖いなぁ…

 さて、気を取り直してハンガーに行くか。

 

 

 

 

―――ハンガー

 

武side

 

 

 

 

 帝国技術廠の使われていないハンガー内に入ると、賢治が依頼した機器と機材、そして不知火八機が導入されていた。

 整備兵や技術者は当然居ないので俺と賢治が主に活動するが、ここには巌谷中佐と艸場少尉だけが出入りすることになっている。

 

 

「おい~厚かましいなぁ…」

 

「ん、何かあったのか?」

 

 

 俺がハンガー内を見渡している時に話しが進んでいっていた様で、賢治が呆れた声を発していた。

 

 

「ああ、どうやら俺達が帝国技術廠で開発をすることが何処から仕入れたか知らないがバレててな。帝国上層部がチュンチュン雀の様にうるさいんだとよ」

 

「うむ、私は副局長の身だが私より上の位の者達がな、ここを貸すのに反対して五月蝿いんだ。それに強引にでも進行するなら技術無償公開を要求して来ている」

 

「反対の上に技術公開しろとかどんだけだ…そのうちここに殴り込みに来るのか?」

 

「その前に全力で私が止めさせてもらう。血の海を作りたくはないのでね…」

 

「…まぁ、国連軍はほぼ米国の隠れ藁の様なものですから、米国の手が回るのを恐れて反対なのは分かるんですけどね。横浜は米国とは違うんですけど…はぁ」

 

 

 参ったなぁ、俺達が戦線に参戦しちゃったせいで今回の計画がバレちゃったか。

 多分俺達の素性を探りに来る奴等は出てくるだろうが、それは適当にボコせば…いかんいかん、思考が賢治になってきた。

 賢治といえば、この世界(こっち)では賢治の存在はどうなっているのかが気掛かりだな。

 黒崎って名はざらに在りそうだけど…先生が何かしてる筈だから大丈夫か。

 

 

「(武どうするよ。俺は特に反対はないが、俺達が国連軍である限りクーデターはどのみち起こるし…博士に指示を仰いだほうがいいな?)」

 

「(先生は技術公開、反対すると思うけど…聞いてみるか)」

 

 

 巌谷中佐に確認の連絡の旨を伝え、夕呼先生に通信を繋げて訳を言ったら返答はこうだった。

 

 

『引き換えに不知火一個大隊か武御雷一個小隊ね♪』

 

「「「出来るかぁぁ!!」」」

 

「何無茶振りしてんだアンタ!!」

 

『なによー、この技術とソフトを導入すれば30%以上の衛士が生きて帰還出来るのよ? 見返りとしての相場はおかしくないわよ?』

 

 

 私間違ってないし~とブーたれる夕呼先生…駄目だ、先生真顔で言ってるよ。

 俺達だけでなく思わず巌谷中佐と艸場中尉まで叫んでしまった。

 

 

『用がそれだけなら切るけど…アンタ達』

 

「「??」」

 

 

 あれ、なんかモニター越しに影が…

 

 

『よくもアタシの事好き勝手言ってくれたわね。帰ってきたら…覚えてなさい?』

 

「「(ふぉぉーーーーーー!?)」」

 

 

 バレてるー!?

 何で、俺ここに着いてからしか言って無いよね!?

 盗聴機付けられてんのか俺達の身体の何処かに!?

 しかもモニター越しなのに紫色の何かを身体から発しているのが見えるし!?

 霞、逃げろ!

 先生の負のオーラから脱出してくれ!

 

 

「…なるほど、君達の言う通り副司令にボディガードを付けなくとも大丈夫な意味がわかったよ」

 

 

 霞が逃げれたか確認できないまま通信が一方的に途切れ、巌谷中佐はこう言った…

 賢治は今でも自分の体のあっちこっちを必死で触って確認してる。

 先生…俺達がこの世界に来てからどんどん人間離れしていってしまった…

 でも…人間味が前よりも早く出てきてるから、悪い方向ではないのは確かの筈だ。

 純夏に必要な理論は既に渡してあるから、あとはODLの劣化と情報漏洩を克服すれば、今度こそ…純夏を苦しめさせはしない!

 

 

「何はともあれ、直ぐに取り掛かろうではないか。撃震改のデータは手元にはあるが、不知火は無いのでな…楽しみだ…」

 

 

 何か、巌谷中佐って戦術機のことになると暴走するタイプか?

 あの時も撃震改の書類見ただけであんなに熱くなってたし…

 でも理性が効いているだけまだマシか…いや、この手のタイプはいつの間にかネジが外れるか。

 

 

「武、先ずはあの不知火達の解体から始めるぞ」

 

「おう」

 

 

 さて、やりますかな。

 

 

 

 

???side

 

 

 

 

 あれが白銀 武と黒崎 賢治…殿下からの勅命により帝国技術廠を見張っていれば、鎧衣の言った通り現れた。

 裏の業をして来た私は直ぐに分かった。

 奴等は尋常では無い程の修羅場を経験している動きだ。

 でなければ、奴等を仕留める状況が何故頭に出てこない。

 

 

「真那、貴女は何故この事に気付かなかった…」

 

 

 2対1では明らかに不利…ならば白銀 武から行こう。

 奴は死んだと城内省に記されているにも関わらず、現に生きて今、私の目に写っている。

 存在しないと結果が出た黒崎から行くよりは妥当だろう。

 

 

「―――月詠 真耶、推して参る」

 

 

 我等の敵になるかどうか、見極めさせてもらう…!

 

 

 




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