Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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お待たせいたしました!

年内更新です!

それでは、どうぞ!


第二十九話

賢治side

 

 

 

 さて、海神の改造が終わってからちょっと休憩ってことで表に出たんだが、国連の服を来てる俺達があっちこっちウロチョロしてたら色々と面倒臭い事になるので、帝都城の屋根に俺はやって来た。

 帝都城の屋根から見渡すと、綺麗な庭に東屋と森、反対側には戦術機の格納庫と滑走路。

 この帝都城は山を背に建立したんだな。

 夏の暑さを少しだけ和らげれるし、騒ぎがあった際に森を縫って避難出来るが、奴さんが逆に森を縫ってやって来る可能性もあるんだが…その辺は将軍の斯衛達が固めてるか。

 でもちらっと覗いただけで明らかに怪しいスパイが3人ぐらい居たんだが…警備本当に大丈夫か?

 まあシバきあげて木に吊るしといたから斯衛が回収して尋問するだろう。

 にしてもいい天気だ…どっか寝っ転がれる場所を見つけて昼寝でもする―――

 

 

《ピシピシッ》

 

 

 ―――なに?

 何やら遠くから俺に向かって亀裂が走る音が聞こえて来た。

 嫌な結果が脳裏を過ぎるが…それが現実に起こってしまった。

 

 

 

《―――――ボゴッ》

 

 

「――――ぎゃぁぁぁーーーーー!?」

 

 

 

 

悠陽side

 

 

 

 

 BETA上陸から数日たった今日、私は定例会議に出席しました。

 議題は先日のBETA上陸の被害状況と修復でした。

 師団クラスで上陸してきたBETAを相手に被る被害は予想よりも遥かに少ない数で勝利することが出来ました。

 この報を聞いた帝国上層部達は満足といった顔をしてましたが…私は素直に喜んでいいのかと思います。

 散っていった命を蔑ろにして揚々と勝利を語らう、目の前にいる将兵達。

 私はこの者達は本当に日本を救うことを考えているのかと常々思っています。

 そして、その締めくくりに、戦線に介入して来た国連の衛士…いえ、戦士と呼べばいいのでしょうか。

 鎧衣が見せたあの映像の二人について陸将が直ぐに国連に情報開示をと申せば、他の幹部等も同意見を主張しておりました。

 しかし国連からの返答は『正体不明』の人物。

 得たのは横浜基地の極東の魔女『香月 夕呼』の直属の部下だという事。

 各位は納得いかず横浜に今まで通信で詰問してましたが、私はその隙に席を外して鎧衣から新たに得た情報を頭で閲覧しました。

 

 『白銀 武』 年齢18歳 階級中佐 横浜出身 横浜にBETAが上陸した際に死亡。

 しかし現在は香月副司令の下で活動中。

 現在、機体改良作業の傍ら、訓練兵達…あの者を直接指導している。

 

 『黒崎 賢治』 年齢不詳 階級中佐 出身地不明 城内省のデータから名を探すも見つからない。

 鎧衣が言うには、この男の殺気は鎧衣も怯ませる程。

 直接二人に会えたと言ってましたが、あの鎧衣が『二人は敵ではない』と態々私に言う程信頼するのには、真耶さんと共に驚きました。

 何をどうすればあの男と信頼を得られるのかわかりませんが、彼の者達が第4計画の要だとも言っていました。

 ふと足を止めると、私はいつの間にか帝都城の大広間の廊下に来ていました。

 ここから見える景色は、帝都の町並み…今はまだ平和に見えますが、ここももうすぐ、火の海に飲まれ、BETAに蹂躙されると思うと…胸が苦しい…

 

 

「…冥夜」

 

 

 もう会うことを許されない我が半身…

 黒崎 賢治と白銀 武が居れば身の安全は保証と言われる二人に守られているのでしょうか…?

 

 

 

《―――ドォォーーンッ!》

 

 

 

「っ!?」

 

 

 な、何ですか今の音は!?

 振動はさしてありませんでしたが、ただ事ではありません!

 発信源は…私の直ぐ近くッ!?

 直ぐ後ろの襖の隙間から砂煙が流れている…この部屋から…?

 襖を開けると、差し込まれる筈のない日の光が差し、パラパラと木片が畳の上に舞い落ちておりました。

 それにより立ち込める砂埃で足元が見えませんが、そこに何かが動いているのは分かりました。

 ですが―――

 

 

「ゴフッ、い~ってててて、屋根歩いて穴が空くなんてお約束なんかいらねってのッ」

 

「そなた…」

 

 

 ―――そこにいたのは、私が考えていた二人の内の一人、黒崎 賢治でした。

 

 

「うわぁ、人が三人は同時に飛び降りても難なく通れるデカさだよっ―――ってヤベ人!?」

 

「そなたは…」

 

「―――て…ん、御剣?」

 

「!?」

 

「いや、似てるがこっちは物腰が柔らかいな…お前、ウチの訓練兵の御剣の姉妹か?」

 

 

 何故、私があの者の姉妹だと…!?

 

 

『おい何だ今の音は、砂煙が舞っているぞ!?』

 

『賊やも知れぬ、直ぐに調べろ!』

 

「―――うぉヤベ、真面目に人が来た!?」

 

「ッ! こちらに!」

 

「おぉッ?」

 

 

 私はこの者を見つけられてはならないと思い、無意識の内に手を掴んで反対側へ駆け出していました。

 この者が落ちた場所は、丁度帝都城大広間の中枢。

 四方の襖を抜けるとそれぞれ別の場に出ます。

 私はその一方の人が通らない横浜方面へと駆けました。

 

 

「ここなら、あの者達も来ませんでしょう、ッ」

 

「おお、あんがとよ」

 

 

 はぁッはぁッ、コレが戦場で戦っている者との差でしょうか…?

 私が息を切らしているのに対して、この者は歩いたかの様に息を一つも乱していない…

 

 

「…? ッ!?」

 

「おぉ、どしたよ?」

 

「な、何でもございません!」

 

 

 息を整えている内に自分の取った行動に気付き、私は恥ずかしくなり繋いでいた手を思わず振り払った。

 払った手を包んで見れば、この者の手の感触がまだ残っています…

 月詠とは違う、固くて大きい、私の不安を包み込んでくれるような…そんな感触…

 しかし、私が戸惑っているというのに何故この者はこうも平然としていられるのですかっ!

 もしや、会ったばかりの異性と手を繋ぐ事が世の民にとって普通だと言うのですか!?

 私だけこのような思いをしてこの者は物応じしないのは納得いきません!

 

 

「にしても広いなぁ帝都城の中は~…指定場所に向かおうとしたら迷子になるぜ」

 

「ん゛ん゛ッ。して、そなたは何故、あそこから落ちてきたのですか?」

 

 

 この者の身体能力なら鎧衣の持ってきた映像で覚えています。

 空中を跳び回り、縦横無尽に駆け抜けるこの男が不時着とは考えにくい。

 また、技術廠からここまでは近いとはいえ人目に付けば追われるのは必須。

 この者達が帝国技術廠で武器と戦術機の開発に着手しているのは皆も既に周知。

 警備はどうしてるのかはわかりませんが、一歩外に出て見つかれば、詰問されるのは容易に想像出来ます。

 では何故この者はここに居るのでしょう…?

 

 

「ああそれね。昼寝場所探してたら落ちたのよ」

 

 

 

 

 ……………………は?

 

 

 

 

「今、なんと…?」

 

「だ~から、昼寝場所探してたら落ちちゃったのよ」

 

「ひ、昼寝…?」

 

「ああ、休憩で暇だったからブラブラしようとしたんだが、国連服《これ》でウロついたら面倒なことになるからな、見られない様に屋根に移動してたら穴が空いて落っこちたってわけ」

 

 

 …今の私を月詠が見れば矯正しようとするでしょう。

 私は口を開いて目を白黒しているに違いありません。

 帝都城に赴く者ならば、大抵は肩身を縮めるか己を凛々しく見せようとする者ばかりというのに、この者にはその気配が全く無い…

 何と…何と自由な方なのでしょうか。

 私は彼の事が…

 

 

「羨ましい…」

 

「何がだ、昼寝か?」

 

 

 ッ!? 口に出ていましたか!?

 思わず口に手を当てましたが、既に遅かった。

 ですが、私はこの者の何かに羨望を持っている様な気がします…

 

 

「あ~クソ、アイツ等が来たってことはお昼寝タイムは無理だな。仕方ねぇ、戻るか」

 

 

 …私も…

 

 

「私も、ご一緒してもよろしいですか?」

 

「ほ?」

 

 

 気付けば私は口を開いていました。

 黒崎 賢治は私の申し出に呆気に取られていました。

 私と手を繋いでも平常を保っていた相手が呆気に取られた顔をするのを見ると、小さいながらも勝利を感じました。

 

 

「ご一緒って、見ず知らずの男にホイホイ付いて来て大丈夫なのか?」 

 

「ええ、問題ありませんよ。『黒崎 賢治』」

 

「…おいおい、俺の事知ってるのか」

 

「ええ、私も上の役所の者ですので…申し遅れました。私『悠陽』と申します」

 

「どうも、俺はご存知の通り黒崎 賢治だ」

 

 

 姿ではまだしも、普通ならば『悠陽』と名を聞けば恭しく敬礼を取るなりしますが、この者がそれを成さないとすれば…私が何なのか分かっていない証拠。

 ならば、ここは十分に活用させて頂きましょう。

 

 

「で、そんなお前さんはこんなところで何油売ってんだ?」

 

「実は政務に嫌気が差して、こっそり抜け出してきたのです。先程の者達も恐らく、私を探している途中の者でしょう」

 

「…お前、いい根性してんなぁ」

 

 

 フフ、我ながらよくこうも嘘がスラスラと言えたものです。

 それに、何故でしょう…この者と話すと自然と言葉が…笑いが出て来ます。

 普段から話している月詠や紅蓮とは違う話し方…そして、話している内に私の頭の中にあった議会の鬱憤が薄れている…

 この者と離れたくない、もっと一緒に居たい、話がしたい…

 こんな感情…初めてです…

 本来ならこんなことを会って間もない者に言うべきではないのは私ではなく、誰でもがそうでしょう。

 ですが、一度口にしてからは、この感情は抑えれません。

 

 

「でもお前そんな豪華な着物じゃ身動き取れねぇだろ…? ああ、もう来やがったか」

 

 

 何が来たのかと思えば、黒崎 賢治は私達が通って来た襖を見ていました。

 まさか、あの者たちがもうここまで来たのですか?

 私も紅蓮に稽古を付けて貰い人の気配には反応出来るのに、この者は更に上を…

 いえ、当然ですね。

 BETAを相手に生身で奮闘して生還しているのですから。

 

 

「アッチからもか…仕方ねぇ、ほら行くぞ」

 

「え、あ、きゃッ!?」

 

 

 私は突然された事に声を上げてしまいました。

 何故ならば―――

 

 

「お姫様抱っこだが、この方がまだ動きやすい」

 

 

 ―――そう、私は永久にされることが無いだろうと諦めていた女の夢『お姫様抱っこ』をされているのです。

 

 

「俺の事を知ってるんなら俺の動作も粗方知ってんだろ? なら跳んで行くぞ!」

 

「は、はい!」

 

「んじゃ、行くぞ!」

 

 

 手摺に足を乗せて跳躍の体勢になった事に私は気付き、私は彼の首に手を回して身を固めました。

 次の瞬間、私達は空に飛び出て居ました。

 そして彼は空中を蹴る様にして城の屋根に飛び移りました。

 ほんの一瞬の出来事でしたが、私は今まで見ていた景色が違う景色に変わったと感じた時でした。

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 変わったお姫様が居るもんだ。

 俺が抱えてるこのお姫様『悠陽』は俺の登場シーンを見たら普通は声を上げて誰かを呼ぶだろうに、驚きながらも俺に接触して来るなんてな。

 着ている着物、そしてつけてる髪飾りを見るに、帝都城でもトップの存在と見た。

 といっても、この世界の事なんてBETAと武が辿った過去しか俺は知らないから、誰が誰で何が偉いとか全くわからんがな。

 

 

「本当に、空中を飛んでいる…」

 

「飛ぶ《・・》じゃなく、跳ぶ《・・》の方なんだがな」

 

 

 現状を顧みてもだ。

 屋根に降りずそのまま空中を蹴って移動しているから浮遊感を感じてる筈だ。

 首に回してる腕も緊張して強く抱きついてはいるが、恐怖から来る強さじゃない。

 この世界なら戦術機で浮遊感を味わうだろうが…このお姫様は戦術機を動かしてるのか?

 

 

「そなたの噂は聞いております」

 

 

 唐突に俺に話し掛けて来た…俺の噂?

 まともじゃないものばかりだと思うんだが…聞くのが怖いな。

 

 

「どんな噂だ?」

 

「此度のBETA上陸時、其方ともう一人『白銀 武』が生身で戦闘介入し、多くの命を守ったと聞いております」

 

 

 …うん、これは聞いた通りの噂だ。

 だがこういう時のお約束はその後に突っ込むか、引く様な噂が出てくる展開だ。

 

 

「突然現れた横浜の魔女の直属の部下。その後直ぐに訓練兵の教導に付き瞬く間に練度を上げた敏腕教導師。食品改良と戦術機改良が行われ、今までどの国でも辿り着けなかった領域に瞬く間に辿り着いた麒麟児。今まで姿を表に出さなかった香月副司令が武装をして基地内で暴れ出させる様になった諸悪の根源―――」

 

「―――チ ョ ッ ト 待 て コ ラ 」

 

 

 前者二つはいいだろう。

 そう思われるのは光栄だ。

 だが後者の諸悪の根源ってのはどう言う意味だ!

 俺達は何もしてないぞ!

 寧ろ博士の期待に答えているだけなのに博士が勝手に武器ぶっ放してくるだけだ!

 ちくしょう! 俺達は悪くない!!

 

 

「あ…」

 

「ん?」

 

 

 屋根伝いに空中移動していたら悠陽が一方を見て声を発した。

 何だと思って跳躍を止め、屋根に降り立ってお姫様の観る方向を見ると…ヤケに明るく動く光が目に入ってきた。

 その正体は…森に出来ている巨大な湖だった。

 人口ではない、自然によって生じる風によって作られる波紋に陽光が反射し、陽光もまた波紋と共に光を表していてとても綺麗だった。

 その反射でこの帝都城を明るくライトアップしている様でもあった。

 ここは絶景だ…横浜基地から持って来たお菓子とコーヒーでおやつタイムにしようか。

 俺は悠陽を下ろして上着の中からコーヒーの入ったタンブラーとクッキーを取り出した。

 

 

「それは…?」

 

 

 取り出したクッキーと魔法瓶を見て悠陽は疑問の声を上げた。

 何だ、この世界では他国のお菓子は殆ど知らないのか?

 

 

「こいつはクッキーだ。甘くて旨いぜ? それとこっちは俺特製特注の飲み物だから俺以外が飲むと糖尿病になるから勘弁な?」

 

「どれだけ甘いのですかその中の飲み物は…」

 

 

 砂糖とミルクを大量に使った合成コーヒーだ、っと言いたいが…言ったら言ったで面倒臭そうだから黙っとこ。

 ほらよと言って俺は袋に入ったクッキーを悠陽に差し出した。

 余程の箱入り娘なんだろう、オズオズと袋に手を入れてクッキーを一枚摘み、小さい口でリスみたいにポリポリと食べた。

 

 

「…美味です」

 

「当然だ、小麦粉は天然だし、難民から雇った奴らの子供達が四苦八苦して作ってくれた心の篭ったクッキーだからな」

 

 

 ああ、このクッキーをくれる為に基地の門を叩いたと門兵から連絡を貰った時には驚いた。

 門兵も仕事上突き返さなきゃいけないが、子供達の顔を見て一人が相手をして一人が博士に連絡をして来たんだ。

 門兵も無下には出来なかったんだろう。

 結果、俺と武が直に向かい、子供達から直接クッキーを貰った。

 それと一緒に、子供達からの感謝の手紙も…この世界に来て初めて涙を浮かべちまったよ、本当。

 

 

「そうですか…子供達が…」

 

「ああ。また一つ、戦う理由が出来た」

 

「そうですか…」

 

「どうした?」

 

 

 俺の話を聞いてから悠陽はちょっと欝な表情を覗かせた。

 

 

「私は…わからないのです…」

 

 

 それから悠陽は溜め込んでいる物を吐き出す勢いで話し出した。

 話は武がこの世界に来る10月22日より前、つまり、日本にBETAが初めて上陸する前後の話だった。

 中国大陸に帝国軍を派遣してBETAの驚異を知ったというのに上層部は楽観視していたと。

 いざ上陸を許したら自分達の身を最優先し、未来を担う訓練兵を後方とはいえ前線に押し出したこと。

 京都より東への進行を防ぐ為に都である帝都に支援砲撃を撃つか撃たないかで揉め、支援砲撃開始した時には時既に遅く京都は滅んだこと。

 帝都撤退戦で上層部の馬鹿共のせいで多くの命を失い、あまつさえその責任を擦り付け合い、認識を未だに改めない愚鈍さ。

 今のこの体制を変えたいのに自分では変えられないもどかしさ。

 どうすれば今の体制を変えれるのだろうかと。

 話し終えた悠陽は俺を見て何かを期待していた。

 あれだけ戦える俺なら何か考えがあるんじゃないかとでも思ってんのか?

 俺は政なんて専門外だぜ。

 俺は今までの経験を思いだし、湖の輝きを見ながら言った。

 

 

「そんなもんだ」

 

「―――――え?」

 

「上で胡座掻いてる奴等なんざぁ、所詮己のプライドを誇示するだけの馬鹿共が八割強だ。残りは傍観するか、周りの為に動き出すかだが…八割強に邪魔をされて何も出来ないってのが現状か?」

 

 

 悠陽に視線を戻すと、顔を俯かせていた…当たりか。

 どの世界でも上にいる奴等が無能なら下は無様に滅ぶ…

 自分達にとって不利益な存在は闇討ちや囮として始末する…

 しかし訓練兵とはいえ、帝国と斯衛なら上層部の子息子女が居たんじゃないか?

 頭悪い奴等ばっかり目立つなこの世界…

 

 

「人間を導くなんてのは人間には出来はしない。所詮人間だからな、同じ過ちばかりを起こしては反省せずに好き放題だ…お前も見ててわかってるんだろ?」

 

 

 嘗て武と共に落ちた世界も似たようなものだった。

 どれだけ部下が優秀で平和を維持する間、上層部は人質を取りつつ私腹を肥やしていく…虫唾が走る。

 どれだけの無能を沈めてきたことか…この世界でもするべきか?

 

 

「このままでは、我らを見て下さる神と祖先に顔向け出来ませぬ…」

 

「この世に神なんざ存在しない…居たとすれば―――」

 

 

 ―――当の昔に人間を見捨てている

 

 

 俺は神なんて信じちゃいない。

 神が存在しているならインベーダーなんざ現れはしない。

 BETAなんざ現れはしない。

 故に俺は言う。

 神なんて存在しないと。

 存在するなら…アイツ等が死ぬことはなかった。

 

 

「…そう、ですね。ならば、人類を導くのは我々人間のすることですね」

 

「導くとしても所詮は人間だ、聖書なんかに載ってる神の様に人間を導くことは出来ないだろうが、共に歩むことなら出来るだろうよ…トップにそれだけの器を持つ奴がいればの話だがな」

 

 

 俺はいつの間にか悠陽と話し込んでいた。

 時間を確認するとかなり経っており、耳を澄ますと怒鳴り声とドタドタと忙しく動く足音が聞こえる。

 

 

「そろそろ戻らないとお互いマズイな…?」

 

「ええ、そうですね…楽しい時間はあっという間に過ぎていくものです。…また、お会いする事は出来ますか?」

 

 

 …『また』か。

 この箱入りお嬢様は帝都城を自由に動いている。

 それに俺達の情報を知ってるってんなら、かなり上の役所の娘か何かか…まあ、大丈夫だろう。

 

 

「ああ、暫くはこっちにいるから、運が良かったら会えるかもな」

 

 

 そう言って俺はまた悠陽を抱えた。

 悠陽ももう慣れたのか、するりと俺の首に手を回した。

 この状態を帝都城の連中に見られるわけにはいかないので、俺は技術廠と帝都城の中間にある倉庫付近へを跳んだ。

 数回ジャンプして目的地に近付くと武と巌谷のおっちゃんの気配がしたが、二人なら問題ないだろうと思い、着地した。

 武も俺の気配に気付いたのか、着地する前に俺に視線を向けていたが、俺を目視した途端に『ンガァァァ!?』って叫び声と共に目が飛び出し、顎をあんぐりと開けて汗をダラダラとかいていた。

 隣にいた巌谷のおっちゃんも全く同じだった…何だ?

 

 

「お、おおおおぉぉぉお前はぁぁ、一体何やってんだ!」

 

「あ? ああ、散歩途中にコイツと会ってな。なし崩しに一緒に散歩することになったんだよ」

 

「そぉぉぉそそそそそそそ、そのお方を今すぐに下ろせ!」

 

「何だってんだよお前、何キョドってんだよ?」

 

 

 説明をしたのに丸で耳に入っていない様に武は言って来た。

 言われた通り下ろしたら悠陽は苦笑いだし…何だってんだよ?

 

 

「このバカ野郎!! その方はこの国の長、日本帝国政威大将軍 『煌武院 悠陽』殿下様だぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………ほ?

 

 

 

 

 

 

「ほほほ、バレてしまいましたか…」

 

 

 政威大将軍って、こっちの世界じゃ日本のトップって武言ってなかったっけか…?

 このお嬢様が…トップッ!?

 

 

「改めまして、自己紹介致しますわ」

 

 

 悠陽は俺達三人を視野に入れる位置まで行き、着ている着物を軽く叩いて身なりを整えた後、両手を前に添えて俺達に目を向けて言った。

 

 

「初めまして、黒崎 賢治、白銀 武。私は日本帝国政威大将軍『煌武院 悠陽』と申します」

 

 

 

 

 

 

 この時、悠陽の後ろに夕陽が重なり、纏っている着物と髪飾りが黄金色に反射し、日本神話が降臨したかの様に見えた。

 

 

 




おっかしいなぁ、これ投稿していたと思ってたんですけど、投稿されていなかった…
ユニコーンの勘違いで投稿していたなかったみたいです。
楽しみにされていた方々には、大変申し訳ありません。

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