Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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長らくお待たせいたしました!
今回他の武家も出ます!
それでは、どうぞ!


第三十話

武side

 

 

 

 

 なななな、何で、何で、何で殿下がここにおいでなさったぁ!?

 帝都城が騒がしいって巌谷中佐に連絡があったから帝都城と技術廠の間で帝都城を様子見してたら、賢治が殿下を誘拐して来たぁぁぁぁ!?

 

 

「けけけけけ賢治、おおおおおお前どどどういうつもりで、でででででッ殿下を!?」

 

「い、いやぁすまん、昼寝場所探してたら城の屋根が抜けて落っこっちゃって、その時ばったりと会ってそのまま~…的な?」

 

「はぁ~~ははは…で、殿下が、空から…ッき、君は本当に、ヤッテくれるネェ…」

 

 

 疑問系で答えてんじゃねぇよてめぇ!

 何でばったり会ったらここに連れて来るんだよ!?

 帝都城が騒がしいと思ったらお前が殿下誘拐したからかよ!!

 巌谷中佐なんかすんげぇ上擦った声上げてんじゃねぇか!!

 

 

「…そんなに、驚くことか?」

 

「人が空から降ってくれば驚くのは無理もないのではないのでしょうか?」

 

 

 二人は事の重大さが分かってないのか!?

 呑気に会話なんてしないでくれ!

 そして殿下、危機感をお持ち下さい!

 貴方は誘拐されたのと同じ状況なのですよ!?

 それにさっきからエンジン音が四方八方から聞こえてるんですよ!

 戦術機が忙しそうに飛び交ってんだよ!

 てか俺ずっとシャウトしてばっかじゃねぇかよぉぉぉぉ!!

 

 

『殿下ぁぁーーー!!』

 

「ん?…げ!?」

 

「ん? あらら~、面倒なことになっちまった…」

 

 

 帝都城方面から強いエンジン音が複数聞こえて見てみれば、戦術機がこっちに向かってまっすぐ飛んで来ていた。

 あのシルエットは…00F型武御雷!?

 その中で突出してるのが赤ってことは、月詠大尉か!?

 うぉぉ厄介な側近に見つかっちまったよ!

 

 

「アレ、乗ってんの誰だ?」

 

「『月詠』です黒崎。階級は大尉です」

 

「『月詠』…ああ、武に脅しかけた奴か」

 

「脅し?」

 

「ああいや、我々の調査をしに来たんです殿下」

 

 

 賢治の馬鹿野郎!

 ありのままに言い過ぎだ!

 もっと曲げて説明しろ!

 

 

『ご無事ですか殿下!?』

 

 

 賢治のあまりにストレートな発言を訂正している内に武御雷は空中停止して俺達を見下ろしていた。

 そして、跳躍ユニットを吹かしながらゆっくりと着地した赤い武御雷。

 賢治はさりげなく跳躍ユニットの起こす熱風と殿下の間に入り込んで熱風を遮断していた。

 

 

「ご無事の状態を台無しにしようとした奴が何を言うかね…」

 

 

 賢治がボソッと苦言申したが、緊急なんだからそれぐらい許せ。

 まあ大尉は殿下の事となれば周囲が見えなくなると怪しい叔父さんが親切に教えてくれたけど、まさか武御雷で来るとは…

 武御雷って、一回動かすだけで莫大な整備費用が掛かるんだよなぁ。

 俺、斯衛の整備兵達にまでスパナ投げられたくないぞ。

 

 

『貴様等! 殿下をどうするつもりだ! 直ぐに殿下を放せ!!』

 

「いや何もするつもりはありませんよ! 賢治直ぐに殿下を!」

 

「何慌ててんだよお前」

 

「い い か ら は や く !!」

 

「わ、わかった、わかったって。ったく何でそんな慌ててんだよ。ほら、迎えが来たぞ。早く行っとけ」

 

 

 賢治は殿下に武御雷の方へ行く様に言ってるけど、殿下は何故かプクっと頬を膨らませて不満気な表情で賢治を見ていた。

 焦れた賢治は殿下の背中を押す様にして武御雷に誘導するが、その仕草に月詠大尉の怒号が響く。

 その時、何を考えついたのか頭に豆電球が浮かび上がったような顔をした後、殿下は賢治に勢いよく振り返って言った。

 

 

「酷いですわ! 私の傍に居てくれるという約束は嘘だったのですか!?」

 

「「「ほっ?」」」

 

『ぬっ!?』

 

 

 あ、あれ…何だ今の?

 思わず全員で素っ頓狂な声を上げちまった。

 

 

「な、何のこっちゃいきなり?」

 

「私達は初対面とはいえ、共に将来を語り合った仲ではありませんか! 都合が悪くなれば直ぐに切り捨てるのはあんまりではありませんか!?」

 

「え、え、切り捨てる? 将来? いや未来については話し合ったけど…」

 

 

 その後も続く殿下の鬼気迫る挙動。

 何だろう、元の世界の昼ドラにあった泥沼シーンの様な状況とお互いに言ってる事が噛み合ってないこの状況は…

 殿下は賢治の服を掴んで揺すりながら訳のわからないことを言ってるし、賢治は頭に疑問符を大量に浮かべながらシドロモドロに答えてるし…

 突然の展開に月詠大尉も着いてこれていない様子だ。

 しかし、ここで復帰したのか拡声器越しでブルブルブルと(かぶり)を振る様な動作が聞こえた。

 

 

『き、貴様! 殿下と将来を語るとはどういうことだ!!』

 

「あ…えぇ!? いや違う違う違う違うそういう意味じゃねぇ! 悠陽が勝手に―――!!」

 

『殿下を呼び捨てにするかこの無礼者が!』

 

「だぁーもぉ面倒臭ぇなお前は!」

 

 

 賢治は月詠大尉の咆哮に自分と殿下の食い違いに気付いたのか、慌てて反論しているが大尉は聞く耳持たない状態だ。

 それで賢治と大尉はギャーギャー喧嘩し出す始末…

 後、忘れてるのかな大尉?

 拡声器越しに喧嘩してるから遠い所でも丸聞こえなんですけど…

 ああ、遠くで静止してこっち見てる感があるシルエットがチラホラと…あ、光信号で何か合図までしてる。

 

 

「それに私―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――殿方にあんなに強く抱きしめられたのは、初めてです(ポッ)」

 

 

 

 

 

 

 

「「「『―――――――――――――』」」」

 

 

 ―――絶句。

 

 

 俺、賢治、巌谷中佐は殿下に視線を釘付けにして顎が外れるぐらい口を開けて固まった。

 そして、武御雷の拡声器から聞こえていた怒声も途絶え、辺りは遠くで飛び交う戦術機の跳躍ユニットのロケットエンジン音が響いていた。

 え…嘘でしょ、殿下?

 何ですかその突然のカミングアウトは…何故、頬に手を当てて赤らめてるのですか…?

 

 

「お、お前、あれは抱きしめじゃなく横だ―――ッ」

 

 

《―――プッツン》

 

 

 あ…え…何か、賢治が弁解しようとしたのを遮る様に切れてはいけない糸が切れた音が、拡声器越しに物理的に聞こえ…ッ!?

 

 

『き…きっさっまぁぁぁ…ッ』

 

 

 まさかと思ったが女性が出してはいけない地獄からの産声の様な声が拡声器から聞こえた。

 しかも、武御雷がワナワナと小刻みに揺れている。

 

 

『殿下を拐かしただけでなく誑かしたかぁぁぁぁ…ッ!』

 

 

 そして消灯していたメインカメラが怪しげな薄紫色の光を灯し始めた。

 はい、この場でキレるとしたら大尉しかいないよねー、ド畜生ぉぉぉぉぉーーーーー!!

 何で突拍子もないことを言ったんですか殿下!?

 恋物語読み過ぎでしょぉぉ!!

 

 

『こぉのぉぉッッ! 外道がぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

 でぇぇーーー!?

 

 

「「「うおぉぉーーーー!?」」」

 

 

 メインカメラに溢れる光を灯したと同時に勢いよく上段に構え、両手で賢治に向かって思いっきり長刀を振り下ろした。

 俺は巌谷中佐を咄嗟に肩に抱えて後ろに飛び、賢治は殿下を横抱きにして俺の近くまで跳んで避けた。

 轟音を立てて砂煙を舞い上げた長刀は、寸分の狂いも無く賢治の居た場所を長刀が埋まる程に砕いていた。

 何してるんですか大尉!?

 今のは賢治だけ目掛けて叩いたとしても殿下にまで被害が及ぶの目に見えてたでしょうが!! 

 

 

「おま、何誤解する様な言い方してんだよ! お前抱えて動くには横抱きがいち―――ッ!」

 

 

 

 

《―――クスッ》

 

 

 

 

 この時、俺は殿下の腹の中が一瞬だけ見えた気がした。

 俺は、この世界で起きた昨日のBETA上陸は、俺達の因果が関係しているものだと思っていた。

 だが俺は、同時に気付いてしまった。

 因果というものは何も、BETAだけに作用するモノではないと…

 俺は殿下とは12.5事件の時に初めて邂逅して以降、一度もお会いしたこと無いが、こんな茶目っ気はなかった筈…

 俺が殿下を乗せて避難してる最中も、こんな腹黒いモノを持ってる様には思わなかった…

 何この黒い微笑み?

 夕呼先生ばりの笑だったよ?

 てか何であの状況であんな演技出来るんですか!?

 俺達だけじゃなく巌谷中佐もいるんですよ!?

 

 

「こ、このアマ…いい性格していやがる…」

 

 

 賢治が絞った声を出して言った。

 無礼だが俺も心の中で同意するぜ、賢治。

 

 

『死を持って償えぇぇぇーーーーーーー!』

 

「でぇぇ! ちょ、武パス!」

 

「パァァァァ、パパパパパパパパパ、パス!?」

 

「おおぉぉぉ、置いていかないでくれ!」

 

 

 うぉぉ! あいつ本当に殿下をこっちにパスしてきやがった!?

 何とか殿下を姫様抱っこでキャッチした俺は直ぐにその場を離れ、巌谷中佐もドタドタと俺に付いて来た。

 

 

「この馬鹿野郎! 緊急だからって殿下を投げるたぁ何事だ!! 殿下ご無事ですか!?」

 

「ええ、其方に感謝を。それにしても、面白い殿方ですね、黒崎 賢治」

 

 

 下ろして殿下の安否を確認すると、殿下はあそこで起きてる喧嘩を楽しそうに見ていた。

 最初はもはや武御雷の繰り出す攻撃に正確さは無くなっていた。

 武御雷がゴルフの様にフルスイングすれば賢治は上に跳んで避け、踏みつぶそうとすれば横に避け、スイカ割りの様に振り下ろせば斜めに跳躍して避け、袈裟斬りすれば空中で回転して避け、野球のフルスイングをすれば空を蹴って避けてと、賢治はちょこまかと避けながら無実を主張していた。

 …え~、稼働中の滑走路がボロボロにされてるのに目の前の出来事を娯楽の様に見てるよ殿下…

 遠くからこっちに向かってくる様子のエンジン音が聞こえたので振り向くと―――

 

 

「って今度はこっちに青ぉぉーーーーーー!?」

 

『殿下、ご無事ですか』

 

 

 今度のは落ち着いた男の声だ。

 あれ、でもこの声前の世界でどこかで…

 

 

「その声、斑鳩ですか?」

 

 

 斑鳩…?

 月詠家の他にも何かあるの?

 

 

「彼は五摂家の内の名門、斑鳩家当主の『斑鳩 崇継』大佐だ。まさか閣下まで動かれるとは…」

 

 

《ピピピッ》

 

五摂家(ごせっけ)

 1867年、欧米列強の脅威に抗するために倒幕派大名と将軍家が大同団結し、大政奉還が成立した。

 その際元枢府を設置した、煌武院(こうぶいん)斑鳩(いかるが)斉御司(さいおんじ)九條(くじょう)崇宰(たかつかさ)の五大武家を五摂家と称する』

 

 

 俺が疑問に思ったことを網膜インカムが検索してくれた。

 これは俺達が帝国技術廠に頻繁に出入りする事になったので、斯衛の専門用語等を霞がインストールしてくれたアプリだ。

 霞、ありがとう。

 早速役に立ったよ。

 え、ってことは煌武院家の次の権力を持つ家か!

 おおおぉぉ…こんな大物まで動いてるぅぅ…胃が、胃が…

 

 

『貴様、国連軍横浜基地所属の白銀 武中佐だな?』

 

「は、はい!」

 

『貴様等が何を企んでいるかは知らんが、ここは大人しくして貰おうか』

 

「うぇ、企むって!?」

 

 

 拡声器越しで、それに殺気等も放ってないのに感じる迫力ある声。

 この人、生まれ持って上に立つ素質を持って、それを理解して使いこなしてる。

 なるほど…前の俺なら直ぐに萎縮して声も発せなかっただろうな。

 

 

「斑鳩、この者達は何もしておりませぬ。この者達は私と会談する為に私が直に迎えに来ただけです」

 

「「…えっ!?」」

 

「そうですね、白銀?」

 

 

 いや違いますと言いたかったけど…俺に振り向いた殿下が『逃しませんよ』みたいなダークな笑みを浮かべていた。

 おかしい、絶対にコレはおかしい。

 殿下はこんなにも恐ろしい御方じゃなかった!!

 

 

「(巌谷中佐、殿下ってこんな黒いモノ抱えてる御方でしたか!?)」

 

「(いや、少なくとも私が2年前に謁見した時はその様な事はなかった!)」

 

 

 アイコンタクトでこんな会話をしていた俺と巌谷中佐だったが、どうやら以前はこんな方じゃなかったようだ。

 ということは、これも俺達が来たことに原因が!?

 

 

『しかし殿下、あの者達を止めなくてもよろしいのですか?』

 

「構いませぬ斑鳩。月詠も常に気を張って鬱憤も溜まっていたでしょう。黒崎 賢治が相手ならば存分に暴れられる故、放っているのです」

 

『………』

 

 

 え~~~~…

 殿下、いくらなんでも賢治の事信用し過ぎですよ。

 その自信は俺達が先日介入した戦闘記録を閲覧してからのですか?

 いやまぁ確かに賢治なら余裕だけど、この状況を将校達が見たら付け入られますよ?

 網膜インカムで青い武御雷の周波数に合わせてアクセスすると、切れの鋭い目をした如何にもドSさを滲ませる美男子が映った。

 でも表情が『どこからそんな信用が出てくるの?』的な感じで汗をにじませていた。

 ああ、これで殿下の今日の行動は一度も周りに見せたことがないというのが如実にわかった。

 

 

『キェェェーーーーーーーーーーーーーッ!!』

 

「だぁぁぁ! だから! 俺達は悠陽を拉致ろうとかしてねぇっての!」

 

『悠陽様の名を気安く呼ぶなぁぁーーーーーー!!』

 

 

《―――ドドドドドドドドッ!》

 

 

 ところで何時になったら終わるんだアレは…

 終いには担架システム使って突撃砲撃ちまくってるよ?

 こっちに影響は来てないけど、滑走路がとんでもないことになってるんですけど…

 

 

「だぁぁぁもぉぉテメェは――――!」

 

 

 余りの聞き分けの無さに業を煮やした賢治は長刀を避け直ぐ様跳躍し―――

 

 

「―――面倒臭ぇわぁぁーーー!!」

 

『なにぃぃーーーー!?』

 

 

 管制ユニットのど真ん中にドロップキックをぶちかました。

 武御雷は賢治の蹴りの威力に負けて仰け反り、蹴られた箇所を大きく凹ませて仰向けに倒れた。

 あ~あ、やっちまったよアイツ…

 

 

「まぁ…なんて強いのでしょうか」

 

 

 え、それだけですか殿下?

 中の大尉の心配は無いんですか?

 

 

『ドロップキックで管制ユニットを凹ませるか…どんな脚力を持っているのだ奴は…』

 

 

 斑鳩閣下が呆れた様なボヤキを漏らした。

 御剣達もそろそろあれぐらい出来ますよと言ったら更にカオスになりそうだから、自重した。

 

 

「こんちくしょうが! 中に閉じ込めてやる!!」

 

 

 ―――連牙弾!!

 

 

『ぐ、ぐぅぅーーッ!?』

 

 

 視線を戻せば賢治はあろうことか、連牙弾を繰り出してユニットのハッチを万遍なく潰して行きやがった。

 俺はそっと網膜インカムを操作し、月詠大尉の武御雷にアクセスして大尉の様子を見てみた。

 網膜投影の右上には潰されてる時に来る振動を歯を食いしばって耐えている月詠大尉がバストアップで映った。

 潰し終わって振動が収まって直ぐに、月詠大尉は機体を動かそうとガチャガチャしてたけど、賢治の蹴りか倒れた時の衝撃か、電気系統が逝かれててピクリとも機体は動かなかった。

 機体が使えないと判断した大尉は脱出しようと軽強化外骨格を操作するも…

 

 

『ぐっ、何ィィィ!? ペ イ ル ア ウ ト 出 来 な い !?』

 

 

 そりゃそうだ、開閉口を万遍なく潰されてんだもん。

 しかもあの凹み具合からして軽強化外骨格で脱出しようとしてもパワーが足りないで出れないんだろうなぁ…

 ギギギと軋む音がするけど、思った通り管制ユニットは動かなかった。

 更に仰向けに倒れている為、背後のペイルアウトも無理。

 

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

『出せぇぇーー! ここから出せぇぇぇぇーーーーー!!』

 

「フフフ、面白い殿方ですね、黒崎 賢治は」

 

 

 仰向けに倒れてる武御雷の管制ユニットの上でガッツポーズを取って雄叫びを上げる賢治。

 内側からドンドンと叩いて叫ぶ月詠大尉。

 その様子を見て楽しそうに笑う殿下。

 その殿下を顔を引き吊らせながら見る巌谷中佐と斑鳩大佐。

 殿下…賢治の事、『いいおもちゃ見~つけた』と思ってませんか?

 それは置いといて…これから殿下と謁見することになったけど、まさかこんなに早くすることになるとは… 

 一度横浜に戻って先生と話す必要があるな。

 

 

「賢治! 一旦横浜に帰るぞ!」

 

「YY…ん? 何で?」

 

「訳は後で話すから、一旦帰ろう!」

 

「おお、わかった」

 

「白銀?」

 

「申し訳ありません殿下、我々は一度戻り準備を整えて後日伺います。本日はどうかお許し下さい。では!」

 

「あっ!」

 

 

 殿下が俺に手を伸ばしているけど、俺は振り向かずに横浜基地に向かって駆けた。

 賢治も直ぐに武御雷から跳んで俺と並走している。

 どうするか…これが殿下と巌谷中佐だけならまだしも、他の斯衛の、それも重役が現れたんじゃ内密に謁見なんて出来ない。

 先生の指示を仰ぐしかないぜ。

 

 

 

 

悠陽side

 

 

 

 

 …行ってしまいました。

 白銀 武、黒崎 賢治…不思議な殿方です。

 二人は何故か、軍人には見えませんでした。

 白銀は私の事を知っておりましたが、黒崎は知っていない。

 自惚れている訳ではありませんが政威大将軍の私を知らない者が、日本にいるでしょうか?

 

 

「巌谷中佐、僅かながらも共に接していたそなたから見てあの二人の印象はどうですか?」

 

「はっ、申し上げますとあの二人は、我々軍人の様に命令ではなく、各々の感情を優先して動きます」

 

「感情…?」

 

『どういう意味だ?』

 

 

 斑鳩は月詠の武御雷を起こしながら我々の方を見て参加しました。

 月詠は先程まで中で暴れており、業を煮やした斑鳩によって鎮静剤を打ち込まれ、今は中で眠っています。

 

 

「あの時、私はあの二人が戦闘に介入するのを一度阻止しました。しかし、自ら身につけた力を今使わずいつ使うと激昂した白銀中佐に黒崎中佐が乗り、戦闘に介入しました」

 

 

 そうですか…簡潔に纏めれば、上からの命令よりも現場の状況で動く者ということですね。

 その結果、帝国は大きな被害を出さずに戦闘を乗り切ることが出来ました。

 

 

「そして一時的な技術廠の租借に対し、明らかに超えている対価も貰いました」

 

「対価?」

 

『それは何だ巌谷?』

 

「…日本帝国軍が保有する戦術機の改良案です」

 

『!?』

 

「その中には、改良不可能である海神の改良も現在施されて完成しており、明日にはスティングレイ隊に試験運転してもらう予定です」

 

『海神をだと…何者なのだあの者達は…』

 

 

 本当に、何者なのでしょうか。

 ですが、今の私には黒崎の事しか浮かびません。

 私を一般人の様に、文字通り普通に接してくれた方…

 月詠や紅蓮達とは感じなかった、暖かい感覚…

 自然と高揚する気持ち…

 これは、私が読む書物に記されている…『初恋』というものでしょうか?

 それに、黒崎と接してからの今の私の心は、今までと違って開放感を感じます。

 今の私が…本来の私なのでしょうか?

 

 

「クスクス」

 

「で、殿下…?」

 

「いえ、いい息抜きになりました。戻りましょう斑鳩」

 

『御意』

 

「巌谷中佐、明日はあの二人を借ります」

 

「はっ!」

 

 

 さて、明日の為に職務を一気に終わらせるとしましょう。

 フフフ、明日が楽しみです。

 

 

 

 




斑鳩の喋り方って、これでよかったですかね…?
五摂家の説明はWikiをそのままコピっただけなので大丈夫かなぁと心配したり…
別の説明方法があれば、ユニコーンにご教授願います…
さて、殿下と真耶のキャラ崩壊になってしまいましたが、これからもキャラ崩壊は数名出ます。
それでもいいとおっしゃるのであれば、完結までどうかお付き合い下さいませ。
感想、アドバイス等をお待ちしております!
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