Muvluv 生命の源の申し子   作:ユニコーン

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シミュレーターの後編です!
それでは、どうぞ!


第六話

まりもside

 

 

 

 

 すごい…あの二機、自分の進路を確保する為以外はBETAの相手をしていない…

 それに、着地した時に作動する『硬直時間』を見事に相殺しているわ。

 着地する際に、軽く跳躍ユニットを噴かせて機体の負担を和らげると同時に『硬直時間』も半分以下にまで削れる。

 そして、BETAの背を足場にして進むなんて発想…普通は思い付かないわ。

 

 

『動きがスムーズになってきたな!』

 

『やっと…な! さっきのでこいつの動かし方をやっと理解したぜ、とととっ!? にゃろ!』

 

 

 …今、何て言ったのかしら?

 やっと理解した(・・・・)ですって?

 それじゃぁまさか、さっきまでは勘だけで機体を動かしていたというの?

 二機の現在地は、ハイヴの中枢…30分で中枢?

 中隊でも半数以上犠牲にして1時間かけてやっとの位置よ?

 それなのに二機は私達の今までの苦労を嘲笑うかのようにスイスイと進んで行く…私達の今までは…何だったの? 今までBETAと戦って散っていった英霊達は、何だったの…何で今まで戦っていなかったの…!?

 

 

 まりもは気付かぬうちに、怒りと嫉妬に塗れた顔でモニターを睨み付けていた。

 霞はまりもをリーディングしたのか、複雑な表情をしていた。

 

 

 

「…まさか、ここまで化け物だったとはね」

 

「夕呼、あなたの部下なんでしょう!? 何で部下の事も理解してないのよ!?」

 

「言ったでしょ~特殊任務に就かせてたって。任務から昨日まで会ってないんだから知る訳ないじゃない」

 

 

 どういうことよ…特殊任務って一体何なのよ!!

 

 

 

 

夕呼side

 

 

 

 

 ここまで二機は順調…いえ、それ以上の戦果で進んで来たけど、これからはどうかしら?

 今までの坑道より比較的狭くなった箇所、そこで中・大型のBETAが一箇所に密集して折り重なり、分厚い壁となって二機の進路を塞いだ。

 

 

『ぬお!? 旅団クラスのBETAの壁!? 気持ち悪! うごめいてやがる!』

 

『んな事言ってる場合か! どうする!?』

 

 

 二機は話しをしながらもセッセと襲ってくるBETAを斬っていく。

 時には蹴り飛ばし、時には殴り飛ばしと戦術機を人間の様に操る。

 …まったく、どこまで私の常識を崩してくれたら気が済むのかしら?

 

 

『足場崩せばすぐだ! 喰らいやがれぇ!』

 

 

 黒崎の駆る01が要撃級の尻尾に当たる部分を掴み、ジャイアントスイングの要領で旅団の壁の足場へと放り投げた。

 すると、BETAの壁の左下…比較的不安定になっている箇所に01の全力のジャイアントスイングによって投げ飛ばされた要撃級はその勢いのまま突っ込み、衝突した箇所から崩れていった。

 

 

『いよっしゃドンピシャ! 行くぜぇ!!』

 

 

 壁が崩れて開いた穴に二機は跳躍ユニットを噴かして入っていった。

 …まさか、この様な観点で突破するなんてね。

 このBETAの壁は戦術機の大隊でも全滅する規模…それを、物理法則を的確に沿うように穴を開けて進んでいくだけ。

 壁が崩れたのをいい事に畳み掛ける事もせず、ただ先に進むだけ(・・・・・・)

 そして、モニターの右下に小さく展開されてる時間を見ると状況開始から50分…

 モニターから稼動しているシミュレーターに視線を向けながらアタシは思うわ。

 こいつら、いったいどれだけの修羅場を経験してきたっていうの?

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 お~っととと、着地成功。

 あの気色悪い壁を潜り抜けてやってきた大空洞…もちろんここにもBETAは居るのでのんびりと考え事はできないが、それでもこの大空洞で一際目立つシンボルに目が行く。

 何アレ? あの正面の鉛筆削りの穴の止め具のような形…まさか

 

 

「武、あれってゲートか?」

 

「ああ、門級だ。くそ、せめて突撃砲と支援突撃砲があればもっと楽なのに…!」

 

 

 武がああは言ってるが、突撃砲ってそんなに強力なのか?

 聞いてる限り連想できるのは…ファーマスか?

 そんなんでこの見た目からしてかなり頑丈な門を開けれるのか?

 それよかバズーカがありゃぁ一発な気がするんだが…何か武器になるのはないか…お?

 

 

「おい、あの門から細長く伸びてるこいつはなんぞや?」

 

「こいつは確か…門級の脳だ。だがこいつには超高圧電流が流れているから、ってうぉ!?」

 

 

 武が説明をしている途中から武に向かって突撃級が複数まとめて突っ込んで行った。

 ほうほう、これが脳ってことはこれをどうにかしなけりゃ門は開かないってことか…お?

 

 

「おい、おまえ何処行く気だ!? うおっ!?」

 

 

 突撃級の相手は武に任せておいて…さてさて、アレはパッと見知能はなさそうだ。

 ならばアレを直接攻撃すればもしかしたら開くんじゃねと俺は思った。

 てな訳で…!

 

 

「武、そこを退け!」

 

 

 最後の突撃級を斬り捨てた武は条件反射だろうか、何の確認もせずに右上に跳躍して離れた。

 

 

「特急列車通過しまぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!」

 

 

 俺は要塞級の足先を門級の脳に狙いを定め、跳躍ユニットを最大噴射で突っ込んでいった。

 途中、要撃級なども巻き込みながらも俺が押し出した要塞級の尖った足は門級の脳に突き刺さった。

 その瞬間もの凄い電流が放出されたが足が長い為、俺達がいる所にまでは届かず、門は独りでに開いた。

 

 

『またぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?』

 

 

 何かシミュレーターのモーター音以外に直接聞こえた気がしたけど、気のせいだろ。

 

 

 

 

まりもside

 

 

 

 

『なんだかんだ言いながらよぉ…着いちまったな、反応炉』

 

 

 …本当に着いてしまった、たった二機で…それも、長刀二刀だけで反応炉に…

 

 

『まあ、殆ど避けてここまで来たからな。今の俺達ならこれぐらいは出来ても可笑しくはないな』

 

 

 その避けるということ自体が有り得ないのよ!

 

 

「状況終了。ご苦労様、上がってきなさい」

 

『あ? 何だよ、脱出はしないのか?』

 

「反応炉が破壊されればBETAは逃げ出すことぐらいも忘れたってゆーの? のぼせてんじゃないわよ(危ない危ない、あいつらがこの世界の人間じゃないことを私達以外に知られる訳にはいかないわ)」

 

『(あっちゃ~、まりもちゃんが来るのを忘れてた! 賢治と口裏合わせするの忘れてたぜ)』

 

『………』

 

 

 

 

 シミュレーターの稼動が停止したのと同時に管制ユニットから出て来た二人は私達の元にやってきた。

 …確かに身体が鍛えられているのはここから見てわかるけど、歴然の戦士とは到底思えない。

 それなのに機体をあそこまで即時対応して乗りこなす…わからない。

 何故この男達が戦場で名を馳せていないのかが、何故今まで表に出てこなかったのかが…

 …それ以前に、何か重要な事を忘れているような気がするんだけれど…何かしら?

 

 

「お疲れ様。まさかここまで化け物化してるとは思わなかったわ」

 

「「いやいやいやいや、化け物ってあんたねぇ…」」

 

「…副司令、彼らは一体何者ですか?」

 

 

 …だめね、軍人は任務中は私情を晒してはいけないのに、この思いを隠しきれないわ…

 

 

「ああそうね、昨日は結局説明出来なかったわね。まりも、この二人は私の特殊任務に就いていた白銀 武中佐(・・)と黒崎 賢治中佐(・・)よ」

 

「えっ!?」

 

「「ふぉっ!?」」

 

 

 中佐…見た目、私の教え子達と同じ年齢なのに中佐…!?

 

 

「特殊任務はいくらまりもでも教えられないわ。オルタネイティブⅣの最重要事項に当てはまることだからね? 【Need to know】よ」

 

 

 夕呼は人差し指を自分の唇に持っていって【Need to know】の表示をした。

 

 

「ッ!? 失礼致しました! 私は神宮司まりも軍曹であります! 昨日の無礼をどうかお許し下さい!!」

 

「ッ!? いやいや、気にしないでください! アレは寧ろ捕らえようとしなかった方がまずかったんですから!」

 

「俺は根っからの軍人じゃないからそこまで畏まらんでいいって! 背中がムズムズするからやめてくれ!」

 

「し、しかし…!」

 

「はいはい、そこまでよまりも。本人達がもういいって言ってるんだからもういいじゃない。それじゃあんた達、行くわよ」

 

「はいぃぃ! 賢治、行くぞ…賢治?」

 

 

 私と会話してから少しして、黒崎中佐はシミュレーターのモニターをじっと見ていた。

 

 

「なあ武…これって、この反応炉を潰してシミュレート終了なのか?」

 

「ああ、まあそうだが…どうかしたのか?」

 

 

 いきなりどうしたのかしら…何か、思い悩んでいるみたいだけれど。

 

 

「反応炉を潰した後は…どうやって脱出するんだ?」

 

 

 

 

 

 !!??

 

 

 

 

 

「確かにハイヴを潰すのが衛士にとってのメインミッションだ。だがよぉ…まだハイヴ内に残ってるBETAを叩かにゃあ衛士は脱出できねぇし、それ以前に反応炉に着けるかどうかの問題もあるぞ? 今までどうやってアレ潰して来たんだ?」

 

「…G弾による殲滅かS-11機関を使っての自爆だ。だが、いずれも…潰れる事はなかったがな」

 

「…かあぁ~、ハイヴ攻略を目的としているのに、肝心のハイヴ攻略の兵器が自爆ってなんだよ。衛士に神風特攻でもしてこいってか?ハイヴにはたいして効かないって分かっててやってるなら、それこそ犬死にじゃねえか」

 

「「「「……………」」」」

 

 

 何も言い返せなかった…自分が矛盾の教育をしてきた事に

 私が今まで教導してきた子達に『決して犬死にをするな』と言う教育を施して来たのに、やらせているのは『自爆してでもハイヴを潰せ』という命令しかしていなかったことに…

 私は…人材を育て上げる、教官なのに…

 

 

 

 

賢治side

 

 

 

 

 前途多難だ…やることは山ほどあるなぁ。

 機体は装甲が脆いのに加えて華奢なボディ…どう考えてもまともに戦えんぞ?

 下手したらステルスボンバーより弱いか? マニュピレーターもまた細く握力も弱い…速さを武器とする俺の戦い方には聞く限り(・・・・)はピッタリな機体かもしれんが、乗れば文句大有りな機体だ。

 これは色々とピックアップしていくしかねぇなぁ。

 問題は、技術が追い付くかだな…

 

 超電磁砲は…無理だな。実現しようにもエネルギータンクが邪魔になるし反動がデカいから先ず戦術機が持たない。

 他にも技術力が追いつかない。

 

 ビーム兵器…いけるか?

 いや、無理だな。砲身のコーティングに費用が莫大に掛かりすぎるし、まずエネルギータンクが出来ない。

 

 バズーカ…いけるな。爆薬を改良し、砲身を折りたたみ式にすれば背中にマウントしてもたいして邪魔にはならなくなるだろう。

 あの世界の武器を参考にさせて貰おう。

 

 長刀は…一から造るしかないな。ありゃ欠陥品だ。重さも長さも強度も全てが中途半端。

 剣の利点がどこにもない。

 まだゲッターロボ號の大剣の方が重いけど重いなりの戦い方がハッキリしてるから使いやすい。

 

 短刀は…装備場所に問題有りだな。展開するにも持つのに遠くて遅いからBETAにすぐに対処できん。

 

 そして何より機体の新たなOSの制作だな。

 機体自体、さほど悪くはないがプログラムやCPUが機体に適していないからあれだけ無駄な『硬直時間』が発生する。

 これは暫くパソコンと睨めっこだな…ちくせぅ。

 

 

 

武side

 

 

 

 

 シミュレーターから出た時はまりもちゃんがこっちを睨んでたからびっくりしたぜ。

 あの様子だと俺達は今まで何してたのかと問い詰めそうだったから小声で賢治に口裏合わせるように言ったけど、それも杞憂に終わった。

 まさかの佐官。

 それも中佐…先生のお眼鏡に適ったということだろうけど、いきなり中佐はデカイなぁ。

 それにしても、門級と脳は桜花作戦で初めて確認されたBETAなんだが…どういうことだ?

 まさかこっちの世界は『前』よりも調査が進んで…いや、違うな。

 それなら国連である横浜の戦術機がバージョンアップしているし、兵器も増えている筈だ。

 まさか…霞か?

 これは後で聞く必要があるな。

 

 

 

 

 




以上、シミュレーター後編でした!
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