※ドラクエ9ベース。ブラウニー視点です。
ブラウニーすき
悪意ある殺戮だ、と僕は直感した。
ある朝に穴から這い出たら血溜まりだらけ。我らがブラウニー一族の縄張り、エラフィタ村の辺境が。横たわるのは軒並み同胞や親戚。そして不自然なくらい無事な
虚無のまま死体をのぞき込むと、斬撃と打撃、まさぐられたような痕。誘導されるように足元へ視線を移せば、傍に皮がかなぐり捨てられていた。
最悪な、吐き気さえする推測が浮かぶ。
――殺されたのは別目的のためで、あくまでおまけ。
熱い。頭が熱い。ずっとかぶっている三角帽子型のマスクを投げ捨てたくなるくらいに。……体調不良かと思ったが、どうも違うらしい。やがて僕は熱の理由を知覚した。
普段から持ち歩いている大木槌を構え直して、正面を見据える。無表情な4体の生物たちが、無感動に僕を見下ろしていた。やっぱり今日は絶好調なのかもしれない。だって全身にすごく力が滾る。
僕らモンスターとは違ってすらりとした肌色の指で、リーダー格と思わしき奴が僕を示した。すると何の躊躇いもなく残りの奴らはこちらに走り出す。青だの茶だの、意味ありげなグローブがやけにちらついた。
今から逃げるのなら、まだ間に合うかもしれない。けど実行したところで熱はずっと僕を苦しめるのだろう。息を忘れた皆の中に、こうやって後を追った同胞は多いのかな。
思考を打ちきり息を吸い込む。体を震わせて、溜める。最高の一撃を奴らにぶち込むために。不器用な僕らの、唯一の闘い方だ。
その間に肉薄した3体が僕へ啄むように腕を振るう。勢いで切られた風とともに、指先が僕のマスク内を掠めた。貫通を狙ったものではないとわかったのは、一連の動きが済んで初めてだった。また、この行動に奴らの殺戮に至った本分が凝縮されていると、僕はようやく確信する。
一手二手とこなれた動作が瞬間的に体の一部をまさぐっていく。視界の端にいたリーダー格すらも加担していた。冷たくて獰猛な笑みで。
僕が最大限まで力を蓄えた頃、奴らは突如に距離をとり、集まって円になった。そういえば、最後のまさぐりで何か剥ぎ取られたような気がする。
それよりも、大きな隙を突かない理由などない。渾身のぶん殴りをかますべく、最高潮に達した肉体のテンションをもって僕は接近を開始した。
空中に飛び上がって叩きつける刹那。振り返った奴らは。
――最初のような色のない面構えで、僕が舞う虚空を見上げていた。
「まーたまじゅうの皮ですかぁ」
「30体くらいハズレ続きだよな。もうやめようぜ? いい加減ブラウニーが可哀想だっての。くははっ!」
「ドーピングも楽じゃないねほんと。……なぁリーダー?」
「はいはい、切り替えて。ほら次だよ」
手放された大木槌は、もう握られない。
高らかな笑い声は草原の中でかき消えて、そしてまた生まれていくのだった。
ぬすむって確率渋いよなぁ