PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「どうしてこんなところに人が.....」
廃墟の内部に入り込んで行った僕がその謎の施設で見つけたもの、それは女の人だった。
「ロックが掛かるように作られているみたいだけど....どうしてこのカプセルだけ開いてるんだ?」
その女の人が入れられているカプセルのようなものを良く観察して見てみるとスライド式のカバーが後ろに動いていてカバーの動く部分にあるレールには埃が一切着いていないことからつい最近に開閉したことを物語っていた。
「連絡を送ってきたのはこの人....にしてはこんな状態じゃ無理なはずだしな。」
もう一度カプセルの中に目を向けて女の人の状態を良く見てみる。
「大体呼吸していないんじゃなあ........呼吸、呼吸をしていない!?」
最初は閉じている目の方ばかりを見ていて他の身体の状態をあまり詳しく見てはいなかった。だけど、それから少しして胸の辺りから腹部にかけて容態を確認したときにある重要なことに気が付いてしまったんだ....肺が機能していないということに。
「そ、そんな、死んでるんじゃ......」
その証拠としてその人の胸は上下に動いておらず、ただ死体のように静止するだけだった。
「ようやく、ようやくここまで来れたのに結局のところ助けることが出来なかったのか。」
もしかしたらだけど、このカプセルは生命維持装置でそれが何らかの理由で破損、それによってロックが外れて機械の機能も停止....それでどうにかして連絡を送ることが出来たけれど僕が辿り着くのが遅くて、それで間に合わなかったのか?
「......誰かは分からないけど、誰なのかは分からないけど、ごめんなさい。」
そうして僕はもうそこには居ないであろう女の人に形だけではあるけれど謝罪をした。気持ちが冷静では無くなりかけていたけれどどうにかしてそれを落ち着かせて。それで、僕は取りあえずバーンズさんに結果の報告をしようとして一旦カプセルのある方に背を向けて無線機を付けようとした....その時だった、思いもよらないことが起きたのは。
「......助けに、来てくれたんですね。」
「えっ?」
何処からか聞こえた声に気を取られた僕は本能的にその声が聞こえた方向に首を回した。
「.....」
そこには、カプセルから上半身だけを起こしてこちらを見つめている死んだはずの女の人が居た。
「あ....あ....ああ!そ、そうでした。」
突然のことで頭の中で情報が処理しきれなくなって、破裂しそうになりながらも僕の口から出た言葉がそれだった。
「えっと.....連絡に応じて急行したM.Sの者です。その、身体の方は大丈夫ですか?」
「.....問題、無いと思います。多分、ですけど。」
女の人は一瞬だけ視線を僕から自分の手の平に持って行って手の指を曲げては広げてを繰り返しながら僕にそう言った。
「あの、お願い、あるの。聞いてくれる?」
「?」
その人は白く細い手でカプセルの傍にあるモニターのようなものを指した。あれは何だろう?
「私はまだ、固定されてる。そこの機械で外してくれますか?」
「.....やってみます。」
どうやらまだ何か固定するものがあって女の人は動くことが出来ないみたいだ。僕はそのモニターに近づいて何処からかアクセスできないかを探した。
「何処からだ....?何処からなら行ける?」
そうして試行錯誤しながらも色々とモニターに対してアプローチをかけているとある拍子にモニターに手が触れてしまった。
「しまった!....ってあれ?」
だけど、それでモニターの電源が付いたのか画面が表示されてホログラムタイプのキーボードが表示された。まさかこんな起動方法だったなんて.....
「....取りあえず起動できたから良いか。」
電源が入って起動が完了すると僕の端末に入っているものや駐在所のコンソールに使われているものとは全く違うようなシステムが表示されていて完全にこのカプセル専用のコンピューターとして改造されているようだった。どことなく玄人向けな仕様だと感じる。
「えっと、このカプセルの管理システムの場所は....名前からしてここかな。」
「そのファイル、名称は何ですか?」
「?名称は試験体用カプセルシステム、ですか。」
「それで、あっていると思います.....」
そこから女の人の指示も受けながらも細かい設定を行って不具合が発生しないように解除できるようにした。それにしても仰々しい名前のファイル名だな。
「.....よし、これで多分ですけど出来ると思います。そちらの方は大丈夫ですか?」
「...問題ありません。」
「じゃあ、外しますよ....」
あちらの確認を取ってから準備の完了をして僕は解除の入力をした。
『接続中のケーブルの切り離しを行います。現在状態の確認中......確認終了、切り離します。』
モニターから大きめの音で合成音声の無機質なアナウンスが流れると何かが外れるような金属音が連続して聞こえてきた。どうやら固定していたものが取れていっているみたいだ。
『....切り離しを完了しました。プログラムの実行を終了します。』
「どうですか?外れましたかね。」
「....ありがとう。大丈夫、外れました。」
そう言うと女の人はカプセルから完全に起き上がって僕と同じように立った。さっきまで横になっていたからあまり分からなかったけど身長は僕と同じくらいなんだな。
「....そういえば、まだ言っていませんでした。」
すると女の人は何かを思い出したように声を出すと僕の目をしっかりと見つめてからこう話してくれた。
「私は試験体、No.01、助けてくれて、ありがとう。そして、これからも、宜しく願います。」
「試験体.....お名前の方は何と言うんですか?」
「.....?これが私の名前、私の名前です。」
頭をかしげながら不思議そうな顔をしてそう返してくれた。試験体.....って流石にそんな名前の人居るわけないな。と言うことは名前が無いってことか....?
「ほ、本当にそれが自分の名前だと思って....いや、覚えているんですか?」
「はい、そうです。これが私の名前.....変わり、ありません。」
この人は自分の名前が試験体No.01だと覚えているからそれと同じ名前で呼べば反応してもらいやすくて良いんだけど....でも、それだとやっぱり何か違う気がするな。
「.....ちなみに僕の方はノア、ノアって呼んでください。まあ、呼ぶ機会は無いと思いますけど....」
「分かりました。そう、覚えておきます。」
何か、何かいい名前は無いか。どうにかしてその女の人の名前を考えられないかどうか....そうして色々と思考を巡らせていると突然地面が、施設全体が大きく揺れたんだ。
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「はあ...はあ.....おい、もう気は済んだか?気が済んだのなら早く行ってくれ、こっちも忙しいんだよ!」
俺が少し大きめに声を出すとさっきまで殴り合っていた二人組は観念したように逃げ散っていった。いい歳してやめて欲しいぜ全く....
「ただでさえ今は仕事が多いってのに.....これも全部C.R.S.Fの所為だな。」
少し前からその活動の規模が大きくなり続けて来ているC.R.S.F。最初の頃には小規模の特に危険性の低い組織だった.....というように情報が回って来てはいるがもしそれが正しい情報であるならこの短い短期間でこれ程にまで組織が肥大化していったのには必ず何か裏があるはずだ。
「取りあえず一旦駐在所には戻れそうだな....」
過去にもこういった行き過ぎた組織は存在したことがあったみたいだが今回のような組織は例が無いらしい。まあ、それは被害大きさを見れば分かることか。ともかく現段階でも未だに判明していないC.R.S.Fの中心人物について更に捜索が必要だ。
「どれどれ....さっきの奴らの識別カードのコピーでも詳しく見るかな。」
M.Sの方で特に何か指示が出たわけではないがC.R.S.Fの関係者を探し出して情報を聞き出す為に識別カードのコピー可能な一部分だけをコピーして保存してある。まあ、この方法で探し出せたのは一回程度しか無かったんだがな。
「....やっぱりそう簡単には見つからないか。」
やはり今回も特に関係のない人物だった。まあ、種族がキャストのみに限定されている組織?だというのも情報として上がって来ていることだし今度からは種族を限定して聞いて行った方が良いかもしれん。
「はあ、そういえばノア君も出払っているところだったな。確か救助要請が何だか言ってたか....」
さっき殴り合いに発展する数分前に無線機の調子が悪いと言ってノア君が連絡を飛ばして来たのを思い出していた。
「無線機、壊れていなければ良いんだがな。今まで行ったことのないような場所に向かうようだったから何かあった時の為に連絡が繋がれば良いんだが。」
そうして俺は現場から離れて行って駐在所へ戻るために近くの場所にあるコンベアに向かって歩いていた。
「取り敢えず今日は駐在所に戻ってから報告書の作成をして、その後からデータの整理をして......」
いくら規模が小さくとも報告書の作成はやらされるからな....そんなことを考えながら歩いていると普段ならここでは聞くことの無いはずの音が遠くから微かに聞こえてきた。
「何だ.....って、あれは!?」
その音に反応した俺は瞬時にそれが聞こえた方を向いた。ここからだと上手く見ることが出来ないがかなり近い場所で今のは起きたらしい。まさかC.R.S.Fがやったのか。
「施設の爆発、にしては規模が小さいな。もしかしてあそこで撃ち合いでもやってるのか?」
はっきりとは分からないが断続的な破裂音、重火器を放った時のような音が聞こえてきて...それから撃ち合いなのかもしれないと思った。だとしたら不味いぞ?
「....良し、俺も直接になるが早く現場に向かわないとな。」
それで今の今までは駐在所に向かっていたが進路方向を変えてその現場の見える方に向かって俺は駆け足で向かっていった。
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「一応基本的な
走りながらも俺は腰から拳銃を取り出して調子を確認していた。
「....特に問題は無いな。後は弾さえ気にすれば。」
駐在所を出る直前のことを思い出しながらも急行を続けた。確かに装備は持ってきてはいたが流石にこの事態を予測していたわけでは無いから持ってきていた弾薬はそれ程まで無かったはずだよな....
「くそ、ノア君が居れば......ノア君?」
不意にノア君という単語が出てきたとき思考が白になりかけていたがどうにかして持ち直した。そして更にあることを思い出した。
「廃墟の多い場所で撃ち合いなんて....組織の行動にしては意味が無いんじゃないのか?それにあの区画はノア君に貰った地図の場所だし....待てよ、ノア君の地図?」
少し前ににノア君から貰った例の
「....少し嫌な感じがするが、あの場所はこれだとどの位置にあるんだ?」
周辺の建物から推測してその印のある場所を検討をつけて探した。この辺りは使われていない建物がほとんどで地図と照らし合わせれば見つかるのは時間の問題だった。
「良し、あのビルの向かい側にある大通りを後ろに.....」
そうして多少手間取ったがどうにかノアくんが向かったであろう場所を見つけることが出来た、だが。
「....畜生、綺麗に潰れてるじゃねえか。」
その向かったであろう建物は既に爆破で破壊されていた。
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「...駄目だな、完全に壊れちまってる。建物があったのかすらも分からないぞこんな有様じゃ。」
向かう最中で数回程戦闘になりかけてしまったが基本的にあまり攻撃をこちらから仕掛けないように、逃げながら動くことでどうにか建物の残骸がある場所に向かえた。
「.....無線機も駄目か。やっぱり壊れちまったのか?それとも電波が届かないような位置に居るのか?」
一応さっきから連絡を飛ばしてはいるが一向に応答は返っては来なかった。事前に故障しているかもしれないなんて言うもんだからこれじゃノアくんがどんな状態にあるのか分かるはずが無い。
「まあ、取り敢えず電波が届かないと言うように仮定しよう。そうだとしたら居る可能性が高いのは....地下か。」
故障してしまったと見切りをつければ探す範囲が膨大過ぎて俺だけじゃ無理だが地下に居ると仮定できるならまだ見つけられる筈だ。
「何処かに階段が、とは思ったがこんな状態だとそれを確認するのもか。」
けれどそのような階段は当然ながら何処にも無い。だが、諦めてしまうよりかは探せる方が良いだろう?そうして俺は瓦礫を手で掻き分けながら下から空気が流れていないか警戒を欠かさずに1人探し始めた。