PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-14 「換装」

 「い、今のは何だ?凄く大きく揺れたけど.....」

 

 今まで感じたことのないような揺れを感じて僕は体制を崩しかけた。この揺れ方は何か違うぞ...

 

 「....何か、嫌な予感がします。言いにくいですが、息苦しさを.....早く出ましょう。」

 

 女の人は僕と同じで床に尻餅をついてしまっていたところを近くの物に掴まりながら立とうとしていた。嫌な予感....?

 

 「あ、入り口なら僕が入って来る時に使ったものが戻った方にある筈ですよ。少し遠いですけど。」

 

 僕はさっき通ってきた道を指で指した。心なしか通路の光が弱くなっている気がするな、やっぱりこの人が言う通り何かあるのかもしれない。

 

 「そう、ですか。私はそう言ったこと、知っていないので。では、行きましょうか。」

 

 「...分かりました。気を付けながら行きましょう。」

 

 女の人が歩くのが覚束ないところを横から補助しながら来た道を戻ってこの施設から出来るだけ早く出ることにした。

 

 「やっぱりまだ体が....というよりもパーツですか。」

 

 僕は女の人の方を見る。人工皮膚の部分に走っているいくつかの繋ぎ目の部分を除いてしまえば普通の人と大差変わらないほどの見栄えのパーツだった。普通はキャストの人は戦闘用にかなりの装甲パーツを取り付けているからこの人みたいな物は初めて見たかもしれない。

 

 「ごめんなさい。まだ、スリープから解除されたばかりで、上手く動かなくて。」

 

 確かにあのカプセルでずっと横になっていたのなら、いつからかなのかは分からないけどあの状態を見る限りはかなり以前だろうから最後に動かしたのも....まあ、上手く動かないよな。

 

 「あのパーツがあれば....」

 

 「?」

 

 「...ごめんなさい。何でも、無いです。」

 

 そうして引き続き僕らは出口に向かって進んだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「よし、ここまで来れば後は階段を昇るだけだ。」

 

 通路を着た時の通りに戻っていると最初に下った階段の場所にまで辿り着くことが出来た。何だか来た時よりも戻るときの方が体感時間が早い気がするな。

 

 「じゃあさっきみたいに気を付けてステップを踏んで....?」

 

 女の人を続けて補助しながら階段を上るために先に階段の段を上がった僕は頭の上に何かが落ちてくるのを感じた。何だろう?

 

 「瓦礫?来た時にはこんなもの落ちてこなかったのに。何か崩れて...」

 

 「危ない!」

 

 その瞬間女の人が繋いでいた僕の手を体重も使いながら引っ張ってきた。すると、それに続けてとてつもない轟音が響いて辺りは一瞬の内に砂埃で何も見えなくなってしまった。

 

 「うう....」

 

 「大丈夫、ですか?」

 

 「.....はい、何とか。ありがとうございます。」

 

 少し倒れた時に腹を床にぶつけてしまって痛めたけれど致命傷にはならなかった。

 

 「これじゃ、ここから出られないな...」

 

 だけど、助かることはできたけれど目的だった出口への道が無くなってしまった。弱ったな....ここ以外の出口なんて分からないぞ?

 

 「....ノアさん、少し、相談があります。良いでしょうか?」

 

 「へっ?そ、それは勿論.....」

 

 そうして考えても結論が出ないまま困り果てていると女の人が提案してきてくれたんだ。

 

 「...この施設には恐らく、残っていればですが、私の試験時に使用していたパーツ、それがまだある筈。あれを使うことが出来れば....」

 

 「そのパーツであれば元の力が?」

 

 「はい、恐らくなので、まだ断定はできませんが....」

 

 「出来ることの候補はなるべく多い方が良いですよ。それで、そのパーツは何処にあるかとかは....」

 

 「記憶通りなら、あのカプセルの付近です。」

 

 それで僕らは一旦引き返すことにしたんだ。ここに居るままじゃ何もできないしね。

 

 「じゃあ、早く行きましょうか。」

 

 再び立ち上がってまたカプセルのあった場所へ....その時だった。

 

 「おいっ!あれって俺たちが探してた試験体じゃないか?と言うことはあいつに.....」

 

 「!」

 

 厚めの装甲を身に着けた男性のキャストが僕らの通ってきた通路に現れたんだ。

 

 「待て!そこから動くんじゃない!殺すぞ!」

 

 僕が女の人の手を掴んで立ち上がろうとした時、その男はライフルを構えて僕の方へ照準を向けた。不味いぞ。

 

 「わ、分かりました!動きませんから撃たないでください!」

 

 「よおし、そのまま....そのまま動くなよ。」

 

 両手を上げて待っていると男はゆっくりと僕の方へ近づいてきた。その人の脚部のパーツが床を進む度重い音が鳴る。

 

 「へへ、M,Sも大したことねえな。いつも震えてたのが馬鹿らしいぜ。」

 

 今ならもしかしたら....男が気を抜いているのを見て僕は対抗策を考え始めた。こういう時に使えるもの、銃以外で!

 

 「.....」

 

 「良し、その腰に着けている物外して手を出せ。お前は俺の方が連れて....」

 

 僕は胸の部分にある()()()()()()を知らせるランプを確認して、それから思い切りスイッチを押した。

 

 「目を瞑って!」

 

 「!」

 

 スイッチを押して数秒後、軽い金属音が鳴ると辺り一面が真っ白になるほどの光が一瞬にして狭い通路の中に広がった。

 

 「あああああああああっ!!」

 

 次の瞬間フラッシュバッチを向けた男の叫び声が聞こえてきた。この人には悪いけど目に向かって照射したからしばらくは....

 

 「い、今だ!」

 

 そこで僕は女の人の手を掴んで床に倒れ込んでいる男の人を尻目に一目散に走り出した。

 

 「何だったんだ今の光.....って、お前は!待て!」

 

 「...悪いけど、今は相手にしていられないんだ!」

 

 僕は走りながらも片手で持っていた拳銃(P1A2)を抜いて出来るだけ装甲の薄い場所をめがけて数発相手に撃ち込んだ。合計4発。最初の弾は弾いてしまったけどその後の弾はヘッドパーツの胴体との繋ぎ目に命中した。

 

 「ごめんなさい!」

 

 「うおっ!?」

 

 それ以降追ってくることは無かったけれど僕らはひたすらに走った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「はあ、はあ....何とか出来たかな。」

 

 あれから走り続けているとすぐさまカプセルのあった場所の付近にまで戻って来ることが出来た。それにしてもあの人達は一体?

 

 「ノアさん、こちらです。」

 

 「あ、ああ、そっちが目的だった。」

 

 緊張から冷静な判断が出来なくなりかけていたけれど女の人からの声掛けを聞いて少しだけ冷静になれた。

 

 「電気は....あれ?つかないな。」

 

 「古くなったか、先程の衝撃か、分かりませんが.....仕方がありません。奥の方ですから、私について来て下さい。

 

 そうして今度は女の人に先導してもらう形になってその部屋の中を進んだ。部屋の中はしばらく外の世界と隔離されていたのかとても冷たい空気が流れていた。

 

 「そういえばですけど....そのパーツのだと交換は普通に出来るんですか?あんまり見たことが無いタイプだったので...」

 

 手を引かれながらも僕は聞いてみた。この人に出会ってから気になってはいたけれどこのタイプのキャストの人は見たことが無くて、どうやってパーツの付け替えを行うのか想像もできなかった。

 

 「それなら問題、ありません。交換用の装置、それがありますから。」

 

 「そうなんですか?」

 

 「はい、形はあのカプセル、あれと似ています。操作時には貴方の、ノアさんの力を借ります、お願いしても....?」

 

 「お願いされる程でも....僕しか居ませんからやらせていただきます。」

 

 どうやらこの人の入っていたカプセルと同じような物で出来る?みたいだ。それにしてもこの施設、この人もそうだけど色々と謎なことが多いな.....まあ、今はそんなことをしている暇は無いから気にするのは後からだけど。

 

 「ノアさん!ありました。この装置です。」

 

 そう言うと女の人は手で装置を指した。

 

 「凄いな....見たことが無いぞ、こんなの。」

 

 装置は体を固定する場所を中心に作業用アームが随所に取り付けられていて人の手は触れずに作業が出来ると言った風だった。そのすぐ隣にはカプセルに備え付けられていたのと同じモニターがある。

 

 「では、今から私が接続します。出来ましたら、システムの起動を。」

 

 そういうと女の人は装置の中に足を踏み入れていってあのカプセルに入っていた時にケーブルが接続されていた部分を体を固定する部分に合わせていた。よし、僕の方も準備しないと。

 

 「.....ノアさん!こちらの方は、準備が出来ました。何時でも始めてください。」

 

 「分かりました、電源を入れますね。」

 

 僕はカプセルの時と同じようにして画面を触った。キーボードが表示される。

 

 「良かった、まだ使えるみたいです。」

 

 「それは良かったです。では、ファイルはNo.01から番号12を、それで大丈夫です。」

 

 ファイル名称はNo.01、番号12番。中に入っているデータは少なくて直ぐに探し出すことが出来た。項目を選択するとアナウンスは無くそのまま作業が始まった。

 

 「は、はあ....初めて見たけどキャストの人はこんな風にパーツを交換するんだな。」

 

 頭が後ろ側から支えられると頭部と胴体の切り離しが行われ、胴体は別の場所に運ばれた。しばらくすると黒に近い灰色の外装に赤いラインが走っているデザインが施された別の胴体パーツが来て頭部との接続が行われた。

 

 「かなり厚い装甲が着いてるな。前に見たフィリンさんのフウリンカタイプとはレベルが違うぞ....?」

 

 そうして頭部と胴体の接続が終わると両腕と両足が運ばれて来た。色は胴体の物と同じカラーリングでどちらとも角張ったデザインだった。ちなみに足の方はシリンダーが外側からでも確認できる物でスラスターも複数取り付けられていた。

 

 「凄く見た目だけで火力がありそうだけど、こんなものは見たことが無いな.....アークスの人が使っているのもか。」

 

 両腕、両足の接続がスムーズに行われると作業が終わったのか女の人は目を開けて僕の方を見つめていた。改めて全体を見てみると先程までとは打って変わって人工皮膚が頭部以外に無い見た目になっていた。これなら数発の弾丸にも耐えられそう....

 

 「.....どうやら無事に、出来たようです。これでここから出るには、十分です。」

 

 そう言うと装置から自力で離れてさっきまでよりもしっかりと自立していた。今まで着けていたパーツよりも今つけている物の方がこの人には合っているのかな?

 

 「無事に出来て良かったですよ、これであの瓦礫も退かせそうですか。」

 

 「はい、可能性としては、ですか。」

 

 「じゃあ、早いところここから出ましょう。することも無いですしね。じゃあ画面を....?」

 

 それで僕は装置の電源を切ろうとしてモニターをもう一度見た。すると、画面には今女の人に取り付けたパーツの名称?が設計画像と一緒に表示されていたんだ。気になった僕は少しだけ詳しくそれを見た。

 

 「A.G.T No.01用ミィーンシリーズ....ミィーンシリーズ、ミィーン。」

 

 「ノアさん?どうか、されましたか?」

 

 「い、いえ...今、良いことを思い付いて。貴方の名前のことなんですけど、ミィーンって名前。その貴方が取り付けているパーツの名前で、お嫌なら別に良いんですけどね....」

 

 僕は名前を考えるのが苦手でこの人のことを何て呼んだら良いのか分からなかったけど、丁度良い物があった!....だけどこの人が気に入ってくれるかは別か。

 

 「私に....私の名前、嬉しいです。嬉しいですよ、ノアさん...」

 

 「気に入って貰えたのなら良いんですよ。じゃあ、これからはお名前で....ですか。」

 

 気に入って貰えないだろうと少し諦めかけていたけれど、この人は....いや、ミィーンさんは気に入ってくれたみたいだから良いのかな。

 

 「そういえば、話は変わりますけど....さっき戦闘したあの人達が入ってきたのは何処からなんですかね。崩落して出られなくなった場所以外には出入口は確認していないですから。」

 

 今は落ち着いているから分かることだけれどあの崩落してしまった入り口の他に入れる場所は無かったはずだ。だとしたら他の入り口から....?

 

 「ここにはあまり、詳しくですか。私が覚えているのは、この部屋、それとカプセル。それだけです。」

 

 「そうですか....」

 

 どうやらミィーンさんでもこの場所には詳しくないらしくてあの場所以外の出入口は見当がつかなかった。

 

 「そうであるなら出入口が2つも無ければ無理な話だし.....2つ?」

 

 あの入り口からではない場所から、つまりあの場所以外からになると出入口は2つあることになる。けれどその様な物は入ってきたときに確認できなかった....と言うことは。

 

 「もしかして新しい入り口を作ったのか?」

 

 「新しい、入り口?」

 

 「そうです、この施設は下にありますから上から見当をつけて穴を開けてしまえば出来ることです。ただ、彼らが何の目的で来たのかは分かりませんけど.....」

 

 確かに穴を開けたところまでは分かるけれど目的が無ければそんなことはしない。目的.....あるとすればミィーンさんか?

 

 「....あの人方の目的、恐らくは私です。試験体という、言葉を口にしていましたから。」

 

 そう思ったときにはミィーンさんがその答えを出していた。

 

 「何となく、何となくは分かってはいましたけど.....詳しく聞くのは後からにします。出ることを優先しましょう。」

 

 「....分かりました、行きましょう。」

 

 ミィーンさんは少し俯いた後、装置横のラックに置かれていた小銃を手に取って安全装置を外していた。

 

 

 

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