PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-16 「自我」

 「この辺りから感じる....」

 

 「!」

 

 そうして身構えているとキャストの人が通路から飛び出てきた。僕は下げて構えていた銃を上げて照準をすかさず構える。

 

 「う、動かないでください!」

 

 その人は最初何処か虚ろな声だったけれど、僕が銃を向けていることに気が付くと意識が元に戻ったのか引き締まったような声色になった。こ、怖い人だな....

 

 「....何のつもり?」

 

 「動くと、動くと撃ちます!だから、動かないでください....!」

 

 なるべく戦うことで無暗に消耗したくなかった僕は咄嗟の判断で武装解除の要求?を見様見真似でやってはみたけれど....やっぱりあの時のバーンズさんのようには上手く出来ていない気がする。というよりもこんなに引け腰じゃ相手に対して効果も無いか。

 

 「.....はあ。」

 

 「?」

 

 それでも引き続き震える手で無理をしながら銃を構え続けているとその人は呆れたような返事をして、要するに警戒を解いたようだった。この人は何か違う...?そう思っているとその人はゆっくりと歩み寄ってきた。

 

 「ほら、これで良い?ワタシはまともな武器一つ持ってやしないわよ。」

 

 手を腰よりも高い位置に上げて何も持っていないことを表していた。本当に何も無いのかな....?

 

 「それに第一貴方に危害を加える理由が無いわ。ほら、武器は下ろして。」

 

 「は、はあ。」

 

 突然の出来事でそれまでは緊張していたけれどその人の言葉で空気が変に変わって気が抜けた僕はその人が言うように銃を下げて腰に戻した。

 

 「ああ、こちらの方向でしたか。如何せん起き上がったばかりでセンサーの感覚が鈍くて...」

 

 銃を戻して再びミィーンさんを手で補助しようとしているとその人が来た方向からその人とそっくりな風貌をした人が出てきたんだ。そっくり、と言うよりほぼ同じ規格みたいに見えるけど。例えばパーツの形状とかカラーリングとか......あれ、何処かで見たような。

 

 「私の方も無事発見できましたし、この......?」

 

 後から来たその人は一度確かめるようにしてミィーンさんの方を見たかと思えば次には僕の方を見ていた。僕に何か気に障ることでもあったかな。

 

 「もう一人の方のわたし、この方は一体....」

 

 首を傾げながら先に来ていた人の方を見ながらも僕の方も終始覗き込んでいた。付けているゴーグルでその人の目元が見えないから何とも言えないけど何となく困惑しているように仕草からも感じた。

 

 「こっちも聞きたいところね。出会ったことがある以前に名前すら知らないような人物が倒れているもう一人のワタシの傍に居たのよ?気にならない訳が無いわ。」

 

 ミィーンさんが目的なのはC.R.S.Fと同じだけれど、その理由は全く違うみたいだ。

 

 「.....あ、あの、話しているところで悪いですけどちょっと聞いても良いですか?」

 

 気になって僕はそこで思い切って聞いてみることにした。どうしてミィーンさんを探しているのか。

 

 「?別に構わないけれど、何かしら。」

 

 「えっとですね、率直に聞きます。何故ミィーンさんを....この人のことを探していたんですか?」

 

 僕は目線を下げてミィーンさんを見やる。

 

 「探していた、か。まあ君から見ればそう見えても仕方ないか。」

 

 そう言うとその人は胸の前で組んでいた手を腰にやって言う。

 

 「貴方には...そうね、にわかに信じがたいことかもしれないけれど探していたわけではないのよ。」

 

 探していたわけじゃないって、どういうことなんだ。

 

 「そう、探すなんてことをしたところで、ワタシ達は最初から一つでしかないのだから。」

 

 ()()()()()()()()()....?直ぐにその言葉が何を表しているのか僕には理解が出来なかった。それで少しの間固まっていて、意識がふっと戻った次の瞬間にはその人達は頭に取り付けていたゴーグルを外し始めてて....幾分も経たない内にそれは外された。

 

 「...どうかしら、これで説明しなくても分かりやすいでしょう?」

 

 そして、そのゴーグルの下にあった顔は。

 

 「この通り、ワタシ達は一つなの。」

 

 良く見知ったミィーンさんと同じ顔だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「そ、それは....その顔は...」

 

 僕はそのショックから何が何だかわからなくて、混乱していた。だって...同じ顔の人が3人も居るんだよ?

 

 「貴方が支えているワタシと...こっちの方のワタシとも同じ顔でしょう?」

 

 後ろに居た後から来た方の人が前に出てきてその人と横並びになった。そこでようやく気が付いたけれど...顔以外の物も同じだということに。そこから続けてミィーンさん?は話を続ける。

 

 「....私たちは最初は一人の人間だった。だけど、ある時を境に分けられた....分けられてしまったの。」

 

 少し苦しい表情をしながら話を続ける。

 

 「分けられた?」

 

 「...そう、分けられたのよ。ワタシやこっちのワタシは後から知ったことだけれどそういう実験をされていたのよ。」

 

 するとミィーンさん?は通路の壁を見やった。

 

 「ここはそれを行うために作られた場所、辺境にある主力艦とも呼べない旧型艦のアークスシップに秘密裏に作られたこの場所でね。」

 

 秘密裏にって.....そういうのは指定教育で勉強したことがあるけれどそれはもう過去のことで今はそんなもの無いはずじゃ...?

 

 「秘密裏にって、それは昔ならやっていたって聞いたことがありますけど...今はもう無いはずですよ?アークスの上の方でもそう決まってるんですから。」

 

 「....はあ、貴方ってあんまり人のことを疑わないタイプの人ね?」

 

 「?」

 

 どういうことだろう。そう思って気が抜けているとさっきみたいに呆れたように言葉を返された。

 

 「素直過ぎると言うか、純粋すぎると言うか....まあ今は良いわ。」

 

 「は、はあ...」

 

 「取りあえず、貴方の知っていることは恐らくだけど半分合っていて半分間違っているの。現にその組織が作り出したものが目の前に居るから信じないというのも無理だと思うけれど。」

 

 確かにそう言われれば信じざるを得なくなるけど....やっぱり、今のアークスには何かがあるのかもしれない。C.R.S.Fのこととかを正当化することはできないし認めることはできないけど、ああいったことをしたくなる気持ちにもなる何かが起こってるってことなのかな。フィリンさんの言っていたことを思い出しながら僕は想像した。

 

 「....ワタシ達は元々一人の人間だったけれどここでの実験でそれは変わったわ。」

 

 「ここでの実験?」

 

 「そう、実験。それも今までにされたことも無いようなものをね。」

 

 ミィーンさん?は僕が抱えている方のミィーンさんの方へ来て説明を続けた。

 

 「昔、凄いアークスが居たことは知ってる?教わったことがあると思うけど....」

 

 「凄いアークス.....あの500年前の戦いで活躍したとかいう人ですか?僕が知っているのはその人だけなんですけど....」

 

 「そう、その人で間違ってないわ。500年前のその人よ。」

 

 500年前、名前は忘れてしまったけれどその大きな戦いで大きく貢献をしたアークスが居るんだ。でもその詳細は明かされていなくて見た目どころか名前も分からないらしいんだけど.....その人が何の関係があるんだろう?

 

 「そんな人材が居ればアークスは安泰して暮らせる.....だけど、それはその人が不老不死ならのお話。永遠に生きられる人間なんて、生き物なんてこの世界には存在するわけが無いわ。」

 

 「......」

 

 「そこでアークスは慌てたのよ、頼りにできるものが居なくなってしまうのだから。」

 

 その人はミィーンさんの頬を撫でながら話を進める。

 

 「...それで、誰が考えたのかは知らないけどそれを解決する為にあることが考えられたの。何だと思う?」

 

 「何、ですかね。居なくなってしまうのを防ぐために.....延命処置とかじゃ本質的な解決にならないですか。」

 

 その人が居なくなってしまうこと、死んでしまうことが危惧していることなら延命処置を施したり....どれも人道的じゃないけどそういう視点から考えるならあり得ることだ。

 

 「それも一時期は考えられたみたいだけれど人の身体には限界があるから....だからそれは行われなかったわ。」

 

 「...そうですね。じゃあ、別の方法が?」

 

 そう聞くとその人は軽く頷いた。

 

 「その考え方では、だけど。維持するのではなくて同等の力を持った者を沢山作りだす...量産することに計画は転向されたの。」

 

 「量産、ですか。」

 

 「....ワタシもその計画に使われた人間の内の一人で、気が付いた時には強制的にキャストにされていたわ。」

 

 そう言うとその人は自分のボディパーツを眺めていた。

 

 「だけど、性能としては中途半端なもので正直なところ失敗作だったって良く言われていたわ。身体的負荷を下げるために施したキャスト手術が逆に仇になって、生身だった時よりも低くなってしまったらしくてね。」

 

 「そういう現象は良くあるって聞いたことがあります。生身の時よりも少しだけ劣ってしまうって。」

 

 「うん....その通りよ。だから、それを解決する為にあることをすることになったの。それがワタシ達が生まれる理由になるんだけれど....」

 

 この人たちが生まれることになった理由....何だろう。ミィーンさん?が複数居ることは分かったけれど、何故なのかか....

 

 「....簡単に言ってしまえば一つしかないワタシの脳を3つに分割して、それをそれぞれのヘッドパーツに取り付けたのよ。だからワタシ達は元々一人だったの。」

 

 「脳を分割って、そんなことが出来るんですか...?」

 

 「出来ることには出来たわ。ワタシ達が居るのがその証拠だけれど.....やっぱり弊害はあったのよ。」

 

 そう言うともう一人の方のミィーンさん?も近づいて来てミィーンさんの下に集まった。

 

 「そもそも、本来の形であればワタシ達は自我を持たないはずだったの。こうして話すことだって.....でも、ワタシ達を接続する為のシステムが敏感に反応し過ぎたのが原因で元々のワタシがその性質ごとに分裂してしまったのよ。」

 

 するとその人達は僕に代わってミィーンさんを手で支えた。こうして見るとミィーンさんが3人居るようにしか見えないな....

 

 「別にそのこと自体は想定の範囲内だったのだけれど...ベースになるワタシ、貴方が出会った方のワタシは主なコントロールを行う役割があるというのにそのコントロールを行うために必要な精神の力がとても弱かったの。それで今みたいに倒れてしまったりね。」

 

 ミィーンさんが倒れてしまったのはそういうことだったのか。精神を使う.....あの時に戦わせなければ大丈夫だったのかな。

 

 「でも大丈夫よ。ワタシ達が元の通りにこのワタシの中に戻れば良いだけのことだから。」

 

 二人は立ち上がると目を閉じて意識を集中させ始めていた。ミィーンさんに戻る....?

 

 「大丈夫なんですか?僕にはあんまり分からないですけど....」

 

 「不安定だけれど、大丈夫よ。何度もしたことがあるから。」

 

 するとミィーンさんの方で何かが作動したようだった。アナウンスが流れてくる。

 

 『システムの接続を行います。接続状態の確認を.....接続状態の確認終了。No.01へのNo.02、No.03の接続を開始します。』

 

 「ワタシが目覚めたら宜しく頼むわね。そのワタシは精神力も勿論だけど戦闘には向いていないの。だからなるべく安全な場所に...お願いするわね。」

 

 「わたしからも、お願い致します。」

 

 『接続進行度、カウント6、5、4、3....』

 

 「わ、分かりました。安全な場所に運びます。」

 

 僕がそう言ったときには既にカウントは終わっていた。

 

 『...0。カウント終了、接続を行います。』

 

 そのアナウンスが流れると二人は立っていた状態から突然体から力が抜けたように倒れてひざまづいてしまった。そうしてそれに驚いていると次のアナウンスが流れて来たんだ。

 

 『...精神状態の基準値にまでの回復を確認。応急処置スリープを解除します。』

 

 するとミィーンさんは再び目を開けた。

 

 「あ、れ。私は何をして...」

 

 「ミィーンさん?大丈夫ですか?」

 

 少し混乱しているミィーンさんを見て僕は声を掛けた。

 

 「ああ、ノアさん。やっぱり駄目、でしたね。倒れてしまいました....」

 

 「良いんです、僕にも原因がありますから。」

 

 そうして話しているとミィーンさんはさっきの二人の方を見た。

 

 「やっぱり、来てくれたんですね、私達。」

 

 「....ミィーンさんが倒れた後、直ぐに駆けつけてきましたよ。」

 

 「そう、ですか。」

 

 ミィーンさんは再び俯いた。

 

 「取りあえずその方達から安全な場所に連れて行くように頼まれて.....早くここから出ましょう。上に向かって空いた穴はここからそう遠くないと思います。」

 

 「....分かりました。」

 

 ミィーンさんがそう返事をした後、立ち上がるとそれに反応するようにして今までひざまづいていた2人だったものが動き始めた。接続ってこういうことだったのか....

 

 「す、凄いですね....」

 

 「...私自身、欲しくは無かったです、この力は。だけど、こういう状況なら、問題ないですね。」

 

 そうしてミィーンさんは....ミィーンさん達は完全に立ち上がった。

 

 

 

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