PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-17 「帰投」

 「うおああああっ!!」

 

 「!」

 

 ミィーンさん達が立ち上がったのを見て少しぼうっとしていると通路の奥から叫び声が聞こえてきた。そうして何が起こったのか考えていると軽い発砲音と共に聞き覚えのある声が続けて聞こえてきたんだ。

 

 「このっ、何だって言うんだ?いきなり数が増えやがって.....」

 

 この声、もしかしてバーンズさんか?

 

 「バーンズさん!こっちです!」

 

 僕はとにかく声の聞こえた方へ向かって名前を呼んでみた。

 

 「その声、ノア君か?」

 

 「は、はい!ノアです!」

 

 やっぱりバーンズさんだったみたいだ。知っている人が来てくれたのは心強い.....けど、どうしてバーンズさんがこっちの現場に来ているんだ?あの人は別の件で違う現場に行っていたんじゃ....

 

 「分かった、今そっちに行く。」

 

 そう返事が返ってくると軽いブーツの音が響いて来て、確実に僕の方へと近づいてきた。それが目の前にまで来たと思えば角からバーンズさんが出てきた。どうやらバーンズさんの方も無事だったみたいだ。

 

 「ここに居たか。全く探したんだ....」

 

 そうしてバーンズさんと何故か合流出来たかと思えばバーンズさんの視線は早速僕の方ではなくてミィーンさんの方へ向けられていた。それこそ最初の内は普段通りの目だったけれど、ミィーンさんが視界に入った途端バーンズさんは突然止まった。

 

 「....ああ、そういうことか。ノア君の横に居るのが連絡で言っていた救助要請者だな。」

 

 少し考えた後でバーンズさんは口を再び開いた。そういえばバーンズさんにまだミィーンさんのこと、連絡していなかったっけ....

 

 「そうです、無線機が使えなくて連絡できていませんでしたけど....取り敢えず今は無事を確認してこの施設から出るところでした。」

 

 「そうか....まあ、双方無事だったのなら良いことだ。小さい怪我も無いんだろ?」

 

 そう言うと少し前かがみになって僕とミィーンさんのことを覗き込んだ。バーンズさんぐらいキャストについて知識があれば見るだけでも調子とか、分かるのかな。

 

 「一応ですけど、大丈夫だとは思います。複数回戦闘して危なくはありましたけど....」

 

 僕は腰から銃を外してシリンダーのロックを外してからバーンズさんに見えるようにした。今見てみると実弾3発と10発分の連発弾しか入っていないのが見えて少しだけ怖くなった。後数回戦闘になっていたら....考えないようにしよう。

 

 「あんまり弾、持って行かなかったんだな。まあ....特に指定はしていないが時と場合に応じて持ち運ぶ弾数は考えるようにしろよ?いつでも俺が居れるとは限らないからな。ほら、取り敢えず今は持っておけ。」

 

 バーンズさんはそう言うと今シリンダーに入っている連発弾と同じ弾を1発渡してくれた。

 

 「.....あ、そう言えばバーンズさんはどうしてここに居るんですか?」

 

 弾を制服のジャケットに仕舞い込みながら僕は気になっていたことを聞いてみた。もしかしてそれ程重要な件じゃ無かったのかな。

 

 「どうしてって....まあ、俺が居た場所から見える所で火が見えたから来たのさ。それで偶然にもその場所がここだったって訳だ。」

 

 「火が見える?何なんですそれ。」

 

 「おいおい....何なんですかも何も上で起きてること、何も知らないのか?かなり酷いことになってるぞ。」

 

 酷いことって....さっき起こった大きな揺れが何か関連しているんだろうか。あれで施設への本来の入り口が崩れたくらいだし良く考えれば相当、なのかな。

 

 「今の今までこの下の施設跡に居たので気が付かなくて.....一体何があったんですか?」

 

 「何がって、そいつは言葉にするのはかなり難しいが....まああれだ、C.R.S.Fがまた大きく動いたってところか。上に上がれば分かるとは思うが上にあった建物は全壊だな、もはや跡形もない。」

 

 バーンズさんは両手をお手上げだと言わんばかりに上げながらそう話す。確かに感じたことが無いぐらい大きな衝撃だったけど、まさか入った建物が全壊だなんて....

 

 「取りあえず上の方でいろいろやっていた連中(C.R.S.F)も今は大半がこの区画の担当になってるM.Sが鎮圧済みだ。それで上の方が終わったから後は下の方を...そう言う経緯だな。ちなみにそれで聞きたいんだがまだここには奴ら(C.R.S.F)は居たか?」

 

 取りあえず今は上の方だけを見れば何とかなったみたいだな、下の方はまだだけど....

 

 「遭遇したのは6人程でその内動ける状態だったのは2人ぐらいだったから.....ともかく2人ほどまだ居るはずです。ただ僕が全員見ていないだけで本当はもっと居るのかもしれませんけど....」

 

 覚えている限りだと確かミィーンさんのパーツの交換して、それからあの部屋から出ようとしたときに危うく出会いそうになってしまった2人組を思い出した。

 

 「そうか....まあ何かが居るということだけでも分かれば十分さ、教えてくれてありがとう。」

 

 そう言うとバーンズさんは無線機で連絡を取り始めていた。そうだ、僕も今のうちに付け直しておかないと....

 

 「あーあー....良し、繋がっているな。連絡だ、こちらBの第2部隊。対象の区画に残っている残存勢力は2から4人と推定。繰り返す、残像勢力は2から4人と推定。気を抜かないよう複数人での行動を、以上......ふう、こんなもんか。」

 

 バーンズさんは短い連絡を終えると無線機のスイッチを切り替えていた。まあ、僕とバーンズさんの所属(Bの第2部隊)の管轄はあくまでも駐在所からの一定の距離範囲までだから余程のことが無ければそこの区画の担当と交代して自分たちの仕事に戻るんだ。

 

 「良し、俺たちは一旦戻るとしよう。ノア君も疲れただろ?」

 

 「あ、はい....かなり緊張しました。」

 

 「こんな狭い場所では今までやってこなかったからな....まあ、経験になったと思えば少しは楽か。もしかしてまた射撃の腕前でも上がったんじゃないのか?」

 

 「そんなこと....これでも僕、銃を使うと言うか戦うの苦手なんですからそこから成長なんて...」

 

 バーンズさんは良く僕が射撃が上手いって言うけれど、本当はそんなことないのにな。さっきまでだって焦ると必ず外して.....情けないなあ。

 

 「いや、正直なところアークスになりたてだった頃の俺と比べてはあれだが本当に筋は良いぞ。どうしてそれでアークスになれなかったのか未だに分からないが....まあ今考えることじゃないな。」

 

 そこでバーンズさんはもう一度ミィーンさんに視線を戻した。

 

 「...少し長話をしてしまって済まない。今すぐにでも解放、したいところだが今回の事について一応聞くべきことがあってだな。つまるところ同行してもらいたい。」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....ノアさん。大丈夫、なんですか。」

 

 「大丈夫ですよ。この人は悪い人どころか僕の尊敬している人なんですから。」

 

 僕は心配そうにしているミィーンさんにそう返した。勝手な想像かもしれないけどミィーンさん、特にこのミィーンさんはあんまり初めて会う人とは上手く話せないみたいだ。さっきまで僕とバーンズさんが話しているときだって得に話すことも無かったしね....

 

 「ん、どうかしたか?」

 

 「あ、その....な、何でもないです!」

 

 「?そうか。」

 

 「.....ふう。」

 

 あれから駐在所に戻るとともにミィーンさん達に同行してもらうために僕らは装甲車に乗り込んで帰路についていた。今は特に現場に向かうわけじゃないから車両の速度も心なしか緩やかだ。不快にならない程度の振動が続く。

 

 「...何だか、新鮮です。こういうの、乗ったこと、なくて。」

 

 「そうなんですか?てっきり乗り物ぐらいは乗っているかと....その、もう一人の方のミィーンさんが元々はアークスだって言っていましたから。」

 

 確か今話している方のミィーンさんがスリープ状態にあった時にもう一人のミィーンさんから聞いた話、元々はアークスだって言っていたけれどこういう乗り物には縁が無かったのかな。

 

 「適性が、あっただけ。私は、強い訳では、無かったから。簡単な仕事....そればかりで、乗り物なんて。」

 

 すると、ミィーンさんは少し申し訳なさそうな声色で返事を返してくれた。確かに今でも強さによって区分分けがされているわけじゃないけれどその個人の強さ、技量によって任される仕事.....と言うよりも任務か、それの内容の達成難易度も異なっていることはあるらしい。だとしたら乗り物になんか乗らずともこなせるような仕事ばかりであってもおかしくは無いか。

 

 「.....良い景色、ですね。外の景色。」

 

 「外の景色?」

 

 そう言われた僕はミィーンさんが視線を向けた方を見てみた。装甲車の窓は小さいからあまり良くは外が見えないけれど、何とか見えるそこからの景色は普段通りの整備された区画だった。だけど、ここはいつも使っているコンベアの走っている場所よりも高い位置にあるからまた少し違って見える。

 

 「外の景色は、見たこと、あったはず....なのに、忘れてしまって、駄目ですね。」

 

 ミィーンさんは続けて外の景色を眺め続けていた。見たことがある筈なのに忘れている.....まあ、キャスト手術を受けた時に何かの理由で抜けてしまったか、それともミィーンさんにあるあの接続システムが原因で性質どころか記憶まで分裂してしまったか。どちらもあり得ることだけどミィーンさんの状況から考えれば後者の方になるのかな。あの接続システムと言うのは不安定だって言ってたし、あり得ないことじゃない。

 

 「良し、そろそろ着くぞ。いつでも下りられるようにしておいてくれよ。」

 

 「...あ、分かりました。」

 

 そうして話しているとどうやら駐在所までかなり近づいていたみたいだった。運転席の方からバーンズさんの声が聞こえてくる。

 

 「じゃあ、そろそろ下りられるようにしておきましょうか。」

 

 「....分かりました。」

 

 するとミィーンさんは一旦景色を眺めるのを中断して下りられるように準備をし始めた。まあ、それほど手の込んだ準備をするわけじゃないんだけど....

 

 「.....ノアさん。」

 

 「?」

 

 それで、僕もミィーンさんに合わせて準備を進めているとミィーンさんに再び呼ばれたんだ。どうしたんだろうか。

 

 「...ノアさんは、外の景色、お好きですか?」

 

 外の景色が好きか、か。少し前までは好きじゃないどころか嫌いなぐらいだったけれど....今ではレピカちゃんの影響かちょっとだけ好きになれたのかもしれない。

 

 「好きですよ、まだ少しだけですけど。」

 

 それからしばらくすると車は駐在所に到着した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....じゃあ、君はC.R.S.Fとは何も関わりが無いということか?」

 

 「...はい、私はその組織、関わりを持つ以前に、存在を、知りませんでした。」

 

 「まあ、疑うことはしないが狙われたことは事実だしなあ。困ったもんだ....」

 

 装甲車で現場から駐在所まで特に何もなく戻ることが出来た後、バーンズさんと僕はミィーンさんにいくつかの質問をしていた。だけどミィーンさんは何かをしたわけじゃなくて、あくまでも被害者側の方だからフィリンさんの時のように強制するようなことはしないけどね。

 

 「....そういえばノア君が発見した時にはどんな状態だったんだ?まだ聞いていなかったな。」

 

 「発見した時、ですか?」

 

 「ああ、この方から聞けるのは起き上がってからのことだけだからな。それより以前のことはノア君しか知らないだろ?」

 

 まさか僕の方に質問が回ってくるとは思わなくて少し戸惑ったけど、すぐに僕はその時のことを思い出し始めた。ミィーンさんがカプセルから出る前か。

 

 「えっと...バーンズさんへの最後の連絡の後、現場に向かうと廃墟の状態になっている建物を見つけたんです。どんなことをする為の建物なのか全く検討がつきませんでしたけど。」

 

 覚えているけれど僕があの施設への入り口を見つけたのはあの建物の中だった。建物には物がほとんど置いてなくて殺風景で埃だからけだったのも良く覚えてる。

 

 「じゃあ、その建物の中に施設への入り口があったんだな。」

 

 「はい。バーンズさんが到着した時には何も無くなっていたみたいですけど....」

 

 そう、バーンズさんがあの場所に着いた時には僕の入った建物は完全に破壊されていて跡も分からなかったらしい。

 

 「そこが一番不可解な所だな。この方を拉致するだけならそんな真似はしなくとも穏便に済ませられるはずなんだが、一体何があったのか....」

 

 確かに、ミィーンさん達を狙うのならそんなに大規模なことはせずに済んだはず。だとしたらそれなりの理由が?

 

 「....まあ、今考えられることには限度があるな。今日はこのぐらいにしてだ、ノア君は先に帰ってくれて構わないぞ。もう出来ることも無いからな。」

 

 「は、はあ....」

 

 「時間も丁度だ、ゆっくり休んでくれ。この方については俺が色々やっておくから....」

 

 そうして色々と分からないことがまだ多いけれど、ひとまず僕はバーンズさんの言う通り自室に帰ることになった。

 

 

 

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