PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「ノア君、銃は持っていくようにな。」
「大丈夫です、しっかり持っていますよ。じゃあまた明日....」
挨拶を交わすとノア君は普段通りに駐在所から出て行った。
「....良し、話の続きをするか。」
ノア君には悪いが....ここからは俺の私情が挟むからな、なるべく聞いては貰いたくないことだ。今日はかなり疲れていただろうから休んで欲しいというのが6割、この話の為が4割と言ったところか。
「ミィーンさん、だったか?」
「...はい、何でしょう。」
そう、全てはこの人物と話す為だ。
「少し、気になることがあってな。強制はしないが...出来ることなら話して欲しいんだ。」
彼女が発見された場所、ノア君の言う通りなら建物に偽装した施設か。そこがどんな施設なのかなんて分からないが...そうやって隠さなければならないようなことをしている施設だ、俺が知りたいことと繋がっているかもしれない。
「....」
「.....悪い、嫌だよな。」
やっぱり、俺みたいなのよりもノア君のような男の方が口も開きやすかったか。話を聞くのは無理か....?
「い、いえ....嫌では、ないです。」
...そう思ってしまったが少し抵抗はあるものの嫌ではないと言ってくれた。
「...さっきも言ったが嫌なら話さなくても大丈夫だからな。」
「....はい。」
返事を聞いた俺はもう一度椅子に深く座り直した。
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「.....そういうことが、あったんだな。」
「.....」
彼女は今まであったこと、されてきたこと、施設について.....恐らく言える限りのことを全て話してくれたんだと思う。彼女の顔もその所為か少し疲れているように見える。
「...話してくれてありがとう。少し、休もうか。」
キャストになったのは何故なのか、自分が3つに分割されたのは何故なのか。そして、それを行った計画とは何なのかを俺は聞くことが出来た。アークスの特殊防御システム....そのことについて。俺は椅子から立ち上がって考えるのを続けた。
「....少し、俺の話をしても良いかい?」
「?」
待機室の窓から外を見ていた俺は首だけを彼女に向けて言った。もっとも、突拍子も無いことを言われて彼女は不意を突かれたような顔をしていたが。
「いやまあ、独り言だと思って聞き逃してくれて良いんだけどな....」
あまり話したくは無いことだが...話すことで得られることがあるかもしれない。そう思った俺は自分にあった過去について彼女に話そうと思った。
「何でしょう....私で、良ければ、お聞きします。」
良い反応では必ず帰って来ないだろう、それで一応身構えてはいたが彼女はそんなことは無くむしろ逆に興味があるぐらいの反応を示してくれた。
「....分かった。」
そうして俺は少し昔のことで記憶にある限りを瞼の裏で再び再生し始めた。
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「君はアークスの特殊防御システム、あの計画については良く知っていると思う。」
「...はい、私はその計画、使用されましたから。」
彼女は俯いて返事を返した。
「だが、その全てについては恐らく君も....そして俺も知らないはずだ。計画に関わった人間でも自分の関わった物しか知らないだろうな。」
「....」
「こんなことは勿論記録なんて残っている物じゃない。正直なところ、全て夢だったと言うこともできる位だ。」
そう、この計画....計画とは名ばかりに機密度が高過ぎたことで計画に参加していた者ですらお互いが同じ計画に参加しているとは知る由もなかった。だからこそ計画なんて無かった、そう言ってしまっても良いわけだ。
「....だから、このことは君が参加した事とは何の関係も無いかもしれない。それだけは念頭に置いておいてくれ。」
関係の無いことなのかもしれない。そのことを伝えてから俺は話を続けた。
「そうだな....AISは知っているか?アークスだったというのを聞いたが一応な。」
「....はい。ARKS INTERCEPTION SILHOUETTE、略称としてAIS。もっとも、使用したことは、ないですが。使い方だけは。」
搭乗兵器は使ったことが無いと車の中で言っていたからな。一応確認してみたが...どうやら使い方だけは一応講習を受けているみたいだ。
「AIS、対ダーカー用として開発された主に拠点防衛用の人型兵器。まあ、今では500年前に原型が完成した第1世代から改良を加えた第4世代のAISが主に使用されているんだがな。」
「....そうなんですね。私は、そこまで講習で、教わりません、でしたから。」
どうやら、必要のないことはあまり教えないようにアークスの方も効率化して来ているのか彼女はそのことは知らなかったようだ。まあ、知っていても仕方の無いことか。
「まあ、そのことは良いとしてか....AISの弱点についてはどうだろう。教えて貰ったことがあるか?」
「一応、ですが。操作性、行動可能時間、浸食のされやすさ、これらについては、知っています。」
「....そうか。」
AISはアークスが乗ることでその個人の戦闘力を大幅に引き上げることが可能で、例えば人手が回らない際に補助として使われることが多かった。これだけを聞けばかなり便利な物、そう感じるかもしれないがこれには大きな弱点があった。今彼女が説明してくれたことが大体のことだが....その中で一番の問題点があった。行動の出来る時間に限りがあること、浸食のされやすさだ。
「まあ、今説明をした通りAISには第1世代から第4世代までの間がある。その間に様々なことを改良しようとして実現したものもあれば実現しなかったものもあったんだが....ともかく、第2世代ではダーカー因子の浸食を受けづらくする為に浸食を未然に防ぐ、軽減させるということをやったんだと。」
「それは、成功したんですか?」
彼女は少しだけ興味があるように聞いてきた。まあ、講習でも教えてはくれなかったことだからな....
「まあな、今の第4世代と比べれば完全な物じゃないがこれで戦う相手、ダーカーにA.I.Sを利用されることも減ったさ。」
そう、これによってAIS同士で戦わなければならないなんてことは激減、とはいかなかったが減らすことが出来て無駄な戦闘を避けることに繋がった。
「それで、次の第3世代では残る課題になる行動可能時間を伸ばそうとしたらしいが....これは上手くいかなかったらしい。」
行動可能時間の延長、AISの構造で考えるのならエネルギー....要するに搭乗者のフォトンなどを使って動く構造であるからそのエネルギーの使用効率を良くするか、それとも搭乗者を強化するか。勿論最初は前者の方が選ばれた。だが、上手くはいかなかった。
「乗っているアークスのフォトンの使用効率を良くする為にはAISの基礎設計から何から何までを全て考え直さなきゃいけなくなったみたいでな。労力的にも、コスト的にも、様々な観点から考えた結果エネルギーの使用効率を良くするということは駄目になった。」
「で、では、どうやって、改良を....?」
「勿論、エネルギー源を増やす方法だ。」
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「....効率を良く出来ないのなら搭乗者を強化する、もしくはエネルギーを増やす別の方法をすれば良い。そこで、AISに乗る搭乗者を2人にするという試みがされたんだ。」
効率を良く出来ないのなら燃料、エネルギーを多く供給できるようにすれば良い。この為に搭乗者を増やすことになった。
「だが、知っての通りAISには基本的に、というよりも1人しか乗ることはできない。その場合、どうすると思う?」
「座席を増やす....でしょうか。」
確かにそうだ、1人しか乗れないのなら更にもう1人乗れるようにすれば良い。けれど、それには別の問題が発生する。
「まあ、間違ってはいないな。だがAISにはそんな余剰スペースは何処にもない。普通に増設をすることはまず不可能だ。」
そう、AISにはそんなスペースは何処にもない。元々1人用として作られたものだからおかしいことじゃないが...これをどうにかする必要があった。
「では、どうやって....」
「.....簡単なことさ。どんな形であってもAISに乗っていれば良いんだ、AISの外側にでも括り付けてやれば良い。」
AISに括り付ける....まあ、これは少し誇張しすぎだがすることは似たようなものだ。AISの外部に人が1人どんな形でもくっ付いていれば良い。
「そこで作られたのが外部から人間を接続することのできるパーツが取り付けられた第3世代AIS、それが開発されるところだった。」
「開発される、ところだった?」
「ああ、第3世代AISは後少しのところで開発が停止した。ある事故の所為でな。」
この段階では既に実用段階まで進んでいて後少しのところで事故が発生したんだ。そのエネルギーの接続方法に問題が発生して....
「その事故が起こった計画こそ、俺が参加していた計画で....俺はその事故でパートナー失ったんだ。」
「パートナーの方、ですか。」
「ああ、名前はイレノア....キャストのな。」
俺はパートナー....イレノアの写った写真を彼女に見せながら教えた。
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「ある時俺は新型のAISのテストの対象になったんだ。勿論、イレノアも。」
俺は、上からの連絡でテストに参加するようにという電子メールを受け取ったあの時のことを思い出していた。
「後から分かったことだが....エネルギーの供給量を増やす、つまりフォトンの量を安定して供給する為にはその搭乗する2人がそれなりに信頼関係を築いていなければならなかったんだと。そこで俺とイレノアのタッグが選ばれたんだ。」
写真を目で追いながら話を続ける。
「まあ、理由としてはそれだけじゃなくてイレノアがキャストだったこともあって接続を行いやすいからというのもあったか。その時の試験に使われたAISにはかなり小型の接続用パーツしかなくてな、接続時には手と足のパーツを外した状態でなければならないようでそういった条件をクリアした俺たちが選ばれたんだ。」
「...外部からでも、余裕は、ですか。」
「テストが上手く行けばキャストでなくとも接続が出来るようになるとは言われていたが....その試験の時にはコストの問題でそれしか用意できなかったらしくてな。その時だけさ。」
俺とイレノアがテストに参加した段階ではまだ全部が完璧な状態ではなくて、そのエネルギーの供給がしっかりと行えるかどうかのテストを最低限行えるものだけしかついてはいなかったんだ。そして、それらのことからの条件をどうにか満たしたのが俺達だった。
「最初の内は、俺だけが搭乗して作動させているときには何ら変わりない普通のAISだった。まああのテスト機は通常のAISとはかなり仕様が違ったから操作の感覚だけが似ていたのかもな。取りあえず何もなくテストはそのまま進められていった。」
そう、最初の内は本当に何も無かったんだ。あの時が来るまでは。
「.....それで、ある時にイレノアを搭乗させている状態でエネルギーをどれ程まで供給させることが出来るかをテストした時があったんだ。あれは今でも忘れていない。」
突然のことだった。普段通り俺が動作のテストをしていると手足が外された状態のイレノアが運ばれてきてAISへの接続作業が行われたんだ。
「俺が普段通りに事を済ませようとしていると下から声を掛けられたんだ、接続のテストと供給のテストをするってな。」
運ばれてきた時のイレノアは不安そうな顔だった。そこで俺は何度も声を掛けたりしたけれど、それでもやっぱり拭えない程の不安があったのか顔は晴れないままだった。
「まあ、通常の量を供給している段階では何も問題は無かったんだが....供給のレベルを引き上げた時にそれは起こったんだ。」
その時のことを思い出すと、今でも冷汗が出る。
「俺が順調に供給のレベルを上げていると後ろからいきなりイレノアの叫び声が聞こえてきたんだ。それで驚いた俺は供給量のメーターを見ると規定値よりもはるかに大きく供給していることが、吸い出していることが確認できた。」
「.....」
「どうにかしてそれを止めることはできたがその時にはイレノアはもう....」
機能は止めることが出来た。だが、イレノアは重傷を負ってしまったんだ。
「....その後、俺はイレノアに駆け寄ろうとしたがすぐに何処かへ運び込まれてしまって...本当にそれっきりだ。一度も会えていない。」
「...そう、でしたか。」
そこで俺は出していた写真をジャケットにしまった。