PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-19 「処遇」

 「....あれからしばらく経って、色々なことを知って。そして、君のことを聞いて。俺はあることに気が付いたんだ。」

 

 ジャケットのファスナーを閉じた俺は彼女の方に向き直った。

 

 「最初に言ったようにこのことは、この過去の事故は君には関係のない事かもしれないが....逆に、関係があるとして仮定したらどうだろうか。」

 

 そう、関係が無いと言ってしまえばそれまでだが仮にでも関係があるとしたらどうだろう。関係が無いと考えるよりかは答えに行きつきやすいはずだ。まあ、場合によっては行き過ぎた妄想でしか無くなってしまうこともあるが....無駄にはならないはず。

 

 「私の計画と、関係があると、仮定する....ですか。」

 

 「....ああ。少し乱暴かもしれないがそういった思考回路を組むことは出来る気がするんだ。何故なら、君の関わった計画と俺の関わった計画には本質的な共通点があると見ることも出来てな。」

 

 俺は一度立った椅子にもう一度座り直して話を続ける。

 

 「君の関わった計画、アークスの特殊防御システム.....言い換えれば特異的に()()()()()()()()()()()()()の量産計画。その計画の目的は言うまでも無くダーカーを一挙に殲滅し得る程の兵器の作成、そして量産だ。」

 

 「兵器.....ですか。」

 

 人間を部品として使う強力な兵器....冗談じゃないが彼女はその様な目的でキャストにされ、そして運用される予定だったんだろう。

 

 「...その()()を作るという点では俺の関わった計画、今までの問題だった弱点を可能な限りまで削りアークス全体の戦力を増強させる。この改良型A.I.Sの量産計画と似ていると思うんだ。」

 

 ダーカーの残党の始末を容易に済ませられ、アークスシップへのダーカーの襲撃の鎮圧を速やかに行える。この2つの計画の目的は同じなんだ。そして、更に言うのならこれらはどちらも記録にすら残っていない機密(隠し事)、類似点を挙げるならこれだけ出てくるんだ。関わりが無いと無いと言う方が難しくも見えるさ。

 

 「計画の目的が似ているのなら、したいことが同じなのであれば....これらは繋がっている1つの計画だという見方もできる。そう思わないかい?」

 

 そう聞くと彼女はしっかりと俺の眼を捉え、はっきりと返事をしてくれた。

 

 「....それでだ、君の調べられることで、知り得られることで俺のパートナー、イレノアのことが分かるかと思ってな。まあ、これこそ今までの過程がどれでも崩れてしまえば意味の無いことになってしまうんだが。」

 

 計画が何処かで繋がっているとしたのならイレノアについて少しでも何か知ることが出来るかもしれない....が、これは俺がここまでで考えた仮説が全て正しければの話だ。そうでなければ彼女が何を調べようと意味は無くなる。だけど...

 

 「それでも俺はしたいことがあって....無駄なことかもしれないが、君に頼みたいことがある。」

 

 俺はしまった筈の写真をもう一度取り出して彼女に向けて差し出す。

 

 「イレノアについて知ることが出来れば、教えて欲しい。」

 

 その時には、窓から差し込む燃えるような光がイレノアの写真を照らした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....良し、ここで合ってるな。」

 

 「ここが、ですか。」

 

 駐在所で少しばかり長い会話を終わらせた後、少しの片付けを済ませてから彼女を....いや、彼女達を急ぎで用意した部屋に連れて行っていた。流石に3人もの...更には同じ顔のキャストの女性が仰々しく隊列を組んで闊歩するというのは恐ろしいほどに目立って騒ぎになるのでは。そう思ったがその頃には艦内の人工太陽は完全に沈み切っていて辺りは暗く、通りには人通りも少なくどうにか想定した事態は遂に起こらなかった。

 

 「少し待ってくれ、今開ける。」

 

 俺は自分の物ではない識別カードを取り出して扉の自動ロックへ通した。小さい音が連続してしばらく鳴った後、鍵は外れた。

 

 「まあ、問題なく使えるよな....良かった。」

 

 「....?」

 

 そうして無事に新しい識別(偽造)カードを使うことの出来た俺は安堵した。かなり急いで作成したものだが....特に違和感も無いな。

 

 「一応だがこのカードを君に渡しておく、持っておいてくれ。」

 

 「これは、一体...」

 

 「....まあ、俺が急ぎで作った君用の新しいカードだ。何かをするのには必要になるからな。」

 

 もう一度カードを目で不備が無いかを軽く確認した後、写真を渡したときと同じように彼女に差し出した。

 

 「当然のことかもしれないが....君はデータ上では今頃死亡(ロスト)扱いになっているはずだ、昔の俺と同じように。そうなると君の元々使っていた部屋は勿論使うことは出来なくなっている。」

 

 まあ、仕方の無いことだが彼女は見る限り、聞いた限りではもはや死亡扱いにされているだろう。ここまでで彼女についても色々と聞いてきたがノア君から聞いたような状態が本当であるなら......破棄されたんだろう、道具的に。そうであるなら基本的に情報上で殺されていても別に変なことじゃない、過去にもそういうことはあったからな。

 

 「君が嫌なら仕方の無いことだが、ここを君の新しい部屋として使って貰いたいんだ。もう以前の部屋には戻れないからな....」

 

 「....はい。」

 

 そう言うと彼女は俺の差し出したカードを受け取った。

 

 「まあ、これも君がアークスやM.S、またはC.R.S.Fなんかに利用されない為のことだ。隠すと言って俺の部屋やノア君の部屋なんかに居てもらうよりも別の人間として存在してもらう方が安全度は高まる。だからこそ、少し身勝手かもしれないが....こういうことをさせて貰った。」

 

 正直なところこのまま俺が彼女のことをまともに上へ報告をして、彼女にまともな処遇が与えられるとは当然思えない。彼女の欠陥があるにしてもその強力な力は戦力として利用されてもおかしくないものだ。そうなると彼女は計画の通り、彼女の関わった計画の通り兵器として利用されることになる。それだけは避けたい。

 

 「....ありがとう。」

 

 すると彼女は胸の前でカードを抱えながらそう返してくれた。これで少しは状況が良くなれば良いんだがな....

 

 「良いんだ、礼なんか。それよりも部屋の中をまだ見てないだろ?今電気を付けるからな。」

 

 そこで俺は部屋に一歩踏み入れると壁を手で探って照明の切り替えスイッチを押した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「....フィリンさん。これで最後のパーツですけど、問題ないでしょうか?」

 

 「うん...今のところは大丈夫よ。問題なく動いてる。」

 

 「そうですか....」

 

 そう言うとナース、リエはなぜか落ち込んだようにして返事をした。まあ、リエにも教えていたものね....私の手術が終了するということがどういうことか、それぐらいのことは。

 

 「...良いのよ、心配しなくて。私だって処罰は妥当なのは分かっているんだから。それよりもありがとうね、ここまで付き合ってくれて。」

 

 「いえ、そんな...以前も言いましたけどこれが私の仕事ですから。出来ることをしたまでです。」

 

 「....でも、そういう当たり前が出来る人は少ないわ。だからこそ貴方はもっと自信を持っても良いと思うの。」

 

 私は座っていた椅子から立ち上がるとリエの傍に寄った。

 

 「ふぃ、フィリンさん?」

 

 「だから、そんな顔をしないで、ね?」

 

 こんなことでどうにかなることではないけれど、私はなるべくリエに負担が掛からないようにして抱き着いた。少しでも励みになれば...

 

 「....分かりました。」

 

 ....まあ、これなら大丈夫そうね。目に少し自信が出ているもの。抱き着きながら横目で見えたリエの瞳にはさっきよりも少しだけそういったもの(感情)が見えた。

 

 「おい、治療の終わった対象が居るのはここか?」

 

 「....あ、はい!すみません、今開けます。」

 

 すると数回ノックが聞こえたかと思うと低い男の声が聞こえてきた、もう時間か。

 

 「...フィリンさん、ありがとうございました。」

 

 そう言うとリエは私から離れて部屋の入り口ドアに向かった。扉が開くとこの間のM.Sとは違う男2人が見えた。

 

 「....無事に治療は済んだみたいだな。おい、あれを出せ。」

 

 「分かりました。」

 

 前の方に出ていた男が後ろの男に向かってそう言うと出てきたのは手錠だった。

 

 「何もしないだろうと信じたいところだが、一応付けさせてもらう。こちらに手を向けろ。」

 

 私は指示に従って手を後ろにして向けると手のパーツに密着するようにして手錠が取り付けられた。それと同時に手の機能が制限される。

 

 「良し、出るぞ。外に車を止めてあるからな。」

 

 「....分かったわ。」

 

 私は抵抗せずに落ち着いて出口に向かって歩き始めた。

 

 「あの!....その、頑張って下さいね。」

 

 これからどうなってしまうのか、そう考えながら私は歩き始めようとした時リエが声を掛けてきた。頑張る、ね。そう思ってみようかしら....

 

 「...リエこそ、頑張ってね。」

 

 「は、はい!」

 

 その会話を最後に私は病室を後にした。その時の外の景色は、少し曇り掛かっていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....着いたな、今そっちの扉を開けるから少し待っていろ。お前の方は何時でも出られるようにエンジンは切らないでおいてくれ。」

 

 「....」

 

 あれから数10分後。特に何も無く車両での移動は済んだ。まあ、特に話すことなんてなかったから....

 

 「少し段差がある、踏み外すなよ。」

 

 「...分かってるわ。」

 

 それにしてもあの人はどうしているのかしら。あまり、戦闘には向いていないようだったから何も無いと良いのだけれど。私は来た道の方を見ながら考えに耽った。

 

 「これからお前の処罰が下りる、かなり短い時間だがな。中の方にハイキャストが待機させられている。結果はしっかり聞くんだぞ。」

 

 男は扉の鍵をカード認証で外した後、部屋の中で手錠を外すとすぐに部屋から出て行った。恐らくだけれど、人の手が介入しないということはあまり深くは考えられていないのかしらね。それが良いことなのか、悪いことなのかは分からないけれど....

 

 「フィリンさん、ですね。お待ちしていました。そちらにおかけ下さい。」

 

 「...ありがとう。」

 

 部屋に入って少し奥に進むと待機状態だったハイキャストが声を掛けてきた。全く、外側は私と同じような物なのにね....やっぱり不気味だわ。ハイキャストって。

 

 「では、手短に要件を済ませます。これから説明を行いますので良く、聞いておいてください。それではまず...」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....というようにこちらには報告が行われています。特に不備はありませんね?」

 

 「...そうよ、私がしたことはそれで間違いないわ。」

 

 私はあの時自分がしたことについての確認をしていた。特にあちら側の報告と違った点が出ることも無くスムーズに話は進んで行ったわ。それにしてもこれ程の細かい報告、誰が作成したのかしらね.....

 

 「では、そのことは受理した上で貴方に今回の処遇をお伝えいたします。本部との連絡を取りますから少々お待ちください。」

 

 そう言うとハイキャストは目を閉じて通信をし始めた。

 

 「.....」

 

 「...処理が終了しました。結果の方をお伝えいたしますね。」

 

 それで、特に気にかけることも無く椅子に座り続けていると通信が終わったのか目を開けたハイキャストが再び口を開いた。まあ、どんな結果だとしても受け止めるつもりよ.....そう覚悟を決めてハイキャストに答えを聞いた。

 

 「それで、私の処遇は....処罰はいかほどなのかしら。」

 

 「はい、では順を追って説明いたします。まずですが貴方はアークスの任を解かれることになりました。その為に次の役職としてM.Sへ配属されることになりました。」

 

 「.....そう、M.Sね。」

 

 もっと重いものを想像していたけれど、どうやらあては外れてしまったみたいね....そう思いながら話の続きを聞く。

 

 「はい。なのでこの後、早急にM.S支部のAブロックへ向かって下さい。そこで備品、配属先などの指示があります。良く聞くようにして下さい。説明は以上です。」

 

 そう言うと自分の責務は全てこなしたと言わんばかりに再び待機状態に入って行ってしまった。全く、気楽な物ね....

 

 「はあ....場所は、少し遠いわね。急がないと。」

 

 そうして地図を確認してその支部の場所を特定できた私はいつの間にか空いていた部屋の扉を抜けて建物から出て行った。

 

 

 

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