PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-02 「配属」

 検査を一通り終わらせた僕はワークセンターから出て、行きにも使ったコンベアのステーションに向かっていた。

 

 来た時には多かった人通りも減っていたかな。

 

 「人工太陽が低くなってきてる...そんなに長い時間検査していたんだ。」

 

 ふと艦内の天板を見てみると()()()()()に映し出されている太陽が沈みかけていた。

 

 「それにしても太陽がないと生活循環が回らない生き物って、人って不思議だな.....」

 

 そうして、時々浮かぶ訳の分からない感慨に耽っていると何やら言い争っている声が聞こえてきたんだ。

 

 「.....?騒がしいな、何をやってるんだろ。」

 

 気になってしまった僕はその場所少し見てみたんだ。するとそこにはここに来た時にはない光景があった。

 

 「全く、角のついた人の成り損ないが....デューマンが表を出歩くなよ!気分が悪くなるぜ!」

 

 「そうだ、そうだ!化け物は出てけよ、ここは()()禁止なんだ....分かるかあ!?」

 

 「やめて....ああっ!」

 

 その瞬間、頬を打つ破裂音にも似た音が周囲に響いた。

 

 叩かれた女の人はそのまま倒れこんでしまって....

 

 「何もしてないのに、どうして.....貴方には何も

 

 「うるせえ!居ること自体が迷惑なんだよ....!」

 

 その男はそう言うと今度は女の人の頭に足を乗せようとして....そこで見ていた僕はとうとう我慢できなくなってつい口から言葉が漏れてしまったんだ。

 

 「や、やめろよ!その女の人の言う通りその人はお前に何もしていないだろ!」

 

 「なんだ....?お前、(ヒューマン)だってのにこいつ(デューマン)の肩を持つのか?」

 

 だけど、いざ言い出してはみたものの、やっぱり怖くて....言わなきゃ良かったかな。そう思ってしまって余計に焦る。

 

 「そうじゃなくて、そうじゃなくて.....」

 

 そうした焦りから考えが段々とまとまらなくなってきて、口から同じ言葉しか出なくなってしまった。

 

 「.....はあ、何だかしけちまった、帰るぞ。」

 

 すると男はさっきとは変わって呆れたように僕にそう言った。

 

 「そうだな....おい、そこの一般員。」

 

 「へ?」

 

 なし崩し的にどうにかなったかな....そう勝手に思っていると二人組の片割れが去り際に話しかけてきた。

 

 「一般員が、ガキのくせに二度と逆らうんじゃねえぞ....この()()()()()には、なっ!」

 

 「!うぐっ.....」

 

 話しかけられてから数秒も経たないうちにその男は僕に間合いを詰めてきて、考えてもみなかった出来事に僕が驚く間にその拳を僕の腹に容赦なくめり込ませてきた。

 

 内臓と肋骨が圧迫されて、遅れて激痛が腹部に走る。

 

 「がっ.....」

 

 あまりの痛さから口の中の体液とともにむせてしまった。

 

 「これに懲りれたら二度と口出ししないことだ、じゃあな。」

 

 殴ってきた男が何か言っていたけど、苦しくて苦しくて何を言っているのかまともに聞き取れない。

 

 そうしてあまりの痛さに声が出なくて、意識も次第に薄くなってきて.....

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 .....

 

 嗚呼....暗い...

 

 何も、何もここにはない...

 

 ここは何処....?船のみんなは.....?

 

 寒いの......ずっと....ずっと。

 

 からだがずっとふわふわしていて....頭がおかしくなりそう...

 

 星が輝いて....たくさん....たくさん......

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「.......?」

 

 あれからどれぐらい経ったんだろう。

 

 気が付いた時、目の前に自分の部屋の天井が見えて...そこでようやく僕は自室のベッドに横になっていることを理解した。

 

 「あの後自分で帰った....にしては記憶がないし痛くて動けないだろうしな。」

 

 思い出せる限り昨日のあの後のことを思い出そうとしてみる。

 

 「やっぱり思い出せない.....って、何だろうこれ?家を出る前にこんなものなかったぞ?」

 

 少し上体を起こしてみて、ベッドの横に置いていたサイドテーブルが目に入るとそこには手紙が置いてあった。

 

 「紙の手紙....珍しいな。でも、誰からだろう。」

 

 当然ながら気になった僕はその手紙の封を切って中身を取り出して確認してみた。

 

 すると、中には丁寧な字で短い文章が書いてあるメモ用紙が入っていたんだ。

 

 『今回は助けてくれてありがとう。でも、次からはしないで。貴方が、貴方自身が危険な目にあってしまうだろうから。しばらく起きられそうにないだろうからこの手紙を残します。 エリシアより』

 

 「あの女の人の....ということはあの人がここまで運んでくれたのか。」

 

 多分、殴られたときにでも服が乱れてポケットから識別カードを落としたんだな。それで、それを手掛かりにわざわざ送り届けてくれたのかな。あれを見れば大体のことは分かるし....

 

 「.....はあ、情けないなあ。結局は助けようとした人に助けられちゃうし。」

 

 もう一度あの時のことを思い出してみると、検査の時と同じ色のため息が出てしまった。

 

 「これでもアークスとしての適性があるって診断されたはずなんだけどな。やっぱり機械が故障でもしてたんじゃないか...?」

 

 そう思ってしばらくの間薄暗い部屋に目を泳がせていると、不意に通知音が鳴った。

 

 「今度はなんだ....もしかして検査対象が人違いだったとか、そんな訳ないよね。」

 

 手違いで検査してしまった、その様な通知を期待してメールボックスを確認してみるとやっぱりそんな通知は一切なく、代わりに昨日の検査結果の通知が来ていた。仕事が早いなあ。

 

 「昨日の検査結果か....絶対通らないだろうな。」

 

 昨日の検査の風景が脳裏によぎった。

 

 「まあ、通ってもあんなところ(アークス)には行きたくないけど。」

 

 そうして電子メールを開封して見てみると、僕の全く想像していないことがそこには書かれていた。

 

 『適性確認テスト及び適性検査の結果の元、貴方の配属は第184番艦「フェルノート」のM.S、Bの第2部隊になりました。指定の場所に添付された時刻表の時刻に向かってください。連絡事項は以上です、お疲れさまでした。』

 

 「はあ、アークスの所属じゃやっぱり無いよな、そうだよな。それで、僕の本当の配属はM.Sと.......M.S!?」

 

 また頭の中が真っ白になりそうだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....何度見返しても書いてあるね。」

 

 僕はさっきの電子メールを無駄にも何度も再読み込みしたりしてみて変わらないかな....なんて無駄なことをしていた。

 

 けれど無慈悲に事実は変わらずにそこにはM.S所属と記載されているだけだった。

 

 「アークスは嫌だったから所属になることが無くなったのは嬉しい....のかもしれないけど、この場合だと何も変わらないじゃないか....」

 

 気持ちを落ち着かせるために冷蔵庫から出したばかりの精製水を口に含んでは転がして飲んで、それをまた繰り返しながら僕は悩んでいた。

 

 「.....」

 

 僕が所属になったM.Sというのは厳密に言えばアークスの組織内にある最近できたばかりの役職、ということにはなるんだけどその前身になる組織はもっと以前からあったみたいなんだ。

 

 まあ、もっとも僕が問題にしているのはそういう部分じゃなくてその仕事内容だね....

 

 M.Sは基本的に配属される、または所属している艦の中での治安維持を目的とした役職なんだ。だけど、非常時にはアークスの鎮圧を行わなければならなくて.....言うならある意味普通にアークスになるよりも身の危険度が高いってことかな。

 

 「エネミーと戦うのはもっとも無理だけど暴れているアークスを押さえつけて確保、なんてもっと無理に決まってるよ....昨日は早速怪我させられたばっかりだし。」

 

 もっとこう、農業区画でのんびりと栽培とか艦内清掃管理で掃除するだけとか、そういう危なくない仕事が良かったなあ....

 

 「....言い訳を並べてもしょうがないか。第一にこの艦から逃げるにしても周りは宇宙空間だし、惑星に降りようものなら現生物とダーカーの残党に...仕方ないか。」

 

 この場所から逃げられたのならどんなに良いだろう、なんて色々と考えてはみたけれどもどれも結末は絶望的な物だった。

 

 こうして半ば諦めるように覚悟を決めた僕は飲んでいた精製水を思い切り飲み干して、それからこの艦にあるM.Sの支部に向かう準備を仕方なくし始めた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ...コンベアの駆動音が低い金属の音をトンネル内に立て響かせながら失速していく。

 

 そうして完全に停止するといつもの録音音声が鳴った。

 

 『特別区画、M.S支部Aブロックに到着しました。お気をつけて。』

 

 「.....着いちゃったなあ。」

 

 あれから支度をして普段通りコンベアに乗ってきたけど、まだ少し緊張する...

 

 「一般区画と違って結構閉鎖的なんだな....はあ、息が詰まってきた。」

 

 緊張しながらも気晴らしに辺りを見回していると施設のゲートが見えた。

 

 「あそこか.....確かカードを警備員の人に提示すれば良いんだっけ。メールは何度も見たはずなのに忘れかけてるなあ。」

 

 送られてきたメールの内容を思い出しつつ、僕は入り口のゲートに向かうとそこには人影があった。

 

 「....今日、新しく配属になる奴が来ると連絡が来ているが君か?」

 

 「は、はい。今日から配属です。」

 

 ゲートでそう言われた僕は背を正して、それから識別カードを取り出して警備員の人に手渡した。

 

 「分かった、確認させてもらうからそこで少し待っていてくれ。」

 

 「分かりました....」

 

 カードを渡されるとその男の人は少し面倒な素振りを見せながらも慣れた手つきで背後にある機材に僕のカードを通し、椅子に深く腰掛けてから確認をし始めた。入力をする音が微かに聞こえる。

 

 「それにしても、君みたいに若いのがここに来るのは久しぶりだな。」

 

 「そうなんですか?」

 

 「ああ、基本的にここは何かしらアークスとしての()()()()()()()()()な奴らが回される場所だからな。途中から来る奴、俺と同じくらいの歳のが大半なんだがお前さんは最初からここに来るとはな....ある意味で才能だな、自信持ちなよ。」

 

 「はあ、それって自信を持って良いことなんですかね.....?」

 

 「はははは!全く、真に受けるなよ....でも、そうでもして気を持たせないと直ぐに駄目になるからな。それだけは覚えておけ、な?」

 

 「はあ.....」

 

 そう言いながら男の人は確認が終わったのか僕にカードを返した。

 

 「今日ので君のデータは登録しておいたからこれからはカードを通せば基本的に大半のM.Sの施設を利用できる。」

 

 例にとゲートに付いているカードのスロットを指で指しながらそう説明してくれた。

 

 「それと、ここに入るとロビーに君の対応で待機しているハイキャストが居るだろうからそいつから後の詳しい説明は受けてくれ。.....それじゃ、俺は持ち場に戻るよ。」

 

 「わ、わかりました....」

 

 そう言い残すと男の人はすぐさま歩いて近くにある詰め所へ入ってしまった。

 

 「....いくら旧型艦だからと言ってもここは重要な役職の支部のはずなのに、こんな警備で良いものなのかな。」

 

 素人からでも分かるほどの雑な警備にふとそう思った。

 

 「いや、違うな、多分違う。まだ所属もしていないのに勝手な想像は駄目だ....早く中に入ろう。」

 

 緊張から一転して心配になって来たけれど、考えすぎないようにして僕は施設の中へ入っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....では、基本的な説明は以上になります。以降不明な部分などがあれば転送しました電子マニュアルを使用して対応を行ってください。」

 

 女性型のハイキャストさんの声がロビーに響く。

 

 「はあ、大体把握しました。不測の事態にはマニュアルでの対応で良いんですね?」

 

 「はい、その通りです。けれどそれを参照しても分からない場合には本部に連絡を繋げてください、こちらで適切な処置の考案を行いますから。」

 

 「分かりました。」

 

 支部に到着した僕は早速簡易的な座学を受けることになって、それで説明をしばらくの間受けていたんだ。

 

 説明は警備の人が言っていたように中で待機していた指導教育用のハイキャストさんがしてくれているんだけど、この型のハイキャストさん以外の人影というかあまり人気を感じなくて、それが不思議な感じでちょっと不気味だった。施設の照明は明るくて内装も綺麗なはずなのに廃墟みたいに感じる。

 

 「では、支部での手続きは以上で終了となるので配属となる区画の駐在所に向かってください。基本的な備品はこちらのケースに入っているのでお持ちくださいね。」

 

 「....じゃあ、今から向かうことにしますね。」

 

 「はい、それでは。」

 

 そう言い残すとそのハイキャストさんは機械的に早々と甲高い足音を残しながら立ち去ってしまって、はっと気が付くとロビーには僕だけしかいなくなっていた。

 

 「ほ、本当に現行で稼働している組織なのかな.....何だかまた心配になって来た。」

 

 さっきの入り口でのこともあって、僕の中での不安はピークに達し始めてきていた。それこそ本当に気絶しそうなくらいに。

 

 「....まあ、忙しくて居ないだけなのかもしれないしそういう場所なのかもしれないし今日は何かの日なのかもしれないし、そうだ、そうだそうだそうだ、僕の考えすぎだな。ははははは。」

 

 そうして何とか平常心を無理矢理にでも保ち続けながら僕はさっき通ったゲートを抜けて支部を後にした。

 

 

 

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