PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

21 / 60
E-21 「違和」

 「....大体同じ物なのかしらね。」

 

 自分にあてがわれたコンソールの初期設定を終わらせた私は手を休めて、口から言葉を漏らした。

 

 「まあ、フィリンさんの今まで使っていたホログラムタイプより使いにくいとは思いますけど...基本的な機能は同じですから困ることは無いと思いますよ。特に仕事で使う機能はそういった高度なシステムを使ったりはしないですし。」

 

 そう言うとノアは自分の机の方のコンソールを軽く操作すると画面上のフォルダから文書データのファイルを1つを取り出して見せてくれた。何の文章なのかしら....

 

 「一応例になるかは分からないですけど....これ、この間僕が担当した仕事の報告書です。」

 

 時刻、区画、状況説明、対象の特徴.....基本的な項目に沿って作成された文章が画面に映し出された。やっぱり、こういうところを見ても几帳面なのね。文に性格が出てるもの。

 

 「こんな程度で、まあ文書の作成位にしか使いませんからその辺りについては大丈夫ですよ、心配しなくても。」

 

 あらかた文章を私に見せ終えたノアはそのファイルを元のフォルダに戻すとコンソールの電源を落としてから深く椅子に座り直した。

 

 「...なるほどね、ありがとう。確かにこれなら多少は古くても仕事で使うのなら十分過ぎるわね。」

 

 私もノアに続いてコンソールの電源を落とした。まあ、本当のところは今までの端末を使いたかったけれど....あくまでもこれは処罰、贅沢は言えないものね。

 

 「これ自体を使うのも仕事が終わった後に少しか、それとも何かの書類を出さなければならない時だけですからそれ程にまで使用頻度が高い訳でもないですしね。実際頻度が多いのはこの待機室で待機している時間ですから....」

 

 ノアは端末で時間を確認しながら少し面倒にそう告げてくれた。思ったよりも時刻はまだかなりある。

 

 「それでも、そういうことは良いことなんじゃないのかしら?仕事が少ないということはリスクが少ないということよ。」

 

 私は椅子に座りながらノアと同じように話を続けた。仕事、M.Sのこの仕事が好きであるなら話は違うけれど、どう見たところでノアはそういう人間じゃなさそうだしね。まともなアークスを1人相手に鎮圧することも正直なところ難しそうに見えるわ。

 

 「はあ、確かにそうなんですけどね、何も無ければ安全なのは。」

 

 ノアはそう返してきたけど、あまり良い顔はしていなかった。

 

 「でも、最近だとそれなりに組織性を持った人達が相手ですから結局のところはリスクが高いんですよ。近いうちにあったような簡単な仕事でも相手は普通に武器を持っていましたから。」

 

 彼は腰に下げていた武器の位置を正しながら言う。恐らく、組織性があるというのはC.R.S.Fなども含めたそれなりに脅威になり得やすいようなところの事だ。基本的にそう言った場所では曲がりかなりにも現役のアークスが相手になるわけだから....難しいことだわ。

 

 「本当ならこういうことじゃなくて農業区画の担当とか、そう言ったことがしたかったんですけど....僕にはM.Sの方が合っているみたいで駄目でしたね。」

 

 どうしようもない、そういった風貌で答えてきた。一般員の担当できる範囲でのリスクの低い仕事ね....良いかもしれないわ。

 

 「おい、待機しているところ悪いがちょっと話したいことがあるんだ。フィリンは倉庫の方に来てくれ。」

 

 「ん....少し行ってくるわ。」

 

 そうしてちょっとした無駄話をノアと続けていると不意に通路の方側からバーンズに呼ばれた。突然な物だから少し驚いたけれど。

 

 「じゃあ、また。」

 

 そこで私は一旦話を切り上げてから最初に入ってきた時に少しだけ見えた倉庫の方へと向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....取りあえず大きさは大丈夫みたいだな。持ってみた感覚はどうだ?」

 

 「それなり、かしらね。扱いにくいわけではないけれど...」

 

 呼ばれてから数分後。私はバーンズと一緒に仕事で使用する武器装備についての説明を受けていた。

 

 「でも基本的な作りはアークスにあるようなものと同じなのね。元アークスであればなんなく出来そうだわ。」

 

 私は持っていたライフルを右手だけで支えながら答えた。確かに私が今持っているライフル、バーンズの拳銃、どれも現行のアークスでも普通に扱うことが出来そうだ。

 

 「俺もアークスだったが.....ここにある武器は500年前よりも前に作られたアークス用の武器の派生形だからな。今の武器に対してもそういった繋がりがあるのかもしれない。」

 

 500年よりも前、つまりはアークスが出来た頃に作られたものの派生形だと言うことかしらね。そう言うことであるならこの構造の類似性も分からなくもないわ。

 

 「まあ、使う理由としては....使わざるを得ない理由としてはそこまでのコストを掛けたくないから、だな。」

 

 バーンズは腰から自分の銃を取り出すと各部の確認をしながら話を続ける。

 

 「M.Sはあくまでも各艦それぞれの治安維持を行うためだけに存在する公式に定められた組織だ、故に規模も大きい.....が、取り扱う仕事はの大半は武装を必要としない。特にダーカーに使用するような程の火力なんてあったとしても無駄に力と費用を浪費するだけだ。」

 

 「そうなるわね...」

 

 私は一旦ライフルを触る手を止めてバーンズの話に耳を傾けた。

 

 「まあ、そう言ったことから削れるものは削るとしてこういったやり方がされているか。さっきフィリンが言ってくれた通り機能面では一般のアークスが使うものと大差ない物だが、挙げるとするなら火力が低くてな。それだけは困ったもんだ。

 

 そう言うとバーンズは自分の持っていた銃、拳銃のシリンダーを目に見えるように出してから私の方に向けた。何だか、これだけシンプルな構造なら壊れにくさもあって良さそうね。どんな状況でも使えるのはありがたいことよ。

 

 「一応現行のライフルで使用されている連発弾を装弾することが出来るようになってはいるが...致命傷にならないことが大半だ。」

 

 シリンダーから1つ連発弾を取り出すと私に見せてくれた。見慣れてはいるけれど...これを拳銃にも使えるようにするのは良い改良なのかしらね。

 

 「最低でも5発、更に言うのなら死に至るほどの致命傷を負わせないことを条件に的確に相手に撃ち込まなければな。特にキャストであるなら頭部の接続部分を狙うしかない。当てることは当然至難の事だがな。」

 

 そうしてバーンズは自分の銃をしまった。

 

 「...ところでフィリンは今のところはライフルか?」

 

 銃をしまったバーンズはそう聞いてきた。

 

 「そうね、以前から良く使っていたのはどちらかと言えば拳銃よりもそれなりの大きさの小銃だったから。」

 

 続けて私は腰の位置にまでライフルを持っていくと正しい位置で構えたりして安定させられるかを確かめていた。

 

 「使えそうなら良いんだが...」

 

 「....ええ、火力がどうかまでは分からないけど使うぶんには問題ないわ。これで大丈夫。」

 

 大体の銃の機能を確認し終えた私は一旦銃をテーブルへ置いて返事を返した。少し足りないとは思うけど...用途で考えればこのレベルでも大丈夫そうね。

 

 「そうか、じゃあそいつはこれからフィリン、君が管理するようにしてくれ。」

 

 そう言うとバーンズは近くにあった簡易的な椅子から立ち上がった。

 

 「ちょっとした手続きがあるが、君だけだと時間が掛かるだろうしな。俺の方も同時に取りかかるからなるべく早く終わらせられるようにしておく。」

 

 「分かった、私の方もいつでも出来るようにしておくわ。」

 

 そうして私は倉庫の電気を消してからバーンズと揃って待機室へ戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....物理キーボードは癖が強いわね。」

 

 倉庫から戻った私は早速、使用武装の登録申請の文書をバーンズにも手伝って貰いながら作成していた。けど、物理キーボードの独特な癖の所為で中々進まずにいたの。

 

 「やっぱり、勝手が違うんですかね....」

 

 ノアが横から声を掛けてきた。確かに勝手が違うと言えばそうもなるわね....

 

 「何というか、この押し込みの具合が違うのよ。ホログラムタイプのキーボードはもっと軽いのだけれど....まあ、慣れるしか無いわ。」

 

 「慣れるのが1番良いんですけど....ほら、人によって好き嫌いがあるように合う合わないもありますから出来ればホログラムタイプの物が用意できれば良いんですけどね。」

 

 ノアは精製水のパックをひと吸いしてから話を続ける。

 

 「でも、決まり事は決まり事ですからそんなのは通らないですよね。自分勝手過ぎますし。早く慣れることが出来れば良いんですけど....」

 

 「...まあ、気持ちだけで十分よ。大体こっちに来る前にホログラムタイプの端末を回収されているから何となくは察していたもの、貴方が深く考えることじゃ無いわ。」

 

 「は、はあ....」

 

 そうして特に脈略も無いような話をそれからしばらく続けて数分が経った頃、丁度バーンズとほぼ同じタイミングで申請用の文書を作成し終えることが出来た。

 

 「良いタイミングだったな、特に意図していなかったが....まあ、確認するぞ。」

 

 そう言うとバーンズは自分の机から移動して私のコンソールの方へ回ってきた。席を立った直後に私の方のコンソールの方にもファイルが送られて来る。

 

 「一応マニュアルには沿ったわ、どうかしら。」

 

 私がそう言うとバーンズはコンソールのキーを操作して今作成した文書の確認をし始めた。意外と速読なのね....

 

 「.....うん、特に挙げる程のミスは無いな。送るのならこれで大丈夫だろう。今俺の送ったデータと合わせて支部の方に転送しておいてくれれば後は勝手にやってくれる。」

 

 「転送先を支部に....これで大丈夫ね。」

 

 私は指示通りに転送先を支部にして文書を送った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「.....何も無いですね。」

 

 あれからまたしばらく経った後、コンソールの稼働音だけが静かに響く中でノアが突拍子も無く口を開いた。

 

 「普段何も無いのは分かっていたけれど、まさかここまでとは私も思わなかったわ....」

 

 私も釣られて口を開いた。

 

 「さっき来た連絡でバーンズさんが現場に行ったのが最初で最後で....来てないですね、連絡。」

 

 そう、バーンズは数分前に入った連絡で現場に向かっている。誰が向かうかどうかは少し考えられたけど、現場に居る人間が過去にバーンズが対応した人物だったのもあって彼がもう一度向かうことになったの。それで今はノアと私の2人だけという訳よ。

 

 「....このまま何も音沙汰無いまま当日終わるなんて無いわよね?」

 

 少し冗談混ざりにノアに聞くと、案外そうでも無いような声で返ってきた。

 

 「いや....意外とそう言う日もあるのであり得ますよ、それ。」

 

 取り敢えずすぐに仕事に慣れる必要はないかと考えを落ち着かせて、もう一度深く椅子に座ろうとした時にある意味で私が待っていたものが来た。

 

 「....!連絡が来、って貴方も?」

 

 「は、へ?フィリンさんもですか?」

 

 けれどそれは2人に同時に、だったけれど。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。